女オリ主による原作介入モノ(非転生、女オリ主、習作) 作:杭打折
「はぁうっ!?」
「お嬢様?」
「何でもないわ、虚……うぅ、拒否してって言われた……」
生徒会室にて。唐突に変な声を上げた更織楯無に、布仏虚は怪訝そうな表情で彼女に声を掛ける。
更織楯無は大丈夫、と言って手をひらひらとさせるが何があったのか、しなしなと会長机にうずくまった。
「また、簪様のお部屋の盗聴ですか?」
「盗聴だなんて人聞きが悪いわよ、虚」
彼女がイヤホンを片耳に着けているのに気付いた虚はちょっとだけ呆れながら、むくりと身体を起こした楯無に淹れたての紅茶を差し入れる。
「まだ、相室の方に警戒をなさっておられるのですか?」
「仕方ないでしょ。止めるようにとは言われたけど、怪しさ全開なんだから監視は外せないわ」
楯無はうんざりとした口調で肩を落とす。学園の上層部が何を掴んでいるのか分からない。秘密主義なのは別に構わないが、今回の一方的過ぎるやり方に対しては不満を覚えていた。
「ですが、お嬢様がそこまで背負う程の事でしょうか。別の方に任せればよいのでは?」
「簪ちゃんの私生活を知らない誰かに見せるなんて駄目! 絶対駄目なんだから!!」
真面目な表情から目をかっぴろげ、凄まじい勢いでまくしたてる更織楯無。公私混同して調査を自分で続行するほど、妹に対して溺愛する楯無に内心で嘆息。だが、考えてみれば自分も妹の本音の私生活を誰かに監視させるというのはいい気分はしない。どうせ菓子を食べて雑談してる位だろうが。そう思ってしまうと強く出れず、楯無の行いについてはあまり口出しをしないようにと決めた虚は机に戻って生徒会の業務をこなしていく。
「っはあ…………」
虚が机に戻った後、二人の会話が終わったらしいので更織楯無はイヤホンを着けたまま肩の力を抜く。
考えるのはキャロル・オルフィレウスという女子生徒の事。
調査を進めていき、なんとかして彼女の所属するという企業は調べられた。だが、その企業を調べて得られた彼女の情報は、それだけ見れば矛盾の無いものだった。だが、その違和感の無さこそが更織楯無にとっては違和感の塊でしかなかった。
これまで監視を続けて来たから確信を持って言えるが、キャロル・オルフィレウスという個人の能力は非常に高い。戦闘能力に関しては生身ではどれ程の物かは分からないが、ISを使った戦闘ともなれば自分と渡り合う事も出来るだろう。
技術者としての能力も、学園の整備部や技術研究部の面々と比較しても非常に高いと言えるだろう。特に、これまでの訓練で高機動戦闘において高い戦闘能力を見せている彼女の専用機体「ブラックバード」――――この機体は、彼女が設計から開発に携わったものであるとも言っていたらしい。
仮に、このような人物が今年度に入るまで、どこからも名前を聞かずにいるものだろうか。答えは否である。
「そうだ虚、あの子の専用機について何かわかった?」
「申し訳ありません。全力を尽くして調べたのですが……」
楯無の問いに、虚は申し訳なさそうに報告する。楯無から任されていたキャロル・オルフィレウスという女子生徒が使用している専用機「ブラックバード」の調査。
この仕事は、全てのISに情報開示義務が存在しているという事を考えれば然程難しくないはずだった。だが、実際はその当たり前の予想を裏切って、彼女のISについての調査は一切の進展が無かった。
「仕方ないわね、別の方法を考えておくわ」
アラスカ条約により、全てのISの情報については開示義務が存在している。だが、何故か彼女の機体だけは巧妙な隠蔽工作が行われている。苦労して手に入れた情報も、どれもがダミーのデータしか存在していなかった。実物は学園内にあるのだからそれを調べればと思われるかもしれないが、調査に圧力がかかっている今では動きづらい。同じ理由で、学園の情報網を頼るという手段は使えない。
