なざなざなざりっく!   作:プロインパクト

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色々と混乱させてしまい申し訳ありません。
【偽りと真実の合わせ鏡】は、NAR●TOに出てくる真実の滝をモチーフにしたものです。

そのキャラの装備、ステータス等、【無限の背負い袋】以外の物全てをコピーします。戦闘が終わり次第、消滅するコピーですが。

分かりにくくて申し訳ありません。

※誤解されている方が居ますが、“ワールドアイテムを使用して作ったアイテム”であり、これはただの踏み込み式の罠です。
ワールドアイテムを使用して作ったアイテムが、ワールドアイテムとなるのであれば、作者の勘違いです。申し訳ありません。


決意~スレイン法国編~2

《この辺で良いのか?》

 

蹴り飛ばされたたっち・みーのニセモノが放ったのは、そんな言葉だった。

やはり、大したダメージにはなってないとたっちは確信する。

 

 

「あぁ、お前とは私じゃないと渡り合えないだろうからな」

 

《ふん、大した自信だ。……まぁ、私もお前には話があったんだ》

 

 

言葉と同時に、ニセモノの剣がたっち目掛けて振られた。

防御をし、合わせて剣を振り上げるがヒラリとかわされる。

 

 

「私には、お前と話すことなど何もないよ。さっさと倒して、仲間と合流するだけさ」

 

《お前には倒せないよ、大切なものを忘れたお前にはな》

 

 

たっちとニセモノの姿がブレ、幾度もなく激突する。

時折抉れ立つ地面や、中空に舞う火花が戦いの苛烈さを示していた。

 

 

「自分と戦うというのはっ、難しいものだなぁッ!」

 

《ならさっさと力を抜けっ、すぐさま斬り殺してやるッ!》

 

「それはごめんだぁッ!」

 

 

ギャリギャリと音を立てながら、剣で押し合う。

やはり同じ人物の戦いは、力勝負では拮抗していた。

 

 

《【次元断切】!》

 

「【次元断層】」

 

 

食らえば絶命必須のスキルを、絶対防御のスキルで迎え撃つ。

空間を切り裂く斬撃が、たっちの周囲を抉り取る。

 

お互いにスキルの無駄撃ちは得策でないと考え、剣戟で勝負を決めた。

 

首、腕、脚、頭……。お互いに斬り合い、守り合い、一向に勝負がつく気配のない打ち合いに、ニセモノが声を上げた。

 

 

《糞が……、私にはこうしている余裕はないのに》

 

「何だ、何かするべきことでもあるのか?」

 

《当たり前だ。のうのうと過ごしているお前と一緒にするな》

 

「……何だと?」

 

 

ニセモノの物言いに、たっちは苛立つ。

それを分かったのか、ニセモノは捲し立てた。

 

 

《違うか?やるべきことをせず、日々をのうのうと過ごすお前とは、私は違う!》

 

「なら何だ、お前は何をしろというんだ!」

 

 

たっちは声を荒げ、ニセモノへと言った。

そのたっちの態度に、ニセモノは失望したという風に言う。

 

 

《お前、妻と子供に会いたくないのか?》

 

 

ニセモノの言葉に、たっちは何も言わなかった。時が止まったかのようなたっちに、ニセモノは更に言う。

 

 

《お前は、この世界に来て妻と子供の事を思わなかったのか?!俺はさっさと戻りたい、戻って、あの二人を思いきり抱き締めたい!》

 

 

怒鳴るように言うニセモノは、地団駄を踏んで憤慨した。

たっちの脳裏に、愛している妻と、まだ幼い愛娘の姿が浮かぶ。

 

 

 

小さな頃から知り合って、重ねた年月を経て結婚した妻。

 

そんな妻との間に出来た、親バカと言われても良いくらいに愛している娘。

 

警察官という、危険な事も多い自分の仕事を、毎日心配しながらも支えてくれた家族。

 

そして、それを突然切り離された現在。

 

 

《何も思わないのか!若い女と幼い子供だけで、過ごしていけるほど平和ではないだろう!》

《変な病気にはなってないか、私が居なくて寂しい思いをさせてはいないか、何不自由ない生活は出来ているか!》

《それらを一つ一つ考えるだけで、私はこんなにも心配なんだ!狂ってるのかと思うほど、私は不安になる!》

 

 

自らの頭をギチギチと音がなるほどに抱え、ニセモノは慟哭する。

目はギラギラと輝き、興奮した口元からはヨダレがダラダラと垂れている。

 

 

「……そうか、お前は心配なんだな」

 

《……あ?》

 

 

