女オリ主による原作介入モノ(非転生、女オリ主、習作) 作:杭打折
普段とあんまり変わらない朝の教室である。私は昨夜あった事を考えながら織斑一夏に借りた件の映画の原作小説を流すように読んでいた。といっても、思考のリソースの大半は昨夜あったことを思い返す事に使っているので小説の内容に集中しているわけではない。手元を自由にさせておく気にならなかったから流し読んでめくっているだけである。
昨日、更識簪は事情だけ話すとやはり、「協力はいらない」と、断固として譲らなかった。彼女が今何をしようとしているのかを聞くと、どうやら彼女は日本の第三世代型ISを独力で完成させようとしているらしい。完成させるだけなら独力でなくても良いので、単独で完成させる事に何か拘りでもあるのだろうが、ただルームメイトであるという理由だけでは彼女に交渉する材料がないので、条件を付けて私は引いた。
その条件というのは「今回の代表候補戦で更識簪が出場可能な状態まで打鉄弐式を造り上げる」という物。現在の進捗状況を聞く限り無理だろうと思う。その証拠で、更識簪はこの条件を提示した時に非常に嫌そうな顔をしていた。設計と外装の大半は出来上がっているようだが、それだけでISは動かない。機体の内装をきちんと整えてやらなければ、それは博物館に飾られている骨董品と同じだ。しかもなんだかんだでこの内装というのが案外に厄介である。
内装というのは火器管制装置やアクチュエーターといった部分だけでなく、火器管制システムや敵味方認識システム、高速演算処理など幾つものプログラムも含んでいる。部品数で言えば外装と大して変わらない。
国のバックアップも無いので全て手持ちか用意するかで済ませるしかなく、別の誰かを頼ることも出来ない。
開発のためにやらなくてはならないこと。それらに掛かる時間と設けた期間とを単純計算すれば、彼女は詰んでいる事は誰にでも……本人にも分かっているだろう。何もしないで待っていれば、いずれ協力を受けざるを得ない状況になるという事だ。
「おっすキャロル。朝からなんか悪い顔してるな」
「おはようございます、一夏さん。少々考え事をしていましたので」
悪い顔という失礼な発言はスルーして、織斑一夏に対応する。彼は自分の座席に腰を下ろすと椅子を此方の方へ下げ、私の机にもたれかかるような姿勢になる。話す時はいつもこの姿勢だ。
「珍しいな、キャロルが考え事だなんて」
「そうでもありませんよ」
「そうなのか」
「そうなんです」
私はたいていの時間で考え事をしていると思うのだが、まあ彼にはそう見えていたという事だろう。
「ああそうだ。一夏さん、二組に転入生があったようですね」
「そうなのか? こんな時期にだなんて珍しいな……」
「何か、所属国の事情でもあるのではないでしょうか?」
情報は少ないため断定はできないのだが、その転入生は恐らく一般生徒ではない。
IS学園の入試における倍率は5倍ないし7倍だと言われているくらいに入学希望者は多い。それだけの人数が集まるのだから生徒数に編入を可能とするだけの余裕はない。IS学園の所持する訓練機の数の制限などといった事情からこの枠は絶対数であり、上下する事は決してない。
だが、それは一般生徒に限った話だ。IS学園に入学する生徒の受け入れ枠には二つの、一般枠と国家枠の二種類がある。国家枠はIS委員会に所属している国ならば一年に幾つか設けられている枠のことだ。国家の代表候補生や高い成績を残した者であるなど、いくつかは制限があるのだが、枠が空いている状況なら如何なる時期でも編入試験を受けさせる事が可能ではある。
事情に関しては、わざわざ言及する必要もあるまい。当の本人はそんな事、考えても居ないようだが。
「ふーん……二組って一回戦の相手だよな。代表候補戦でも何か影響はあるのかねえ」
「それについては様子を見る他無いでしょう。私の方でも情報を集めますが……」
―――――――バンッ!!
