そして、五月雨の戦闘力もちょっとだけ解説します。
では本編を
「はぁ。」
一人のため息が食堂に響いた。
食事を取る場所であるはずのここが、何時もの楽しく賑やかな場所から重苦しい雰囲気に変貌していた。
原因はたった一人の少女である。
その少女は、いつも気だるげな雰囲気で髪は顎のラインで切り揃えてある。そして一番その少女の特徴である眼・・・いわゆるジト目が印象的な少女、
とまぁ、ここまで言えば、五月雨さん以外にないが、いつもの気だるげというよりは重くどんよりし、何故かその五月雨さんの周りだけ重く歪んだ空間が見える。
「はぁ」
何度目のため息かわからないが、つく度にどんどん雰囲気が重くなる。
そんな五月雨さんに近く娘がいた。涼風だ。
「どうしたんだ、五月雨。元気ないぞ?」
その顔は心配で仕方なさそうだ。
それはそうだ。涼風は五月雨の事が好きなのだ。
それはこの呉鎮守府では周知の事実。だが、悲しいかな伝わってほしい人には全くと言って良いほど伝わってないのだ。
だが、それでも頑張ってるのは一途に五月雨だけが好きだからだ。
そんな好きな人が落ち込んでいるのだから心配にならないわけはない。
横の席に座り、優しく問いかけた。
「あぁ・・・、涼風か・・・。」
「あたいでよければ、話しきくぞ?」
「・・・実はね、僕は好きな人がいたんだ。」
「えっ!? あ、ああ、そうなんだ・・・。そ、それで?」
思わず驚いてしまったが、動揺を表に出さないように続きを促す。
「最初は罵倒の嵐だったんだ。もう酷くて。でもめげずに頑張ったんだ。そしたらたまたまその子を助ける機会があってさ。」
「う、うん。それで?」
周りは涼風を可愛そうに思えてくる。涙目になりながらも懸命に相談?(愚痴)を聞いているのだ。
多分、内心は聞かなきゃよかった早くこの場を去りたいはずだ。
それを知ってか知らずか五月雨さんは続ける。
「この前恋仲になったんだ。」
決壊した。涼風は一筋の涙を流した。自分の恋は終わったのだと、そして周りも察してしまった。それでも続ける五月雨さんにもう止めてやれと言いたい。
「でも、彼女の気持ちは変わったんだ。今日会ったら他人だったんだ。」
五月雨さんはうつむき、悔しがるように言葉を吐き出す。
と、そこへその重い空気をぶち壊す娘が現れた。
「あんた、まだ言ってんの? しつこいわね。」
そう吐き捨てるように言う霞。そのまま五月雨さんの隣、涼風の反対側に座り、何事もなかったかのように朝食を取り始める。
「もとはと言えばお前のせいだろ!」
ダンッ、と机を叩き立ち上がる。
「あんたには不釣り合いなのよ。だから諦めなさい。」
「ふじゃっけんなーーー!!!」
五月雨さんはたまに舌足らずになる。特に感情が昂ると。
だが、次の霞の一言で食堂の雰囲気はますます混沌となる
「それに、私がいるんだから問題ないでしょ?」
凍りついた。涼風もそして五月雨さんもである。
「何、不満なの?」
横目で五月雨さんを見る。
「お前と曙と大和と他の数人は絶対嫌だね❗」
と復活した五月雨さんは続ける。
因みに隣の涼風は顔を覆い泣いている。それを時雨が慰めていた。
「だいたい、たかがゲームデータ消されたぐらいで何時までうじうじしてんのよ。」
「黙れ、貧乳冷徹女! んなんだから提督に見向きもされないんでしょうが!!! 」
「あら、死にたいのかしら?」ニコニコ(o^-^o)
そう言って、立ち上がる霞。
「だいたい、僕の趣味にケチつけるなって言って、る・・・だろ?」
いきなり手を引っ張られそちらを見る五月雨さん。
「ねぇ? 五月雨?」
うつむいたままの涼風が静かに名前を呼んだ。
いつの間にか時雨は消えていた。
そして霞もトレーを持って返却口へと向かっている。
「さっきの話ってもしかして、ギャルゲーなの?」
カタカタ、と震える五月雨は少しずつ後ずさりする。
「あ、ああ、そうだよ。と、と言うか涼風? どうしたんだ? なんか、お、怒ってない?」
その後ずさりに対応してかどんどん詰め寄っていく涼風。その顔は狂気にも安堵にも感じられるがとにかく怒りが全面に出ていた。だが、不覚にも五月雨さんからはその表情が伺えない。
「そんな事ないよ? ただね、一言だけ言いたいの・・・。 あのね、五月雨?」
あ、あかん。これやヴぁいやーつーや。と五月雨さんから聞こえ、
「五月雨のバカーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
ぱかーーーーーんっ!
