女オリ主による原作介入モノ(非転生、女オリ主、習作) 作:杭打折
「そっかそっかぁーいっくんも成長したね。束さんはとっても嬉しいよ!」
どこか遠くの、地上の誰もが想像するよりも遥か遠くの場所で。
先ほどまで繰り広げられていた戦闘の光景を、逐一逃さずに見ていた者が居た。彼女はモニター越しに自分の数少ない身内の一人が、最期に見た時よりも強く、より自分が望む方向へと成長していたことに満足して満面の笑みを浮かべている。
言葉も、その笑顔も。身内の成長を喜ぶ年上という光景だが、それでも彼女こそがこの事件を引き起こした存在だという事実がすべてを帳消しにする。
「いっくんの成長も見られたし、無人機の試験も出来たから成果としてははなまる二重丸……それじゃあ私はいっぱい遊べたからもういいかなぁー」
とても楽しそうな笑顔のまま、彼女は織斑一夏のもとへと送り込んだ無人機――――ゴーレムに命令を送り込んでいた端末を操作し、問いかけられた停止させるか否かの選択を行う画面を。機能停止の是非を問いかけるコンソールに対し、彼女は迷わずに機能停止を命じる。
「よーし……いっくんお疲れさまー、あとはゆっくり休んでね!」
実行完了の文字を確認し、画面の向こうの織斑一夏へ手を振る。ゴーレムの機能は停止し、再起動をすることは無い。
「遊び終わったら交代しないといけないんだけどー……」
だがそれは、起きる出来事の一つが終わったにすぎないのだ。故に――――
「その前に、私もあの娘とお話しちゃおっかなー」
悪意ではなく、ただ楽しみたいがために篠ノ之束は笑うのである。
ピットからアリーナの空へと上がりそこから、現状を生で確認する。
流れ弾によりアリーナの砂地はクレーターだらけ。外壁には損傷が各所に見られる。しかしそれでもアリーナが施設としての様相を保っているのは、それに耐えるだけの強度を持って作られているのだろう。感心すると同時に、これなら非武装の一般生徒が負傷するような事態は起こりにくいだろうと納得。
「居ましたわね」
「はい。此方でも確認しました」
私が織斑一夏と凰鈴音の位置を確認すると同時にセシリア・オルコットからの声が近くから聞こえてくる。機能停止した未確認機と、その近くで装甲を展開したまま倒れ伏している二人へと飛行ルートを辿っていく。
異常事態にも果敢に立ち向かったと、前向きに捉えればそれうなるのだが話はそう単純ではないだろう。明らかに競技用という枷を持たぬ、強力な力を持った未確認機を打倒したこと。これらは評価に値するだろうと考えながらも、私の中にはそうではないと反論する思考が生まれていた。
結果的に敵機を打倒したので問題はないのだが……しかしやはり、私の不安は消えない。
「……具合ががよろしくないのですか?」
「いえ、そのようなことでは」
「そう、ならばよいのですけど。オルフィレウスさんが珍しい表情をしていたものですから、つい確認してしまいましたわ」
セシリア・オルコットに言われてみれば、確かに普段よりも表情や口元に力がこもっていたように感じる。リラックスしよう。一度大きく深呼吸をしてから私はセシリア・オルコットへ心配をかけたと詫びる。
「申し訳ございません、ご心配をお掛けしました」
「いえ、構いませんわ。何か心配事があったりするんですの?」
「そうですね、少し気になることが幾つか」
怪訝そうな表情で、セシリア・オルコットは純粋な質問を投げかけてくる。彼女は単純に、私の表情を見て疑念を抱いたのだろう。あからさまに警戒をしている様子をしている自覚はあるが、周囲に指摘されてしまった以上は少し控えるべきか。そう考えながら私は管制室との通信回線を開こうとして、それが出来ない事に気づく。
「通信障害? 先ほどまでは無事だったのに、何故唐突に……」
「あれの仕業でしょうかしら」
セシリア・オルコットの言うあれ、とは未確認機のことだろう。確かにレーダーに引っかかる事無く学園のアリーナまで侵入が出来たあの機体なら、ジャミング装置の一つや二つ、積んでいてもおかしくはないと思うのだが、それをする理由が分からない。私は一度、機を止めて未確認機の解析を行う。
「……いいえ、あれは完全に機能を停止しています」