だが、そんなニセモノに対したっちが放ったのは、たった一言だけだった。

その他人事のような態度に、ニセモノはギロリと睨む。

 

 

「俺もお前のように、この世界に来て初めての頃はそのように思ったよ」

 

 

微笑んで言うたっちは、ニセモノからすれば火に油を注ぐ存在だった。

 

 

《なら何でだ!ナザリックなんか、ギルドなんか放って探しに行けよ、帰る方法を!この世界にある儀式とか、それらしいものもたくさんあったはずだ。どれだけの人間を犠牲にしてでも、元の世界に――》

 

「それも思ったさ、だがな……」

 

《何を笑って……》

 

 

くっくっく、と笑い声を堪えるたっちに、ニセモノは言う。

 

同時に思う、コイツはダメだ。俺が代わりに探しだして、元の世界に帰――

 

 

「ウルベルトに相談したら、こう言われたんだ。『貴方、それでも正義の味方ですか?』とな」

 

 

たっちから言われた言葉に、ニセモノは何も言えなかった。

 

 

「『正義の味方が人の犠牲を強要、更には助力するなんて、それはただの殺人鬼だ』ってな」

 

《そ、そんなもの……》

 

「確かにそうだ。私はユグドラシルで正義の味方として活動していた。弱気を助け、悪をくじく、そんな存在でな」

 

たじろぐニセモノに、たっちは更に言った。

 

「だから、私は最後まで正義の味方になるよ。だから……最初は、お前という敵を倒すとしよう」

 

《黙れ偽善者が、やれるもんならやってみろ!》

 

最強同士の戦いは、クライマックスへと突入する。

 

 

「【魔法最強化・現断】!」

 

《【魔法最強化・骸骨壁】!》

 

モモンガから放たれた【現断】が、モモンガのニセモノへと迫る。だが、【骸骨壁】によって守られ、【骸骨壁】はガラガラと音をたてて崩れた。

 

 

「ちっ、自分の対策なんか考えたことないっての。【魔法最強化・無闇】!」

 

《ぐぅッ!【魔法最強化・重力渦】!》

 

 

お互いに攻撃魔法を打ち合い、相討ちとなる。

このままでは埒が明かないと考え、モモンガは改めてニセモノを観察した。

 

 

「(相手は俺だ。となればライフもMPも一緒……)ならば」

 

《くぅっ、貴様、まさか?!》

 

 

モモンガの周囲に展開された立体的に構築される魔法陣を見て、ニセモノの顔色が変わる。

やはりバレたかと、モモンガは懐から【砂時計】を取り出しながら理解した。

 

 

「超位魔法【失墜する天空】!」

 

 

取り出した【砂時計】を握りつぶす。超位魔法の長い発動時間を短縮するソレは、すぐさま効果を発揮した。

こちらに向かって何か魔法を発動させようとしたニセモノが、圧倒的な熱量を誇る【失墜する天空】に巻き込まれて吹き飛ぶ。

 

モモンガは補助魔法を幾つか発動させながら、つぶさに観察する。

焼け焦げ真っ黒になった大地に、ニセモノがフラフラと立ち上がった。

 

 

《く、くそぉっ》

 

「幾ら俺と同じ力を持っていようと、身に付けている装備以外のアイテムまではコピーされないからな。となれば、超位魔法の類いは発動できない」

 

 

図星なのか、ニセモノはピクリと反応した。ユグドラシルにおいて発動までの時間がネックな超位魔法は、タイマンで発動することはほとんどない。

あるとしても、先程のモモンガのように課金アイテム込みでの発動が原則だ。

 

 

《……お前は、何故群れるんだ?》

 

「は?」

 

 

何言ってんだコイツ。と思っていると、ニセモノが此方へと怒鳴る。

 

 

《アイツ等は、俺達を捨ててリアルに戻ったんだぞ?!アイツ等からすれば、ギルドなんてただのゴミだったんだ、分かってんのか?!》

 

「……あぁ、分かってるよ」

 

《なら何で、そんな奴等と群れて行動してんだ。お前一人で、ナザリックの守護者達を利用して世界征服でも何でもすりゃ良いじゃないか!》

 

 

ニセモノは言う。

 

何故、居なかった奴等が今さらノコノコと友達面して混ざってくるのか。

責任は俺に押し付けて、自分達は好き勝手楽しむ奴等の為に、施しなぞ必要ないと。

 

 

《お前はいいように利用されてるだけだぞ?!》

 

「……それが、お前の本心なのか?」

 

《……何が言いたい》

 

「いや、だとすれば……。お前と俺は別人だと思ってな」

 

 

