女オリ主による原作介入モノ(非転生、女オリ主、習作) 作:杭打折
それと、主任の声が脳内で自動再生されるのはやはり、ACVでの中の人の声が印象的だったからなのでしょうね。
「一夏!」
「凄い……代表候補生を倒すなんて」
試合終了直後、モニタールームは相変わらず賑やかだった。篠ノ之箒も山田先生も我が事のように喜び、一夏を褒めている。そんな中、二人とは対照的に私と織斑先生は無言で居る。
織斑先生はどうして無言なのかはわからない。今までの感じからしても厳し目の一言を言いそうなものだと思っていたのだから少し予想外で驚いた。
私はといえば、彼が勝利した事以上に懸念するべき事項が発生してしまったため、そちらに意識を取られていた。
最後に織斑一夏の手に握られた武器の名称と、その刀身にまとわれた蒼い光に合致する記憶があった。
「雪片」。それは初代ブリュンヒルデである織斑千冬の乗機"暮桜"の装備していた唯一の兵装。
織斑千冬の弟なのだからその願掛けや縁起を担ぐという意味での名称したのかもしれない。それならば不自然なところは無く、ありふれた光景でもある。
「零落白夜」。それは初代ブリュンヒルデである織斑千冬を第一回大会優勝へと導いた、最強の攻撃力を持った単一仕様能力。
同じ単一仕様能力が別のISで発現するなど有り得ない。唯一無二である唯一人に合わせた仕様の能力であるから、単一仕様能力なのだ。
外見上、性格上の区別が付かず遺伝上の差異が殆ど無い双子のIS操縦者という前例はあるが、発動したのは全く別の単一仕様能力だった。
理論上、全く同一の人間は存在しない。全く同一の人物であれば同一の単一仕様能力を発現させるということは可能だが、そんな事は有り得ない。如何に精巧に作ったとしても、それには必ずしも差異が生じる。
「織斑先生」
「さあな、私にも分からん」
織斑千冬ならば何か知っているのではないか、という期待は即座に返された返答によって砕かれた。
知らないのならば、これ以上に聞いたとしても有益な情報を得られないだろう。故にこの件については保留とする。
私はモニタールームの出口へと足を向ける。
「何処へ行くのだ?」
私の動向に気づいたらしい篠ノ之箒が声を掛けてくる。
「織斑一夏さんの帰還を確認しようかと」
勝者の凱旋を出迎えに行く。織斑一夏は勝ったのだ。私達は共に手を組んだ仲なのだから、彼の出迎えをする義務がある。
「なっ……私も行くぞ!」
パタパタという足音がして篠ノ之箒が私の隣に来る。身長差から歩幅にも差が出来て、移動速度の違いができてしまうのだが篠ノ之箒は私に合わせて少し速度を落とし、共に並んで歩いて行く。
「オルフィレウス」
「何ですか?」
ふと、名前を呼ばれた。篠ノ之箒は前を向いたままでこちらに視線を向けていない。なので彼女を向く必要はないと考えて前方に視線を向け続けたまま応じる。
「お前のおかげで一夏は勝てた。その点は礼を言う」
彼女から伝えられたのは感謝の言葉だった。普段はこちらへ敵意やら警戒心をぶつけてくる相手だっただけにその言葉が来るというのは予想外だったが。
「貴方が感謝をする必要はないかと。私は織斑一夏さんの注文に従ったまでです」
「む……」
私の解答を聞いて篠ノ之箒は眉をひそめ、口をムッとさせる。良好な対話を行うには素直に受けておけばいいのだろう。しかし織斑一夏からの要求に従ったまでというのは事実であり、それを結果として出したのは織斑一夏だ。だから、今回の代表決定戦の勝利における最大の功労者は織斑一夏だ。栄光や賞賛を浴びるべきは私ではなく織斑一夏なのだから、そう思う気持ちに嘘はない。
「その労いは私ではなく織斑一夏さんに向けるべきかと」
