気だるげさん捕まりました。
以上。
「はい、あーん。」
「あーん。」
パクっ、モグモグ。
捕まってから30分。(そこ、あんまり経ってないとか言わない。)
餌付けされました。
間宮のご飯は美味しい。うちのとこの間宮も美味しいけど少し薄味だ。ちょっぴり濃い味が好きな私からすればこっちがいいのだ。
「美味しいですか?」
「とってもねー。それより次ちょーだい。」
ついでに言えば食べさせてくれるから、楽ができていい。今いる場所は、大広間だ。間宮と僕以外にも武蔵以下の艦娘達もいる。
「はい、あーん。」
「あーん。」パクっ、モグモグ。
自分で食えと言うかもしれないが、両手は縄で拘束されているため、使えない。仕方ないよねぇ。
「これが、あの有名な第52鎮守府所属の艦娘達のメンバーと言うのか・・・。」
まぁ、なんか落胆してるのがいるけど、無視無視。飯が美味しくてそれどころじゃないし。
「この魚美味しい! 食べやすくていいね。」
「ありがとうございます。」
「うちに来なよ。僕から言っとくからさ。」
「それは困る!」
武蔵が復活したよ。
「どうかしたの?」
「どうかしたの? ではない! 我々は遊んでるわけではないのだ!」
ダンッと横の壁を叩いた。
「だって、話聞いてくれないんじゃ進まないよ。それに事態は少し厄介な形になったし、僕もめんどくさいしねー。」
そう言って、間宮の両膝に頭を置いた。柔らかくて気持ちいいね。このまま寝ちゃいそうだ。
何て思っていると、
「我々の処分はどうなる?」
「一応、上層部は排除を予定してたみたいだよ。」
場が凍った。他の艦娘達もざわめき始めた。
「だけど、」
そう言うと、しん、と静まり返る。
「君達の練度が予想より高かったから、一応何日か拘束してその後は別の鎮守府に配備される形になるよー。」
「そう、か。本当に大丈夫なのか?解体とかはないんだな?」
「此方には、君達の要望を聞く用意はあるよ。でもね、」
僕はわざとらしいため息と間を入れた。そして不味いですよーとでも言わんばかりの表情で、
「僕を人質にしたから、今はどうかな?」
そう言うと、武蔵は苦悶の表情を浮かべた。
「君達が切羽詰まっていたのは分かるけど、このタイミングは不味かったね。それにほら、来たみたいだよ?」
そう言って窓の方へ顔を向けた。
(Ⅰ_Ⅰ)」<オハヨーゴザイマス
「脱走艦娘達に告ぐ! 速やかに人質を解放し武装解除して降伏せよ!」
これは私のミスだ。正直、彼女一人で向かわせたのは間違いだった。数はそんなに来ないだろう。何時もは戦艦級2隻と駆逐艦4隻程度だったため、全艦を動員するとは思わなかったのだ。
だからこそ大慌てで持てる戦力を率いてここに来た。
「再度通告する! 速やかに人質を解放し武装解除して降伏せよ! 此方にはそちらを受け入れる用意がある!」
五月雨さん、無事でいてください!
