なざなざなざりっく!   作:プロインパクト

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至高の方々のキャラ像が中々に難しい……


師弟の稽古

第六階層、アンフイテアトルム。

そこは大きな闘技場であり、コロッセオのような造形をしている。

侵入者が入ってきたとき、ここで迎え撃つ役割を持っている場所でもある。

 

さて、そんな闘技場で、二つの影が戦闘をしていた。

片方は四本の手足にそれぞれ武器を持ち、隙無く構えたまま、相手の様子を伺っている。コキュートスだ。

 

「(ココマデ、差ガアルカ……)」

 

細く息を出しながら、相手、武人建御雷の様子を伺う。彼はコキュートスとは違い、二本の腕で、一本の竹刀を持っていた。

 

挟撃、剛撃、その全てを一本の竹刀で受け流していく建御雷に、コキュートスは攻めあぐねていた。

 

横から槍で斬りかかれば、懐に入り込んで胴に竹刀を叩き込まれ

 

刀で斬りかかれば、手元の柄を弾かれ攻められない

 

そして、向こうが攻めるのを待てば全くと言っていいほど攻めてこない

 

 

ジリジリと間合いを図る自分に対し、死んでいるのではないかと思うほどにピクリともしない建御雷。

しばらくどう攻めるかイメージしてみたが、どう打っても見える敗北に、コキュートスはその場に膝をついた。

 

 

「マイリマシタ……。完敗デ御座イマス」

「む……。分かった」

 

 

そう言うと、ふぅ、と大きく息を吐いた建御雷は、膝をついたままのコキュートスの近くへと腰を下ろした。

 

 

「マダマダ、精進ガ足リナイノデショウカ」

 

 

昆虫型の特徴でもあるアゴをガチガチと鳴らしながら、コキュートスは建御雷へと訊ねた。

 

ナザリックにおいて武器を使用しての武装戦で、守護者の中では自分の右に出るものは居ない、とコキュートスは自負している。

それは周囲も認めており、戦争にでもなったら主力となるのはコキュートスの部隊だろう。

 

だからこそ、そのトップとしての誇りと重圧が、コキュートスには掛かっていた。

 

 

「建御雷様ノ武器デアル【斬神刀皇】ヲ受ケ継イダモノノ、ソレデハマダ不足ナノデショウカ」

「それは……、他の武器が良かったということか?」

「イイエ‼」

 

 

建御雷を不快に思わせてしまったかと、コキュートスは大きな声で否定する。その声は少し離れた所にいたシモベが何事かと振り向くほどだった。

 

「落ち着け、コキュートス」

「……申シ訳アリマセン」

 

そのまましょんぼりと、コキュートスは肩を落としたまま無言でいた。先ほどまでの言葉も、答は特に無いのだろう。そう、建御雷は感じた。

答えの見つからない疑問。それがコキュートスの中でモヤモヤとわだかまっている物だった。

 

 

「コキュートス、一つ話を聞いてくれないか?」

「ナンナリト、御話下サイ」

 

 

コキュートスの返答に、ありがとうと言ってから、建御雷は話す。

 

「お前が俺の事をどう感じているか、それははっきり言って分からない。だが、一つだけ言えることがある」

「……ナンデショウカ」

「俺やたっちさん、弐式炎雷さん達は、別に特別だから強いという事ではない」

 

建御雷のその言葉に、コキュートスが正直に思ったのは、何言ってんだ、ということだった。

 

自分達ナザリックに属する者からすれば、創造主たる41人のプレイヤーは、神にも等しい存在だ。それが特別ではないはずがない。

それにたっち・みーにおいては【ワールドチャンピオン】の職種を所有している。それのどこが特別ではないのか。

 

コキュートスの考えていることが分かったのか、建御雷は笑って言った。

 

「強い者はな、皆大なり小なり臆病なものなんだ」

 

建御雷のその言葉を、コキュートスは一瞬理解できなかった。

 

「臆病な者は、自らの身を守るのに必死な為、周囲の事を良く観察している。一歩退いて周囲を観察すれば余裕が出来、どのような状況でも対処出来るからだ」

 

例えば、と続ける。

 

「先ほどの手合わせでもそうだ。お前の使用する武器は柄が長いものや棒状の物が多かった、それならば、斬撃のスピードが乗る前に、力の弱いところで押さえてしまえばダメージは免れるし、最小限の動きや疲労で済む」

 

そう言われて、コキュートスは先ほどの手合わせを思い出した。確かに、建御雷からの攻めは少なく、カウンターの技が多かった。

 

「まぁ、コキュートスはもう充分強いから、こんなことを言っても分からないだろう、だから」

 

一呼吸おいて、建御雷は言う。

 

「お前にとって譲れないものを守ると良い」

 

そう言って、建御雷は笑みを浮かべた。

 

 

 

「……不甲斐ナイ自分メノ為ニ、感謝ノ意ガ尽キマセン。武人建御雷様、アリガトウゴザイマス」

「なに、大事な守護者の為だ。大した事ではない」

 

 

建御雷とそう会話をしながら、コキュートスは思う。自分の譲れないものとは何かと。

ナザリック、ひいては至高の方々の為ならば死ぬのも惜しくはないが、この問題の答えはそういうことではないだろう。

 

 

「建御雷様、お疲れ様です」

「お疲れ様です、御二人で稽古ですか?」

 

声に振り向くと、アウラとマーレがこちらに近づいていた。第六階層の手入れにでも来たのだろう。

 

「……えと、どうしたのコキュートス」

「ぼ、ぼくたち、何か変ですか?」

 

じっと見ていたのを疑問に思ったのだろう、コキュートスの視線に、アウラとマーレの二人はそう訊ねた。

 

「イヤ、何デモナイ。ソレヨリ、本来ノ用事ハ良イノカ?」

「建御雷様がいらっしゃるのに、他の事に手を出すわけにはいかないでしょ、お世話してからいくわよ」

「な、何かありましたら、気軽にお申し付け下さいね、建御雷様」

「あぁ、ありがとう」

 

楽しそうに笑う二人を見て、コキュートスの中で一つの思いが出た。

ナザリックに比べれば軽いものだが、出来るならば……。

 

こうしてある今の平穏を、皆が笑って過ごせる日常を、変わらないよう守りたい。

 

そう、感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もぅ、何よコキュートス。さっきからジロジロと……、もしかしてアンタ、ロリコンだったの?」

「バカナ事ヲ言ウナ。アウラノ身体ニ興奮スル要素ハナイ」

「ちょっ……、何よその言い方は‼」

 

「え、えと、どうしましょうか。建御雷様」

「好きにさせなさい」

 

 


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