女オリ主による原作介入モノ(非転生、女オリ主、習作)   作:杭打折

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二章8

ひとつ、ふたつ。乾いた破裂音に続いて光が飛び散っていく。

動いてるもの、飛び出してきたもの、一つも逃すことなく銃弾が貫いていく。

 

そして最後の一つが撃ち抜かれ、射手のライフルに籠められた弾丸が尽きる。それと殆ど同時に点数の表示された板も現れる。

 

瞬間、先程よりも重い炸裂音が響き渡った。

 

「あっ」

 

やってしまったという表情で、小さく声をこぼしたシャルル・デュノアの手には、瞬きの間に展開したリボルバーから握られていた。その銃口からは硝煙が揺らめき、風穴はこれによって開けられたのだと誰の目にも明らかだろう。勢い余ってスコアボードを撃ち抜いたシャルルは、射撃後の姿勢のまま固まっていた。

 

 

シャルル・デュノア転入の衝撃から早くも一週間ほどが経とうとしたある日の事である。

 

「凄いな、シャルルは。あんなに早い展開と早撃ちは初めて見たぞ」

「い、いやそんなことないよ。それにあれは間違って撃っちゃったものだし、あんまり誉めないで?」

「あー……まあ、あんまり気にするなよ?」

「ありがとう、一夏」

 

射撃の様子を見学していた織斑一夏の素直な賞賛の言葉になれてないのか、シャルル・デュノアは僅かに頬を赤くしてしまう。しかし、あれは紛れもなく誤射。撃つことに集中し過ぎた為に勢い余ってやってしまったミスである。そう思うと誉められたことではない。

そう語る様子に、織斑一夏はシャルルが事を重く受け止めてるのではとわずかな心配を抱きつつも何処かで踏み込みにくさのようなものを感じて軽いフォローにとどめておく。

そうしながら、やはりと内心で、彼から拒まれてるような感覚を感じていた。初対面だからというのとはどこか違うような、単なる人見知りなどでは無い感触だ。

 

「ま、俺も一緒に謝りにいくからさ」

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。僕がやっちゃった事だから」

 

苦笑しながらも此方が心配してることには気づいてるようである返答に、一夏は確信を強める。

織斑一夏の幼馴染みの殆どは人見知り――ファースト幼馴染みの姉の方なんかはその極致であるから、彼も自信をもって断言できた。

シャルルは何かを恐れてる。そのために、距離をおいているのだと。

ならば、いったい何を恐れているのか?

わからない。一夏にとってシャルルは出会って僅かな時間しかたってない相手なのだ、分かる筈もない。

だからシャルルの方からいつかは打ち明けてほしいと、心からそう思う。学園で二人しかいない男子生徒なのだ、仲良くしたいと考えるのは何も不自然なことではない。だから――

 

「何かあったときは頼ってくれよ? この学園は俺の方が少しだけ長いし、助けになれると思うぜ」

 

自分を頼りにしてほしい。きっと彼には何か悩みがあるのだろう。それは打ち明けられないことかもしれないが、少しでも相談してほしいと思いながら。何せ、この学園で唯一、女子に囲まれた環境という苦難を分かち合えるであろう同胞なのだから。

 

「ありがとう、一夏は優しいね」

 

だが、感謝の言葉と一緒に向けられたのは詫びるような笑顔だった。先は長そうだ、と織斑一夏は苦笑しながら射撃場の外へ向かう。

直前にスコアボードの件について報告を受けた設備担当の教員は謝罪に対して苦い顔をしてたが、稀に有ることだと苦笑しながら許してくれた。

 

そうして、外に出た一夏達は思わぬ二人組を目にした。片方は見慣れた、くすんだブロンドのポニーテー ルを揺らしながら。もう片方は水色の髪の女子生徒。別のクラスの生徒だが、一夏には見覚えがあった。

 

