女オリ主による原作介入モノ(非転生、女オリ主、習作) 作:杭打折
理由については後書きにて。
あと、今回からログインユーザーのみ可能にしていた感想設定を非ログイン状態でも出来るように変えてみました。
色々な人の感想が聞いてみたいというのが理由です。
遅筆な時点でどうなのだろうかとも思ったりするのですが、取り敢えず色んな人からの意見を聞いてみたかったりするので、とりあえず試しに。
一撃必殺の威力で繰り出された、蒼光を放つ零落白夜の刃は、焦りひとつ感じさせない滑らかな動きで回避される。
攻撃に失敗したと判断するや、舌打ちするよりも早くに白式に指示を出して後退。雪片弐型を振り抜いた直後の死に体を敵機に晒すよりも早くに距離を取り、安全圏へと退避する。
「畜生ッ!!」
余裕を持って敵機からの熱戦を回避できる距離まで来てようやく、織斑一夏は声を上げる事ができた。
そして思いっきり呼吸をして気持ちを落ち着かせ、今回の攻撃が失敗した理由を考える。
初動は悪くなかった。凰鈴音の攻撃するタイミングも完璧と言っていいほどに、自分の呼吸を読んだものだった。
だが、敵機を斬るという瞬間になって刃が迷った。
敵を斬る事でもし、相手の生命を奪ってしまったらと考えてしまい、あと一歩を踏み出すことが出来ない。
あの機体がもう少し、マイルドな性能であれば余裕を持って無力化する方法の一つや二つ、浮かんでくるのだろうが、自分の実力と、現状で判明している敵機の性能を比較して脳内で状況を想定した時に、敵機を破壊せずに無力化する方法が全く浮かばない。どれもがギリギリで、手心を加えるような余裕はどこにもない。
普段から頼もしく感じ、絶対の切り札と信じている雪片弐型の零落白夜。しかし、その攻撃力は高すぎる。
「バリアー無効化攻撃ってのも不便だな……」
「贅沢言ってんじゃないわよ。あんたのそれがなかったら、勝ち目の一つだってないんだから」
甲龍―――凰鈴音との回線は開きっぱなしにしている。そのため、小さな声で呟いた本音にもすぐに返答が返ってきた。
彼女の言うとおり、一撃必殺の威力を持つ単一使用能力――零落白夜がなければ突如として現れた敵機に対し、応戦するという選択肢はなかっただろう。だが、それでも零落白夜によって生み出す刀身は攻撃力が高過ぎる。競技用ISという枠組みの中にあってはならないと思うほどで、以前に最大出力で振るった時には絶対防御すら斬り裂き、敵機を容易く両断してしまったことを覚えている。その時はシミュレーターでの訓練であったから誰かが怪我をするようなことはなかったが、訓練後にあれが現実だったらと思うと今でも背筋が冷たくなってくる。
「一夏、避けなさい!」
「ッ――――!!」
思考をあさっての方向へ飛ばしていたせいで一瞬反応が遅れたが、何とか直撃を避ける事には成功する。しかし、若干無理のある機動をした影響で織斑一夏の機体はバランスを大きく欠いており、そこに追撃をかければ容易に撃墜する事が出来るような状態。
まずいと思って慌てて姿勢制御を行う一夏だったが、その焦りは裏切られ、追撃は加えられなかった。敵機は姿勢を崩した白式ではなく甲龍へと狙いを切り替えており、そこが理解できなかった。
「気持ち悪いな……あいつ」
理解できない。自分を落とせる絶好の機会を得ながら、何故それを自分から逃すような真似をしたのか。
自分から狙いが外れたことで、遠目から敵機の動きを観る事が出来るようになった一夏はそこで一つの違和感を覚えたのだ。
狙い方が単調なのだ。フェイントやタイミングのずらしたりといった工夫の欠片も見えない。一定の間隔で、決まった撃ち方しかしないのである。
続いて浮かんだ仮説は現実的に考えれば有り得ないもので、だがそれが現実ならば自分の迷いを払拭してくれるものである。
「鈴、そいつおかしくないか?」
「おかしい? あんた何を言って――――」