私が言葉を切ると殆ど同時に、織斑一夏は振り向く。何かを感じ取ったわけではなく、単に教室の扉がすごい音を立てて開いたからである。
扉の開いた先には一人の女子生徒。学園の改造制服を纏っている、アジア系の顔つきで茶髪をツインテールにしている。リボンの色は一年生。しかし見覚えがない事から、彼女が件の転入生であると推測する。
浴びせられる視線も気にせず、彼女はキョロキョロと教室内を見回し始めた。そして目的の人物を見つけたのか、視線が一箇所に固定される。その先に居たのは予想はしていたが、やはり織斑一夏だった。
「久しぶりね、一夏!」
件の転校生は両手を腰を当てて胸を張り、未成熟さが特徴とも言える体型を誇示するようにしながら、満面の笑みでそう言った。
場面変わって昼休みの学食にて。私は凰鈴音と織斑一夏が話をしているのの隣の席で、彼女についてのデータを得られる限りで収集していた。
「何なんだあいつは……」
「話を聞く限りでは幼馴染のようですわね……」
同じ席に何やら不審な態度を取るクラスメート二人が居るが、私は努めて意識の外に追いやることにする。
「………………」
凰鈴音。中学時代に一時期とはいえ織斑一夏と同じ学校に通っていたらしい。つまり、以前訪ねた五反田弾とも交流があったということだろう。ただ、本国に帰国した以降は彼との交流は途絶えてしまったらしい。
「一夏め……あんなに楽しそうに話しおって……!」
「幼馴染だなんて、ルール違反ですわ……!」
「………………」
現在の彼女は中国の国家代表候補生。国内大会で優秀な成績を修めるなどして同国の次期主力機である第三世代型甲龍を専用機として与えられている。帰国して僅か一年足らずの内に国家代表候補生に選抜され、更に専用機も与えられるというのは並大抵のことではない。彼女は天才という部類の人間なのかもしれない。
「あいつ、私と再会した時はあんな顔しなかったぞ……!」
「私だって、まだ見せてもらってませんのに……」
まあ、天才程度はこの世界に沢山いるのだ。別に何のことはない。重要視すべきは彼女が二組のクラス代表になったということだろう。
彼女は転入と同時にクラス代表だったジャンナ・ゴールディングに挑戦状を叩きつけて完封勝利し、代表の座を奪ったと聞く。つまり、並のクラス代表相手ならはるかに上回るレベルの実力の持ち主だということだ。
しかも彼女の扱う機体「甲龍」は安定性と効率を重視して設計された機体だ。あらゆる状況に一定の数値を出すことの出来る機体であるから、元クラス代表の人物とは取ってくる戦術も違うだろう。固有武装である衝撃砲も厄介で、威力は大したことがない代わりに視認不可能かつ理論上射角は無限。ISのハイパーセンサーと組み合わせれば死角は無い。
「だ、だが……女性的魅力だったら私の方が……」
「そ、そうですわね……私の方が発育いいですし……」
「そこの二人、聞こえてるわよ!」
甲龍はどちらかといえば万能型の機体に入るのだろう。誰にでも使いやすく、だからこそ使用者の実力が発揮される機体。
「な、何だ貴様! 一夏と話していると思ったらいきなりこっちに来て!」
「そうですわ! 幼馴染で久しぶりの再会だから我慢していたというのに……でしたら、わたくしが一夏さんと」
「「ちょっと待て」」
「離してくださいまし!」
「抜け駆けは許さんぞ、セシリアッ!」
「そーよ! さっきまで私と話してたんだし、まだ話の途中なんだからずっと待ってなさい」
「…………」
流石にこれ以上騒がしくなってくるのは無視が出来ないので席を立ち上がる。私の周囲では篠ノ之箒、セシリア・オルコット、凰鈴音の三人が何やら揉めていた。
それはどうやら織斑一夏をめぐる内容のようだが、私はあまり興味がなかったので教室に戻ろうかと思ってコーヒーのカップを返しに行こうとする。
「なんだ、キャロルはもう帰るのか?」
「はい。たまたま彼女らに付いてきたようなものなので……食事は済ませましたから、此処に残る理由もないのです」
学食に来たのは昼食を済ませるためであり、別段他になにか理由があったというわけではない。食事を済ませた以上、篠ノ之箒とセシリア・オルコットと一緒に学食に居続ける必要も無い。