「あ、キャロルさんだね。もう一人は誰だろう?」

「キャロルの相部屋の相手だな。何度か一緒に話してるのを見たことがある」

 

そういえば、以前よりもキャロルと放課後に特訓する機会も少なくなったなと、近頃の変化に気づくと同時に好奇心も沸き上がる。

 

「よし、ちょっと声かけてみるか」

「そうだね。折角だし食堂とかにいっちゃおうか」

 

そう決めたことは、単純に興味があったからだけでなくキャロルの友人だというのならば自分も同じようにと思っただけに過ぎない。シャルルも、射撃場でのトレーニングを経て空腹があるようで反対はせず、賛成のようである。

一夏達は、何やら相談しながら話してるキャロル達のところへと早めた歩調で追い付いて、そのまま後ろから声をかけた。振り向くキャロルとそのルームメイトの女子生徒、彼女達はそれぞれの反応を一夏達に見せる。淡々と応じるキャロルと、一夏の事を睨みつけるルームメイト。傍から見れば声を掛けた一夏達を拒絶するような構図に近い。

 ただ、少なくともキャロルについてはいつも通りの反応である事を一夏は知っている。なので彼女については特に気にしないのだが、キャロルのルームメイトについては睨みつけられる理由がわからない。首を傾げ、以前に何か怒らせるようなことをしたことがあったかと考えるが浮かばず終いである。

 そうしていると、呼びかけられて何も言わずに首を傾げる織斑一夏の様子を不審がってか、キャロルが口を開いた。

 

「私たちに何か御用でしょうか?」

「ああ……いや、これから夕飯だったら一緒にどうかと思ってさ。この時間はまだテーブル席のほうが開いてるだろ?」

 

 いつものノリで「飯食いに行こうぜ」と誘えば済むだけなのだが、キャロルのルームメイトから向けられる敵意に満ちた眼差しが気になって仕方がない。そのせいか、一夏の誘い方は変な口説き方のようになってしまう。言った後になって気づいた一夏はそれに妙な恥ずかしさを覚え、試しに背後に視線を送ってみればシャルルが楽しそうに苦笑をしている。

 

「……どうします?」

 

 ただしキャロルはそれについては反応せず、少し考えるようにしたあと同伴者へと意見を求める。普段からすぐに返答を返してくるキャロルにしては珍しく、肯定もしくは否定を返さないのは彼女もルームメイト――即ち、更識簪が織斑一夏へと向ける視線に込められている感情を察知しているからなのだろう。

 一夏と違うのは、キャロル自身はそれについて何処か得心を得ているような雰囲気であることだ。自分に向けられた視線の理由について、今すぐ聞き出したくなるのを抑えながら一夏は更識簪からの返答を待つ。

 

「……いい、私は……先に戻ってる、から」

 

 睨みつけるように、織斑一夏を見ていた更識簪だったが、少しうつむくと織斑一夏から視線を外す。そうして、織斑一夏に対しては何のアクションも示すこと無くキャロルへそう言って、さっさと歩き始めてしまう。

 

「あ、おい……って、行っちまった」

 

 思わずそれを呼び止めようとした一夏ではあったが、簪はそれを無視して早歩きでその場を去ってしまう。逃げるように遠くなっていく、拒絶の意志をありありと示すその背を見送って居ると、今まで黙っていたシャルルが困惑気味な口調で一夏に問いかけた。

 

「一夏、彼女と何かあったの?」

 

 それはきっと、織斑一夏が一番聞きたいことだろう。初対面で睨みつけられるという経験は、はつい最近、ドイツからの転入生、ラウラ・ボーデヴィッヒに殴られかけるという貴重な体験として記憶に新しい。ただ、ラウラについては真実初対面であったが、簪とは入学した時から、という接点がある。自分がその間で何かしてしまったのならば、それを知っておきたいと思っていた。

 

「俺にはさっぱり……あの子とは初めて会うと思うんだが」

「その認識は恐らく誤りではないのでしょう」

 