思い当たる節があったらしい鈴は言葉を切って、後方へと急加速。追撃にと敵機からの熱戦が繰り出されるが距離を離すにつれてその数は減っていき、かといって敵が距離を詰めてくるような様子もない。
「言われてみれば確かに……さっき、あんたが危なかった時もそうだったわね」
先程一夏が姿勢を崩した際に、凰鈴音は何もしなかったわけではない。自分の方へと狙いを切り替えさせようと、衝撃砲による射撃を加えながら接近した。成功した時はうまく行ったと思う気持ちで精一杯であったから気付かなかったが、言われてみればおかしい事に気づく。
先程まで、凰鈴音と敵機との距離はそれなりに開いていた。接近してくる者への対処を優先するというのは理に適っていると思うが、距離的には一夏を撃ってからでも間に合うくらいの余裕があったのだ。だが、凰鈴音が接近した瞬間に、一切の迷いも見せずに砲口を凰鈴音へと向けたのだ。
その姿はまるで―――
「まるで、”近くの敵を優先してねらえ”ってプログラミングされているのかって思うくらい、綺麗な動きだったわね」
「まるで機械みたいだ。あの状況、俺だったら少なくとも迷うだろうと思うしそれが普通じゃないかって思う」
機械―――言葉にしてようやく違和感の正体に気づくことができた。
どういうわけか、敵機の攻撃タイミングには全くのブレがない。つまり、工夫や変化といった物を一切介さないで、ワンパターンな攻撃しかしてこないのだ。ある程度接近すれば射撃をやめて巨大な拳を振るって迎撃してくる。そこから距離を離せば、すぐに射撃へと切り替えてくる。
相手の動きからは一定の法則が見えてきそうなほど機械じみていて、戦っていて気持ちが悪い。
「しかも、動きに全くブレがない。あれ本当は人が乗ってないんじゃないのか?」
「一応、納得できない話じゃないわね。けど、人が乗ってなければそもそも起動しないんだから有り得ない話よ」
ISという機械を扱う上での大前提に”人間が搭乗していること”というものがある。だからこそ、二人の感じた違和感は二重の意味でありえない。
人間である以上、毎回同じ動きをするなんていうのはなど、普通に考えれば不可能。
だが、前提として人間無しではISは動かない。
どっちが正しくて、どっちが間違っているのか。理屈的には後者が正しいが、実際に目の前にしている状況からは前者が真実であると予測される。
「――でも、さっきからこうして話してる間は攻撃してこないのも変な話よね」
理屈と目の前の現実。戦っているものからすれば、どちらを優先して考えるかなど考えるまでもない。凰鈴音は思考を一旦切り替えることに決めると敵機から十分に距離を取って織斑一夏に問う。
「じゃあ仮に、あれが無人機だったとしましょうか。人が乗ってないからって、どうにか出来るの?」
「出来る」
その問に、織斑一夏は迷うことなく頷いて断言をする。
「人が乗ってないただの物なら、躊躇いなくぶっ壊せる」
時は少しさかのぼってモニタールームにて。
未確認の敵機襲来。その事実を前にして、モニタールームの中のメンバーの反応は三つに別れた。
「一夏!」
「そんな……織斑くんに凰さん、早く退避を!」
悲鳴にも似た声を上げて、アリーナの中に残された人達を心配するというもの。
「まあ、本人同士がやると言っているのだ……やらせればいいだろ」
「織斑先生、それ……砂糖ではなく塩です」
「…………」
平然とした態度を装いながらも、内心では当人たちを心配しているという反応。というか、貴女はブラック派だと思っていましたよ織斑先生。
「御二人は消耗しています、今すぐ救援に!」
最後に、今すぐ救援に向かうべき、というセシリア・オルコットの反応。現状で唯一動きを起こすべきという考えである。私は彼女と織斑先生のやりとりに耳を傾けながら、私はどうするべきかの判断を行う。
「ダメだ。貴様は連携訓練を済ませたか?」
「タッグ戦の経験ならありますわ!」
「では現状は如何なる状況か?」
「敵機1に対し友軍2機が交戦中、直ちに援護の必要があり。私が現場に直行すれば3対1です。少なくとも、今より悪くなるなどということは――」
