季節は冬、時間は月明かりが地上を照らす夜。大量の貨物の置かれたコンテナ置き場では人知を超えた戦闘が行われていた。
「ふっーーー!!」
一人は蒼い槍を持った蒼い髪の青年。空気が爆ぜて音が遅れる程の速度で槍を突き出す。
「くっ、せいっ!!」
対峙するのは黒髪で褐色の肌をした少年とも見える子供。右腕に着けられている盾で槍の一突きを受け流す。そして青年の懐に潜り込み、足場であるコンクリートが砕ける程の震脚と共に青年の鳩尾に目掛けて肘を叩き込んだ。
「ぐっ!!」
それを受けた青年は苦い顔をしながら後ろへと飛び、鳩尾を抑えながら着地する。だが攻撃したはずの少年の顔も良い物では無かった。
「飛んで衝撃を逃しましたか……」
「この程度を避けられないようならば英雄などやれていない。それよりも聖杯戦争で子供が呼ばれようとはな」
「あの……これでも十八歳頃で呼ばれてるんですけど」
「……本当か?」
「……成長が遅かったらしくて……全盛期というならこの頃で間違い無いんですけどね」
「……済まなかった」
「謝らないでくださいよぉ……」
青年の方は少年の実年齢を聞いて心の底から済まなかったという表情で謝るが少年からしてみれば同情は辛いらしい。
『ランサー、何を遊んでいる』
そんな時にコンテナ置き場に自信に満ちた男の声が届く。それは四方八方から木霊しているように響いているのでどこが発信源なのかを特定することは出来なかった。
「遊んでいる訳では無いのだがね。それに今夜は様子見だと言っていたのでは?」
『あぁ言ったとも、だが倒せるのならば倒せともな。貴様の槍はそんな幼子一人も倒せぬのか?』
「……この一帯に千の雷を放ってやろうかな?」
「止めておけ……だが、そこまで言われてやらぬというもの格好がつかないな」
ランサーと呼ばれた青年が腰を低くし槍を構える。戦いが始まった時にした構えと変わり無いがランサーの身体が一回りは大きく見える。ランサーは遊んでいた訳では無いし手を抜いていた訳でも無い。ただ今から本気になっただけだ。それは対峙している子供を殺すことを決意したことを意味している。
「構えろ。でなければその盾ごと貫くぞ」
「アイリスフィールさん、指示を」
ランサーから放たれる殺意と闘気を前にして少年は臆する事無く背後でこの戦いを見ていた銀髪の女性に指示を仰いだ。
「俺は貴女に呼び出された……だから貴女の指示に従います。宝具を使えというならば使いましょう、持てる力をすべて使えというのなら使いましょう。貴女が思うがままに……
少年の言葉を受け取りアイリスフィールと呼ばれた女性は大きく息を吸い、決意に満ちた表情で迷う事無く告げた。
「キャスター……この私に勝利を!!」
「ーーー
『ーーー行くぞ、宿主よ』
キャスターと呼ばれた少年がナラカと盾に呼びかけると盾から声が聞こえる。そして盾が変わった。外見の変化は一切見えない、それでも間違いなく先程までとは違っているのだ。
「いざーーー」
「尋常にーーー」
「「ーーー勝負!!」」
ランサーとキャスターの姿が同時に消え、金属がぶつかる音と破砕音が鼓膜を揺さぶる。知覚も許さない程の高速戦闘だがこの勝負はランサーに分があった。
この戦闘に求められているステータスは筋力と敏捷。ランサーは筋力がB、敏捷がAとかなりの高ランクを誇っている。対するキャスターは筋力敏捷共にC、魔力を使う事とスキルである縮地と中国武術でランサーとの差を埋めてはいるもののランサー程の手練れになればすぐに対処されてしまう。キャスターの盾はまだ先を残しており、それを使えばランサーを超える事は出来るだろうが……
故に、奇をてらう。ランサーの知らない技法を持って流れを掴む。
「
本来ならば必要とする魔術の詠唱を破棄しての魔術行使。キャスターの眼前に現れた光の矢97本がランサーに迫る。ランサーの持つクラススキルである対魔力でこの魔術は期待している程の効果は出ないだろうとキャスターは予想していた。それでもこの速度でこれだけの魔術を使えるという事が牽制になる。
だが現実は予想通りには行かない。ランサーに殺到する光の矢97本、それらはランサーに触れた瞬間にランサーの身体に吸収された。
「なっ!?」
『馬鹿な!?』
驚愕はキャスターとナカラのもの。多少の手傷は与えられるだろうと踏んでいたがまさかの無効化ーーーそれも吸収されるとは誰が思うだろうか。だがそれでもキャスターは英霊、半回転されられながら下から迫る槍の石突きを飛び退いてかわしてランサーとの距離を取る。
「ふむ、驚かせたか?確かに私には対魔力のスキルはある。だが宝具の効果で魔術ならば無効化と同時に吸収する仕様になっているのだ」
『ランサー』
「話くらいは好きにさせて欲しい物だがね……だが、これでキャスターとしての戦いを封じた。魔力を回復させてくれた礼だ、少し驚かせてやろう……ファイアーボール!!」
