女オリ主による原作介入モノ(非転生、女オリ主、習作) 作:杭打折
代表戦当日は2,3話ほど後になります。
打鉄の近接ブレード[葵]と青白い光を放つレーザーブレードが互いの刃を喰らいあう。ISのパワーアシストも受けたそれはあらゆる装甲を両断するのに十分なほどの威力を持っていたが、互いが同等の力を持つため拮抗状態にもつれこむ。だが、互いが同等であるがために、その拮抗はすぐに打ち切られた。
レーザーブレードはその刃を発生させることにエネルギーを使い続ける。白式の零落白夜のようにシールドエネルギーを削るまでの量は必要とはしないが、常にコアより供給されるエネルギーの一部を削るため行動に制限がかかる。反して、実体剣は刃を形成するのにエネルギーを消費しない。どんな使い方をしても当たれば切れるレーザーブレードとエネルギーを気にせず使用出来る実体ブレード。削り合いにおいてどちらが有利か、わざわざ言う必要もないだろう。故に、私は後退を選択。PICを制御、力を込めて押しこむと拮抗状態を保つべく篠ノ之箒も力を加えてくる。この反発の力が加わってきた瞬間にPICを制御し前方へ向けていたベクトルを反転、距離を離す為に利用する。
後退しながら篠ノ之箒に牽制射撃。鳩尾、肩、眉間を狙って放ったそれらは全て弾かれるが対手の動きを止めるという最優先の目標は成し遂げた。
「逃がさん!」
吼える篠ノ之箒は自らの得意距離で戦い続けようと前進。しかし、これだけ離れてしまえば打鉄では追いつくことは機体の性能的に不可能。なので[焔備]などのアサルトライフルを展開すればいいと思うのだが、彼女は頑なにブレードに拘って一直線に距離を詰めようとするのみである。何か譲れないものでも有るのか、彼女の考えていることは私には分からないのではっきりしないが、共に訓練をするというのなら、格闘と射撃の決定的な違いについて教えなくてはならないだろう。
「手元のガードが甘い」
「ッ――――!!」
狙いを定めて一発、篠ノ之箒の手元にライフルの弾丸を打ち込む。シールドと装甲に阻まれるが衝撃は到達し、彼女の動きが鈍る。その綻びを見逃さず、ブレードを握り締める彼女の右手にライフルの狙いを定めた。引き金を引くと同時に乾いた発砲音、続いて硬いもの同士がぶつかり合う金属質な甲高い音。彼女の手からブレードが弾かれる。
「武装は排除しました。アサルトライフル[焔備]の展開を推奨します」
取り落としたブレードを取りに行こうとする篠ノ之箒に銃口を向けてその動きを制する。動けば撃つという意思を言葉に端に込めながら。
「……………」
篠ノ之箒は手元を押さえたまま数秒間動きを止めて考えこんでいた。アサルトライフルを手にとって戦うか、ブレードを取ってキャロルからの迎撃を受けるか。
彼女の選択は――――
「お疲れ様でした。篠ノ之箒さん」
「ああ……」
シールドエネルギーが0となり待機状態へと移行した打鉄の前に降り立ち、篠ノ之箒に声を掛けた。いつものようにムスッとした表情を浮かべている篠ノ之箒は私に短い言葉を返すと、地面に膝を付いた姿勢の打鉄から降りる。
結局、彼女はアサルトライフルを選択することはなかった。[葵]を取りに行くために加速する素振りを見せた所で私が撃ち落としたという流れだ。私の目論見は外れるという結果に終わったが、それについて何かを言うというつもりはない。今までの反応からして言った所で何かが変わるとは思えないというのもあるが、経験を重ねれば何とか出来るかもしれないという観測からだ。
「視界を広く持ってください。貴女は視界外からの攻撃や行動に対する反応が鈍いという特徴があります」
「む……気をつける」
受け入れられたのだろうか。指摘に対しての反応が何とも言いがたい物だった為、判断しかねるが次に訓練を行った時には判るだろう。篠ノ之箒は膝を付いている打鉄に寄りかかりながら腕を組んで何事かを考え始めた。それに近寄り難い雰囲気を感じると私は視線をもう一方の組へと移す。
蒼と白が空中でダンスをしていた。正確に言えばセシリア・オルコットが織斑一夏の雪片弐型を寸前で見切って躱し、織斑一夏はそこに追い打ちを掛けるが躱されるというのが続いている状況だった。何故あのような訓練内容になっているかというと、単純に織斑一夏の剣筋が読みやすいものだったからだ。彼の得物が長物だというのも影響しているのだろうが、一番の理由は彼の経験が足りないということだ。白式の武装ははブレードのみ。攻撃するには接近せねばならず、接近したとしても当てられなければ意味が無い。つまり、どうやって自分の攻撃を当てるかを考える必要がある。必要なのは経験とそれによって培われる勘だ。
