女オリ主による原作介入モノ(非転生、女オリ主、習作) 作:杭打折
二章1
爆発と光。熱風が吹き荒れ、焼けた金属と肉の臭いが、鼻の奥へと突き刺さる。
荒れ果てた世界。それを見据えて浮かぶのは諦観と――――
夢を見ていた。
酷いノイズが走ったような”誰か”の記憶。
それがいつなのか、場所はどこなのか?
ほぼ劣化し、摩耗したような記憶ではあるが、これらを示す情報ははっきりと自らの内に記録として残してある。
決して忘れる事のない、自らを突き動かす根源になっている最初の想い。
どれだけ新しい情報で自らを書き替えていっても、どれだけ劣化しようとも、絶対不変の記憶として己に刻み込まれている。
あの日、全てが奪われた”誰か”は、終わりを迎えた誰か自身の世界と一緒に死んでしまったのだろう。
だがそれでも、自分は今も生きている。
”誰か”は死んだ。
だが、今も生きている自分はその記憶を持っている。
だから自分はその正しさを証明しなくてはならない。
そうする事が、自分が生きている事の何よりの肯定なのだから――――
「なんか最近、箒の様子がおかしいんだよ」
ある日の朝食の事、織斑一夏からそのように言われた。私は焼き魚定食のメニューの一つである味噌汁を持ちながら最近の事を思い返してみる。
そう言われてみれば、確かに篠ノ之箒の様子はおかしいかもしれない。
訓練の際にもどこかぼーっとしていたり心ここにあらずといった様子になる事が多かったり、何処か思いつめたような様子を見せたりとするのだ。
「言われてみればそうかもしれませんね。何か原因に心当たりは?」
「それがさっぱり。代表戦が原因じゃないかとは思ってるんだが……」
代表戦で何かあったかと聞かれれば、彼女に関しては何も無かった。だが、彼女の性格から考えてみても何も感じなかったという事は有り得ない。むしろその逆で、何もできなかったからこそ思いつめるという事の方が有り得そうなものだ。
特に彼女の場合は、織斑一夏を中心としたコミュニティの輪の中では一人だけ専用機を持っていないという事もある。そう言った点で疎外感を感じているのかもしれない。
「過日の事件において彼女だけはあの場に出ませんでしたからね。そこに引っ掛かりがあるのでは?」
「たぶんな。俺もそう思うんだが、どうしてやったらいいか分からなくてなあ……」
織斑一夏は私の言葉に頷く。どうやら彼もその辺りに原因があるのでは、と思っているが篠ノ之箒との接し方に悩んでいるらしい
彼の困った様子を見て私は一度箸を置いてから考える。彼女は一言で言えば気難しいタイプの人間であると思う。その性格を悪いと言うつもりはないが、こういう状況では何にどう反応するか想像しにくい。
「やっほー。あんたたち朝から重っ苦しい空気漂わせて何してんのよ」
私達が二人で頭を抱えていると、明るい声が掛けられる。目を向ければそこにはトレーに油条と呼ばれる中国の料理と、サラダの皿をトレーに載せた鳳鈴音がやってきていた。
「空いてる席使うわよ、良いわね?」
「おう」
「どうぞ」
私達が答えるとすぐに空いてる席―――位置で言えば織斑一夏の隣へと腰を下ろした鳳鈴音。
「んで、何の話してたの?」
彼女は食事を始める前に、私達へと先程の話題の内容についてそう問いかけてきた。彼女は別のクラスだが、此処最近――――代表戦での襲撃以降は、共に訓練をしていたりと普段のメンバーの一人でもある。
「ほら、箒の事だよ」
「ああ、あの子ね。確かに最近、妙に浮ついてるのよね」
理由は知らないけど、と言った鳳鈴音に織斑一夏は喰い付く。
「浮ついてる? あれでか?」
「何か待ちきれないって感じでしょ、あれは。っていうか、幼馴染ならそれくらい気付いてあげなさいよ」
織斑一夏は幼馴染という単語にうぐ、と言葉を詰まらせる。それを見た鳳鈴音は大きくため息を吐いてから持ってきた朝食を食べ始めた。
「そーいえば……」
「ん?」
「最近部活にも出てないみたいよ。剣道部の子に聞かれたわ」
「部活にも、か……」
むむむ、と考えこむ織斑一夏。私と鳳鈴音はその様子を横目に見ながらも口は挟まずに朝食を食べ進めていく。
空?からしばらくして、織斑一夏は顔を考え込むように俯いていた顔を上げた。彼は妙に得意気な笑みを浮かべていた。
「そうだ、良い考えがあるぞ!」
「いい考え?」
「ああ」
鳳鈴音の怪訝そうな声音で掛けられた問いかけに頷いた織斑一夏はその「いい考え」というものを話し始める。
「――――ってわけだ」
「あんたにしては面白い考えね」
「一言余計だ、鈴」
ニヤリと笑い合う織斑一夏と鳳鈴音。
代表戦から今まで、織斑一夏と彼女の関係を見ていたが同じ幼馴染であっても篠ノ之箒とはだいぶ違うなと思う。鳳鈴音に対しての方が、篠ノ之箒に対してより気心知れた仲という印象に感じられる。
聞く話によれば、織斑一夏と篠ノ之箒は小学校時代に一度交友関係が途絶えており、鳳鈴音とは中学時代までの友人というのだから、期間的にも近いというのが理由なのかもしれないが。
「キャロルはどう思う?」
「やってみる価値はあるかと思います」
「なら、決まりだな」
今日は休日で授業は行われないのでそのまま続きの打ち合わせが行われた。滞りなくその打ち合わせは進み、その後に解散となった。結論を言えば、私は織斑一夏の提案を手伝う事となった。
役割分担はと言えば、織斑一夏も鳳鈴音には必要な情報の収集をメインに動いてもらい、私がそれらを整理するという事になった。
この時期にやる事は増えるのは痛いが、私の所属する放送部の仕事は当番制ではあるから構わないし、その作業はもう慣れているものなので大変でも無い。だから更織簪の手伝いをするという約束に対しても影響はあまりないだろう。でも空き時間は作らないといけないから、色々と予定の調整を――――
「ふむ
「……どうしたの……?」
部屋で予定の調整を行い、出来上がった予定表を見たところで独り言を零す。その時丁度、隣では更織簪が朝食から戻ってきた後だった。私のつぶやきを聞いた彼女はどうしたのかと問いかけてくる。
「いえ、大したことではないのですが少々予定の調整をしてたので」
「そう……そういえば、今日は何時始める……?」
私の返答に対して更織簪はそこまで興味があるようでも無いらしい。適当に話題を終わらせると、今日はいつ始めるかという事を聞いてきた。
「もう少ししたら始めましょうか」
「ん、わかった……」
今の出来上がった予定を基にして、再度スケジュール調整を行おうか。いや、その必要があるかどうか。
色々とやるべきことを増やし過ぎた気がしなくもないが、これが終わればもう夏休みは間近である。休暇前の一仕事という気分で丁度いいかもしれない。それに、プライベートな時間が増えたとしても消化の仕方は装備やらブラックバードの調整くらいのものである。
大してやる事も無く過ごすより、忙しくしてた方が落ち着くというのも事実だ。
「予定はこれで良いでしょう」
その後、更織簪との作業中に雑談で話題になったので、そういった内容を話したら若干変な目で見られたような気がした。
とりあえず、二章の始まりです。
相変わらず投稿スピードは遅いですが、どうにかがんばります。
この章から原作と乖離する部分とかが増えて行くようになると思いますが、いっそう生暖かい目で見ていただければ幸いです。