「……確かにな」
篠ノ之箒は暫くムスッとした表情のままだったが、肯定する答えを返してくる。
その後は無言、話す話題もないのだから仕方ない。私達は共に織斑一夏を見送ったピットへと向かった。
「ご苦労様でした、織斑一夏さん」
「よくやった。見直したぞ、一夏」
織斑一夏が帰還した。勝利した織斑一夏を私と篠ノ之箒で迎える。篠ノ之箒からも労いの言葉があったのに驚いたらしく、織斑一夏はしばらくキョトンとした表情で彼女を見ていたがすぐに快活そうな笑顔を向けてくる。
「サンキュー、二人共」
晴れ晴れとした口調に表情。しかし、彼を見極める上で一つ確認しておかなければならない事があった。
本来ならばこの場で言うべきではないのかもしれないが、戦った直後の感覚が抜けきっていない今だからやらなくてはならない。
「勝った気分はどうですか?」
「キャロル?」
語調が普段と違ったものになったのが自分でも分かる。自分でも気づけているのだから織斑一夏も篠ノ之箒も気づいていた。
織斑一夏は私に不思議そうに、篠ノ之箒は訝しむような視線を送ってきていた。
「格上を乗り越えていく感覚は如何でした?」
「んー……ただ、嬉しいし、もっと上を見たいって思ったな」
織斑一夏は少し考えるように腕を組んでから答える。
彼の答えは危険な発想だ。力とは強くなるに連れて加減が効かなくなる。上を目指すということはそういう加減の効かない世界に自ら足を踏み入れるという事だ。
共に滅ぶ道を狂喜しながら転がり落ちる、いずれは自らを殺す決断。
故に彼は"例外"ではない。他の人間たちと同じで正常に動き続ける一人だ。
それらを鑑みて私は現時点での決断を下す。
彼が我々の敵となる人間か否か。彼が普通の人間であるというのならば、私が出せる答えは1つだけ。
「了解しました。その望み、叶うと良いですね」
「おう、これからもよろしく頼むな」
織斑一夏は我々の敵ではない。ならば、私の彼を手助けするという任も続行となり、織斑一夏の要求に答える必要が生じる。
これからもよろしくと言われて差し出された手を握り、軽く握手。
「はい、こちらこそ」
彼とは長い付き合いになりそうだ。
セシリア・オルコットは一人ピットで佇む。
考えることは一つ、つい先程の戦いについて。
近頃の自分は漸くブルー・ティアーズの扱いにも慣れて連勝を重ねていたところで、久々に経験した敗北である。
普段の、いや今までの自分だったならばこの戦いに敗北したことでひどく荒んでいただろう。しかし、今は不思議とそういう思いはない。
「織斑、一夏……」
敗北した事の屈辱や悔しさといった負の感情が無いわけではない。しかし、それを上回る感情が己の心の大半を占めていたのだ。
織斑一夏との戦いを思い返すたびに幸福感が胸中を満たす。
次に、彼が隣に居て欲しいという思い。
織斑一夏ともっと話をしたい。
織斑一夏の事をもっと知りたい、自分のことを知ってほしい。
彼の事を思うと、優しくも苦しいなんとも言えない気持ちになる。
これが何とういう感情なのかをセシリア・オルコットは知らない。
こんな気持ちは初めてなのだ。
「知りませんわ……」
分からない。
唯一つ、わかる事があった。
「まずは無礼を詫びないといけませんわね」
織斑一夏と話すことで何らかの答えを得る事ができるだろうという事だ。
その為には、まずは自分の非礼を詫びなければいけない。
思えば自分は数多くの侮蔑の言葉を投げかけた。思い返すだけで恥ずかしくなってくる。
あの姿は、どんな理由があったにしても、自分の思う高貴な人間のするものではないだろう。
「うーん……」
謝って、許してくれるだろうか?