彼の相手をしているセシリア・オルコットは優秀な人物だ。代表決定戦で織斑一夏に敗北はしたが、それは私が彼女の油断していたというのと、織斑一夏が予想以上の才能を持っていたというところが大きい。織斑一夏に仕込んだ技も威力こそ凄まじいが、相手が初見でなければ単体運用は難しい。一芸を極めたとしても基礎的な部分で劣ってしまっては意味が無いのだ。
「一夏の奴は何をやっているのだ……」
ブルーティアーズが白式の攻撃を回避し続けるという訓練風景を眺めていると篠ノ之箒が背後から届く。振り向くと、篠ノ之箒は織斑一夏とセシリア・オルコットの訓練風景を睨みつけるように眺めている。
「あれでは避けられるだけであろうが、全く……」
セシリア・オルコットがひらりと舞うように雪片弐型をかわしたところで篠ノ之箒は苛立ちを隠す様子もなく言葉を漏らしている。そういえば彼女は剣術の腕前は高いのだったなと思い出す。
「彼の何が悪かったか解りますか?」
「空中と地上で剣の使い方が違うのは知っているがな、それでも斬るという一点についてなら私の専門だ。分からない筈がなかろう」
「では、説明をしてみてください」
「ああ……こうやってヒュンッと振るのに一夏のやつはブンッと振っているからな。あんなのでは当たるものも当たらん」
「個性的な解説ありがとうございました」
「分かりやすかっただろう?」
「とても、わかりにくかったです」
何故だ!?と叫んで愕然としている彼女を放置して視線を上空へと戻す。篠ノ之箒の説明を聞いて、彼女とペアを組ませなくてよかったかと自分の判断を心の中で評価する。理解力に関しては多少の自信がある私も理解できなかった。織斑一夏もきっと理解できないだろう。
「工夫がありません。敵が斬り合いに応じてくれたとしても読み負ける。だから、セシリア・オルコットさんは彼に剣を当てれるようになる訓練をしているのでしょう」
「……釈然としないな。お前ならセシリアと同じ事が出来るだろうに、何故自分でやらないのだ?」
「個人的な事情です」
「個人的な、か……お前は一夏を最優先だと思っていたのだがな」
彼女の言う通り、織斑一夏が最優先事項ではある事に変わりはない。しかし、彼は私が訓練でつきっきりにならなくてもいいくらいに成長しているのだ。研究者が本職の私と代表候補生というISに関して言えば専門分野のセシリア・オルコット。互いの戦い方こそ真逆でも、IS同士の戦闘や競技での戦いの経験が豊富な彼女のほうが教えるのには適任と言える。
「そうか……だが、あいつはお前を頼ると思うぞ。妬ましい事だがな、ISの事に関してあいつはオルフィレウスのことをかなり信頼している」
「光栄ですね」
頼られているという実感はある。篠ノ之箒が言ったように、織斑一夏が困ったときは私の所に来るというのも容易に想像できる。
だが、彼には経験を積んでもらいたいのだ。特定の人物以外からの教えを受けるのは、様々な局面に対応できる柔軟性を備えることに繋がる。柔軟性は即応性に発展し、彼の可能性を大いに広げてくれるはずだ。
「彼には色々と知って貰いたいのです。それが役に立たないとしても、知ることは彼にとって有益なはずですから」
「相変わらず、何が目的なのか分からん奴だ……」
篠ノ之箒からは、それ以上の言葉は返されなかった。ならばと私も口を閉じたため、周囲は上空で行われる訓練の音だけが響く空間となる。
会話は無い。こうしている方が自然だと、そういうように互いに思うがままの姿勢で織斑一夏の行なっている訓練を見上げていた。
『ふーん……代表戦、もうすぐだったっけ?』
「はい。現在は彼の仕上げに入っているところです」
定期的に行う主任との連絡で、珍しく彼の方から学園の状況などを聞いてきた。私が尋ねられた点について端的に答えていると、彼はクラス代表戦について尋ねてきた。彼は学園に見に来ないのだし興味ないと思っていたため少しだけ意外だった。やはり、彼も世界で唯一の男性操縦者については興味があるという事なのだろうか。
「相手は中国の国家代表候補生になるかと」
『ふーん、中国の……実力的には結構あるみたいだねえ。キャロりん的には勝てると思う?』