(Ⅰ_Ⅰ)<コノキャラウゴカシヅライネ。
「良かったじゃん。受け入れてくれるって。」
そう言って、私は立ち上がり、部屋を出ようと歩を進めた。
「・・・本当に大丈夫なんだろうか?」
「何が?」
武蔵は俯いたままそう言った。立ち止まって武蔵を見る。
「私達は本当に耐えきれなかった。あの地獄の日々に。」
そう言って、ポツリポツリと本音を暴露した。ここにいる間宮以外の者は姉妹艦を失っているそうだ。捨て艦として、また売買もされたようだ。
「何度も殺したいと思った。でも、駆逐艦には人質もいたんだ。迂闊に殺せば見殺しにしてしまう。だから従うしかなかったんだ。」
僕は黙って聞いていた。どうやら、一部誤りがあるみたいだ。売買とか人質のことも聞いていない。
「ねぇ、武蔵。」
後から聞いたんだけど、その時の僕の顔は、
「もうちょっと詳しく聞かせて? それに他の娘も。」
目も当てられないような、泣く子も黙るような表情だったそうだ。
(Ⅰ_Ⅰ)」
「提督、脱走艦娘達が全員出てきました。」
見張り中の艦娘五十鈴から連絡がでた。
「五月雨さんはどうですか?」
「一緒に来ています。ですが、なにもされてませんね。」
ほっ、とひと安心して次の指示を出す。
「では、此方から説得を、」
『その必要はないよ。』
いきなり、通信が入った。五月雨さんだ。
「五月雨さん、良かった。無事だったんですね!」
『そんな事より早く鎮守府に帰るよ。やることができた。補給したら直ぐに横須賀に行くよ。』
「ええ!? そんな急に言われても!? それに、脱走艦娘達はどうするんですか!?」
『事情は後で説明するから早く!!』
珍しくイラついているのか怒気が孕んでいた。
「わ、分かりました! 艦隊反転! 鎮守府へ帰還してください!」
(Ⅰ_Ⅰ)<ヤルトキハヤルヨ
横須賀鎮守府指令部
「あー、今日は厄介事が来そうだな。」
一室に唯一ある机を占領している男は、眉を潜めつつ呟く。
「そうですね。多分直ぐに実現しますよ。」
後ろに控えている一人の女性がその呟きに反応した。
ここは、海軍でもトップが座る場所。つまり海軍元帥の執務室である。
「五月雨か・・・。」
すると、部屋に唯一ある扉から一人の少女が入ってくる。
「そうそう、取り敢えず報告書持ってきたから目通して、あとぶん殴っていい?」
そう言って机の前に立ち止まり、乱暴に机の上に書類を置いた。
「まてまて、まずは書類を見てからだ。大方予想はつく。脱走艦娘達の事でだろう。」
そう言って男は、書類に目を通す。
「久しぶりですね、五月雨。 まずは、ノックしてから入ってください。」
「そうだね、榛名。でも緊急事態だからそんな事言ってらんないよ。」
後ろの女性、榛名は五月雨に対し苦言を呈したが、五月雨は気にした様子もなくも間髪置かずに返答した。
雰囲気がどんどん悪くなっていく執務室で、男はその雰囲気をうち壊す。
「二人ともやめろ。まず、五月雨。この件は私が預かる。正直汚職が多すぎる。一つずつ潰していく。」
「わかった。後は任せた、有栖川司令。でも、」
そう言って来た道を帰ろうとした時に顔だけを動かし、こう言った。それは戦艦の榛名ですら戦慄したぐらいだった。その時の五月雨は紅く目を光らせる位に、
次はないぞ?
「・・・わかっている。すまなかった。」
最初に復帰したのは有栖川だった。
「まぁいいやー。用件終わったから、じゃあねー。」
そのまま彼女は帰っていった。
硬直が完全に解け、二人が脱力したのは彼女が出てから一時間後だった。
「流石に、五月雨は怒らせるときついな。」
「はい、ここで艤装を展開するかと思いましたよ。」
二人ともハンカチや服の袖で汗を拭っていた。
「だが、これは問題だな。置いていった資料はかなり深いところまで来ている。それに前任者が主導していたようだな。」
「分かりました。それでは、此方で準備を整えます。」
そう言って彼女は置いてある資料を取り執務室をでた。一時間前の五月雨とは違い礼儀正しく。
「はぁ、ホントに面倒事を持ってきてくれたな。だが・・・、」
椅子を回し窓越しに海を見ながら、
「脱走艦娘達はどうするんだあいつは?」
面倒事を持ってくる割にはどこか抜けてるなぁと思う有栖川だった。
(□_□)<マ、ショルイデアイツノジョウシニマカセヨウ。
「はぁ、終わった終わった。」
そのまま、海の上を走っていく。
だが、何か引っ掛かっていた。
「なーんか忘れてるんだよねー。」
そう言いながら、腕を組む。勿論走行するのはそのままで、
「ま、いっか。司令が何とかしてくれるでしょ。」
そう言って彼女は自分の鎮守府へと帰路についたのだった。