女オリ主による原作介入モノ(非転生、女オリ主、習作) 作:杭打折
展開に詰まり、幾つかの都合も重なってかなり遅くなりました。
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが――――」
篠ノ之箒と話をして、今日の授業に向けて彼が行った事前学習で生じた質問に対する回答を行って。それから迎えた朝のホームルーム。入学式直後に転校生なんてのは不自然とはいえ、彼という存在があった以上、いくつかの国家が、このように急な動きを見せる事を想定してなかったわけではない。それに鳳鈴音という前例もある。
しかし、だ。
――幾らなんでもこれはない。
それが、現状を目の前にした私の感想である。なぜこんな言葉が出てくるのかと言えば、件の転校生の内の一人が問題であったからだ。
「お、男……?」
誰かが小さく呟いた男という単語。そう、男なのだ彼は。世界で二人目に公表された男性操縦者ということになる。
いや、しかしこれはない。溢れそうになるため息を抑え込み、眼鏡を外して眉間を揉みほぐす。一瞬停止しかけた思考を平常に戻すために、少し回転数をあげて状況把握に務める。
改めて、シャルル・デュノアを見る。中性的な顔立ちに華奢な体つき。身体的特徴だけを見れば男子でないと断定ができない。
ならばこそ、彼のいった言葉や国の後ろ楯で信用されるのだろう。それに、あのデュノアだ。
ISの生産において世界的なシェアを誇る大企業デュノア社。名前からしても、彼がその関係者であることは疑う余地もない。
だからこそ、彼の存在には疑念が生じる。
その疑念とは、彼がIS学園に来たのは何故かという一点だ。
「はい。こちらに僕と同じ境遇の方が居ると聞いて本国より転入を――――」
その言葉を嘘だと言い切るつもりはない。しかし、織斑一夏という存在が明るみに出るだけで各国が日本政府に干渉を仕掛けて来たことは公然の事実だ。
そして彼が国際委員会預かりとなって学園に入学させられたのも、日本政府と、お互い牽制しながら織斑一夏を抱え込もうとする各国の言葉で殴り合う交渉の末の結果なのだ。
そんなことだから、たった一個人のために日本政府首脳は数多の国の大使から引っ張りだこで、外も内も蟻の巣をつついたような騒ぎであった。
織斑一夏でそれだったのだ。シャルル・デュノアに対しても各国が同じリアクションをするのは想像に容易い。
つまるところ、男性操縦者というのは呪われた財宝のようなものだ。そのメカニズムを解明できれば、世界に対して圧倒的なアドバンテージとなる。しかし、そうはさせまいと他の国々は結託して襲い掛かる。
そうならないためには他国を退けるだけの力をもつか、存在を明るみに出さないことが重要なのだ。
技術とは独占し、他に真似できなくなって価値を生む。男性操縦者についても、同様である。
だから、織斑一夏という存在が明るみに出た直後にこうしてポッと出てきた二人目が素直に学園に来ているのが理解しがたい。
二人目の出現にも拘らず、フランスから来たシャルル・デュノアに関しては余りにも騒ぎが少ないことも引っ掛かる。今までフランスにそのような噂は皆無であり、技術者間のネットワークでも話題にすらあがることがなかった。
徹底した情報管理がなされていたと考えればそれまでだが、それだけの力は彼の国には無いと言える。何処かから漏れ出てしまうだろうし、アラスカ条約の事も考えるとやはり隠すにしても大きすぎる内容だ。
シャルル・デュノアという存在は、突然、魔法のように影も形も無いところから現れたように思えてしまうのだ。
まあ、何にせよこれだけの怪しさが全開の相手。そう簡単に、皆が信じることはないだろう――――
「やったああああああ!」
「…………」
――――と、思っていた。
「金髪!碧眼!イケメン貴公子!世界は私を殺す気なの!?」
「お母さん、産んでくれてありがとう……っ!」
「地球に産まれてきてよかったあ!」
「…………」
両サイドから響き渡る大音量に、頭がいたい。大歓声の沸き上がる教室内。二人の男子生徒と同じクラスであることを喜ぶもの。泣きながら両親に感謝するもの。地球に生まれてきた事に涙を流すもの。
喜び方は人それぞれであったが、共通して言えるであろうことは、全員が二人目の男子生徒の転入を歓喜をもって迎え入れたということ。
この時になって私はある事実に気づく。学園の女子生徒の殆どは今まで、外部との関わりが殆どなく、専門校などから進学してきた存在であるということを。故に、世間知らずなところが多々あるということを――――。
私と同様の懸念を持っているのかと、織斑千冬に視線を送る。彼女は鋭敏に此方の視線を察知すると腕を組んだまま肩を軽くすくめて、端から見れば騒ぎ立てる生徒達に呆れるような様子でジェスチャーを送ってくる。恐らくは、彼女も私と同様かそれ以上の何かをつかんでいるのかもしれない。
つまりはその上で、シャルル・デュノアの放置を決定しているということだ。ならば私が余計なことはするべきではない。
それを見て、私はシャルル・デュノアに対して抱くべき警戒の度合いを引き下げる。織斑千冬がそうした対応をするということは、私がでしゃばるような話ではない。つまり、私から手を出す必要のない部分である。