セシリア・オルコットは胸に手を当て、真摯にといった様子で織斑先生へ訴えけている。
確かに、彼女の言った通りに二人には援護の必要があるかもしれない。外部の突入隊は障壁による妨害で足止めをされていることもあり、援護へ向かうことが出来るのは私達中にいるメンバーだけだ。
だが、しかし―――
「しかし友軍機はどちらも消耗大。そのうち、白式の消耗は戦闘続行に支障あるレベルでしょう。3対1どころか、状況によっては2機を守りながら戦う事になるでしょう」
私は二人の話へと割り込む。織斑先生がどういう考えかは不明だが、塩と砂糖を間違えるくらいには心配しているようではある。何か心変わりを起こしてセシリア・オルコットの提案に、勢いで賛同されるのは、少々困るのだ。
何故なら、現状は不明な事が多すぎるから、焦りに任せてとりあえず動くことが良いとは思えない。まずは落ち着き、全員で冷静に状況の推移を見守るべきだと私は考える。
「オルフィレウスさん、貴女は一夏さん達の事が心配ではないのですか?」
「彼の身が脅かされているという事実は肯定します」
彼の身に危険が迫っているのは事実ではある。心配していないかのと言われれば、否。当たり前だが、心配するという感情くらい私も備えている。
だが、非常に個人的な意見であるのだが、現時点では動きたくないのだ。
それはこの代表戦が行われる前に主任と交わした際の言葉が関わってくる。現状の未確認機の乱入は違うのかと聞かれると、これは違うと断言できる。
経験上、主任の言葉から察するに、何かをやらかすつもりという事だと思う。だが、それを私にそもそもから関わらせないようなやり方をするだろうかという疑問が浮かぶのだ。
警告してきた以上は私が動かなくてはならない事態が発生するということなのだと思う。だが、現在のアリーナの状況はどうか。
外部では、急遽編成された突入隊が奪われたセキュリティや障壁を突破しようと行動中であろう。それに加えて敵は単機。であるから、時間を稼ぎ突入隊の援護を待っていれば何事もなく終わるだろう。ゆえに私が動く必要性は感じられない。
私が動く必要性が無い状況であるからこそ、まだ何か起こるのではないかという予測を立てているのだが、それは未だに兆候すら見せていない。
「ですが、そもそも、私達はこの部屋から出られませんよ?」
纏めると、動くのならば動かざるをえない事態の発生を確認してからというのが私の考えだ。だがそれをこの場にいる全員を納得させるなど不可能である。なので、別方向から現状は待機と決断させるように話を進めていく。
「手動解放装置を使用すれば……」
手動開放装置とは、障壁の誤作動などが起きた際に備えて、レバーを引くことで障壁や扉の解放を行えるようにする装置である。
しかし、それを利用することは出来ないだろう。隔壁が下ろされただけならば手動解放装置を利用して現場へと向かうことも可能である。だが現在はセキュリティ関連をハッキングされ、なおかつそれを奪われている。手動装置もロックされていると考えるのが自然である。
「なら、どうしろと言うのです?」
「織斑先生の言うように、落ち着いて待機していればいいでしょう」
その返答に、セシリア・オルコットの目つきが鋭くなる。今すぐに動くことが出来ない苛立ちも混ざっているのは間違いない。
入学当初に睨まれた時よりも強い気迫を感じられるその視線、しかし、私を睨んだ所で状況は変わらないのは、セシリア・オルコットも承知のようですぐに視線を外す。
「貴女の事を誤解してたようですわ。すぐに助けに行くべきと、そう言ってくれると思ってましたわ」
そういったセシリア・オルコットは交戦中のアリーナを映すモニターを鋭い視線で見つめていた。
アリーナ内で戦っている織斑一夏達の身を案じるものからしてみれば私の発言は受け入れがたいものであろう。彼女の反応と態度は当たり前のものであり、それはきっと、先程から無言を守っているもう一人のクラスメイトも同様だろう。
