女オリ主による原作介入モノ(非転生、女オリ主、習作)   作:杭打折

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序章6

学園生活二日目。

 

 

 

 

早朝に目を覚ました私は寝間着から学生服へと着替えを済ませ、まだ隣で静かに寝息を立てている更織簪の横を通り過ぎて洗面所へと向かう。

 洗面所に着くと鏡の前に立って映し出された自分の姿を見る。何ら変わりのない、いつも通りのキャロル・オルフィレウスの姿がそこにあった。

 冷たい水で顔を洗って目を覚まし、寝癖のついた髪を櫛でとかしてヘアバンドを用いて後頭部で束ねる。

 外出の準備を終えると学生課へ提出する申請書を持ってIS学園に向かう。

 学生寮を出て、まだ少しだけ冷たい朝の風に微かに身が震えた。もう一枚くらい重ね着をしても良かったと少し後悔しながら私は学園に続く道を歩く。途中にあったグラウンドなどでは早朝練習に励む部活動に所属している先輩方の姿があった。それを見て、IS学園の生徒は入学に際しいずれかの部活動または委員会活動に就かなくてはならないという決まりがあったのを思い出す。これについては早めに考えておいた方が良いだろう。すれ違った用務員の男性に挨拶を返しながら私は考えを巡らせていた。

 

 

 

「貸出申請書、確かに受け取りました。あなたに貸す場所は明日か明後日に連絡するので、待っていてください」

「了解しました。それと部活動や委員会のリストというものはありますか?」

「ちょっと待ってね……はい、これがそうよ」

 

学生課ならそういうのもあるだろう思って聞いてみると、渡されたのは雑誌ほどの厚さがあるパンフレットだった。

 

「ありがとうございます」

「はい。勉強も頑張ってね」

 

 学生課の方に会釈をしてから退室する。

 授業開始まで時間はかなりある。学生食堂に行ってパンフレットを読んで時間を潰そう。私はそう決めると足先を学生食堂へと進路を向ける。

 

 

 

 まだ朝食には早い時間だからか学生食堂はかなり空いていた。時間になれば昨日の夕食時のような混雑具合を見せるのだろうと思いながら適当なテーブル席に腰を下ろす。

 パンフレットの中身は予想通り、かなり充実した内容が書かれていた。そして、これも予想通りだが運動系と文化系のどちらもかなり豊富な種類の部活があった。

 しかし部活動はどれも放課後の時間を使うので私には適さない。IS技術研究会というのもあったが、本職でやっているものを部活でやるというのはどこか気が引けた。

 

 そう思いながら部活動から委員会活動紹介へとページをめくっていくと目に留まる一つの委員会があった。

 

「放送委員会、ですか……」

 

 活動内容は放送機材の定期点検。

 似たような放送部というのが部活動一覧にあったが、放送委員会の方は設備を整えるといった裏方の仕事のようだ。当番活動が主と書かれているから予定に組み込みやすい。

 しかも機材の点検なら苦労せずとも私に出来るところだから打って付けの仕事だ。 此処にしよう。私はそう決めるとパンフレットを閉じて手提げ鞄へと入れる。

 学食内のざわめきが増えている事に気付いて見てみると学食の営業が始まったらしく、まばらに人が集まっている。

 混雑する前に食事を済ませよう。私は席取りも兼ねて机に鞄を置いたままにして立ち上がってカウンターへと向かう。

 

「洋食セットを一つ。それとコーヒーもおねがいします」

「あいよー。ミルクと砂糖はいるかい?」

「いえ、不要です」

 

 注文を受け取った恰幅の良い従業員の女性が威勢の良い返事をしてから注文した料理の用意を始める。カウンター越しにその様子を眺めながら待つ。

 

「はい洋食セットお待ち」

「ありがとうございます」

 

 トレーに載せられた洋食セットを受け取り、鞄を置いて確保しておいた座席へと向かう。一人用の座席ではないが手早く終わらせてしまえば他の迷惑になることもない。

 洋食セットのメニューはトースト、スープ、ソーセージとスクランブルエッグにサラダだ。味に関しては改めて言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

