女オリ主による原作介入モノ(非転生、女オリ主、習作)   作:杭打折

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一章5

「朝ですか……」

 

 気づいた頃には日が昇り、カーテン越しの光が室内を照らしていた。徹夜をしてしまったことになるが、作業は完了したので問題なしとする。

 休まずに画面を見つめつづけた事で疲れを感じ目元を揉みほぐす。椅子の背もたれに寄りかかって睡眠代わりに目を閉じていると後方で動く気配を感じた。

 どうやら更識簪が目を覚ましたらしい。時刻を見ると午前四時。時間的には学生寮の玄関の施錠が解かれる時間で、普段の私よりも一時間ほど早い。起きた時には居ない時が多いのはこの時間に出ていたかららしい。

 

「……今日は早いのね」

 

 もぞもぞと動く音がしてから更識簪がカーテンから顔をのぞかせる。私が彼女よりも早く、しかも着替を済ませた状態でいる事に少し驚いているような表情だ。

 

「ええ。そちらはよく寝れましたか?」

「まあまあ、かしら……」

 

 彼女は私を早起きしたと思っているらしく、徹夜していた事には気づかなかったらしい。私の作業が彼女の睡眠妨害となっていたら申し訳がなかったので少し安心する。更識簪はベッドから出ると、寝間着から学生服へと着替え始める。他人の着替を眺めるというのも不躾なものだし、そういう趣味はないので視線を外してメールボックスに送られてきている電子新聞を開く。

 幾つかの記事を流し読みしていると欧州各地で散発的に発生している軍施設襲撃事件の記事が目に留まる。今度はドイツに襲撃があったらしく、早急な解決を求める一般人と一向に消極的な姿勢をとる各国政府の姿勢両方が記されていた。

 因みにこの事件だが、ドイツ政府が計画して起こしたものだろう。何故政府がそんな事をするのかと言えば、それはアラスカ条約が原因である。主に軍事的利用が禁止されているISを軍と一緒に運用する演習や試験も兼ねている。死者ゼロ名、被害は軽微に収められたという辺りからして黒だろう。ISの関係者の中ではかなり有名な話だが、各国はこうした事件を起こす為にテロ組織を援助してたりしているのだ。某国に関して言えばテロ紛いの作戦を専門にした秘密部隊なんて物も存在する始末で、その部隊にはISも配備されているというから失笑モノだ。こういった流れの中、日本だけは例外で「自衛隊は軍ではないから」という建前の下に堂々と合同演習を行っている。

 日本だけが例外的であり、ISのコアを分配された国では当たり前のように行われている。そんな事をするならばアラスカ条約なんて結ばなければ良いと思うし、現実問題としてアラスカ条約は形骸化している。

 そもそも、ISがコアの生産を行えない時点で軍事的利用を禁止するアラスカ条約の存在意義は無いに等しいのだ。それでも各国がこの条約を締結したのは、何らかの禁忌を課すことで自分達の正義を獲得するためなのだろう。そんな事は皆分かっているので世界は一応のは平和を保っているのを考えると無意味ではないのかもしれない。

 

「今日も組み上げをするのですか?」

「…………ええ」

 

 電子新聞も読み終えると、鏡を見ながら身だしなみを整えている更識簪に問いかける。彼女は寝ぐせなどを整える為にゆっくりと動かしていた手を止めると、短く味気の無い返事を返してきた。

 

「では頑張ってください。あと、近々見に行こうと思うので時間を作っておいて貰えると助かります」

「……分かった」

「嫌そうですね」

「だって、嫌だもの……」

「私も面倒です」

「なら、やめても良いわ……そっちの方が嬉しいし……」

「申し訳ありません。織斑先生に叩かれるのは勘弁願いたいので」

「そう……」

 

 あの出席簿による打撃は自分から受けに行くような事はしたくない。痛いというよりかは頭に響くのだ。しかもそれが長時間残るから結構辛い。

 更識簪は残念そうな表情をしてから荷物を持って部屋を出る。

 

「では、時間にはお気をつけて」

「そこまで馬鹿じゃない……」

 

 去り際に不満気な視線を送って、彼女は部屋を後にする。

 さて、話は変わるが私が徹夜で作ったのはISのOSを書き換えるプログラムだ。

 織斑一夏の白式は、私が知っている中でも最高レベルでの特化機体である。それは格闘戦で特化しているという意味だけではなく、織斑一夏という操縦者を想定して作られているという意味も含めての評価だ。正直に言えば、ここまで尖った調整の機体を私は見たことがない。