と、アッパーをモロに吹き飛んでいく五月雨さんだった。
「な、なんでぇ・・・?」
バタッ。K.O. 涼風 you win
曙「だから、鈍感なのよばかだれ。」
ー鎮守府内演習場にてー
「でさー・・・。」
気ダルげな少女(???)、五月雨さんは、呟いた。
「なんで僕は、演習場に連れてこられたの?」
「演習以外に何があるのよ? バカなの? 死にたいの?」
「むしろ、死んだ方がいいわ。その方が牧場しなくていいもの。次は、レア電探と、ホロ艦載機がいいわ。」
次々と曙と霞に毒を吐かれ、どんどん憂鬱になる五月雨さん。
「それじゃあ、五月雨牧場だよ・・・。てかランダム牧場か何かか?僕は。」
「あ、ちゃんと最上になりなさいよ?」
「メタルキングス○イムか! なんだ僕ははぐれメ○ルなのか!」
と、さすがに突っ込みをいれ、そのまま落ち込んでしまった。
「これがずっと続くのか・・・。もうやだ。異動したい・・・。」
「無駄口はさておき、さぁ、はじめるわよ。」
「ちょっと待って。まだ三人しかいないんだけど?
後の三人は?」
確かに三人しかいない。辺りをキョロキョロと見回すが、誰かが来る気配は全くない。
「何言ってんの、この三人でやるのよ。大御所の鎮守府であっても過剰戦力投入はしないわ。」
「いやいやいやいやいやいや!?!?!?!!?
相手は長門さんとか呉鎮でも最古参のメンバーなんですけど!?」
「うるさいわね。問題ないわ。蹴散らせばいいのだから。」
何時もと同じ口調で、さも当たり前かのように告げる二人に対してあんぐりと唖然とした表情で見る五月雨さん。
「それに、これで負けたら
「さぁ、行くわよ。」
そして、ゆっくり開始位置へ向かう二人。
残った五月雨さんは深い深いため息を吐いたあと、
「ホントに異動しよっかな・・・。」
と呟き、とぼとぼと二人を追っていった。
「あんな五月雨さんははじめてです。良い記事が書けそうです♪」
ー鎮守府内演習場、観戦用控え室ー
控え室には、呉鎮守府の艦娘ほぼ全員と、52鎮守府の先遣隊と 元々呉鎮守府に一時的に配備されていたメンバーが座ってモニターを観戦していた。
だが、呉鎮守府の艦娘達はあまり良い顔をしていない。
「いくら、52鎮守府が強いとは言え・・・。」
「駆逐艦3人だけでうちの最精鋭を倒そうなんて、正直無謀というか舐めきってると思います。」
「そりゃあ、確かに赤城さん達が出たら厳しいですけ
ど・・・。」
最精鋭をたった3人で、しかも駆逐艦で日本海軍の一角である鎮守府の最精鋭を相手にするのだ。
舐めているどころの話ではなかった。
そのため、不満が続出していた。
「赤城さん達はどう思ってるんですか? いくらなんでもあの霞さんの一言はどうかと思いませんか?」
そう、呉鎮守府の二航戦の一人蒼龍が聞いてくる。
『空母が出る? ふん、無駄ね。私と曙、それと五月雨だけで充分よ。』
「確かに言い方にはトゲがあるんですが。」
と少し苦笑いしながら、頬を掻く。
「まぁ、見れば分かると思いますよ。私達52鎮守府の実力が。彼女が慢心しているわけでも何でもないんだ、と。」
そう、それだけはキッパリと言いきった。
ー呉鎮守府演習場ー
『それでは、演習を始めてください。』
その放送と共に開始の信号弾が放たれる。
「それじゃあ、行くわよ。先頭から私、曙、五月雨の順よ。 敵艦載機が来たら射程圏内に入り次第撃ち落としなさい。」
「艦隊が見えたら?」
そう聞いた。今回、何も作戦がないのだ。そう対呉鎮守府戦の為のミーティングすらなかった。
ただ、敵の編成だけは分かっている。
長門さん、陸奥さん、那智さん、飛鷹さん、隼鷹さん、五十鈴さんの6人。
最初は扶桑さん達が入っていたが、五十鈴さんと飛鷹さんが霞と曙に食って掛かってきた。
その為、急遽編成を変更したのである。ただ、それだけしかわかっていないのだ。3人でどう戦うつもりなのか、ただのアホとしか思えない。
「あんたねぇ・・・。この3人でやることは一つでしょ。」
いや、呆れられても困るんだけど・・・。
ホントにこいつらと居ると疲れる。
「ばかだれにも分かるように言ってあげるけど、艦隊を見つけ次第正面からやる他無いでしょ。接敵したら最大火力で押しきるわ。」
・・・脳筋どもめ・・・。
思わず口に出た言葉がそれしかない。
「とりあえず、突っ込めば良いわけですね・・・。はぁ、」
「何? 不満なの?」
・・・むらくも姉さんが怒るぞ?