「お、キャロル。此処空いてるか?」

 

 食後のコーヒーを飲み終わり、そろそろ教室へ行こうかと思い始めた私に声がかけられた。キャロルという呼び方をする人間は今のところこの学園に一人しか居らず、声音から誰が声主かなんて考える必要もなかった。

 見上げると織斑一夏と篠ノ之箒がトレーを持って私の居るテーブル席の前に立っていた。今から朝食なのだということは聞かなくてもわかった。知り合いの私が食べ終わった様子だったので座席を使えるかを聞きに来たのだろうか? ちょうど混み始めている学食内の様子を見渡して私はそう思いながら言葉を返す。

 

「おはよう御座います織斑一夏さん、篠ノ之箒さん。ちょうど空くところですので御自由にお使いください」

「ん? キャロルはもう朝飯は済ませたのか?」

 

 そう聞いてくるということは私の予想は外れだったようだ。織斑一夏は私を朝食に誘おうと考えていたらしい。しかし私はつい先程終らせたところだ。食事を終らせた人間が別の事をしながら同じ席に座っているというのもいかがなものか。ISの操縦訓練を見る事について等、話したいことはあるが私は断ろうと思って先程食べ終わった旨を告げる。

 

「はい。つい先程、終わらせたところですので」

「そうか……そりゃ残念。ちょうど一緒に食べれるかと思ったんだけどな」

 

 私が食べ終わっていたと知って残念そうな織斑一夏は私の隣へとトレーを置いてから椅子に腰を下ろす。そしてその隣へと篠ノ之箒がムスッっとした表情のまま腰を下ろした。不機嫌そうだと思いながら篠ノ之箒を見ると、睨むような視線を返されてしまった。私が何をしたというのか、彼女にどう思われようとも構わないのだが、何も言わずに無言で睨むだけというのはこちらとしても対応に困る。こちらから関わる必要がないので無視するが。

 

「じゃあさ、少し話をして行かないか? やっぱ二人きりよりも三人のほうが楽しいしさ」

 

 鈍感だとばかり思っていたが、織斑一夏は篠ノ之箒の纏っている空気が良くないという事には気づいたらしい。俺だけにしないでくれ、と言わんばかりにすがるような目で私を見つめていた。

 

「……了解しました。コーヒーを頂いてくるので少々お待ちください」

「お、おう!」

 

 仕方ないので彼の求めに応じるが、篠ノ之箒から向けられる敵意が強まったのを感じる。これで分かったが、篠ノ之箒の不機嫌の理由は確実に私だ。それなら私があのまま学食を後にしたほうが良かったではないか、と思いながらも学食の従業員の方におかわりのコーヒーを注文して差し出された新しいコーヒーを受け取り席へと戻る。

 席に戻ると6人がけのテーブル席が私の座っていた場所を除いて全部埋まっていた。新たに増えた三人の同席者を見、彼女たちが私と同じクラスの人間たちだたということを思い出す。

 

「おはようオルフィレウスさん」

 

 赤毛のおさげに活発そうな印象の谷本癒子。

 

「私達もおじゃましてまーすっ」

 

 特筆することはなし。黒髪を腰の上あたりまで伸ばしている鏡ナギ。

 

「キャロりんだーおはよおー」

 

 学食内で唯一きぐるみのような服を着ている布仏本音。学生服を着ていないようだが時間的に大丈夫なのだろうか。いや、それよりも……

 

「キャロりん……? なんです、それは」

「キャロルだと言いにくいからキャロりんだよー」

 

 どうだ!と言わんばかりの得意そうな笑みを浮かべるこの布仏本音という同級生。今まで誰かに愛称などを付けられた事は無いが、キャロルという名前自体呼びにくいという事はないと思う。だいたい、キャロルとキャロりんだったら後者のほうが文字数が多くなっている。私の名前は文字にすると4文字だが発音は3文字分、キャロりんでは4文字分に増える。文字数が増えると呼ぶ時の効率が悪いと思う。