解析結果から言うに、あの機体が原因ではさそうだ。
セシリア・オルコットとの通信はコアネットワークを介したものであるから無事なのだろう。他の機体との交信ができれば外部との連絡ができるのだが、生憎と私がコアネットワークを介して交信可能な機体の最後の一機は、アリーナの地面で意識を失っている織斑一夏の白式だけだ。
「仕方がありませんね。出来るだけ早く、回収を…………」
『もーしもーし。キャロりーん、きこえてるー?』
回収を、と言いかけたところで、聞き覚えのある声がプライベートチャネルで、私の耳へと届いてくる。
会話したことは一度しか無いが、何度も聞いたことのある声だ。予想していなかった人物からの、想像していないタイミングでの通信ではあったが、あまり動じることは無くプライベートチャネルを用いてそれに応じる。
『ISの通信状態自体は良好です……ところで、何用でしょうか?』
『あははっ、驚かないんだねえ』
驚くことなんて何もない。ISの製作者である彼女がコアネットワークを使って私の機体にコンタクトを取る事が出来るかどうかなど――私に接触してきた理由の不明さという点を抜きにすれば、十分に想像出来る事なのだから。
『せっかく束さんが話しかけてあげたんだからさ、もっと喜んでくれてもいいんじゃない?』
『…………貴女は、何がしたいのです?』
よりによってこのタイミングで通信を行ってくるなど、自分が仕掛人と明かしているようなものだ。それが分かってない篠ノ之束ではあるまい。いや、もしかしたら彼女は、そんなことはどうでも良いとさえ考えているのかもしれない。
常軌を逸していると言っても差し支えないその発想に心の中で嘆息しつつ、私は彼女に通信してきた意図を問いかける。篠ノ之束は嬉しそうに、弾んだ声音で答えた。
『優しい束さんからキャロりんに耳寄り情報を一つ教えてあげようと思ってね!どう、聞きたい?』
『…………』
『聞きたいよねえ! だっからぁー、特別に教えてあげちゃうよ!』
無言を肯定と受け取ったのか、それとも私の意志なんてどうでもいいのか。おそらくは後者であろう、彼女は畳み掛けるように言葉を続けていく。私はそれを、聞くことに徹する。
『なんとなんとー? たったいまそっちに、新しい機体が向かっていまーす!! 到着まで後30秒くらいかな。今度のはさっきのよりも手こずるかもしれないね、なにせ今度のは束さんが作ったわけじゃないからね』
『それを誰が作ったかは、教えて頂けないのですね?』
彼女が作ったわけではないなら、誰の手によるものだというのだろうか。公に知られている篠ノ之束の人格的にも、誰かと手を組んで何かをするという性格には到底思えないのだが。
私の思っている事を読んだかどうかは知らないが、彼女が笑みを深めたように感じる。
『"それ"ねーぇ…………ふふふっ、現物を目にすればわかると思うよ。キャロりんならさ』
『……了解しました。情報提供に感謝します』
これ以上は得られる情報は無いと判断し、私は彼女に一応の感謝の言葉を口にする。
『どういたしましてー! それじゃあ――』
『いずれ御礼をしに、そちらへ伺います』
それじゃあ、と会話を終えようとした篠ノ之束の言葉に途中で割り込む。
いずれ――――今はまだ、彼女が何処にいるかは知らないが、いつかは今回の件も含めて埋め合わせをさせる。
『――――』
そう伝えた瞬間、無言になった篠ノ之束が何を考えていたかは分からない。
だが、怒りではないと思う。
『楽しみに、してるよー!! あははははっ!』
そうでなければ、これ程上機嫌には笑わないだろうから。
そうして、耳に残る笑い声を残しながら篠ノ之束は此方との通信回線を切断した。時間にして僅か数秒の会話だったが、此方からの逆探知も接続も不可能なようにされている。そういうところは、抜かりなしなのも相変わらずだ。
まあいい、どちらでも構うまい。余計な考えを切り捨てた私は上空を見上げる。そのまま視覚を強化し、僅かな空模様の変化すら見逃すまいと、隅から隅へと睨みを効かせていく。
「キャロルさん、どうかなさいましたか?」