その旨を伝えると納得したように「ああ、成程」と呟いて、織斑一夏は座っていたテーブル席から立ち上がった。それに、揉めている三人は気付いていない。
「止めなくて良いのですか?」
織斑一夏に問いかける。今や結構な大音量で繰り広げられている三人の言い合いが周囲に与える影響を考えたのだが――――
「帰るか」
「了解しました」
織斑一夏は、三人の様子を横目で一瞥して諦めたようだ。あの中に自分から入っていこうだなんて思う輩は居ないだろう。私も御免被る。
話の中心人物である織斑一夏が離れたことが気づかれたらまた面倒なことになりそうなので、彼にはなるべく静かに行動させる。
身を屈めて抜き足差し足で学食を後にする織斑一夏と私。怪しさを周囲に振りまきながらも、互いにしか意識の向いていない三人の目がこちらを向くことはなかった。
学食から脱け出した私達は互いに見合わせて、無事を確認してから教室へ戻る。
「そういや、キャロルはなんでクラス代表にならなかったんだ?」
教室に戻る途中で織斑一夏から聞かれる。質問の意図を測りかねている私に、織斑一夏は言葉を続ける。
「前の訓練の時に思ったけどキャロルって、一組で一番強いんじゃないのか?」
「ああ、そういうことでしたか……」
織斑一夏は疑問に思っているのだろう。何故、専用機持ちである私がクラス代表に名乗りを挙げなかったのかと。
自薦せずセシリア・オルコットを推薦したことに明確な事情は無い。ただ、私の場合はクラス代表に立候補する理由もないから、そうしたに過ぎない。
だが、実際にセシリア・オルコットや織斑一夏を相手にしても勝つことは出来るだろうと思ってはいる。織斑先生は分からないが、日本代表候補だったという山田先生にも負けるつもりはない。
「単純に、私に代表という立場は向いてないというだけですよ」
私がこの学園に来たのは、ブラックバードのデータ収集や自己の技術向上のためということではない。学園に通うには真っ当とはいえないような理由だ。
故に、そんな理由で学園に来ている私がそのような立場に立つことは好ましくないと思っている。表舞台に立つよりも裏方に徹する方が性分に合うという事もそう思っている要因の一つではあるが。
「んー……だけど、実力的にはキャロルが上だろ?」
しかし、織斑一夏は私の解答には納得していない模様。いずれにしても今は織斑一夏がクラス代表、それは変わらない。私がクラス代表になるのはどこか別の可能性の話であり、それを論じた所で得るものは無い。何が言いたいのかというと、そんな話をしても無駄ということ。
「一夏さんは私を超えられないと思ってるわけですね?」
なので、自分にとって出来る限りの意地の悪い表情を心がけながら織斑一夏に問う。煽り立てるような発言をしたのは彼の負けず嫌いな性格を利用して追求をかわそうという目的がある。
「キャロル、似合わないことはするもんじゃないぞ」
「…………」
確実に彼は乗ってくると思ったのだが、予想に反して彼は苦笑混じりの表情で私の頭をぐりぐりと撫でてくる。硬い手の平が頭の上を行き来する感触を感じる。痛いとか不快な気分はないのだが、彼は人の目を気にするつもりがないのだろうかと、通行人の視線を浴びながら考える。
織斑一夏に頭を撫でるのを止めろと視線を送ると意図が伝わったらしく、彼は頭から手を離してから話を戻す。
「別にお前を超えられないと思ってる訳じゃなくて、キャロルに無理強いしてないのかと気になったりしたわけだ。俺の訓練も最初は一週間だけの約束だったのに、無期限延長しちまったし」
「そこに関しては問題ありません。三年間IS学園に籍を置く予定ですので」
彼の手助けをすることが私に割り当てられた役目なのだから、それに関して彼が気にする必要はない。
「だが、俺からキャロルに何か恩を返してやれる訳でもない」
「私の方は気にしませんが……私も人に何かを教える経験を積めていますから」
対価についてなら尚更である。
私が以前に済ませた損得勘定でも、行動を共にすることで得られる織斑一夏のデータや経験というのは企業では得られない貴重なものだという結論が出ている。実用性があるかは別として、貴重なのだから積んでおいて損はない。