モモンガの言葉に、ニセモノは訝しげに目を細める。

 

 

《そんな訳があるか、俺はお前のコピーだ。そして、これからお前を殺して成り代わる》

 

「ただの見た目が似てる他人だよ。少なくとも、俺はギルドの人間をそんな卑下したことはないしな」

 

 

それに、とモモンガは続ける。

 

 

「もし、あの人たちが居なかったら、俺は取り返しのつかないことをしていた気がする。……俺が、俺でなくなりそうなことをな」

 

 

モモンガの脳裏に、夢でみた大虐殺の絵が浮かんだ。あんなこと、普段なら考えることはない。

 

多分、忠誠心の厚すぎる守護者達の良い支配者になれるように、あの夢の自分は努力したのだろう。

人間に化けようともせず、異形の者のままで、最後の最後まで。

 

そして最後の結末として、廃墟となったナザリックにただ独り、玉座に座る自分。

元の自分の名前も、顔も、それすらも忘れてしまうほどに、摩耗して、壊れた自分。

 

 

「俺は、今の生活が一番最高だ。気心知れた仲間と共に、次に起こすイベントを考える。今は各国の支配を考えているが、次にしたいこともあるしな」

 

《何でお前は、そこまでして……》

 

「結局の所、俺は寂しがり屋なんだよ。アルベドに聞いたろ、俺一人でのナザリックの過ごし方は」

 

 

苦笑いをして、モモンガはニセモノへと言う。

寂しがり屋だから、仲間が居てくれる事が嬉しいと、安心させてくれると。

 

ニセモノからすれば、それは否定すべき事だった。

それを認めれば自分ではなくなる。自分は一人で生きるべきだ。

 

 

《うるさい、黙れ黙れ、黙れぇぇぇえッ!》

 

「この世界に来てから、新しい戦い方も出来るんだ、見てろよ。【ゲヘナ】発動!」

 

モモンガが懐から取り出したソレを発動すると、光が走った。

広範囲に魔法が展開され、モモンガとニセモノを取り囲むように大量の悪魔が召喚される。

次々と湧いて出る万を越える悪魔の軍勢に、ニセモノは言う。

 

 

《この程度の雑魚で、倒せるとでも?何を考えているんだ》

 

「まぁ、そう焦るな。次の一手でお前は詰む」

 

 

モモンガの手に再び握られた【砂時計】を見て、ニセモノは顔に皺を寄せる。次第にそれが驚愕に変わったのを見て、モモンガはニヤリと笑った。

同時に魔法陣が展開され、モモンガは高らかに言う。

 

「同士討ちが解禁された今だから出来る戦術だよ!超位魔法【黒き豊穣への貢】!」

 

黒い旋風が場を駆け巡り、悪魔の軍勢は糸が切れたかのように倒れた。

その後から降ってきた黒いスライム状のソレが、ドロドロと姿を変える。

 

総数3体。

レベル90を誇るその異形のモンスターは、名を【黒い仔山羊】という。

 

「よっし、さぁ行け、お前たち!」

 

「「「メェエエエエエエエ!」」」

 

見た目とは裏腹に可愛らしい声を上げながら、【黒い仔山羊】はニセモノへと接近する。

ニセモノは直ぐ様距離を取ると、背後に時計を出現させた。

 

 

《【あらゆる生ある者の目指すところは死である】発動!【嘆きの妖精の絶叫】!》

 

モモンガの鉄板ともいっていい魔法コンボを発動させたニセモノは、直ぐ様モモンガとの距離を詰める。

魔法の範囲内にモモンガを入れ、確実に仕留めるために。

 

 

「“戦いは熱くなったら負け”。……ぷにっと萌えさんから教わらなかったか?」

 

 

身体を切り裂く【現断】の斬撃を受けて、ニセモノは地面に倒れる。背後の時計も掻き消えたのを見て、自らの敗北を理解した。

 

 

《課金アイテム使い放題とか卑怯だろ……》

 

「はは、確かにな。条件が対等なら、俺が負けてたかもしれない。……それに、お前もその胸のワールドアイテムを使わなかったじゃないか」

 

《ふん。……“モモンガ”は相手への攻略を完璧に立て、圧倒する。そんなプレイスタイルのプレイヤーだ。……それに、お前が使わないのに俺が使えるか》

 

「格好いいこと言ってるけど、それで負けてちゃ意味ないな」

 

《うっさい》

 

 

楽しそうに笑うモモンガを見て、ニセモノはただ無気力に項垂れた。

何か、諦めたような、そんな雰囲気の彼に向かって、モモンガは言う。

 

 

