女オリ主による原作介入モノ(非転生、女オリ主、習作)   作:杭打折

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二章2

 早朝。目を覚ました私はまずは顔を洗いに行き、そこで髪も整える。少し伸び始めている前髪に、そろそろ髪を切るべきかという考えが浮かぶ。

 

「ふむ……これは、トーナメントが終わったらにしましょうか」

 

 だが、暫くは集中したい事が多数あるので後回し。次の行事であるトーナメントが終わった後にしようと決め、私は櫛を置いて眼鏡をかける。

 

「最新情報を更新」

 

 音声認証による操作を行い、ネットワークとのリンクを開始。私の眼鏡は携帯端末と同期しており、ネットワークの情報を受信してそれをディスプレイに表示させる事が出来る。空中投影したディスプレイでの操作も可能だが、音声での操作が主だ。

 少し待っているとディスプレイを兼ねたグラス部分に幾つもの情報の羅列が表示され、スクロールしていく。

 真っ先に目に入ったのは中東を主にした紛争地帯での武力衝突の頻発化。治安の悪化とそれによる情勢不安。欧州方面に関して、あまり良いニュースは見られない。

 ユーラシア大陸方面では中国が第三世代機として「甲龍」を正式に発表。アメリカの「ファング・クエイク」に対抗してのものとみられる。

 各地のニュースを受信し、それを読み進めていると短い電子音が鳴らされる。グラスに表示されているニュースを消すと携帯端末を手にし、操作して画面を見る。

 電子音の正体はメールの受信を知らせるものであり、見覚えのないアドレスからだったが、件名を見て納得する。

 

「シミュレータの実機調査について……ですか。成程、そう理由をつけてきますか」

 

 内容を読むと、集合時間と場所についてが記されていた。手短に用件だけ記されているのは彼女らしいと言えばらしいのだろう。断言できるほど彼女の事を知らない私だが、織斑一夏にでも話せば苦笑しながらそんな事を言いそうだ。

 時間を確認すると、指定された時間まで30分ほど余裕がある。ゆっくりと準備をする事にしよう。

 

 

 予定の時間の10分前、私は指定された場所である倉庫まで来ていた。朝という事もあるのだろう、普段から人の気配がない倉庫だが、普段以上に人の気配が感じられない。

 自分に割り当てられている区画まで来ると、ちょうどコンテナとシミュレータ前に立っている織斑先生の姿を見つける。同時に織斑先生もこちらに気付き、先に口を開いたのは彼女であった。

 

「遅かったな、オルフィレウス」

「早いですね、織斑先生。私が先に着くと思っていたのですが」

 

 織斑千冬は、当たり前だと言って腕を組む。

 

「此処についてからそっちに連絡をしたからな」

「なるほど、納得です」

 

 それならば私が先に来れるはずもない。彼女がそれだけ早くに来て何をしていたのかという疑問は残るが、それがどうしたという程度。あまり気になる内容でも無い。

 

「始めるぞ、どっちに入ればいい?」

「どちらでも構いません。操作については、以前に提出したマニュアルの通りです」

「そうか、分かった」

 

 短く返事をした織斑千冬は手近な方のシミュレータへと乗り込む。私もそれに続き、もう一方へと搭乗。各種機材を装着し、システムチェックを行ってからシミュレータの作り出す仮想現実へと入り込む。

 

「――――これは、面白いな」

 

 入った先では、打鉄の装甲を纏った織斑千冬が剣を存分に振り回していた。すでにこの空間内の感覚には適応しているらしく、彼女は自在と言うようにその身を動かしている

 

「何をしているのです?」

「ん? いや、久々の感覚に少々気分が高揚していたらしい」

 

 ふうと一息ついて、織斑千冬は私に向かって中段の位置で構えをとる。

 

「始めるぞ、オルフィレウス」

「訓練も実施するのですか?」

「無論だ、何のために時間を取ってやったと思っている」

 

 開発中の装備や機体の実働試験前のテスト用です――――とは言わない。言ったらその瞬間に彼女は斬りかかってきそうだし、そういう時の彼女の攻撃は躱せないような気がする。気がするだけなので実際は避けれるだろうが。彼女と模擬戦を行う事について、やろうとしている事には何の支障もない。そして、実際にテストが行われたとしなければ、今回の時間に何をしていたのだという話になる。