面白がるような、からかうような口調で彼は問いかけてきた。その問を受けて私の中で不快という感情が僅かに首をもたげた。だが、それを表に出せばまた彼を喜ばせる結果にしかならないのを経験上で把握しているため、言葉に滲み出そうになる感情を圧殺して返答する。
「無論、勝ってもらわなければなりません。その為に私は尽力しているのですから」
『あははっ! そう答えてくれると思ってたよ、キャロりん』
「用件は以上でしょうか?」
分かっているのならば聞かなくても良いだろうに。主任の笑い声を聞きながら相も変わらず理解出来ない彼の行動にそう考えながら終わらせてもいいかと尋ねる。
『ああ、ちょっと待って。キャロりんに伝えておきたいことがあったんだ』
通話を終了させるボタンに伸びかけていた親指を元の位置に戻す。
「伝えておきたいことですか。何です?」
『当日、何かあった場合はキャロりんは好きに動いちゃって良いから』
「……どういう意味です?」
少なくとも、不穏な色を帯びている彼の発言に自然と声音が低くなる。それではまるで、当日に何かが起こるからと宣言しているようではないか。
『別に深い意味は無いかなあ。砕けた言い方をすれば、いざという時は現場の判断に任せるって事』
「つまり、今まで通りと」
『そういうこと。だからキャロりんはいつも通りでいいけど、一応ね』
「了解しました。では、これで」
『はいはい、身体には気をつけてねー』
こんどこそ通話を切断し、主任との連絡を終える。それから、連絡に使った携帯をしまって先程の彼の発言について考えをまとめる。
彼の言う通り、深い意味は無いのかもしれない。何かあった時、当事者や現場に居る人物の判断を優先するのはいつものことであるし、主任はやり方についても細かく指示を出してくるタイプの上司ではない。彼がそういうタイプであると私が分かっている事は主任も知っているはずで、改めて確認するべきことでもない。ならば、たどり着ける結論は一つだった。
「人を試してるのか遊んでいるのか、いつになっても面倒な上司ですね」
独りごちてから黒の腕時計に指を這わせ、その冷たい感触を確かめる。あらゆる手段というのなら、ブラックバードの使用も想定しておく必要があるだろう。彼の言う"何か"がどのような事態を示しているのかは不明だが、ろくな事では無いと予想できる。
視線を下ろして待機形態のブラックバードを眺める。物を言わぬ機械だが信頼出来る自分のパートナーで、設計から自分で行った私にとっては子供と言ってもいい存在だ。未完成であっても現時点で世界最高峰の性能だと胸を張って誇ることが出来る。製作者としての贔屓目を抜きにしてもその結論は変わらない。
「では、またよろしくお願いします」
信頼と期待。そして、ブラックバードに恥じぬ己であるという自負を込めて語りかける。ISにあるという意識がどのように考えているのかは分からないが、ブラックバードは応えてくれると信じているから不安はない。
何が起きても大丈夫だろう。確信以上の感情を胸に抱いて私は思考を現実に引き戻す。
「お待たせしました、凰鈴音さん」
「長いわよ、キャロル。あとその呼び方は何か落ち着かないから止めて、鈴でいいわ」
先程、電話をした場所から少し歩いて私は待たせていた凰鈴音へと声を掛ける。彼女が此処に居る理由は別に難しいものではない。私が主任との連絡を取るために部屋を一人になれる場所を探していたら、その途中で彼女と出会った。話があるというのでそれに応じたわけだが、どういった用件なのかはまだ聞いていない。
「凰鈴音さんは、私にどのような話があるというのです?」
「って、呼び方変わってないし……まあ、別にいいけど。あんた、一夏とはどういう関係なのかを聞きたくてね?」
彼女の用件とは、私と織斑一夏との関係を聞くことらしい。……はて、それが彼女に何の関係があるのだろうか。私は不可解な彼女の用件に内心で首を傾げながらも最低限の内容で答える。
「友人です。後は彼の自主訓練などを管理するという約束の元で結ばれた協力関係といったところでしょうか」
「ふーん……」
疑うように、というか全く信じていない目を彼女は向けてくる。嘘は全く言っていないし、これが私と織斑一夏が互いに対して抱いている共通の認識だと言える。だから凰鈴音が私の言葉を嘘であると疑っているのなら、それは完全な見当違いでしかないのだが、それを理解させるのには少し苦労しそうである。
「なんか、わたしのクラスではあんたと一夏はデートするくらいに仲が進展しているとかいう噂があるんだけど?」