 織斑一夏専用機ということで、本来ならば私が手を加える余地は無いのだろうが、白式に使用されているシステムには問題があった。以前見せてもらった時、完成品に外部から手を加えたような歪さがあるのがわかった。このプログラムは、完成品の状態へ戻すためのものだ。現状を見る限りはこのままでも何の問題も無いとは思うが、やはり気にはなったので手を加えることにした。

 二度三度仮想空間内で実行してデバッグや試験を行い、問題がないのを確認して携帯用の記録媒体にコピーする。この頃にはもう時刻は六時半を過ぎており、荷物などの準備を済ませると朝食を済ませるために食堂へ向かうことにした。

 

「おーっす、相席しても良いか?」

「どうぞ」

 

 織斑一夏が私の隣に腰を下ろし、その隣に篠ノ之箒が無言で座り織斑一夏を挟むようになり、彼の向かいにセシリアが座って……というのが、此処最近では定位置になっている。

 

「今朝もキャロルは早いな。今日こそは先に来てやろうと思ってたんだが、また勝てなかった」

「となると、およそ二週間の連勝記録が更新された訳ですか」

 

 私と織斑一夏がこうして朝食でも相席をするようになったのが約二週間ほど前。記憶をさかのぼってみると毎回私が先に来ているので、連勝記録を数えてみるとそれくらいになるだろう。

 

「だいたいそれくらいだな。早起きの秘訣とかでもあるのか?」

「早起きの秘訣は寝ないことです」

「なるほどなー、寝なければ寝坊する事も……いや、それは駄目だろ!?」

「冗談です」

「だよな……ははは」

 

 織斑一夏は若干の苦笑を浮かべながら手を合わせて朝食にありつく……私はそこで妙な違和感を覚えて辺りに意識を向け、その原因が何であるかに気づいた。

 

「あの御二人、今日はいないのですか?」

「ああ、箒は剣道部の朝練から直接教室に行くみたいだぜ。セシリアは分からん」

「そうですか……」

 

 珍しいことがあるものだと思いながら私は朝食のトーストをかじる。さくさくとした中にふわりとした食感の生地が中々に美味しい。

 

「キャロルはバター派か」

「はい。一夏さんはマーガリンですか?」

「バターよりも安いからな。それに、味もそこまで違いは無いし」

「そうでしょうか? 結構違うと思うのですが……」

 

 味の感じ方の違いというものだろう。因みに、私はマーガリンよりもバターの味の方が好みだ。

 それ以降は特に話題もなかったため、食堂備え付けの大型テレビに映し出されるニュースを見ながら互いに無言で朝食を食べ進める。席に居た時間は私の方が早かったため、自然と私が先に食べ終わってその数分後に織斑一夏が食べ終わった。織斑一夏が昆布茶を啜る隣でコーヒーを嗜みながら、私は放課後の予定は空いているかを尋ねることにした。

 

「一夏さん、今日の放課後ですが白式をお借りしてもいいですか?」

「おう。問題ないが……何をするんだ?」

「これを、白式に組み込もうと思っています」

 

 私はテーブルの上に携帯用のデータカードを置く。織斑一夏はそれを手に取り、じっくりと眺める。

 

「……で、これなんだ?」

「パッチデータです。白式のシステム面で不適切と思われる部分を修正しようと思いまして」

「ほー……」

 

 感心したような息を漏らす織斑一夏だが、おそらくどういうことかは分かっていない。

 

「白式にこのプログラムを適用して内部処理の高速化、一夏さんに合わせて内部コードの調整を行うなど……不要とは思いますが、一応です」

「成程な、これを使うとどうなるんだ?」

「機体の反応速度上昇といった効果が見込めるかと……体感出来るかどうかは、実際に使ってみないとわかりませんが」

 

 白式が今より織斑一夏に最適化される事は間違いない。だが現状では効果を実感できるかということや、実際に役に立つかどうかはわからない。

 

「白式が今より強くなるんなら大歓迎。ぜひとも、よろしく頼む」

「畏まりました」

 

 どれくらいの効果を発揮してくれるかは分からないが、織斑一夏もこう言ってくれている。必ず役に立つと信じる事にしよう。

 

「ところでちょっと聞きたいんだけどさ……」

「はあ、何でしょうか?」

 

 織斑一夏が一呼吸挟んでから話題を切り替える。私は織斑一夏からデータカードを返してもらい、ケースにしまいながらその続きを聞く。

 

