女オリ主による原作介入モノ(非転生、女オリ主、習作)   作:杭打折

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一章10

 容赦なく斬れる。

 そう言った時の織斑一夏の言葉はたのもしくあると同時に、凰鈴音の心に少しの不安を抱かせた。

 敵へのトドメ役という一番危険な役割を担う事になる織斑一夏の身が心配であるというのはもちろんだが、それ以上に――

 

『どうしてそんなに迷いがないのよ?』

 

――そんな疑念が、凰鈴音の胸の内に少しずつ広がっていた。

 

 一夏の言ったように敵機の動きには不審な点が多く、無人機ではないのかという疑念を抱かせるには十分である。

 だが、ISは人間なしには動かないというのが常識で、当たり前だ。

 また、常識というものは”常”であるからこそ重んじられるのであり、それが前提からして間違ってるなどと考える事は、少なくとも自分には難しい。

 

『もし、無人機ではなかったら…………』

 

 一夏は敵機が無人機であると断定したらしいが、自分は本心からそう考える事ができない。一夏に指摘を受けてからハイパーセンサーのスキャン機能を利用した生体スキャンを行っているが、返ってくるのは解析不能という文字。

 妨害電波でも出しているのか、それとも敵機の全身装甲によるものか。いずれにせよ、現時点で唯一確信を得る事のできる方法が成り立たないことに対して歯噛みする。

 これで”生体反応なし”とでも出てくれれば良かったのだが。

 まるでそうなることを狙っていたかのように、スキャン失敗。これでは意味が無い。選択肢は狭められ、既に敵機を破壊するつもりでいる一夏の後を追っていくという結論へ自動的に導かれてしまう。

 結論が出てしまった今、これ以上長考をしたところであまり意味は無い。覚悟を決め、腹をくくる必要がある。

 現時点において、自分の判断基準としてきた常識に対しての疑念が浮かんでしまっている。故に、常識を信じるのを止める。

 

「仕方ないわね、あんたを信じてあげるわよ」

「悪いな、助かる」

「別に、感謝されるような事じゃないわ」

 

 代わりに信じるのは、共に戦っている織斑一夏。

 信頼の仕方としては最悪だろう。もし、敵機が無人機ではなかった場合の逃げを作るような、そんな信頼の仕方なのだから。

 だから。感謝される事ではないと言ったのだが、織斑一夏はそんな凰鈴音の自嘲には気づかずどういう意味だと首を捻っていた。相変わらずの鈍感であると、昔からの様子を見て別の苦笑を浮かべてしまいながら凰鈴音は敵機に意識を集中させる。

 敵機の状態は消耗こそあるものの、戦闘継続に支障はないのだろう。泰然と構えている様は妙な威圧感があり、ただでさえ大きい機体が、それ以上にも見えてくる。

 

「私が隙を作るから、あんたがトドメ。基本方針はさっきまでと同じ」

 

 だけど、今回は方針を変えていこう。より確実に、敵を破壊する事ができるように徹底した攻勢に。

 

「でも、今回は私も前衛を張る。私が斬り込み役、反論ある?」

「……この期に及んで、何か言うつもりはないさ」

「勘違いしないで。これ、あんたが不甲斐ないからとかじゃないから」

 

 自分も出るとの言葉を聞いて、一瞬不満気に表情を歪めた織斑一夏へフォローの言葉を送る。

 

「こうした方が確実。こうすれば、今のあんたならトドメを刺せるって思ってるだけだから」

「そりゃどうも……んじゃ、やるか!」

「ええ、やるわよ!」

 

 配置変更。凰鈴音も前衛となり、織斑一夏と同じ立ち位置で最後の攻撃へと臨む。

 二人の戦意を感じ取ったのか、敵機もそれに応じるように機体の出力を上昇させているようだ。全身装甲の排気部分から吐出される黒煙の量が増しており、ハイパーセンサーによって感知している敵機のエネルギー量も上昇している。

 高エネルギー反応を示す警告を無視し、警告の表示を消す。戦うと決めた以上、わかりきった警告など意味を成さない。むしろ視界の邪魔になるだけだ。

 そうして対峙し合う二機と一機。一番先に動いたのは濃紅色の機体。柄の中心点で二つに分かれた双天牙月を構え、一直線に敵機へと向かう。

 だが敵もそれを黙って見ているわけではない。今までと同じように近づいてくる交戦中の対象への迎撃。収束されたビームは正確な狙いで放たれ、違わずに凰鈴音と甲龍を射抜かんとする。それに対し、凰鈴音は回避軌道を取る様子は無い。このまま行けば間違いなく直撃である。だが――――