「キャロル」
「何でしょうか、篠ノ之箒さん」
話しかけてきた篠ノ之箒は鋭い目つきだが、感情のままに私に何かを言ってくるような雰囲気はない。ただ、セシリア・オルコットと同じように私に対する不信感や懐疑心といったものは抱いている様子ではあるが。
「お前が動けば、一夏達を助ける事は可能なのか?」
「現状に対して幾つかの方法は浮かんでいますので、それがうまく行けばおそらくは」
篠ノ之箒に回答した通り、今すぐにでもこの状況をどうにかすることは可能だ。
現時点で我々の前に聳え立つ最も大きな障害は、敵に奪われたセキュリティと設備の制御系統。モニタールームに閉じ込められた状況にある我々が何とかするには、まずそれを奪い返す必要がある。これを何とかすれば、今すぐにでも現状を好転させる事が可能だと考えられる。
その奪い返す事が普通なら容易ではないのだが、その事についてまずは、何故相手が奪えたのかについて考えてみよう。
此処は世界が誇るのIS学園。その施設を一部とはいえ掌握するなど、並大抵の機材や人材では不可能である。
だが、何事にも例外というものは存在する。その例外の一つがISであり、敵はISのコアが持つ高い計算能力を利用してシステムを掌握したのではないだろうか。
さっきから見ていて敵の動きが単調に感じられるのもそれが原因ではないかと私は考える。
戦闘とは別の部分で大掛かりな事をしているから、単純な動きしかしていない。武装も機体に固定で装備されているビーム砲や、巨拳しか使っていない。データ処理や解析など、ハッキングに関する部分へリソースの大部分を回しているから、多数の武装を展開し並列して扱うなど、余裕はあまりないのだろう。
「つまり、どういうことだ……?」
それを説明すると、篠ノ之箒は頭の上に多数の疑問符を浮かべながら首を傾げている。まあ、一度に説明したから仕方ないだろう。
「まとめれば単純です。敵はISを利用してこの施設を掌握した。ならば、今度は逆の事をしてやるまでという話です」
「ほう、面白い事を言うな。オルフィレウス、お前はそれが出来るのか?」
「可能です」
そこで塩味コーヒーをどうやって処理しようかと目を細めていた織斑先生が会話へ入ってきた。私は彼女から投げかけられた問いに頷き、肯定する。
自分で提案して、可能であると認めたくせにと自分でも思うが、個人的にはやりたくない案である。実行したらまた更識楯無に睨まれそうだし、彼女以上に面倒な輩に目を付けられそうな気もしてくる。それに私の望む方針は先程も言ったとおり、現状待機なのだから。
「そうか、ならばやれ」
だが、一年一組の生徒達には”担任命令は絶対”というルールが存在する。なので、やれと言われたら一年一組のキャロル・オルフィレウスとしては実行しなくてはならない。やると決まった以上は私の不安材料を解消出来るように、やった後の対応や処理が楽になるようにするべく、問いかける。
「確率的には高いですが、一学生にセキュリティの中枢を奪わせるなど教師が認めてよろしいので?」
「構わん。それに、すでに敵性勢力の侵入を許してしまっているのだ、学園の防衛役も強くは言えまい」
非常に意地の悪い笑みを浮かべた織斑先生はそう言って、顎をしゃくってみせてある方向を示す。彼女の示した先にはアリーナのシステムにアクセスが可能な制御用の端末があった。早くやれということか。
「事後処理の方は織斑先生に一任していただけると、そう考えてよろしいのですね?」
彼女の示す先を確認してから織斑先生へと視線を戻し、本当に良いのかと確認。
「任せておけ……だが、こうして機密に踏み入る事をやらせるのだ。そこは理解しておけよ」
「了解しました」
言質は確保。やった後の事の心配はしなくてもいいだろう。
本来ならば学園の防衛に関わるシステムを生徒に触らせるなど有り得ない判断だし、到底受け入れられるものではない。これは学園の防衛を担う立場であり、尚且つ内外に対して強い発言力を持つ織斑先生だからこそ出来る力技だろう。