それに、人にものを教えるというのもやってみると中々どうして悪くないものだ。織斑一夏自身も物覚えが良い方であるから、教えている側としてもやり甲斐は感じている。
「タダほど怖いものは無いって言うだろ?」
「私に関しての話なら、その懸念は不要かと」
何か裏があるのかと気になったかということだろうか。裏の目的は既に過去形になっているので現時点から見ればノーだ。彼が例外であったなら別だったが、今までの事から普通の人間という判断を下している。今の私には裏といえるような目論見はない。
そこまで話が進むと織斑一夏は肩を竦め、降伏するように苦笑した。
「それじゃあこれからも頼らせてもらうか。あんまり女に頼りすぎるのは男として情けない気もするけどな」
「そうしてくださって構いません。男女平等というやつですよ」
「女尊男卑が世の主流じゃなかったか?」
まあ、そうなのだが……フォローのつもりで言ったのに無駄にされたので、少し咎めるような視線を送ってみると苦笑をする。
「では、私に跪いてみますか?」
「セシリアみたいな言い方は止めてくれ」
「了解しました」
仕返しにと、数分前まで同席していたクラスメートを真似た発言は不評であった。自分でも無いと感じていたので好評だった場合はどうしようかと思っていたが。
ふとそこで、先程から周囲より感じていた視線が殆ど無くなっていることに気付く。もしやと思って時計を確認するが、始業時間が近くなったというわけではなかった。
「妙に静かだな?」
「今日は行事など無かったはずですが……珍しいですが、こういうこともあるのでしょう」
別段おかしな気配を感じたわけでもなかったので私は気のせいだと言って教室へと向かう。織斑一夏も不思議そうな表情をしていたが、私と同じ結論に達したのかすぐに追いついてくる。
「次の授業はなんだっけ?」
「一般教養の数学です」
IS学園は何も、軍事訓練のような事をするばかりではない。数学や語学などの一般教養もカリキュラムには含まれている。必修科目より選択科目の方が多いが、数学は数少ない履修科目の一つだ。
「……キャロル」
「なんでしょう?」
暫く沈黙。何か重要なことを思い返しているらしいが、その表情は時間に比例して少しずつ悪くなっていく。
「テストって何時だっけ?」
「小テストのようなものは近々行うと聞きましたが」
織斑一夏の足が止まる。一歩先行した所で私も止まり、振り向くと彼は真剣な表情になっている彼の瞳を見つめる。織斑一夏の瞳は、訓練の最中でも見たことが無いほどの焦りを含んでいる。更によく見ると、うっすらと冷や汗も流していた。
「……キャロル、数学は得意か?」
「平均以上には」
「キャロル、今度一緒に勉強しないか?」
織斑一夏が掛けてきた誘いの言葉に少しの違和感を感じ、私は視線を下に向けて考える。
先ほどの会話の流れ、苦手同士ならば自然な流れだろう。しかし、私は得意かという問いを肯定したにもかかわらず一緒に勉強をと誘ってきた。それはつまり―――
「自信がないから教えて欲しいという事ですか?」
「そうとも言うが……いや、別に今まで数学とかの復習を忘れてたわけじゃないからな。ただ、少し忙しかったから手をつける暇がなかったというだけであってだな…………」
あれよあれよという間に真実を暴露していく織斑一夏の口は本人と違って正直者らしい。あの世で閻魔なるものに出会っても、彼なら舌を抜かれる事はないだろう。
「――――話をまとめると、勉強を教えて欲しいと言うわけですか?」
「そうなります」
長くなりそうだったので途中で割り込む。織斑一夏は観念したように頭をがっくりと下げ、肯定。
「……女に頼りすぎるのは男として情けないと、誰かが言ってたように記憶しているのですが」
「あれだ、男女平等ってやつだ」
「まあ良いでしょう。空いてる時間にでも呼んでください」
確かに私もそう言ったが……彼は自分で言ったことを撤回するのは別に構わないだろうか。
もやもやとしている納得行かない気持ちになりながらも、強く拒む理由のない私は彼からの要求を承諾する。
「助かった……下手したら千冬姉に拳骨食らうからな」
「出席簿ではなく、ですか?」
織斑一夏は安堵したように溜息を吐く。成績が下がったら確かに織斑先生は何か言ってくるような気がしなくもない。