国際IS委員会のデータベースに何度か侵入もしたが、登録されている情報は精巧だが、ちゃんと読めば嘘と分かるものばかり。出来る事と言えば、学園内の行動を監視するだけ。
IS学園だけならず、国際委員会に対しても隠蔽をされていた機体と経歴不詳の操縦者。その背後に何らかの存在を感じながらも、それを洗い出すにはリスクが大きすぎた。結論から言えば手詰まりである。
だが、学園や委員会に対しても相当な影響力をを行えるような存在。どんな背後関係があるとしても、普通の生徒ではないという事だけは確信を持って言えた。
「あーっ、もう! なんで今年はこう、厄介ごとばっかりなのかしら」
ぎし、と全体重を預けてもたれかかった背もたれをきしませた楯無は、無意味とは知っていても愚痴をこぼさずに居られなかった。
「お嬢様……」
その姿を見かねて、虚は楯無へと呼びかける。必要であれば休憩を挟むことを進言しようという考えからだ。
更織楯無という人物は腹の内を読ませない。だが、彼女が今どんな気持ちかが分からないようでは彼女の従者は務まる筈もない。布仏虚は、彼女を理解している数少ないうちの一人だった。
「ありがとう虚ちゃん。大丈夫よ、だいじょーぶ」
声を掛けられた楯無は虚の意図も内心もを知っていた。虚が更織楯無の理解者であると同時に、彼女もまた布仏虚の理解者なのだから。
更織楯無はいつものように扇子で口元を隠すように広げて笑顔を作る。広げられた扇には、心配無用と達筆な字が鎮座していた。
篠ノ之箒は苦悩していた。
それは、今回の襲撃において篠ノ之箒という個人は何をする事も出来なかったことに起因する。
自分と同じく、一夏の幼馴染であるという鳳鈴音は最初の襲撃に際して一夏と共に戦い、これを撃破。
同じクラスのセシリア・オルコットは襲撃の後、行動不能になった二人を回収し、助け出した。
ある分野においてライバル視しているキャロルは、襲撃に際して敵から施設の制御を奪還。それだけでなく、二度目の襲撃の際には迎撃に上がり、単独でこれを撃破した。
その場で自分に何かが出来たとは思わない。ならば、気負う事もないのだろう。一夏たちが、自分と然程繋がりの無い人物たちであれば、彼女もそう思えたのかもしれない。キャロルたちがただのクラスメートであれば、割り切る事が出来たのかもしれない。
事件後、自分にそう言い聞かせて一夏の病室へと改めて見舞いに行った箒は、病室の前まで来て、結局その中に入る事が出来なかった。病室内ではキャロル主導のもとに本日の襲撃に関しての情報共有が行われており、ただ見ていた自分が入って行けるような空気ではなかった。結局彼女は、そのまま自室まで帰ってきてしまったのだ。
「何もできないな、私は……」
一夏が病室泊まりという事もあって、一人で使う事になる寮の自室で箒はぽつりと言葉を漏らす。
箒の現状を生み出しているのは己が無力な事。だが、解決の方法は単純だ。自分も、専用機という自分だけの力を手に入れればいい。その為に自分が頼れる相手となると一人しかいない。
その人物に頼る事は、嫌だった。自分とは正反対に力に溢れた人だったから。彼女に頼る事は結局、自分の無力さを見せつけられてるようにしか感じられなかったからだ。
「ええい!そんなこと、知った事か!」
篠ノ之箒は決意する。
どうにかして、自分も力を得ない事には何も始まらないのだ。今後、この様な事件は起きないのかもしれない。だが、今のままでは周囲に、一夏に置いて行かれてしまう。そうならないためには、彼等について行けるだけの力を手に入れなければならない。
「私には力が必要なんだ……そのためには……!」
彼女が睨むように見つめる先。携帯電話の表示パネルには、篠ノ之束の名前が踊っていた。
やっておくイベント=箒ちゃんの事。
彼女の事をあんまり取り上げてなかったことに気付いたので急きょ補足。
楯無のところはおまけ。正直、最初の落ち込む楯無がやりたかっただけ。
一章終了時点のキャラ設定はこれから書きます。