女オリ主による原作介入モノ(非転生、女オリ主、習作)   作:杭打折

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二章4

 IS学園の剣道場で、竹刀の乾いた音が鳴り渡る。続いて道場の空気を震わせるのは、松の床材を転がるような鈍い音。

 

「次!!」

 

 篠ノ之箒は、先程まで己の稽古相手を務めていた部員から視線を外して壁際で立っていた他の部員へと向く。

 怒鳴りつけるような声で呼ばれたその部員は竹刀を構え、篠ノ乃箒へと掛かってくる。

 女性特有の高い掛け声が肌を打つ。篠ノ乃箒も負けじと返しながら、部員へと掛かっていく。彼女の場合は他の部員達とも比べて少し低めの掛け声が特徴的だろうか。

 お互いに此処と思う部位に竹刀を打ち込んでいくそれは、静と動の入れ替わりが激しい剣道の試合とはかけ離れている。相掛かりと呼ばれるこの稽古方法だが、一人に対して他の部員が休む間を与えぬように掛かっていく姿には気押されるものがあった。

 

「止め!」

 

 暫くして、稽古の終了を告げる言葉が顧問を務める教員から放たれる。やはり、よく響く声で竹刀が防具を叩く音や、踏込む足が床を蹴る音が絶えなかった道場であっても、良く聞こえた。

 部員たちはそれまで続けていた稽古を止め、その何人かは部員が今にも倒れそうな様子でありながらも挨拶を済ませ剣道部の稽古は終わる。

 私は稽古風景の見学を許可してもらった事について、顧問と部長に挨拶と感謝の言葉を口にしてから外で待っていた。

 

「待たせたな、キャロル」

「見学の依頼をしたのは私ですから、お気になさらず」

 

 防具を外した道着姿のままの篠ノ乃箒がやってくる。タオルを首にかけている彼女に、常温のスポーツドリンクを差し入れる。感謝の言葉と共に彼女は受け取り、一口飲んでから見つめてくる。

 

「お前は、何を企んでいるんだ?」

「何の事でしょうか」

「惚けるな」

 

 少しきつい口調で彼女は私に詰め寄る。私の胸元に人差し指を突き立てながら、ずいっと身を乗り出すように顔を近付ける。

 

「普段は私のことなど興味を持たんお前が、急に稽古の見学をさせろと言って来たんだ。疑うなという方が無理がある」

「確かに、それも道理ですね」

 

 彼女の言った事は否定できないことでもある。確かに私も、篠ノ之箒から同様の事を言われたら疑問を抱くだろうから。

 間近で見つめてくる彼女に対し、降参の意を示して肩を落とす。

 

「それで、何を企んでいる?」

「データ収集です。今取り組んでいる作業に必要でして」

 

 此処で偽りを口にしても意味はないと判断し、私は素直に答える事にした。

 

「一夏に頼めば良いだろうに」

 

 私の返答を聞いた篠ノ之箒の反応。確かに、彼女と織斑一夏の動きについては共通する部分が多々あり、そう言った意味では理に適っている発言だ。彼の方が私としても接しやすい部分は多いのもある。

 しかし――――

 

「それも考えましたが、貴女の方が適任ですから」

「何故?」

「単純に、相性の問題です」

 

 それ以外にも理由はあるが、口にはしない。降参し、目的を伝える事はしたものの、全容まで告げる事は無い。これは、織斑一夏達と決めた事であるからだ。

 ただ、言える事があるとすれば、このデータとは篠ノ之箒本人のものでなくてはならなかったという事だけだろう。私が今進めている作業にとって必要で、そのための協力をセシリア・オルコットや鳳鈴音、織斑一夏にしてもらっている。

 

「相性、か……」

 

 私の返答を聞き、篠ノ之箒は何やら難しい表情で考え込んでしまう。タイミングよく、相手の思考が別方向に逸れてくれた事に関して心の中で少し力を抜きつつ彼女の次のアクションを待つ。

 

「まあ、何でも良い。お前が動いてることだから、どうせ一夏絡みの事なんだろう?」

「はい。そういった内容であると、お答えします」

 

 私の返答を聞いた篠ノ之箒は、一瞬だけ複雑そうな表情を浮かべてから大きくため息を吐く。

 

「私には、何をしているのか答えられないのか?」

 

 篠ノ之箒は私を見て、問いかける。

 