傍から見たら奇行に見えるのは百も承知だ。しかし、嫌な事だが篠ノ之束は嘘はつかないのだ。口にしないことはあっても、口にする言葉は全てが真実なのだ。
「セシリア・オルコットさん、貴女の機体は一夏さん達二人を同時に抱えての行動は可能ですか?」
「……ええ。幸いにも二機のPICは稼働中のようですし、わたくしのとパターンを同調させればそう難しいことでは……」
空の一点、そこに接近してくる白い影を見つけると同時に、ISが敵機接近を知らせる警告を発する。
「また敵機ですの!?」
即座に戦闘態勢に移行。内蔵するミサイルを放出し新たな敵機へと向かわせる。弾道を青い光で残しながら高速で飛翔する誘導弾頭の迎撃は、その全てを回避される結末に終わる。
「私が迎撃します。セシリア・オルコットさん、貴女は二人の回収を」
「学園の突入隊の方は……期待できませんわね」
未だに突入してこないのだから、突入隊の方で何らかのトラブルが発生したのだろう。セシリア・オルコットはその可能性を示唆しつつ、私からの指示を了解する。一対一を不得意とする機体で、特性もわからない敵機に挑むほど愚かではないということだ。
彼女が行動に入ったのを背後からの視覚情報から確認すると私も両手に武装を展開、高度を引き上げる。PICが甲高い唸り声を上げ、背部のブースターが炎を噴出する。爆発的な加速を行ったことで視界が狭まるが、敵も一直線に向かってくるから何の問題もない。敵と接触する三秒前、右手に展開したレーザーブレードの刀身を展開し、横薙ぎに振るう。
刀身が大気を裂いていく音の直後に高エネルギー同士がぶつかり合い、接触した部分で小規模の爆発が起こる。それを膂力とブースターの加速で無理矢理抑えこみ、同様にレーザーブレードを展開していた敵と火花越しに睨み合う。
「また全身装甲ですか」
「ガ…………」
Y字状ラインアイが、その機体の装甲と同様に白く発光する。
「ガァアアアアアアアッ!!」
雄叫びという表現が酷く似合いそうな叫び声と同時に敵機の膂力が増大。鍔迫り合いの状態から強引に振り抜かれる。
「ヴルゥアアアアアアアアッ!!」
そして、姿勢を崩した私へと持ち替えた左手の武装を叩きつけようとしてくる。その武装の形状を見、途端に背筋が凍りつく。ヒートパイル――――直撃すれば、落とされる。
「ブラックバード!!」
脚部スラスター点火。みじめに空中を回る格好になるが、つま先で敵の腕を蹴りあげ、弾く。しかし、敵機の杭が射出されることはない。その代わりに、私に突きつけられたのは大口径の拳銃。
「ブラフですか――――」
獰猛な獣が、無機質な装甲の下で笑う。
火薬の炸裂音が連続し、私の身体を衝撃が襲う。
「っ……!!」
被害状況を確認する暇もなく、次の攻撃がやってくる。
再度武装を持ち替えた敵機の繰り出すレーザーブレードを、脚部に展開したレーザーブレードで受け止めるが、姿勢が悪く、長く持ちそうにはない。
多少の衝撃は覚悟し、両肩の非固定部位から多連装ロケットを射出。
「ヴルァア!?」
自爆は想定していなかったか、敵機は僅かに驚愕を感じさせる叫び声をあげながらロケット弾の爆発に包まれる。
私の方でも、至近距離で起こった多数の爆発にISの絶対防御機能が働き、多量のシールドエネルギーを持っていかれるが敵を我が身から引き離すことには成功。
「仕切り直しには成功」
「グゥル……」
爆煙の中から現れた敵機は白い装甲に幾らかの損傷は見えど、その戦闘力を喪失するには至らず。
「ガァ゛ア゛アアアアアアッ!!」
想定していなかった損傷に激昂し、敵機は襲い掛かってくる。先程までは使わなかった瞬時加速まで用いて、私を左手のパイルで貫かんとして互いの距離をゼロに縮めようとしている。その攻撃は先程よりも鋭く強く、そして速い――――だが、対等な条件であるならば、私が速度で負けることなどあり得ない。
射出された杭と、先端に取り付けられたHEAT弾は何もない空間を貫く。
攻撃の主は、数瞬前まで確実に捕捉していた筈の対手を見失ったことに驚愕し、周囲を確認することも忘れる。
「貴方には、この場で落ちていただきます」
上空から聞こえた声に思考を取り戻す。対応するべく上空を見上げた瞬間には全てが遅かった。