 

「避けるとか、あたしのキャラじゃないのよ!!」

 

 そう言って獰猛に笑った凰鈴音は、利き手の反対の手に持った青龍刀を横に倒す。幅広の刀身は楯としての機能を果たし敵のビームを受け止めた。敵の装甲を破壊することを前提に作られた近接武装は当然、通常のISが持つ装甲よりも頑丈である。白式の雪片弐型や、打鉄の葵ではこうも行かないだろうが、甲龍の双天牙月は元々変則的な扱いが想定されている。ゆえに多少の無茶は通じるように設計されていのだ。楯と言うには少々防御範囲が狭いのだが、その問題は敵が自ら解消してくれていた。何故ならば敵機は狙いが非常に正確であるから。機械じみた精度で放たれるビームは散らばる事がなく、故に初弾さえ見切ってしまえば後はそこから楯を大きく動かす必要がなかった。

 甲龍、突撃を続行。

 だが数発を受け止めた所で双天牙月の半身は限界を訴え始める。これまでのやりとりは僅か数秒にも満たぬ僅かな時間ではあったが、それだけあればISが彼我の距離を詰めるには十分である。使い物にならなくなった半身を凰鈴音は状態の確認を省略して投げ捨て、利き手に残った双天牙月の半身の柄を両手で握り、大上段からおもいっきり振り下ろす。

 

「っ、硬い!!」

 

 だがそれは敵機の巨大な腕部によって防がれる。鈍く響いた金属音と、手元から伝わってきた強い反動に凰鈴音は忌々しげに声を上げる。

 腕部を破壊することが出来ればよかったのだが、黒い装甲に大きな裂傷を与えるに留まり破壊には至らず。

 

「っ、ぐぅ……!」

 

 凰鈴音は、腹部から伝わってきた衝撃に苦悶のうめき声を上げる。

 腕のお返しにと振るわれた敵機の拳がめり込んでいた。攻撃後の死に体となった瞬間を狙われたから、避ける事も受ける事もできなかった。直前で発動した絶対防御と生体部分への致命傷には至らないが、あまりの衝撃に意識を手放しかける。

 

「っかふ、はあ……っ!」

 

 殴られた衝撃で機体ごと後ろにふっとばされそうになるところを、PICによる重力緩和を切って脚を地面へ落ち着かせる事でその場に踏みとどまる。

 あと少し――――まだやることは残っている。そう自分に言い聞かせ、途切れそうになる意識を繋ぎ止めながら凰鈴音はこの一瞬の為に用意していた、最後の手札を切る。

 

「この距離なら、こういうことだって出来るのよねえ……!」

 

 非固定部位が唸りを上げ、駆動率が一瞬にして限界値まで高まっていく。

 非固定部位の砲口がゆらりと歪んで、圧縮率を限界まで高めた超高密度の大気の砲弾。本来なら砲身も砲弾も不可視であることが売りの衝撃砲だが、今凰鈴音が作った砲弾はあまりにも強烈な圧力を掛けられた影響で熱を放ち、揺らめく大気のせいで空間が歪んでいるような錯覚を覚えさせる。

 凰鈴音は歯を剥いてニィと笑う。余裕綽々と適当に戦っていたムカつく相手の顔面に狙いを定める。表情が見えるというわけでもないが、ただそうしたかった。何故なら自分はこいつの顔面に、渾身のストレートを放つのだから、殴る相手の顔くらいはしっかり見ておこう。

 

「ぶっとべええええええええ!!」

 

 絶叫とともに甲龍へ引き金を引くイメージを送り、発射の指示と受け取った甲龍は敵機の頭部正面を狙って限界出力の衝撃砲を放つ。

 すさまじい反動により身体を後ろへ持って行かれそうになる。PICを切っていないのにこの衝撃、やっぱり専用パッケージでも無い装備でやるもんではないなと薄れゆく意識の中で考えながら、凰鈴音は後を託す。

 

「後は、任せたわよ一夏…………」

 

 それに応える言葉は短く――――

 

「任せろ!!」

 

 

 

 託された者はこの機を逃すことはしまいと、この闘いに幕を引く為の最後の一手を飾り立てる。

 淡い金色に輝く機体が示すのは機体と操縦者が高いレベルで同調しているという事。

 守りたいと思っている仲間が傷ついてでも自分に後を託そうとしているのだから。

 