「申し訳ありません」

 

 私は彼女に謝罪の言葉を口にする。篠ノ之箒に対して、詳細まで明かす事は禁じられている。そうでなければ、教えている。

 普段の篠ノ之箒の様子から推測するに、これは彼女の機嫌を損ねる対応かもしれないのだが――――しかし、そんな私の予想を裏切って、彼女は至極平然としていた。

 

「別に良いさ。専用機を持たず、代表候補生でもない私では、まず上がれる土俵が違うのだからな」

 

 平然としながら言ってのける篠ノ之箒。前向きな言葉と捉えるには、後半部分が邪魔をしている。彼女は今までこのようなことを言う性質ではなかったように思うのだ。

 まあ、それに対して私が何か言及するとか、そういう訳でもないのだが。

 

「では、私の用事はこれで済みました。また後ほど、教室でお会いしましょう」

「ああ、また後でな」

 

 腕時計の針を確認すれば、まだまだ余裕はあるが、始業時刻は迫ってきている。そろそろ戻って、授業の準備をしておく必要があるだろう。

 私はそう判断して、篠ノ之箒と一言ずつ交わし合ってからその場を後にしようとする――――したところで、一度足を止めて思い出した話題を篠ノ之箒へと振る。

 

「そうでした……一つ、面白い噂を先日耳にしました」

「噂という言葉が出てくるとは珍しいな……で、どんな噂だ?」

 

 同じく立ち去ろうとしていた篠ノ之箒も足を止めて私を見る。

 

「次に行われる個人トーナメント戦ですが、どうやらタッグマッチになるとのことです」

「タッグマッチだと?」

「先日の事件の影響を受けて、生徒間での連携を深める目的があるようですね」

 

 篠ノ之箒はふむ、と小さく声を漏らして腕を組む。考え込んだ仕種を暫く見せた彼女は顔を上げ、私と視線を合わせる。何処となく真剣そうな表情で問いかけてくる。

 

「だが、そうなったらお前達専用機持ちと組もうとする輩も多いだろう。だが、専用機持ち同士で組んだら目も当てられん様子になると思うのが大丈夫なのか?」

「その心配は当然です。なので、学園側も毎年何らかの配慮を行っているようです」

「詳しいな」

「事前情報として少々調べましたので」

 

 前年度に行われた同行事の内容を調べていた際に分かった事である。専用機持ちは毎年居ると言う訳でもないが、代表候補生に関しては毎年二人は居る。彼女等と一般生徒達では操縦に関する経験値に差が生じてしまうのは必然で、過去の大会記録を見ていくと、そう言った生徒達でも大会で渡り合えるような配慮もなされていたのである。

 

「専用機持ちや代表候補生が複数いた場合ですが、専用機持ち同士を初戦で戦わせるのが通例となっていると聞きました」

「何故そんな事をする?」

「初戦で同等の実力者同士を敢えてぶつける事で、候補生の持つ手札を公開させる事が目的、というのが私の見立てです」

 

 候補生たちは学園内に於いては祖国の代表でもあり、またクラス代表も務める事が多い。そんな彼女等は、基本的に自分の実力に対して誇りとプライドを持っている。であるから、余程実力が離れていない限りは、他国の代表候補生と戦う場合、手を抜かずに全力で戦闘を行う筈だ。

 

「成程、手札を開示させて、一般生徒達には彼女達の取り得る戦術を把握させる。対策を練ったうえで挑めるようにする、というわけか……そう考えると確かに、やる気のある奴にとっては悪くない状況だな」

「はい。学園側としては候補生には出来るだけ負けて欲しいと言うのが本音でしょう」

「負ければ、一般生徒の士気は向上し、候補生は奮起する……というわけか」

「そう言う事です」

 

 まあ、負けてあげるつもりなど皆無であるから、出し得る実力は発揮していくつもりだが。

 

「……なあ、代表候補生と一般生徒が組んだ場合はどうなる?」

「恐らくは、代表候補生の存在が優先されるかと」

 

 その場合は相互の実力を鑑みた対戦相手になるように調整が入るだろうとは思うが、やはり代表候補生ないし専用機持ちという肩書きは大きい。

 

「つまり、組めば初戦はお前達と当たる可能性も上がる、と言う訳か……」

「その可能性は、極めて大きいかと」

「なるほど……」

 