だから、失敗は許さないとの言葉も同時に頂いた。いくら織斑先生でも結果を見せて相手の主張を封じてやらなければ「無闇に生徒に学園の機密を触らせ、結果として何も出来なかったと」して、責任を問われてしまうのだろう。
これに関しては予想していたものであるし、やるからには成功させるため、私のメンタル的には何の影響もない。
「そしてオルコット、オルフィレウスを働かせる以上お前にも働いて貰うぞ」
どうやらこのタイミングで動くのは私だけではないらしい。
セシリア・オルコットは、今まで何も出来ずに燻っていたことからか、バックに炎を燃え上がらせているような雰囲気でいつもの片手を腰に、もう片方の手を胸に当てたポーズを取る。
「任せてくださいな! わたくしは、お二人の援護に向かえばよろしいのですね?」
「違う」
不敵な笑みさえ浮かべていたセシリア・オルコットは、ガクンと項垂れ、バックで燃え上がっていた炎も一気に沈静化する。
「オルフィレウスがシステムの掌握に成功した場合、敵は撤退しようとする可能性がある。そうなった状況に備え、狙撃可能な位置で待機しろ」
「お二人の援護はしなくてもよろしいのですか?」
「あいつらも考えなしで動いているわけではないだろうさ。オルコットは万が一に備えて自由に動けるようにしたほうがあいつらとしても心強い」
織斑一夏と凰鈴音の両名は何らかの策があるような動きをしている。だから此処で動いてしまうよりは、いざというときの為の後詰として待機した方が良いだろう。
「そういうことでしたら、了解いたしましたわ。それではオルフィレウスさん、頼みますわよ」
織斑先生の説明を聞いてそれを理解したセシリア・オルコットは、私をまっすぐに見つめながら言う。先ほど私のした発言の影響があるようで、まだ思う所がある様子だ。しかし、現時点において織斑先生の決定に従うという方針は互いに合致しているため悪影響といれるものはあまり無い。
「頼まれました」
会話はそれで終わり。私は作業を開始する。
備え付けの椅子の一つを借りて腰を下ろし、端末と向かい合う。続けて、ブラックバードを部分展開。普段からかけている眼鏡は量子変換機能によってISの内部へ格納され、その代わりと展開された各種センサーと解析機能を持つバイザーに私の顔は覆われる。
眼鏡がなくなってもちゃんと見えるのかと言われそうだが、問題ない。普段から着用している眼鏡はディスプレイなどの用途としてが主で、不足した視力を補う事が目的ではないのである。
システム起動。各種機能に異常なし。
アリーナの設備の制御系にアクセス――――失敗。まあ、システムの権限を掌握されている以上はそんなものだろう。
ここからが私の戦いだ。
説明など不要だとは思うが、IS学園の使用しているセキュリティソフトは非常に強固である。世界の中でも有数のエンジニアやプログラマーによって作られた絶対の防壁は穴すら無いようにみえる。だが、そこに何らかの形で接続といえるものが存在している以上、かならず抜け道が存在する。
「出来そうか?」
「強固だと思いますし、プログラムとしての完成度もかなり高い。ですがまあ……」
織斑先生の声と肩に手を置かれたような感触。部分展開しているブラックバードのハイパーセンサーを利用して周囲360度の様子を確認すれば、織斑先生は私の肩を肘掛けのようにしながら前のめりで端末の画面を覗きこんでいた。だが彼女はすぐに離れ、指を動かして空中に投影されたキーを入力している私の様子を眺めている。アクセス用端末の画面には何も映し出されていないので何も分からないのは仕方ないだろう。
それに加えて私の場合、手の指だけではなくISの制御機能を利用しての、思考による操作も行っているため指の動きだけで全てを察せられるような状況ではない。
「思っていたよりは、うまくいきそうです」
まあ、こういったものは上手く行っている時に何か見落としがある場合が多いため気を付けなければならないのだが。