 

「分かりました……では」

 

 二の腕の装甲に装着されているレーザーブレードを抜き放ち、刀身を形成。織斑千冬が持っている打鉄の実体ブレード”葵”に比べれば短いが、私にとっては丁度良い。そして、刀身に重さの無い特性であるから、高速機動を主とする私の戦法においても邪魔にならない。

 

「始めます」

 

 空中で姿勢を低くするように前傾姿勢を取り、構える。

 

「よし、来い」

 

 織斑千冬の言葉を合図に、私はブラックバードのスラスターに火を入れる。高い出力で機能したPICが私の身体を瞬時にトップスピードまで引き上げる。織斑千冬との距離を詰めるのに一秒とかからない。

 大型ブレードの懐へと潜り込む。姿勢を低くしたまま織斑千冬を私のブレードの有効圏内に捕えたところで、彼女と目があった。瞬間、反射的に全ての動作を中断。ロールするような軌道を取って回避行動に移る。頬を掠める鼠色の私の顔面を掴もうと先読みした位置に置かれていた織斑千冬の手、その指。

 

「なっ……!」

 

 こちらの動きを正確に視界にとらえていた事に対しては驚きと同時に、彼女ならば当然かと納得を覚える。確かに”この程度”なら、出来て当然なのだろう。

 彼女の脇を通り抜け、離れるように回避した私は彼女が手にするブレードの有効射程で反転し、振るわれた長大な刀身を、レーザーブレードで受け止める。対光学兵器用の処理が為された刀身と鬩ぎ合うが、拮抗は長くはもたない。

 押し切られる側である私は、その勢いに身を任せるようにPICの制御を一旦手放す。人間では為しえない膂力で弾かれ、バットに打ち出されたボールのように飛ばされる。その勢いを使いながら、私は左手にアサルトライフルを展開。同時にPIC制御を行い、後退しながらトリガーを引く。秒間にして30発の弾丸が銃口から放たれる。

 空中から自由落下するように滑らかな動きで下から潜り込むような起動を描いて追撃してくる織斑千冬。私が銃口を向けていた瞬間には既に行動に移しており、私の反撃を意に介する事なく再び距離を詰めてくる。急接近の加速のままに繰り出された突きを、アサルトライフルのバレルで逸らしながら距離を詰め、再び繰り出してきた彼女の拳をアサルトライフルのグリップを手放し、掴んで受け止める。

 

「器用だな、咄嗟の判断力も悪くない」

「光栄です」

 

 言葉を交わすのは一瞬。お互いに次の行動へと移行する。織斑千冬は私の手を掴んだまま、抑えていたアサルトライフルが消えて自由になったブレードを引く。脇腹から私の胴を叩き切ろうとする”葵”に、レーザーブレードの柄を握ったままの片手を振りおろす。金属同士がぶつかる鈍く甲高い音が響く。力任せに振り下ろされた私の拳に、押し戻されたのは織斑千冬のブレード。しかしそれでも、武器を手放さないのは流石ブリュンヒルデと言ったところなのか。いや、この程度ならば当たり前か――――この程度?

 

「…………」

 

 ふと、自分の中に浮かび上がってきた考えに疑念を抱く。先程から繰り出される織斑千冬の卓越した戦闘能力は、彼女のような存在だからこそ為し得るもの。それをこの程度と評価をする事は、一人の学生、一人の研究者上がりの操縦者にすぎないキャロル・オルフィレウスにとって許される筈もない。だというのに、何故―――――

 

「何を考えているかは知らんが、今は戦闘に集中しろ!」

「ッ――!!」

 

 

 投げかけられた叱責に、数瞬前までの思考は彼方へと消え去ってしまう。

 私の気の緩みを見抜いた織斑千冬は、握られたままの拳を引くと見せかけて、此方の手を思い切り握り返す。私は咄嗟に刀身を短く逆手に持ち替えたレーザーブレードで反撃を試みるが、私の攻撃行動よりも早く手を引っ張られ、姿勢を崩す。