 

「キャロリーん、えへへー」

「用事もないのに何度も呼ばないでください。対応に困ります」

 

 しかし、布仏本音は気に入ったのかキャロりんという呼び方で何度も呼んでくる。もう呼び方にどうこう言うつもりはないが、用件がないのにもかかわらず呼ばれるのは意味がない。不快とまでは行かなくとも好きな部類には入らない。

 

「まあ、そんなに気にすんなよ。キャロりんって呼び方は可愛いと思うぜ?」

「……了解しました」

 

 布仏本音を援護するような雰囲気で織斑一夏が口を開く。口ぶりからするに私がキャロりんという呼び方を嫌がっての態度と思っているのかもしれない。別にそういうわけではなく、呼ぶ本人がそれでいいのなら私は何でも良い。ただ、私が実際にどう思っているかをこの場にいる全員にわざわざ説明することがさほど重要なこととも思えず現状を受け入れることに落ち着かせる。

 

「それにしても、織斑君っていっぱい食べるんだあ」

「お、男の子って感じだね!」

「俺は夜を少なめに食べるタイプだからな。それに一日の始まりになるから朝を量取っておかないときついんだよ」

 

 今まで会話に割り込むタイミングを見計らっていたらしい谷本癒子が織斑一夏に話題を振り、鏡ナギがそれに続く。そんなに違うものだろうかと思って三人の朝食と織斑一夏の朝食の量を比較してみると確かに違う。織斑一夏の方が明らかに多く、三人の量は思っていたよりも少ない。私の量も比較に組み込んでみるとだいたい両者の中間くらいに位置するだろう。

 

「というか、女子って朝はそれだけしか食べなくて平気なのか?」

「あー、うん……私達は、ねえ?」

「う、うん。平気かなっ!」

 

 ちなみに私には無理だ。最低限取らなければ集中力が普段より落ちるし、普段ならしないようなミスが起こることもありえる。返された織斑一夏の問に表情を引き攣らせながら答えていた谷本癒子と鏡ナギだったが、恐らく彼女らの理由はしっかりとした朝食を取ることに対しての忌避感のようなものがあるからだと思う。隣でへなへなと笑っている布仏本音がどうかは知らないが、二人に関しては確実だろう。

 最適な量を過不足無く摂取すれば肉体に変調が起こらない。食事量を意識する人間たちのたいていは、栄養の過剰摂取か不足が原因である。最初から最適な量で固定しておけば問題など起こり得ないと思うのだが、彼女たちにとってはそうでないらしい。

 

「お菓子よく食べるしー」

 

 今まで黙っていた布仏本音がそう言った。間食が太る原因になるのは間違いない。そう思ってコーヒーを飲んでいると、ふいに今まで黙っていた篠ノ之箒が立ち上がった。

 

「……織斑、先に行くぞ」

「お、おう……また後でな」

 

 不機嫌そうな仏頂面で立ち上がる篠ノ之箒。本気で彼女は織斑一夏が嫌いなのだろうか。今までの態度から分かったが織斑一夏は篠ノ之箒をクラスに溶けこませようとしている。幼馴染としてのよしみなのか織斑一夏の人柄か、或いはその両方なのか。ただひとつ言えることとすれば彼の気遣いは、その篠ノ之箒自らによって功を奏していないということだ。そう考えると、織斑一夏がほんの少しだけ気の毒にも思える。

 

「織斑君って、篠ノ之さんと仲が良いの?」

「お、同じ部屋だって聞いたけど……」

 

 学園の情報網は早いらしい。話題の人物である織斑一夏のものであるとすれば尚更で、彼と篠ノ之箒が同室だという話も一晩で学園中に伝わってしまっているようだ。

 

「まあ、幼馴染だからな……」

 