「今日って何かあったっけ? 妙に人影が少ないんだけどさ……」

 

 言われて周りを見てみると確かに少ない。いつもならどの席も押し合い圧し合いで余った席など無いくらいなのだが……

 

「ふむ……今日の行事といえば身体測定くらいなものかと」

「ふむ……たかが身体測定でこんなに成るってのは考えられないし――――」

「そんな事は無いよ、織斑くん!」

「そーそー! 今日は女の子達にとってはすっごく大事な日なんだよー」

「うぉあ!?」

 

 私達の座っている場所の右隣に位置するテーブル席に座っていた二人のクラスメートが目にも留まらぬ早さで私達のテーブルへとつき、机に身を乗り出すように熱く語り始めた。

 

「身体測定っていうのは私達の一年間の努力がデータとして正式な物になる日なんだよ。体重、身長にスリーサイズ……女子は常に綺麗で居なくてはならないのよ!」

「あとー、さりげなくかわいいの穿いてたりするのを褒め合ったりするよねー」

 

 右手に拳を作ってその続きを力説する谷本癒子と、彼女の隣で間延びした独特の口調で話す布仏本音。織斑一夏は状況について行けていない。

 彼女らの話を要約するとこうだ。

 

『身体測定は数値としてデータ出ます。理想的なデータなら一年間はそれで通用するから超大事。あとは下着によるファッションチェック』

 

 そして、今日は皆最後に気合を入れるために朝食抜きや走りこみをしているのだとか。普段していないのに今日だけ頑張れば良いというものではないのでは、と思わないでもない。気休め程度の精神安定剤のようなものだろう。

 

「ふーん……俺としては朝食抜いたりしたほうが身体に悪いような気もするけどな」

「まあ、男子にはわからないよねー」

「私にもわかりませんが」

「キャロルさんは例外。だってそういうのに無縁そうだもん」

 

 まるで人が体重などを気にしていないような言い方である。実際そのとおりだが。

 

「それに、今日はみんな勝負下着だと思うよ。誰に見せるためでも無いのにねー」

 

 谷本癒子は、あははと笑って話を終えた。勝負下着というのは気合を入れるために吐く下着とかいうものだと、聞いたことがあるがどんな物かは知らない。ファッションチェックもされるというのならば最低限見栄えの良い物にしておくべきだったかという考えも少し浮かぶが、それで何が変わるとも思えないという結論が出る辺りその程度のものでしかないのだろう。

 まあ、無縁と言われた以上彼女らがどのような物を着用しているのか気にならないでもない。

 

「因みに布仏さんは今日はどのようなものを?」

「今日はパンダのプリントだよー。キャロりんはー?」

「私ですか?私は……」

 

 今日の下着は何だったかを思い出し、布仏本音に答える。

 

「うさぎさんです」

「ぶふっ!!」

 

 軽いジョークのつもりだったが、ツボに入ってしまったのか織斑一夏は飲んでいた昆布茶を吹き出しそうになるのを堪え、谷本癒子は腹を抱えて笑い始めた。

 

「んー……イメージに合わないね」

「やはりですか」

 

 笑いをこらえて身体を小刻みに震わせる織斑一夏と過呼吸を起こすのではというくらい笑い転げる谷本癒子。

 そんな状況下で、普段よりも落ち着いた口調でそう言った布仏本音が妙に印象的だった。




 間が空いて四ヶ月。待っていてくれた方には本当に申し訳ないです。
 これだけ期間を空けといて文量も少しで話も進んでない。クレームが来てもおかしくないレベルですね。

 何があったかと言うと、代表戦までの繋ぎが上手く書けなくて苦戦しているところで艦これにドハマりし、そしてACVDの発売となっていました。
 つまり、原因は浮気ということ……スミカ・ユーティライネンです。ごめんなさい。
 ちなみに身体測定ネタは代表戦後にやる予定でしたが、それだとシャルが終了するので今回無理矢理にねじ込みました。その時の様子を書くかどうかは未定です。だって身体測定の風景なんて想像するしか無い訳で、そんな風景を読みたいなんて人は居ないと思いますし!
 現状、代表戦まででやりたいことはないので次で当日まで飛ばしてしまうかもしれません。
 次回は出来るだけ早く……一ヶ月以内に投稿したいと思います。
 誤字、謎の改行など修正箇所などあれば感想で教えていただけると幸いです。
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