元気かなぁ、むら姉は。早く帰ってきてー。(>_<)
現実逃避してる場合じゃないや。
「イイエ、ナンデモゴザイマセン。」
「分かれば良いのよ、分かれば。」
・・・もう、どうにでもなれ・・・。
諦めの言葉が頭に響いた気がする。あー、扶桑さんも言ってたな、『人生諦めが肝心なのよ』って・・・。
「敵艦載機接近、2時方向。」
「来たわね、五月雨頼んだわよ。」
そう言って、彼女達は艦載機と別方向に向かっていく。
「あーやだやだ。貧乏くじは引きたくない!」
一人愚痴を吐きながら、艦載機に向け10cm連装高角砲を撃ち始めた。
「妖精さん、機銃頼んだ!」
「おまかせくださいー。」
「はちのすにしてあげますぜ。」
「しゃていけんないまで20びょうですぅ。」
わいわいしながら、機銃を動かす妖精さんは可愛い反面恐ろしく頼もしい。
そう思いながらも、射撃はどんどん直撃させていく。
だが、軽空母2隻の艦載機130機が一気に押し寄せているのだ。1発1発当てていかないとかなり面倒だ。
一部彼女達に向かおうとしているが、此方の連装高角砲の射撃速度の方が早い。
「飛鷹さん、隼鷹さん。 僕落とさないと前に進めないよ?」
そう、墜ちる零戦達に語りかける。
「それに、一気に此方に持ってきたのが間違いだね。曙と霞を舐めすぎだよ。」
彼女達を追える戦闘機は僅かに10機ほど、後は此方に反転してくるか撃墜されていく。
「さあ、僕と遊ぼうよ。長門さんとかよりこっちの方が楽だしね。」
肩の妖精さん達が弾幕を展開していく中、僕は、敵の弾幕を逃げはじめた。
ー呉鎮守府演習艦隊ー
「飛鷹、隼鷹、攻撃隊からの連絡は?」
周囲に警戒を怠ることなく前進する長門は、複縦陣の2列目にいる空母達に聞く。
「・・・それが、」
「駄目だ。此方もやられたっ!」
あまり芳しくはないようだ。
「2人とも、しっかり情報を伝えてくれ。断片的過ぎる。」
そう言って、2人を首を最小限に動かしつつ見た。
2人ともあまり良い顔はしておらず、どんどん状況が悪いのが見ただけでわかった。
「攻撃隊は、五月雨さん一人に完全に抑えられてます。」
「それに、なんとか突破できた艦載機もものの数分で片付けられました・・・。現在は五月雨だけが確認できてます。」
と、信じられないような状況を口にした。
だが、2人とも呉鎮守府では主力メンバーでもある。
こんな状況でも嘘はつかないのは充分知っている。
「・・・そうか、2人はそのまま五月雨を押さえてくれ、後の2人は我々でやる。」
「了解」「了解しました。」
2名からの返事を聞き、私は即座に艦隊に指示を出した。
「艦隊はこれより、2つに分ける! 1つは飛鷹、隼鷹並びに五十鈴の3名で五月雨を攻撃しつつ、陽動についてもらう!」
「残りのメンバーは?」
そう私の妹、陸奥が聞いてきた。
「残りは別動艦隊として2名の攻撃に入る。陽動艦隊に釣られたら一気に攻めるぞ。いいな?」
そう周りに聞いた瞬間、
「あんたねぇ、敵が何処にいるかもわかんないのに陽動と攻撃に別けるわけ? 無駄ね。」
そう、すぐ近くであの生意気で誰もを見下しているような声を聞いた。凄い勢いで首を声のした方に向ける。
そして、その声の主はあろうことか私の艤装の第3主砲の上に足をぶらぶらさせながら空を眺めている。
(いつの間にいたっ!? 電探も熟練の見張り妖精さえ積んでいたのだぞ!? 何故何も反応しなかった!?)
思わず、妖精さんを見た。が、妖精さんさえも目を見開き驚いていた。考えていることは同じだったようだ。
咄嗟に、私は裏拳を叩きつけようとおもいっきり横に振った。
だが、そのまま飛び降りるようにして回避され、
それを見届けた瞬間、
景色が
飛んだ。
「バカね。私以外にいるの・・・もう忘れたの?」
本当に呆れた声を聞いたのが私の最後の記憶だった。
ー五月雨さんー
『・・・長門さん、大破。繰り返す、長門さん大破。』
無線で大淀さんの声が聞こえた。努めて隠しているようではあったが動揺してるみたい。
まぁ、無理もないか。呉鎮守府どころか、今の第52鎮守府以外の鎮守府でもほぼ上位練度の艦娘だし。
まぁ、うちじゃあ下の中ぐらいかなぁ。
それでも僕より強いけどねー。(泣)
「さみだれー、くじほうこうよりぎょらいせっきん!