 事情を知ってるような雰囲気を放っていたキャロルが口を開く。

 

「キャロル、何か知ってるのか?」

「幾つか。彼女の内面まで推し量る事はできませんが、その背景にある事情についてはお話出来ます」

「教えてくれ。彼処まであからさまにされて、無視はできないだろ」

 

 知っていると肯定を返すキャロルに織斑一夏は躊躇うこと無く教えるよう求める。必要ならば自分に向けられたその敵意の理由を解決しなければならないと思いながら。

 

「畏まりました。一夏さんも知っておいた方が宜しいでしょう……ですが、話も長くなるので食堂で夕食を済ませてからとしましょう」

 

 その提案に、織斑一夏とシャルル・デュノアのどちらにも異論はなかった。

 

 

 

 

 IS学園の食堂はかなりの広さがある。そのためか、料理の注文が出来るカウンターは何箇所か 用意されている。またカウンターごとに用意できるメニューが大幅に分かれ、世界各国の料理がレギュラーと日替わりの二つに分かれて提供されるようなシステムとなっている。

 織斑一夏はがっつりと大盛り肉うどん、シャルル・デュノアはキッシュとスープ、サラダという具合に軽く済ませていた。因みに私はサラダとミートソーススパゲッティである。思っていた以上のボリュームに少々難儀したが、なんとか食べ切れた。

 先程まで私の目の前にあったサラダとスパゲッティが既に綺麗さっぱりなくなっているように、織斑一夏とシャルル・デュノアの皿も既に空になっている。私達は食後の会話をしていた。

 

「今日の射撃場で見せたシャルルの早撃ち、キャロルにも見せたかったぜ」

「っちょ、一夏……!」

 

 現在の話題は今日あったことについてのものだ。彼らは私達と出会う前は射撃場でトレーニングを行っていたらしく、その時の話であった。

 射撃については、セシリア・オルコットがそれなりに高い能力を持っているだけに、彼が絶賛するその早撃ちとやらに少々興味が湧く。

 

「それほどすごかったのですか?」

「ああ、スコアボードを撃ち抜いたときなんて点数が表示されるよりも早かったかもな……まあ、あの結果だったら時間も点数もランキング入りしてただろうな」

「では、次の機会があれば私もぜひご一緒させていただきたいものです」

 

 多少の誇張が入っていたとしても、シャルル・デュノアは標的の中央付近を素早く撃ち抜くだけの技量を持っているというのは間違いがないのだろう。スコアボードを撃ち抜いた、という辺りで慌てて一夏の話を止めようとしている様子からは毒気のようなものは感じられないが、やはりただの大企業の御曹司という訳ではなさそうである。

 

「なあキャロル、そろそろ良いんじゃないのか?」

「そうですね、そろそろ宜しいでしょう」

 

 話が一区切りついた所で織斑一夏が更識簪の件について、話題を振ってくる。周囲を何気なく見渡せば、私達の周りのテーブルは空席が目立つようになっていて、一番近くのグループも2つテーブルを挟んだ距離にある。そうそう声を荒げたりしなければ興味をもたれないだろう。インテリアの植物に仕込まれた盗聴器については、生徒会長殿のものであるため無視してもかまわないだろう。

 

「僕は、外した方が良いかな……?」

 

 シャルル・デュノアは腰を若干浮かせていた。敵意を向けられていなかったという点や、彼自身転入生であるという事からも現時点で部外者である事ははっきりとしている。私か織斑一夏が首を縦に振れば、気を利かせてすぐ食堂を後にしてくれるに違いない。

 

「可能であれば同席していただければと」

 

だが、私としては彼も巻き込みたいと考える。理由としては、織斑一夏と更識簪との件に関しての程よい第三者になってもらうためである。

二人の問題である今回の件に何故シャルル・デュノアを巻き込む意味があるのかと言えば、それは織斑一夏の言葉が誤解を生みやすいところにあるだろう。

入学してからの出来事などをみるに、更識簪とのやり取りのなかでもそういった事は起こり得ると考えている。

 