 腕を組み、思考へと没頭し始めた篠ノ之箒を見ながら私も考える。彼女が組みたがる相手を想定する。

 何時ものメンバーの中では織斑一夏くらいのものだろう。

 鳳鈴音もセシリア・オルコットとも、タッグを組むという展開が上手く想像できない。逆に、鳳鈴音とセシリア・オルコットの二人が組むと言うのは容易に想像できる。砲身に斜角制限が無い為前衛を張りながらもセシリア・オルコットに援護射撃を行える近中距離型の甲龍に、動けなくなるメリットはあるが、距離さえ取れば多数を手玉に取る能力を持つ遠距離特化のブルー・ティアーズ。組み合わせとしては悪くない。

 だが、篠ノ之箒はこの両者のどちらと組んでも戦果をあげにくいだろう。鳳鈴音と組めば経験不足が足を引っ張るだろうし、セシリア・オルコットに関しては彼女との相性が悪い。

 彼女が組むとすれば、連携を度外視した単騎での行動が可能な相手となる。そうなった場合、当てれば大抵は墜とせる織斑一夏と、私が残る。だが、織斑一夏はともかくとして、私はタッグを組む相手としてはまず成立しないので候補から外す。

 

「それと、一つ聞いておきたい」

「なんでしょうか?」

「お前は、一夏と組むつもりか?」

 

 何故なら、私は既に組む相手が決まってしまっているからだ。

 

「いいえ、その予定は有りません」

 

 だがそれは、織斑一夏ではない。そして、セシリア・オルコットでも鳳鈴音でも無い。

 

「私は、同室の方からの先約をいただきましたから」

 

 私がこの大会で組むのは、更織簪である。

 

「同室の……意外だな。私はてっきり、お前は一夏と組む気でいるものと思ったぞ」

「そうでしょうか?」

 

 何故、そうなるのか。彼と友人関係であるからなのか。

 確かに、彼と組むのも悪くはない。だが、だからと言って彼とペアになる事はそこまで重要なことでもない。それに、私の役割はあくまでも織斑一夏の学園での生活を補助する事だ。この大会で優勝出来なければ彼が退学になるとでもなれば考えたかもしれないが、大会に出て負ける事も学園生活の一つである。ならば、私が彼と組む必要性はどこにもない。

 それに彼は大会に参加するパートナーには困らないだろうし。

 

「何にせよ、組みたい方がいらっしゃるなら早い内に声を掛けた方がよろしいかと」

「そう、だな……まあ、考えておく」

 

 曖昧な返答を返す篠ノ之箒の態度に、やはり違和感を感じる。先程、篠ノ之箒からは私が織斑一夏と組むのではないのかいうような事を言われたが、私としては、彼女こそ織斑一夏と組みに行くと思っていたのだ。

 このことを話した場合、すぐにでも彼にタッグの話を持ちかけると思ったのだが、そうでもない様子である。難しい表情で腕を組み、考え事をしている様子の篠ノ之箒からはその内面までは読み取れないし、予測するにしても、彼女の事を私はよく知らない。

暫くそうして考え込んでいたが、 授業開始時刻が迫っている事を示す放送が流れ、篠ノ之箒はふと我に返る。

 

「っと……そろそろ急いだ方が良いな、時間だ」

「そうですね、織斑先生の出席簿はあまり受けたくありません」

 

 私の言葉に苦笑を浮かべて小さく笑って、篠ノ之箒はスポーツドリンクの残りの入ってるボトルを持って更衣室へ向かおうとする。

 

「確かに、な……それと、差し入れ感謝する。ではな」

「はい、また後ほど」

 

 篠ノ之箒が道場内の更衣室に向かう後姿を途中まで見送ってから、本日得られたデータが、無事に自室の端末へ転送されたのを確認。完了の二文字が見えたところで、私も教室へと向かった。

 




大会に関してはオリジナル設定を少し導入。
初のトーナメント戦で候補生タッグと一般生徒タッグが当たったら悲惨なことになりそうなので。まあ、シード権でええやんという言葉も出てきそうだけど、それだと結局何の事前情報もないまま候補生と戦う事になると思ったので初戦で強いやつ同士ぶつければいいじゃん、と。

まあ、原作だと一回戦しかやらなかった大会だし、個人の習熟度を確かめる為なら実力が近い者同士戦わせた方が良いデータが取れるから良いよね。
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