せーはいせんそー   作:鎌鼬

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さーどいんぱくと・2

 

 

(どうしてこうなった……)

 

 

アサシンの目の前にはテーブルの上に所狭しと並べられた大量の中華料理。左隣にはマスターである言峰綺礼と右隣には綺礼が呼び出した学生服姿のアーチャー。向いにはライダー、西洋人形の様な少女、黒髪のショートカットの少女、そしてマスターと思わしき少年ウェイバーの順で座っていた。

 

 

聖杯戦争に呼び出されて敵対する間柄でありながらこうして同じ食卓についている。アサシンは上座に当たる左奥の席に座って、チャーハンを掻き込んでいたこの事態の原因である時雨に目を向けた。

 

 

「ん?どうした?食わないのか?冷めるぞ?それとも冷めた方が好きなのか?」

「いや、そういうわけじゃ無いけど……」

「ボクたちって敵同士だよね?それなのにこうしてても良いの?」

「だってよ、バトれるのって基本的に人目に付かない夜からなんだろ?今は真昼間だしバトる理由も無いし。あ、でも夜に出会ったら人目気にせずにカチコミかけるから!!」

「アサシンさん……本当にこの人狂化解けてるんですよね?」

「そのはずなんだけどなぁ……」

 

 

聖杯戦争のルールを理解しながらそれを守ろうとしないで素敵な笑みを向ける元バーサーカーを見て、無くなってるはずの狂化がまだ残っている様な気がしてならないアサシンだった。

 

 

そんなアサシンを見て時雨はケラケラと笑い、残っていたチャーハンを流し込んで完食する。

 

 

「さて、自己紹介でもしようか」

「待て待て待て、何がどうしてそういう考えに至った?」

「気分半分愉悦半分。応じてくれるのなら俺の宝具についての情報公開するけど?」

 

 

時雨の提案に時雨と麻婆を掻き込んでいた綺礼を除いて緊張が走る。時雨の提案はサーヴァントの切り札である宝具の情報を公開するというありえないもの。宝具とは基本的にどんな劣勢だとしても状況を引っ繰り返せる可能性を持つ物であり、所有している英霊のシンボルでもある物である。それを高々自己紹介程度で明かすとは正直言って信じられなかった。

 

 

アサシンは麻婆を一心不乱に食べる綺礼を無視してアーチャーに目を向ける。アーチャーは硬い顔つきだが頷いて時雨の誘いに乗ることを決めた様だった。向かいのライダーたちも似た様な反応で、それを見た時雨は満足そうに笑った。

 

 

「んじゃ言い出しっぺの俺からだな……クラスはバーサーカー、真名は八神時雨。マスターの願いが実に俺好みの願いだったから他のバーサーカー候補たちを蹴散らして聖杯戦争に参加した。宝具はこの日本刀、それと“偽者の模倣”(フェイク・フェイカー)っていうモノマネの二つだ」

 

 

時雨は宣言した通りに自分の宝具の情報を公開、さらには誰も聞いていない真名までも公開してきた。誰もが唖然とする中でウェイバーだけは必死に脳を回転させて時雨の情報をまとめる。

 

 

(真名を明かしたけど……まったく聞き覚えの無い名前だ。それに響きと顔付きからして間違いなく東洋人のそれ。多分未来からの英雄か、ライダーみたいな別世界からの英雄だろう。そうじゃ無いと真名を明かす理由が無いしな)

「ヘイヘーイどうした英霊諸君よぉー黙ってたら進まないぜー?会話のキャッチボールしようぜー?コミュ能力無いとボッチになるぞー?」

 

 

時雨のニヤニヤしながらの煽りがウザい。サーヴァントたちが飛び掛かりそうになるが理性でなんとか抑えることに成功した様だ。

 

 

「……僕はウェイバー・ベルベット、そこのライダーのマスターだ」

「紹介されたけど俺がライダーだ。んで、この二人は」

「ユーシェ・リアライアだよ」

「倉敷雫です」

「ふーん……そこの二人はライダーに呼び出されたみたいだね。縁のある者でもサーヴァントとして呼び出せる宝具かな?それに……マスターとは別の魔力供給手段を持ってるみたいだ」

 

 

時雨の言葉に四人は凍る。僅かな時間の間でユーシェと雫の正体を看破し、それだけでなくライダーの宝具すらも見抜いたのだから。

 

 

「……どうして気付いた?」

「二人の気配がどっからどう見ても人間のそれじゃ無いし、一人は吸血鬼の、もう一人は神性の気配させてるしさ。それにライダーのマスターは言ったら悪いけど魔術師としてはまだまただ、それなのに複数体のサーヴァント連れて平然としてるって事は二人を呼び出したライダーが何かしらの魔力供給手段を持ってるってことしか考えられないからな」

 

 

エビチリをモッシャモッシャと食べる時雨を見てライダーは警戒を一段階高める。自身の宝具を看破しただけでなくユーシェと雫の正体すらも見破る観察眼は驚異以外の何物でも無いから。

 

 

「お次はそっちの二人だな」

「え、あっはい……アサシンのクラスで召喚されたサーヴァントです。性別は男なんで」

「……アーチャーです。それと八神時雨」

 

 

アーチャーはクラスだけを告げて時雨に敵意の籠った視線を向ける。

 

 

「私は貴方を許しません」

「ん?どした?オコか?オコなのか?斬った事か?それともロッズ・フロム・ゴッド叩き込んだ事か?殺し殺される間柄なのにそんな事でウダウダ言うなよ」

「っ!?」

 

 

時雨の物言いにアーチャーは怒りの表情で立ち上がろうとする。が、それよりも早くに時雨が近くにあったレンゲで麻婆を掬ってアーチャーの口に投げ込んだ。泰山特製麻婆(げきやく)を口にした事でアーチャーは怒りの表情のまま崩れ落ちた。

 

 

「アーチャー!?」

「麻婆で!?」

「これ本当に食べ物か!?」

「うわ……白目向いてる……」

「すいません!!お水下さい!!」

 

 

サーヴァントであるアーチャーを一瞬で気絶させた麻婆に全員が無意識の内に距離を取る。そして時雨以外の全員の視線が一心不乱に麻婆を食べている綺礼に集まる。サーヴァントですら気絶する物を食べる綺礼に驚愕の色を隠せない様だ。

 

 

汗だくになりながら麻婆を食べていた綺礼は自分に集まっている視線に気がついて顔を上げる。

 

 

「ーーー食うか?」

「「「「「いらない!!!!」」」」」

 

 

全員に断られた綺礼は残念そうにそうかと呟くと残っていた麻婆を流し込んで完食した。

 

 

「さて、私が最後の様だな。言峰綺礼、アサシンのマスターだ」

「言峰綺礼、ねぇ……」

「どうかしたか?」

「いんや、知り合いにお前と似た様な奴がいたから懐かしんでただけだ……そうだ、一つ聞きたいことがあるんだが」

 

 

意味あり気にそう言って時雨は綺礼を見つめる。綺礼は目を逸らしたら負けるとでも思ったのか時雨の視線から目を反らすことなく見つめ返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー人の不幸は?」

「蜜の味」

 

 

その言葉を聞いて二人は迷う事なく硬い握手を交わした。時雨と綺礼、サーヴァントと人間という別次元の存在でありながら友情が生まれた瞬間だった。

 

 

(外道が増えた……!!!)

 

 

その光景を見て密かに絶望しているアサシンがいたらしい。

 

 

 

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