「それは学校でだけな。家とかだと拳骨、頭上にこう――ゴツンッてな?」
ジェスチャーを交えながら説明すると、その痛みを思い出したように苦い表情を浮かべる。どうやら、織斑先生ではなく織斑千冬の話だったらしい。
「良い保護者なのですね、彼女は」
「おう。千冬姉は俺の憧れだからな」
織斑一夏にとっての織斑千冬は彼にとっての理想の一つなのだろう。彼等のように強固な信頼で繋がれた者同士の関係を家族というのだろう。私の内には存在しないものだ。
――――家族。
キャロル・オルフィレウスという個人を構成するにあたって不要な要素だったという考えに変わりはないが、こうして見ると悪くないものであると感じれる。
「まあ、そんな身内がいる以上は恥ずかしい姿は見せたくないって思ってるんだよ」
誰に見せるのか……とは言わずともしれたことだ。もちろん周囲の期待もあるのだろうが、織斑一夏の本音はどうやらそこらしい。
時折、ミーハーだと感じるクラスメート達とはベクトルが逆の、織斑千冬への憧れの抱き方だった。
「そろそろ時間です」
「ん、そうだな」
会話は一区切りがつくと、話している内にそれなりの時間が経っている事を告げる。
どちらともなく歩みを再開すると、もう片方がそれに続いた。
教室へ続く一本道の廊下を歩く途中で――
「そうだ。言い忘れたけど、キャロルも俺の憧れだからな」
憧れだと言われるのは、私の予想の中に微塵も存在しない出来事だった。
そもそも、私の何処に憧れる要素があるのだろうか? 聞いてみたい衝動に駆られるが、何故かそれは心情的に憚られた。
「恐れ入ります」
詳しくは聞かないことにした私は、お世辞だろうという結論を自己に与える事で一応の着地点を見つける。
やはり、毒されているという事なのだろう。一週間前までなら即座に世辞だという判断を下せたのにと、誰も聞いていない言い訳を内心で繰り出しながら私は歩幅を彼に合わせる。
教室までの距離は、いつもよりも長く感じられた。
学食から教室までの一本道ということは、つまり彼女らも見ていたということである。
キャロルと一夏は終始それに気付くことは無かったが、事実としてあの三人も今の様子を見ていた。
「な、何なのよあの雰囲気……セシリア、あんた達が連れてきたんじゃないの?」
「完ッ全に失策でしたわ……まさかあの状況から一人で掻っ攫っていくなんて……反則どころの話ではありませんわ!」
小声ながらも叫ぶように目の前を歩いている一夏とキャロルを出歯亀するセシリアと鈴音の姿に、篠ノ之箒は何をやっているのだろうかと妙に冷め始めた自分を感じていた。
「お、幼馴染のこの私を放置して新しい女に走るなんて……」
それならば自分のほうが色々物申したい気分ではある。そう、物申したい気分なのだが今の篠ノ之箒にはそれを為すために必要な勢いが完全に消失してしまっていた。
一気に老いてしまったような気分になりながら、目の前の二人の背を眺める事しか出来ない。1mも離れずに行われている筈の転入生とセシリアによる漫才じみたやりとりも、遠くでやっているように感じられた。
「はあ……」
「どうしましたの、箒さん?」
思わず漏らした盛大なため息に反応したセシリアが心配そうに声を掛けてくるが、彼女に言葉を返すことさえ億劫だった。
「セシリア……今日は早退すると、先生に伝えておいてくれ」
「箒さん……?」
重い口を動かして何とかして言葉を吐き出すと、セシリアの返答を待たずに駆け足でその場を立ち去る。
今は、とにかく一人になりたい気分だった。
鈴回と見せかけての、横からキャロルが全てをかっさらっていく回。
セシリアとか鈴音をメインにした話も書いてみたいと思うけど、キャロル視点で話が進んでいる今は難しそう。出来るとしたら2巻の内容からだろうなあ。
簪はまだ関わるためのフラグ立て。いくら拒絶しても、狙いを定めたキャロルは逃がさない恐怖。
もっぴー? もっぴーにはやってもらう事がもう決まってるので下手に動かせないという状況だったり。ぞんざいな扱いのままで終わらせるつもりはないのですが。
最近の悩みは、キャロルが強すぎる事だったりします。
誤字脱字は即時修正しますので、あった時は教えてもらえると幸いです。