 信じてくれているのならば応えねばならない。仲間が託してくれたのだから、それを無駄にしてはならない。

 

 男だからとかそういう理屈ではなく、織斑一夏の心がそう叫んでいるのだ。

 

「これで、終わりだ!!」

 

 だから、そのまま迷うことなく刀を雪片の刃を、零落白夜を振り下ろす。

 凰鈴音の渾身の一撃によってその巨体を弾き飛ばされた敵機はかわすことも迎え撃つ事もできないだろう。そんな状況を作ってくれた凰鈴音には感謝してもしきれないし、これが終わったら礼を言ってやりたいくらいだ。

 シールドと装甲を、シミュレーションの時と同じように容易く斬り裂いた零落白夜の刃はその役割を果たすと同時に消失し、機体もその動作を停止させてアリーナの地面に膝をつく。

 

「ハリボテ……か。ハイテク機械のくせに、最後は杜撰だな」

 

 そう言って、切断面から見える敵機の内部構造を織斑一夏は軽く嘲笑って目を閉じる。

 凰鈴音と無人機。二連戦をこなした身体と精神は休息を求めており、それに抗う事はできなかった。

 

 

 

 

 

「敵……沈黙です! すごい、ふたりともすごいですよ!!」

 

 山田先生の喜ぶ言葉を聞いて、モニタールームに安堵の空気が広がった。

 

「二人は無事か?」

「えっと……無事です。二人共気を失っているようですが平気そうです。良かったですね織斑先生」

「ふん……この程度で倒れているようでは鍛え直す必要がありそうだな」

 

 二人のISから送られてくるデータを確認した山田先生が織斑先生に答える。それを聞いた時に彼女の肩から僅かだが力が抜けたように見えたのはきっと錯覚ではないのだろう。

 

「良かった……一夏……」

 

 胸に手を当ててホッとした様子で織斑一夏の名前をつぶやく篠ノ之箒。

 誰もが安堵しきっている中、私だけが同じように安堵する事が出来ずに居た。

 

「織斑先生、二人の回収へ向かってもよろしいですか?」

「オルフィレウス……まあ、良いだろう。オルコットも向かわせるが構わんな?」

「はい。そのほうが効率も良いでしょう」

 

 アリーナの二人はISを展開したまま意識を失っている。回収の際には、恐らくだがアリーナからピットへ運んだ後、入学と同時に登録が義務付けられている機体ごとの解除コードを直接入力して解除させるのだろう。

 だが、ISを展開したまま気を失っている人間を回収するのは生身で行うには些か骨が折れる作業だ。なのでISを使って運ぶのが恐らく一番楽なのだが、この場ですぐに動ける者はと言えば私とセシリア・オルコットの二人。同じ二人なので、数的にもちょうどいい。

 実を言うと、許可を得る際に織斑先生に言った目的は建前である。本当の目的は、現状を一件落着と言っていいのか、現場に行ってこの目で確認したいというものである。未だに私の中で懸念が拭われていない事が理由だ。

 織斑先生に許可を求めた際、返答までに少し間があったのはきっとその考えを見抜いていたからだろう。結果的に現場に行く事を認めてくれたのは、本人の満足が行く用に納得させたほうが手間も省けて手っ取り早いからか、それとも彼女もまだ確証が無いと考えているのか。

 現場へ向かう許可を得た私はISのコアネットワークを用いてセシリア・オルコットとの通信回線を開く。

 

「セシリア・オルコットさん」

『何かしら、オルフィレウスさん?』 

「これより一夏さん達の回収を行います。私も現場へと向かいますので、先に降りていて下さい」

『分かりましたわ』

 

 連絡を終え、回線を閉じる。無機質な壁面の通路は未だに事態が火急であることを示しているのだろう。

 緊急事態を示す赤いランプが灯ったままであった。




今回は前回に比べて短め。
区切りが良いところまでなので、次の回からがキャロルの本番。
まあそんなわけで、もうちょっとだけ続きます。

話の流れは、原作とは違って二人共ノックダウン。
その代わりにゴーレムは機能停止。←ここ大事

自分なりに理屈が通るように書いたつもりだけど、投稿前に誰かに見てもらったりしたわけではないので変なところがあるかも。
誤字脱字、文章構成について御意見や御指摘がございましたら感想で教えていただければ幸いです。
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