無性に心配になってくる。もし許してくれずに自分に関わるなというほど嫌われてしまっていたとしたら……
「大丈夫ですわよ。私らしくもない」
そう、不安になって行動をためらうなどというのは自分らしくない。自分はもっと優雅に振る舞い、堂々としているべきだろう。
それが貴族というものであり、自分が最も良いと思う姿なのだ。
背筋を伸ばして胸を張り、口元には不敵な笑みを。
弱みを見せずに自分の思う強さで身を固めていく。
「さて、行きましょうか」
これまでとは違う何かを感じながらセシリア・オルコットは一人のピットを立ち去る。
それはさながら、彼女のこれからを暗示しているようでもあった。
「ご苦労様キャロりん。業務には忠実で仕事が早い。上司の俺は鼻が高いねえ……今度ご褒美にお小遣いでも入れておくよ」
「ありがとうございます。本日、織斑一夏の初の実戦が行われました」
全て終えた後に報告事項の連絡を行う。
電話が繋がった最初の一言がこれである。通話の相手――主任は以前の宣言通りにあの呼び方で私を呼んだ。相手にすると面倒であるので、適度に流す。
「うん、その報告こっちにも来てるよー。どうやら勝っちゃったみたいだねえ、彼」
「情報がお早いようで」
「そりゃあね。ウチはそういうところだからさ」
何がおかしかったのか、そう言ってから主任は声を上げて笑っていた。暫く耳から携帯を離して耳を保護、収まったとおもわれるタイミングで戻す。
「それで、肝心の彼についてはどうだったのかな?」
私と主任の会話は本題へと移る。私はある程度の過程を伝え、それから導き出される結論を主任へと告げる。
「彼は我々の敵ではありません。警戒の必要は無いかと」
「…………」
会話が途切れ、しばしの沈黙が流れた。主任がその間に何を考えているのかは不明だが、碌でもない事だろう。
「そっかー……彼は違ったかあ。それじゃあキャロりん、もう一つのお仕事頑張ってねー」
しかし、帰ってきたのは予想に反した至極普通の言葉。いや、主任に対して使うならばこういう言葉を送ってくるということは普通では無いのだが。
「あはっ! やっぱり気付く?」
その旨を伝えてみると、やはり何らかの裏があったようだ。彼は何時もの調子に戻ると言葉を続ける。
「キャロりんと話したいって人がいるんだよねえ。ちょっと今から代わるから、少し相手してあげて」
「私にですか?」
はて、誰だろう。
企業の人間ではなさそうだ。それならば主任を通してではなく個別でコンタクトを取ってくる筈。
ならば企業外の人間か?
そうだという可能性も捨てきれないが、企業の研究室を離れて学生という制限の掛けられている身分である私に何らかの取引を持ち込む人間が居るとは考えにくい。
考える程誰かわからなくなるので私はすぐに思考を中断する。考えなくても相手が誰なのかはすぐに分かる、そう思ったからだ。
一度保留状態になった通話が、今度は件の相手へとつながる。
「もしもし」
「もしもーし」
どういう意図があってなのか、同じ言葉を少し伸びた言い方で返される。
その声に聞き覚えがあった。
それは、出来る事ならば回避したい存在で、彼女が関わると主任と同じくらいとんでもない事に私を巻き込む人物で――
「何故、貴女が?」
――我々の脅威となりうる存在だったから、そう問わずに居られなかった。
「さて何故でしょう。私が君に話をしようと思ったのは別に難しい理由はなくて、年長さんから少しだけ老婆心を働かせたありがた~いお言葉を与えてあげようかと思ってね」
私の問いははぐらかされた。会話の相手はいつものように私の事を置き去りにして独り、熱心に語り続ける。
置き去りにされた私は、内心で主任への恨みを一つ重ねながら、曰く"ありがた~いお言葉"とやらに耳を傾ける。
その意識を感じ取ったらしく、クスリと小さく笑った相手は「あのね」と歳に合わない子供っぽい声で断ってから、
「普通っていうのが、一番怖いことなんだよ」
私に、そう告げたのだった。
今回は決闘直後の簡単な話。
短いです。
内容的には謎の人物登場!?くらいの意味しか無いような気もします。
因みに、二人で映画イベントは次の次くらいを考えています。
予定としては次で祝勝会をして、その次で一緒にお出かけと考えています。
ただ、祝勝会の風景で書く内容に困ったらもしかしたら予定変更が起きるかもしれないです。