かずみっつ!」
「りょーかいっと、簡単によけれ、」
「さみだれさん、こんどはじゅうにじからきます!
かずふたつ!」
「考えたね! でもこれぐらいっ、」
丁度交差するように放たれた魚雷を見ながらタイミングよく跳んだ。
そして、滞空した状態で、艦載機に両手の10cm高角砲でどんどん撃ち落としていく。
「うーん、だいぶ片付いてきたかな?」
戦闘が始まって30分あまり。僕を足止めしている機体はもう30機もいない。
「そろそろ補給に戻るころのはずなんだけどなぁ。」
弾切れなのか射程圏外をぐるぐる回る機体がちらほら見え始めている。
その間も、攻撃が休むことはなく間髪いれずに攻撃してきた。
「はぁ、飛鷹さんの戦術かな? なかなかめんどくさい。」
近づけば遠ざかり、離れれば近づいてくる。
必ず死角から攻撃を開始し、避けにくい波状攻撃を行ってくる。
「うーん、まぁ、長門さん倒してるんじゃあ警戒もするかぁ。」
『あんたね、いつまで遊んでるのかしら?』
いきなり、通信がきた。しかも霞。
「・・・敵がずっと足止めしてくるんだから仕方ないじゃん。」
『言い訳はいいのよ。さっさときなさい。』
「え、苦戦中?」
反転し、霞達のいる方に進路を取った。
『あんたねぇ、この程度の戦力に遅れるわけないでしょ。』
じゃあ、なんで終わんないのさ・・・。そう思った僕は、悪くない。
『霞はあなたに良いところを見せたいのよ。』
新たに曙が参戦してきた。
『ばっかじゃないの!?』
『なら、各1隻ずつ3回ぐらい落とせたんじゃないの?』
『あんたね、相手にもメンツってものがあんのよ?それわかってる?』
「え? 霞ってメンツって言葉知ってたの?」
霞からとんでもない言葉がでるものだね、僕達三人だけしか演習に参加してない時点でメンツなんてないに等しいよね(笑)
『あんた、そんな事言っていいの?』
あ、ちょっと苛立ってる。霞プライド高いからすぐ怒るんだよねー。
『因みに、これあんたの査定も兼務中だから』
「はぁ!? なにそれ聞いてない!」
査定ー
それは、52鎮守府内でしか行われない艦娘の戦闘能力評価試験みたいなものだ。
査定は年に4回。
検査内容は1次と2次、3次に別れており、
1次は
実戦での単艦戦闘から各艦隊行動、並びに戦闘中における状況判断から立ち回り、指揮能力を評価する。
2次は、
内容は一次と変わらないが、演習時の評価である。
3次は、
鎮守府内での単艦戦闘、つまり順位付けの戦闘評価である。
『あんたの評価は、鎮守府内最下位なんだから少しでも悪あがきしなさい。それに、今の所2次はマイナス評価よ。』
「それ卑怯だよ! 普通査定は申告するよね! それに鎮守府最下位って3次査定だけじゃん!」
基本的に査定の評価で重要なのは3次査定のみである。
そのため、3次査定の順位で呼ばれるのが多い。
因みに、霞は1次から3次査定はすべて5位、曙は1次から3次すべて8位である、が・・・。
『はぁ・・・。あんたね、3次査定だけって言ってるけど他の査定の戦績だって最下位と変わらないでしょ?』
「・・・それでも他は最下位じゃないし。」
苦し紛れに反論したけど、実際霞の言うとおりだ。
僕の52鎮守府での戦績は、
1次はビリから2番目
2次はビリから3番目
3次は最下位で、
・・・正直、52鎮守府では最弱で、『通常戦力の足止め程度なら使える』としか言われない。だから、必ず遠征要員でしか出撃しないし、鎮守府内では雑用以外は絶対にしない。秘書艦などはもってのほかである。
そんな僕を皮肉を込めて52鎮守府の仲間はこう言う。
『そんなんだから、皆に『つかだれちゃん』なんて言われるのよ』
実戦で使える所がない五月雨ちゃん、
文字ってつかだれちゃん
と。
後編へ続く。
不定期でありながら見ていただけて本当に感謝しております。
過去編についてはまだまだ練り直し中なのでお待ち下さい。
では、次は後編です。