「騒ぐな、貴様ら。ホームルームの間くらいは静かにしろ」
私との視線と仕草でのやり取りの間もクラス内の狂騒は加速し、室内で反響しそうなくらいにまでなっていた。流石にその状況を見かねたのか、織斑先生が鬱陶しそうな様子で一組全員に命令をすれば、騒々しかった室内は水をうったような静寂に戻る。理由は単純、黙らなければ織斑先生からの本気のスパルタ教育が待っているからだ。
「え、えー……皆さん、私のときもこれくらい静かになってくれればいいのに……」
ぴたりと、織斑先生の一声で静寂に戻ったクラスに、若干の涙目な山田先生の呟きが哀愁を誘う。
「そ、それでは自己紹介を……」
気を取り直した様子の山田先生はもう一人の転入生へと自己紹介をするように促す。それにより、クラスの視線はシャルル・デュノアからもう一人の転入生へ向かう。
「…………」
そこにいたのは銀髪で、同年代と比べてもかなり小柄な部類に入る女子。規律正しく背筋を伸ばし、無言で黒の眼帯をつけている。そして無言、山田先生の事をまるで気にしていないかの様子で沈黙を貫いている。
「あ、あのー……自己紹介を……」
困ったように、ひきつった笑みを浮かべながら催促する山田先生。彼女に内心で同情しながら見守っていると、さすがに見かねたのか、織斑先生が呆れたようにため息を吐く。
「自己紹介をしろ」
「はい、教官」
ここでようやく、彼女は初めて口を開く。わざわざ教官という呼び方をするのは彼女の好みや癖でもあるのだろうか。ただ一つわかるのは織斑先生の言うことは聞くという事実だけである。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ……以上だ」
事務的な態度で名前だけを口にして、再びの沈黙を決め込むラウラ・ボーデヴィッヒ。
「い、以上ですか?」
「以上だ」
教師として、彼女の人となりや好み、性格などを少しでも知るためにもせめてあと一言欲しいのだろう。困惑オーラ全開にしながらも勇気を出して促した山田先生の問いかけはあえなく玉砕。哀れである。
そして私は思い出す。そういえば、ドイツのシュヴァルツェア・ハーゼという部隊の隊長もラウラ・ボーデヴィッヒという名前だったか。
考えれば考えるほど大丈夫なのかと不安になる。いきなり現れた二人目の男性操縦者に、刺々しい空気を纏ったもう一人。どちらも欧州から送り込まれており、片方は素性が怪しくもう一人は特殊部隊の隊長である。
一年一組の今後が不安になる事案ではあるものの、とりあえず学園内に居る間は何かをしでかす事もないだろう。
裏方では更識楯無が居るし、表には織斑千冬が居る。何かを仕掛けようと思うには並々ならぬ無謀さと幸運が必要であろう。
なので、織斑一夏の身に何らかの危険や問題がが迫っているというのは考えにくい。
「っ………貴様が!」
そう思っていたのだが――――私は、織斑一夏を見たとたんに表情を変え、早足で歩み寄り手を振り上げたラウラ・ボーデヴィッヒに、筆箱の中にある消ゴムを、手首の動きを使って彼女の眼帯の無い方に向けて飛ばす。
一直線に進む消しゴムを彼女は肉眼ではっきりと捉え、そして振り上げた方の手を使って寸分違わずに掴み取った。
「何のつもりだ、貴様」
そのまま此方へと意識を向けてくる彼女の目は、邪魔をされたことにたいして大層ご立腹であるらしい。射抜くような鋭い視線の中にはギラギラと燃え盛る敵意に満ちていた。
「文字を消す力が少し強すぎたようですね、お気に入りの文具でしたので取っていただき感謝します」
だが、私としては敵意を此方へ向ける事ができたのならばそれで良い。少なくとも不意打ちで織斑一夏が何かをされるという事態は回避できる。当の本人は私達のやり取りに挟まれて目を白黒させている。
「くだらんな、不意打ちで私に一撃を入れるつもりでいたか」
「自己紹介が上手ですね。今の方が、先程のものより貴女の事が皆によく伝わるかと」
「…………余程、痛い目を見たいらしいな貴様は」
皮肉とともに返した言葉に、一瞬目を見開いて、そしてギラつく敵意に殺意が混じって私に今にも飛びかかりそうな、危険な気配を放つ。
「では一つ、お礼にこの国の素敵な諺を教えて差し上げましょう」
「なに?」
私の言葉を受け、更に怒りの炎を燃やすラウラ・ボーデヴィッヒだが、この状況がこれ以上長続きはしない事を私は知っている。何故ならばこの時間は朝のHRであり、時間は限られている。故に私語などの行動は慎むべきであり、それを破った者には例外なくこのクラスのトップからの制裁が下るからだ。一年一組に来たばかりのラウラ・ボーデヴィッヒはそれを知らぬのであろう。なので、私は教えてやることにしたのだ。
「喧嘩両成敗――――なので、織斑先生お手柔らかにお願いします」
ラウラ・ボーデヴィッヒは目を丸くして、そしてようやく背後に立つ黒い影に気づいたらしい。だがもう遅い。彼女が振り返るのと、影――――すなわち、織斑先生が出席簿を振り下ろすのは同じタイミングだった。
そして、次の瞬間には私の頭上へと。実に見事な早業であった。
大変遅くなりました。今更ではありますが更新再開していきたいなと思います。
ただ、筆を取るのも久々では有りますのでリハビリがてら以前よりも文量は少なめになるかと思います。