 手を握られ、離脱は不可能。受け身も崩れた姿勢から取るにはもう遅い。まずいと思った時には既に腹部から背中へと抜けて行く衝撃がダメージを伝えていた。

 

「……」

 

 手を握られているせいで、先程のように退避する事が出来ない。織斑千冬は既に私の腹部に突き刺さっていた膝を引き、ブレードを片手で振り被っている。

 それよりも早く、PICとスラスターの出力を全開にする。

 

「なっ!?」

 

 瞬間、私と織斑千冬の身体はトップスピードへと引き上げられ、先程の私のように、織斑千冬は攻撃行動を強制的に中断させられた。

 そのまま織斑千冬の腕を掴んだまま空中を引きずるように加速を続ける。織斑千冬は振り落とされようと握る手の力を緩めているが、私は離すまいと強く握る。そしてある地点で急旋回。そのまま遠心力と慣性の力を利用して放り投げる。

 

「まだ、次があります」

 

機体内部に搭載されたミサイルで織斑千冬を捕捉、ロックオン、発射。放たれたミサイルは複雑怪奇な歪曲した軌道を描きながら、しかし、織斑千冬へとめがけて違わずに突き進んでいく。隙間なく、逃げ場を与えぬように殺到する弾頭。姿勢を立て直した直後、新たな動きを起こすにはすでに遅い。そんな状況に置かれた織斑千冬がそれを回避できる筈もなく。故に、当たり前のように。彼女はアサルトライフルを展開して一部のミサイルを撃ち落とす。そうして生じた弾幕の隙間を塗って、私の攻撃を躱していた。そうして瞬時加速で一気に私の懐へ。

 

「今の状況、暮桜であれば危なかったもしれないな」

「暮桜でなら、そもそもあのような状況にならないと言う事ですか」

「そうとも言う」

 

 織斑千冬が登場しているのは彼女の専用機「暮桜」ではない。ブレード一本しか装備が無かったかの機体とは違い、打鉄には近、中、遠全てのレンジの距離が揃っている。ならば使えるものを使って、それでこその世界最強と言う訳なのか。

 懐に潜り込んだ織斑千冬のブレードは私の首に当たる直前、ピタリと動きを止める。そうして、織斑千冬と私はお互いに動きを止めて見つめ合う。先に口を開いたのは、私だった。

 

「……参りました。手も足も出ませんね」

「それは本気で言っているのか?」

 

 何故か驚いたように、意表を突かれたような表情で織斑千冬は私に言う。

 

「まあいい。それじゃあ今日の本題に入るとしよう」

「分かりました」

 

 これ以上、戦闘に時間を取る事は本来の目的を損なうものであると考えていたので彼女の言葉に頷く。織斑千冬は刀を引き、武装の展開を解く。

 相手側が話をする準備が整ったのを見たところで本題を切り出す。

 

「まず、先日の襲撃の際の話ですが、私がセシリア・オルコットさんと一緒にアリーナに出た事は覚えておられますか?」

「ああ、勿論だ。確か、その直ぐ後に二機目の襲撃があり、お前が迎撃をしたな」

 

 彼女の言葉に頷く。

 

「その直前の事なのですが、プライベートチャネルを利用した秘匿通信が入って来ました」

「それは、何処の誰からだ?」

 

 彼女が眉間にしわを寄せ、若干睨み付けてくるような表情に変わる。送り主がこの学園の人間ではないという事は察してくれているようで、恐らくだが彼女にとっては心当たりのある人間が一人しかいないのだろう。そして、それがまた正解であるから実に性質が悪い。

 

「篠ノ之束博士、貴女のご友人からです」

 

 織斑千冬は整った顔つきを険しく、そして何かを思案するように黙り込んだ。

 




お久しぶりです。
二章は原作二巻相当のつもりなのに、シャルロット達の出番はまだまだ先になりそうな予感。どっかで執筆ペース上げないと。

今回の話での千冬の強さについては、標準設定で打鉄を使ってたり、久々のIS、あくまでの訓練なので本気じゃ無かったり、色々な要因からまあこんなもんかなと。
やる気になった状態の暮桜装備パーフェクト千冬だったら、今のキャロルだと三手くらいで落されます、はい。
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