「……俺はやっぱり、皆で居るのが楽しいんだ。馬鹿やったり、真面目に冒険したり、色々とな。だから……」

 

《もういいよ。お前の言いたいことは分かったから……》

 

 

サラサラと次第に崩れていくニセモノは、最後にモモンガへと向き合うと言った。

 

 

《頑張れよ。俺によく似た、誰かさん》

 

 

そんな言葉を残して、ニセモノは消滅した。パラパラと舞う残りカスを暫し眺めて、モモンガは歩き出す。

 

「さて、……仲間のもとに戻るとしよう」

 

 

地面が抉れる。

 

《くっ》

 

目の前で幕のように広がる地面に、ニセモノは忌々しげに見た。

たっちがどう出てくるか分からない以上、下手に動けば斬られる。

 

《次元断層》

 

仕方なしに打たされた防御スキルは、たっちの剣を阻んだ。

パラパラと砂が落ち、お互いの姿が見えたとき、たっちが笑った。

 

 

「どうした。まさか今のでスキルを使いきったか?」

 

《ほざけ……ッ!》

 

 

高速で肉薄し、たっちにスキルを撃たせる隙を作らせない。

迎え撃ち、撃ち流し、切り落とす、幾度となく繰り返した攻防は、たっちが優位だった。

 

 

《何で、何でなんだ。お前は帰りたくないのか?》

 

「帰りたいよ。けど、お前のやり方じゃダメだ。」

 

 

それに、とたっちは言う。

 

 

「お前のやり方で帰ったとして、私はあの二人に胸を張ってただいまと言えない」

 

《……ッ!》

 

「それに、俺の実家が面倒みてくれてるだろうし、妻はしっかりとしてるし。……あれ、俺って要らない存在?いやいや、そうじゃないよな、うん」

 

 

一人で考えているたっちへと、ニセモノは怒鳴る。

気楽に考えている自分に、事の重大さを分かっていない自分に。

 

 

《それはただのお前の望みだろ、現実を見ろよ!》

 

「見てるよ。……だからこそ、私はこの世界で胸はって正義を貫き通し、家族にただいまと言う。それだけだ。それに……」

 

 

唖然とするニセモノへと、たっちは剣を降り下ろした。反応が遅れたニセモノは、腕を切り落とされ剣を落とす。

 

 

「ヒーローは、仲間が居てこそ成り立つものだろ?」

 

《く、糞がぁ!》

 

 

【次元断切】

たっちの必殺技といってもいいスキルが、ニセモノを容易く切り裂く。

ばたりと地面に倒れたニセモノは、暫したっちを見つめると、呆れたように笑って言った。

 

 

《その正義感が何処まで続くかは知らんが……、絶対戻れよ》

 

「あぁ。絶対、家には帰るよ。……あの二人に、土産話をたくさん持ってな」

 

 

たっちの言葉に、ニセモノは笑って消えた。

 

 

 

「降伏しましょう」

 

 

スレイン法国へと戻ったとき、“漆黒聖典”や他の武装隊と睨み合って居るとき、最高神官長はそう言った。

騒然とするスレイン法国の面々に、神官長は言う。

 

 

「彼らはかの神々と同等の、いやそれ以上の力を持つ存在。……戦った所で、無惨に殺されるだけです。だから……」

 

 

モモンガ達の前へと進み出て、神官長はゆっくりと膝を着いた。

首を差し出す形で言う。

 

 

「これまでの非礼、私の首で終わりにして頂けませんでしょうか」

 

「神官長?!」

 

 

その提案に、周りから待ったの声が掛かる。神官長はそれを制止して、モモンガの言葉を待った。

任せる。というギルメンの視線を受け、モモンガは神官長へと口を開く。

 

 

「我らは無意味な殺しをしない。……我らに全面的に降伏し、協力するというならば、受け入れよう」

 

「……あなた方は、何をなさるつもりで?」

 

「ん?あぁ……」

 

 

此方を見つめる、スレイン法国の面々の視線を受けて、モモンガは笑って言った。

 

 

「冒険したいのさ、まだ見ぬ、この意味不明な世界をな」

 

 

新しい玩具を買って貰った子供のように、モモンガは笑う。

別の世界の自分とは違う。俺は、鈴木悟として“モモンガ”をプレイするのだと。

信頼出来る仲間と共に、この世界を全て攻略してみせると。

そう決意し、ただ笑った。

 

 

こうして、スレイン法国への侵略は終わった。

後日、話を聞いた守護者達が怒り狂うのを宥めるはめになったのは、別の話。

 

 




今回でスレイン法国編は終了となります。

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