 なんでもないように放たれた織斑一夏の一言で周囲が大きくどよめいた。篠ノ之箒と織斑一夏の関係を事前に知っていた私は然程驚きはしなかったが、事前情報も何も無いほかの生徒達は違ったようだ。

 

「え、それじゃあ……」

 

 谷本癒子が質問をしようと織斑一夏に話しかけるが、食堂内によく響くと手をたたく音によってそれは中断された。

 

「いつまで食べている! 食事は迅速かつ効率的に摂れ。授業に遅れるようなものが居ればグラウンドを十周させるぞ!」

 

 一年生の寮長である織斑先生が、竹刀を片手に持って学食の中心に居た。ちなみにIS学園のグラウンドは一周5kmある。それを十周ということは50km。フルマラソンは42.195kmだから、それ以上を走らされることになる。食後にそれをやるというのは拷問に近いだろう。織斑先生の一声によって織斑一夏達の会話に耳を傾けていた周囲の生徒達も慌てて食事を再開する。

 織斑一夏も手早く食事を終らせ、私もそれに合わせてコーヒーを飲み終わる。布仏本音は織斑先生のグラウンド十周発言を受けて人が変わったように慌てて食事を終えて、寮へと走っていったため居ない。食事をする前に着替えれば良い物を。鏡ナギと谷本癒子は少し前に「先に行くね」と一言告げてから学食を後にした。もう教室に着いている頃だろう。

 篠ノ之箒との空気に耐え切れなかった織斑一夏に縋られて此処に残っていたわけだが、篠ノ之箒が居なくなって理由もなくなったのに最後まで残ってしまった。先に行ったところで教室でやることも無いので別に良いのだが。

 

「悪い、結構長い間付き合わせちまったな」

「問題ありません……それと織斑一夏さん、これが今日の授業分となります」

 

 織斑一夏と一年一組の教室へ続く廊下を歩いていく途中で謝られた。結局、あの場を離れなかったのは私の選択なので織斑一夏に謝られる筋合いは無いのだが別にいい。織斑一夏に本日の授業分のカンニングペーパーを渡しておく。ついでだから今後の特訓について話しておこう。

 

「何にしてもまず授業を集中して受けておいてください。基礎知識は授業に任せ、応用発展の知識を私が教えます」

「分かった」

 

 織斑一夏は素直に頷く。続いて連絡手段の話へと移る。

 

「それと連絡手段も確保しておきましょう。連絡があった場合入学時に配布された学生アドレスを用います」

 

 IS学園の生徒は入学と同時に学園用のメールアドレスと学内ネットワークにアクセスするためのIDが配布される。学内ネットワークには寮や学内のコンピューターからアクセスする事が可能で、学園の情報を閲覧するためにはIDを使ってログインが必要となる。また、IDを使えば携帯端末からも同じようにアクセスする事ができるので、これを使えば何処でも連絡を取り合うことが可能だ。

 

「携帯のアドレスじゃダメなのか?」

 

 ズボンのポケットから取り出した携帯を見せて織斑一夏は問いかけてくる。だが私の携帯は企業の支給品だ。正直なところ、こういう個人的な用事で使用するのは複数の理由から避けたい。

 

「携帯を紛失、もしくは破損した場合に連絡が取れなくなるのでこちらの方が適しているかと」

「ああ、なるほど。確かに、携帯はいざという時にあてにならないことがあるからな……」

 

 織斑一夏は私の説明に納得をしてくれたらしい。教室に到着して一旦立ち止まり、最後の連絡事項を伝える。

 

「特訓は今日の放課後から開始します。時間をあけておいてください」

 

 織斑一夏は「分かった」と短く言って、私の言葉に頷いて教室へと入る。私達は急いで自分達の座席へと向かった。




そろそろセシリアとの対決に行ったほうが良いのかと思うのですが、特訓とかを挟んでいるせいで話の進みが遅いですね。
もう少し話が進む速さなどを上げたほうがいいのでしょうか。
ご意見や感想などいただければ幸いです
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