「デートより外出という表現が適切かと。私達は映画を観に行っただけですから」
「いや、それってデートじゃないの?」
映画を見て、昼食を摂り、少し彼の家に邪魔をした。普通に友人同士でならばある事ではないのだろうか。その日に行った場所と行動を思い返してそう思う。あの日の外出は楽しかったが、そこに恋愛感情のようなものはない――――むしろ、お互いに考えてすらいなかっただろう。
「その点について、貴女にお答えする義務はないかと」
だが、楽しいと思ったのも私の感情だ。当事者同士である私と織斑一夏の間で共有することは当たり前だろうが、他人に対して公言するようなことではあるまい。それに、そこまで聞けばきっと彼女は根掘り葉掘り聞いてこようとするに違いない。適当な所で返答を拒むほうがそれ以上の追求を避けるのには向いているというのが最近の経験で分かった事だった。
「いい度胸ね。……いいわ、あんたには絶対に負けないから!!」
今回もその経験則は生きたのだが、何か妙なライバル意識のようなものを抱かれてしまったかもしれない。凰鈴音は瞳の中で炎を立ち上らせながらビシっと人差し指をさし、私にそう言ってきた。
「相手を間違えて貰っては困ります。我々一年一組の代表は一夏さんであり、貴女の戦う相手は彼です」
「つまり、一夏に勝てばあんたにも勝ったって事になるんでしょ? だったら変わらないじゃない」
「間違ってはいませんが……まあ、そう考えてもらって構いません」
確かにそういう考え方もできるが、かなり乱暴な理論である。こういう性格なのだろうと、なんとなく凰鈴音の人となりを把握しながら彼女の理論に対し口出ししなくてもいいかと判断して肯定の意を返す。凰鈴音は得意げに「でしょう?」といって何処か弾んだような雰囲気で居る。
「ですが、一夏さんは強いですから貴女には負けませんよ」
「大丈夫よ。私はもっと強いから」
そして私は彼女の自分の勝利を確定したものだと考えているようなその笑顔が気に入らず、似合いもしない対抗心を燃やしながらそう言っていた。しかし、凰鈴音は意に介さずと言った様子でそう返してくる。
「そうですか」
彼女は自分の能力に対して絶対の自信を持っているらしい。彼が初心者であるという油断や国家代表候補生という立場からくる奢りもあるのだろうが、一番は自分自身への自信だと言う事が感じ取れる。そして、彼女のその感情が、ブラックバードに対して抱いている私の思いと同質の物だということに気づくのに時間はかからなかった。
この思いは、今までに私が開発したものや手がけたもの全てに対して、共通して抱いているものだ。 故、織斑一夏に対しても同様の感情を私は抱いている。彼の力を信頼しているし、彼はそれに応えてくれる存在だと確信している。現に彼は代表決定戦で勝利を収めるという最高の結果を見せてくれた。今回も同様であると私は信じている。
後、友人としても個人的に彼に勝ってもらいたいと思っている。
「では、より念入りに彼の訓練を見ることにしましょう」
「応援してるわよ。せめて一夏が私に一発でも当てれるくらいには頑張ってもらわないとね」
相変わらずの態度を取る凰鈴音と私の間で視線が交錯する。ここまで来れば織斑一夏には本当に勝ってもらわなければならない。彼の居ない所で敵対心を燃やしている事に少しだけ恥じるような気持ちがふと胸をよぎるがすぐに気にならなくなった。今の私にとって一番大事なのは織斑一夏が勝利することであり、その為の努力を行う事だから。
「御健闘をお祈りします。それでは」
「それはこっちの台詞」
凰鈴音は私の肩をポンと叩いてその場を後にする。私は振り向かずに端末を操作して学園のネットワークへとアクセス。織斑一夏にメールを送る。
――絶対に勝ちましょう。
手早く要点だけを纏めた私のメールで、また脈絡なく送ったものだったが返信はすぐに返ってきた。先程タイトルを省いたため、件名はRe:というとても短いもので、本文もそれに負けないくらい短かった。
――おう、任せとけ。
10文字にも満たない本文を読んで画面をすぐに閉じる。 それから間を開けずに自分がやるべきことをまとめていく。
どうやら、今夜は眠れそうにない。
一ヶ月以上の停滞。どうやらステイシスしていたようです。
と、冗談はさておき代表戦当日はあと2か3話挟んでからを予定しています。
これからもこの二次創作をよろしくお願いします。
誤字脱字など、修正したほうがいいという部分や感想をお待ちしております。