「良いけど、僕に出来ることはあんまりないようにも思うけどなあ」

 

 部外者であるし、実際そうなのだろう。彼自体の動きにはさほど期待はしていないし、それなのに自分を巻き込もうとする事についての抗議がその言葉に含まれていた。だがそのようなやり取りが出来る時点で私が更に逃がす気がなくなる事に気づいていないのだろうか。まあ、どちらでもかまわない。

 何にしても織斑一夏と更識簪の間にあるいざこざを解決する手段として誰の側でもない第三者は必要であろう。既に私がその問題に足首どころか首まで入り込んでしまっている以上はなおのこと、一対一で片付くものとも思っていない。そもそも、私はこういう感情に起因する問題は得意ではないから機械的な問題を解決するのに専念したいのである。

 

「貴方には居ていただければ良いのです、一夏さんは普段は理屈がどうのと仰ってますが感情的な方ですので」

 

 だから、彼には状況が不必要に進みすぎない別の誰かとしていてほしいのだ。それに―――

 

「デュノアさんなら、そういう状況も心得ていらっしゃるのでしょう?」

「あはは、まあ仕方ないか……もう逃してくれそうにないし」

 

 一流企業たる()()()()()()()()であるならば、そういった教育の一つや二つ、受けていて当然であるし経験もあって当然である。だから、そういう扱いをした直後に彼の雰囲気が僅かに変わったことについては違和感を覚えざるを得なかった。

 違和感の正体は距離感。今まで当たり障りのないといった感触だったのが明確に一歩下がったようなものへ変わった。お互い踏み込まず離れずだった筈が明確にあちらが一歩引いたという感触だ。今まで互いの指先の掠らない距離だったのにわざわざ下がる必要は無いのに。

 ともあれ、距離的には今までと然程変わらないので此方の警戒しすぎの可能性もある。だが私自身の感覚として感じ取れたものは重要。しっかりと記憶しておく。

 

「と、いうわけですので一夏さん。ここからが本題です」

 

 そこで若干置いてけぼりを食らった表情をしている織斑一夏を会話の中心に引き戻して、この場においては此方から目をそらす。私が抱く違和感を感づかせるつもりはない。少なくともシャルル・デュノアを巻き込んだもう一つの目的、彼との接点を保つことで行動の監視を継続している今は。

 

「お、おう……で、どこまで話進んでるんだっけ?」

「まだ何も。ですので、これから話すところです」

 

 織斑一夏の反応は、ある程度想定していたとおり。期待通りともいうが、それが彼らしいというのであれば悪いことではないのかもしれないが、自分を取り巻く環境について知識がないというのは優しさであると同時に酷でもある。そうしているのは彼に親しいものたちや、色々な思惑があってのものであるだろう。だが少なくとも今回、彼は知らずの内に生まれていた敵意を向けられるという負の結果に陥った。彼にとって良い結果にならないのであれば、それは学園での生活を補助するという私の役割に反することである。

 

「まずは更識簪さんを取り巻く状況について、知り得る限りの話をさせていただきます」

 

 だから私は、自らの役割を全うすることも込めて、意図的に閉められていた情報の蛇口に力を加え始めた。

 

 




一夏が原作で色々ぼんやりしてるのはやはり、周りが一般的な概念ではなく織斑一夏という個人の立場においた状況での説明を小出しにしていった事が原因の一つではないのかなあと思ったりするわけです。
なのでまあ、此処では一夏には原作とは違う動きをさせるためにもそういう部分の情報をもたせようというのが今回の話です。
ちなみに、簪を取り巻く状況についての説明は本編内では大きく省きます(軽く触れる予定ではありますが)。

気になる人は原作を読むかアニメの二期で確認してください(ダイマ)。
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