ランサーの背後にバスケットボール台の火球が十現れて弾丸の如き速度でキャスターに迫る。距離が開いている為に回避行動は可能だがーーーキャスターが選んだのは防ぐ事だった。理由はキャスターの後ろにいるアイリスフィール、ランサーがこの立ち位置を誘導したのかはわからないが火球をかわしてしまえば背後にいるアイリスフィールに被害が及ぶ。
火球が迫りキャスターが盾で防ぐ。そして先程の光景の焼き増しのように火球がキャスターの盾に吸収された。
「なるほど、先ほどからその盾には何かあると踏んでいたが魔力を吸収する盾か」
「ランサーなのに魔術って……そんなのありですか!?」
「何、ランサーかキャスターかの適性があってランサーで呼ばれただけの事だ。それにその言葉はそのままお前に帰るぞ?キャスターの癖に中国武術を使うとは」
「魔術師が接近戦をしたら駄目なんですか!?」
「別に構わないだろう。私も魔術を使えるが槍も使うのでな」
そう言いながらランサーは再び構えを取った。状況は誰から見てもキャスターが不利だろう。攻撃手段の一つである魔術はランサーの対魔力によって封じられ、奥の手はマスターによって許可されていない。だが切り札はまだ幾つかあり、対抗手段が無くなったわけではない。そしてそちらは幸いにもマスターから使用が許されているのだ。
しかし躊躇う。魔術を使うが拳士としての側面も持つキャスターの気配感知のスキルが幾つかの部外者の気配を感知しているのだ。手を出す気配が無いことから情報収集か漁夫の利狙いだと思われる。他陣営の目がある中で切り札を使うというのは悪手でしか無い。ここいらで切り上げて逃げられれば他陣営からキャスターは恐れることはないと侮られて油断を突くことが出来るだろう。だがアイリスフィールは勝利を望んでいると命令された。そしてランサーを上回る為には切り札を最低でも一つは切らねばならない。
キャスターは息を吸い、決意を固める。
「ふぁーあ……」
『アサシン、状況はどうだ?』
「んーと……ランサーが本気を出してキャスターが宝具を開帳したみたいだね。だけど見た目は盾のまま変わり無し……お、ランサーがキャスターの魔術を吸収、その後キャスターが盾を使ってランサーの魔術を吸収したよ」
『なるほど……どちらにも魔術は効果は期待出来そうにないな』
「そうでも無いよ?ランサーは暴露から魔術しか吸収出来なさそうだし、キャスターは盾に当てないと吸収出来なさそうだし」
コンテナ置き場に設置されているクレーンの上でロングコートを着た中学生程に見える少女がランサーとキャスターの戦いを見下ろして観戦していた。それの正体は暗殺者のサーヴァントとして呼び出されたアサシン。そして少女に見えるが彼は男である。
「にしてもなんでトッキーは僕に行かせたんだろうね?せっかく死んだことを偽装したのに」
実はアサシンは先日マスターの師匠に当たる同盟者の指示で自らをアーチャーのサーヴァントに殺されたように見せかける手の込んだ偽装をしたばかりなのだ。それによってアサシンに対する警戒を無くさせると説得されたので宝具を使ってまで偽装したというのにその同盟者からクレーンからランサーとキャスターの戦いを偵察してこいと指示されたのだ。
偽装も偵察もその必要性は理解出来る。だがわざわざこのクレーンから偵察させる意味が分からなかった。確かにクレーンからだとランサーとキャスターの戦いを良く見ることができる。だが周りには何も無い為に他の陣営から姿が見えてしまうのだ。アサシンのクラススキルである気配遮断によってある程度は誤魔化せるだろうがそれでもバレる物はバレる。
『師にも何かお考えがあるのだろう。それよりもマスターの姿は確認出来るか?』
「キャスターのマスターらしき女の人、ここから500メートル程離れた倉庫の屋上にランサーのマスターらしき男の人……それと銃器を持った男女一組に橋の上から戦いを見てる人がいるよ」
『何?』
アサシンからの報告にアサシンのマスターである言峰綺礼は反応する。銃器を持った男女の男の方は綺礼の師から教えられて興味を持っていた衛宮切嗣に違い無い。だが橋の上から観戦している者がいる?このランサーとキャスターのサーヴァント同士の戦いを観戦しているものなど答えは一つしか無い。
『サーヴァントか?』
「多分ね。容姿はボサボサの灰色の髪に無表情のカッコいい系、あと隣の方で黒髪の男の子が鉄骨にへばり付いてる」
『……師に指示を仰いでくる。一旦ラインを切るぞ』
「はいはい」
返事を返すのと同時にアサシンの中で繋がりが切れた。これによって綺礼と離れた位置にいながら情報を共有することができたが再びラインを繋がない限り情報が綺礼に行くことはない。
「ふぅ……【千の剣】」