突如として落ちてきた二つの青い光に両腕の付け根を貫かれる。その光の発生源には、先ほど見失った対手が――――キャロルが、居た。
「――――!!」
もはや、捉えられた”それ”に叫び声を発する暇もない。ただただ、地面へ向けて加速を続けるブラックバードに空中を引きずられ、その勢いのままアリーナの地面へと叩きつけられる。
轟音とともに巨大なクレーターが出来上がり、衝撃波によって砂が勢い良く打ち上げられて両者の姿を覆い隠す。
ざらついた音と同時に舞い上げられた砂は落ち、覆い隠していた二人の様子を確認出来るようになった時、そこには落下した時の状況のまま、睨み合う両者の姿があった。ブラックバードの脚部レーザーブレードによって両腕の付け根を貫かれている敵機に対し、その鼻先へと、キャロルは右手に展開したレーザーライフルを突きつける。銃口にエネルギーが収束していく。大気が歪んで見える程の電力がその膨大なエネルギー量を物語っている。彼女の顔はバイザーに覆われ、表情を伺う事は出来ない。
「生体反応は確認できず。無人機と断定――――破壊します」
解析を終え、敵機から生体反応が確認できず。キャロルはこの敵機も、先程の未確認機と同様の無人機だと判断。完全に破壊するべく引き金にかけた指に力を込めようとする。だが――――
「ヴゥ……ル、ア゛ァアア、アアッ!!」
敵機も黙ってはやられない。機体の限界を超えて機体を稼働させて強引に左腕を動かし、再装填の済んだ左腕に持つ射出装置からHEAT弾頭の取り付けられた杭を射出する。その際、貫通しているレーザーブレードの刀身が機体の内側を切り裂き多大な損傷を負うが、敵機を倒せるのならば関係ないと、軋み、火花を散らす関節部を稼働させてキャロルを狙う。
しかし、無情にも先程と同じ光景が繰り返される。
射突した杭とその先端に取り付けられた弾頭が、急上昇したキャロルの機体にかすめる事は無く、ただ虚空を貫く。その直後、限界を超えて稼働させた代償として左腕が全ての機能を停止する。
だが、それでもまだ右腕が残っている。ハンドガンから連装パイルへと武装を持ち替え、敵機は咆哮をあげる。ノイズの混じり始めた雄叫びは既に敵機の限界が近い事を示している。そのような状況にあっても、思考ロジックに撤退の二文字は存在しない。
アリーナに出来上がったクレーターの底で上空から己を見下ろしているキャロルを睨む。ブースター点火、出力最大。機体の出せる最大の加速を行い、連装パイルを構えながら真正面から突っ込む。
「ガァアアアアアアアッ!!」
発砲音が一つ、連続してアリーナ内の空間に反響する。
青い光の矢が、白い装甲を貫く。先ほどまでの攻撃でシールドエネルギーの殆どを失っていた敵機は、ただ威力のみを突き詰めたレーザーライフルの破壊に耐える術を持っていなかった。
装甲を貫き、機体内部へと侵入を果たした高密度のエネルギーによって内部の機械系統の尽くが破壊されていく。
「敵機沈黙を確認。戦闘モード終了……」
墜落し、炎上する敵機を見下ろしながらキャロルは戦闘の終了を誰に向けてでもなく告げる。アリーナの中で動く者はキャロル以外に居ない。物言わぬスクラップとなった敵機の骸からキャロルは視線を外し、機体を動かす。そしてそのまま、先程自分がアリーナの空へと飛び立ったピットへ向かって進路を取る。
アリーナには、白と黒、二つの機体の残骸だけが残されてた。
クラス代表戦における戦闘はとりあえずこれで終わりです。
本当ならもっと色々やりたいことはあったのだけれど、上手く詰め込む事ができなかった、反省。
更新の遅さも含め、反省する点ばかりです。
次は事後処理や事件を振り返る後日談的な感じで、通信障害の理由やら突入隊に起こっていた事の説明会になると思います。
誤字脱字などあれば教えていただければ幸いです。
※会話の時間について
この回は、プライベートチャネルを用いた秘匿通話は思考を相手に直接送りつけるというようなものだという自己解釈を基にする設定を付け加えています。
思考を直接送りつけているので、口で同じ内容の会話をするよりもはるかに短い時間で会話を終える事が出来るというイメージです。