既に設備の制御システムへのアクセスは完了。残るは最高レベルの権限を奪還するのみ――――
――全――ロット、デー――ンク――
「っ……!」
「どうした!?」
突如、私の思考の一部にノイズが走る。左脳の辺りを走ったゾワリという感触に歯を軋ませる。
「なんでもありません……」
一瞬、私の表情が変わったことを見逃さなかった織斑先生が心配してくれるが、なんでもないと解答。
何故なら敵側から攻撃を受けている訳でもなければセキュリティによる排除が行われようとしているわけではないのだ。あらゆる面において順調である。見落としがあるわけでもなく、失敗をしたという様子も見受けられない。
違和感の正体は不明だが、今優先するべきことは変わらない。嫌な予感はするものの、私は光を取り戻し正常な画面を映し出している端末を操作して、扉のロックを解除する。
「制御系統復旧します……通信機能回復。扉のロックを解除しましたのでオルコットさんは現場へ、先生方は外部との連絡を!」
「了解ですわ!」
「分かりました!」
モニタールームを駆け足で出て行ったセシリア・オルコットと、すぐさまヘッドセットに手を当てて外部との連絡を取り始める山田先生の様子を確認する。
私の仕事は此処までだろうと判断すると、ブラックバード部分展開を解除してから椅子の背もたれに体重を預けるように体の力を抜いた。
そこで頭の上に重さを感じて、なにかと思って閉じていた目を開く。どうやら織斑先生が私の頭を軽く撫でているらしく、さっき頭に感じた重さは手を置かれた時の感触らしい。
「ご苦労、よくやってくれた」
「光栄です」
ねぎらいの言葉を掛けられた。どうやら褒めてくれているらしく、珍しいなとは思うが悪い気はしない。
とりあえず、やることはやった。
だが、先程感じた違和感について自分の内でも解決できていない以上、この場における上司たる彼女に報告しておいた方がいい。主任の言った事もある。もしかしたら、私達の見えない所で何かが進行しているのかもしれない。
「織斑先生。私は先程、作業中に妙な違和感を覚えました……嫌な予感がします」
わからないとい感覚は嫌なものだ。未知の事象に対する不安感は粘着質で、心にへばり付いたそれは、拭おうとしてもなかなか拭えない。
私は胸中に抱いている不安を素直に吐露して、何か起こるのではないかという考えを織斑先生に伝える。
その時の私がどういう表情をしていたかは分からないが、後になっても知りたいとは思わないだろう。きっと、第三者からみれば情けない表情をしているだろうという自覚があった。
「どちらにせよ、お前はよくやってくれた。だから後は外の連中と私達にまかせて後は休んでおけ」
警告ともとれる私の言葉を聞いた織斑先生は少しだけ目を細めるが、すぐに不遜とも言える表情を浮かべて普段通りの口調で休めと言ってきた。
私が言ったことを無視している様子ではない。
織斑先生のことだから「嫌な予感がするなら備えておけ」くらいのことは言われると予想していたので少し驚きだ。言ったら絡まれそうなので言わないが。
「了解しました」
なんにせよ、休めというのならば今はおとなしく休ませてもらおう。
動かざるを得ない状況になったなら、その時はその時だ。
遅くなった理由ですが、思うような文章や展開を書けずにエタっていました。
この小説はおおまかにしかプロットを作っておらず、その時のやりたい内容をやるという私のスタンスも原因の一つではあるのですが。
とりあえず一巻の内容と戦闘はもう少し続きます。
だらだらと長い文章になっているような気もしますが、もう少しだけ、お付き合いくださいませ。
質問や誤字、内容がおかしいなどのご指摘がありましたら感想で教えていただければ幸いです。
あと、一巻の内容が終わったらすぐ二巻には入らず少しだけ日常とか、原作キャラとの絡みをしてか らにしようかなと思っていますがどうでしょうか? それについての御意見も感想で頂ければ嬉しいです。