溜息を吐くのと同時に背後に向かって宝具による創造で剣を射出する。聞こえたのは肉に突き刺さり、肉が切り裂かれる音。気配遮断していたアサシンに気付いたのは流石だがアサシンも己に気付いた存在に気づいていたのだ。
背後から迫ってきた気配と殺気はまるで獣の様に荒々しく、罠かもしれないというのに最短距離でアサシンに向かって来た。そこから導き出される答えは仕留めたのはバーサーカーのサーヴァント。そして消去法で橋の上にいるサーヴァントはセイバーかライダーになる。
死んだかどうかなど確認するまでもない。【千の剣】はアサシンの思うがままに能力や強度を決めた剣を創造する宝具。そしてバーサーカーには急所に必中する剣を三本射出してやったのだ。これで生きていられるサーヴァントなどほとんどいないだろうと考えていた。
そしてアサシンは後頭部に強い衝撃を受けて吹き飛ばされた。
キャスターが切り札を切る覚悟を決めたのと同時にランサーとキャスターの間に何かが落ちて来る。ランサーとキャスターはその落ちてきたのがサーヴァントだと気付いた。そして落ちてきたサーヴァントーーーアサシンはコンクリートに叩きつけられながら体制を戻し、驚愕の顔をクレーンのある方向に向けている。
「……嘘でしょ?なんで生きてるの?」
突然の乱入者に警戒しながらランサーとキャスターはクレーンの方向に視線を向ける。月をバックにクレーンの上に立っていたのは旧日本軍の軍服を着て
「Ruuuuuuuuuーーーaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!」
狂気のサーヴァント、バーサーカーの乱入である。
後書きにて判明しているサーヴァントの紹介をさせていただきます。
クラス キャスター
筋力 C(A++) 耐久 D(A++) 敏捷C(B++) 魔力 A++
幸運 D 宝具EX
スキル
気配感知 A
拳士として鍛えれれた直感による索敵能力。
縮地 C(B+)
瞬時に相手との間合いを詰める技術。多くの武術、武道が追い求める歩法の極み。
単純な素早さではなく、歩法、体捌き、呼吸、死角など幾多の現象が絡み合って完成する。
キャスターとして召喚されているために、魔力を介さないと実戦使用出来ない程に弱体化している。
心眼(真) B
拳士として鍛えられた洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
中国武術 C(A++)
八極拳の型や八卦掌の歩法や技法を習熟している。
その一撃は魔力や龍氣を込めなくても一撃必殺と成り得る筈が、今回はキャスターして召喚されたために十全に扱えなくなっている。
だが、魔力を込めれば瞬間的にA++の威力を出せる。
魔術 A++
元々は精霊魔法、特に雷と風を中心に会得しているが、この世界では魔術にカテゴライズされる。
Mr.凸凹様提案のサーヴァントです。出典はMr.凸凹様の『ハイスクールD×D〜堕ちた疾風迅雷と深淵を司る龍〜』より
クラス ランサー
筋力B 耐久B 敏捷A 魔力A 幸運B 宝具EX
スキル
対魔力 A+(C)
彼自身が持つ対魔力のランクはCだが、宝具により、『魔術』の範囲内に入るならば全て無効化するのと同時に魔力を回復する。
魔術 B
異世界「フェガルド」産の魔術。テンプレ系の火球(ファイアボール)などがある。
キャスターの場合、ほぼ全ての魔術を扱えるが、ランサーとして呼ばれたため弱体化している。
Kanakuto様提案のサーヴァントです。出典はオリジナルより。
クラス アサシン
筋力 B 耐久 C 敏捷A+++ 魔力 A+ 幸運 E 宝具 A+
スキル
気配遮断A+
自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
宝具
千の剣
ランク A
レンジ 1~1000
剣を生み出し射出する。好きに硬度や能力を付けることが出来る。ぶっちゃけると、AUOと正義の味方を足して割った感じ。
第一話はキャスター対ランサー、アサシンの偵察とバーサーカー乱入とさせていただきました。ただし相性とマスターからの指示によりキャスターは押されてます。ランサーの対魔力がアンチキャスター過ぎるのがキャスターにとっての不幸でしたね。
アサシン偵察についての偵察位置はアニメで見て私が思ったことです。どうしてトッキーはあそこにアサシンを配置したのだろうか?
アサシンの宝具が一つ開帳されましたがアサシンはこの宝具を使ったとしても問題無いと判断したから使っています。綺礼は宝具に関しては何にも制限をかけていません。トッキーはうっかりで忘れています。
そしてバーサーカー……この人が死ぬところとか想像できないな……
感想、評価をお待ちしています。