あけましておめでとうございます。
今年初めての投稿です。
コンテナ置き場での戦闘から一夜明け、冬木の郊外にある森の中に建てられた洋風の城、通称アインツベルン城。その一室でキャスターの本当のマスターである衛宮切嗣は写真を壁に貼り付けて情報を纏めていた。
「(遠坂時臣は遠坂邸で穴熊を決め込み、同盟を疑っていた言峰綺礼は教会から虚偽の申告をしたとして令呪剥奪のペナルティーを受けた後に堂々と遠坂邸に入った……これはもう疑いようが無いだろう。アーチャーとアサシンは格好から判断するに恐らくキャスター同様に別の世界から召喚された英霊……なら真名の看破におけるアドバンテージは期待出来そうにない)」
先日のアーチャーとアサシンの戦いを見ていた時から疑っていたことが間違っていなかったと分かり切嗣は時臣と綺礼の写真を纏める。聖杯戦争において勝者は一組だけであるが同盟を組むというのは間違った判断ではない。同盟相手と共に他のサーヴァントを狩り尽くせば背後からの奇襲を気にせずに決着を付けることが出来るからだ。
「(次にランサーとそのマスターのケイネス・エルメロイ・アーチボルト。舞弥の報告と周辺に仕掛けておいた監視カメラからの映像ではハイアットホテルから動いている様子はない……昨夜の戦闘で心が折れたか?可能性の一つとしては考えても良いかもしれないがケイネスは仮にも時計塔で神童と呼ばれていた人物だ。プライドで認めていないかもしれないし再起して立ち直っているかもしれない。前者であるなら対応が楽だが後者なら厄介だな……プランを立て直しておくか)」
ケイネスとランサーの陣営はキャスターにとっては最悪とも言える相性だ。魔術では効果を与えるどころか吸収されて回復させてしまう。キャスターが中国拳法を習得していたのが幸いだったといえるだろう。もしそうでなければキャスターの切り札や奥の手を出させなければならなかった。
「(それに最後に乱入してきた鎧のサーヴァントとそのマスターと思わしきウェイバー・ベルベット。判明していないクラスで考えればあの大剣はセイバーか?……いや、宝具として乗り物があってライダーかもしれないな。そしてあの鎧の近未来的なフォルムと機械仕掛けの大剣……あのサーヴァントはきっと未来から呼び出されたサーヴァント、そう仮定するならアーチャーやアサシンのように真名看破は意味が無い)」
ケイネスから聖遺物を奪って冬木にやってきたとウェイバーの情報にあるがあの時に乱入するメリットは彼らには無かった。あるとするなら共闘によるバーサーカーの討伐だがそれでも情報が露見してしまうデメリットの方が大きい。実際にあのサーヴァントが現れて即座にバーサーカーが退いた為に情報はほとんど分かっていないのが現状だ。
「(そして……バーサーカーとそのマスターの間桐雁夜)」
最後に挙げたのは切嗣が昨夜の戦闘の中で仮定した最大の脅威。
「(筋力、耐久、敏捷がすべて規格外を表すEX、そしてスキルか宝具か判断出来ないが全身をなます切りにされて身体を半分失っても消滅する前に再生してしまう……そしてなによりあの戦い方だ。始めのクレーンと最後の船……あれは間違いなく
昨夜バーサーカーはアサシンを戦場に叩き出すのと同時にクレーンを蹴り飛ばした。あれはキャスターのマスターだと思わせていたアイリスフィールを狙っていたのだろう。そして最後の船の投げ飛ばし、あれはアイリスフィールとウェイバー、そして隠れていた自分たちとケイネスが目標だったとするなら納得が出来る。切嗣と舞弥もあの場にいたがキャスターの魔術が間に合っていなかったら今頃は船の破片に押しつぶされていたか燃料の引火による火災で焼死体になっていたであろう。
「(理性のないバーサーカーが狙ってそれをするとは考え難い……間桐雁夜はバーサーカーを制御出来ているのか?急造の魔術師だと思っていたが見直しが必要だな……それに間桐雁夜はここ数週間間桐邸から出た痕跡が見られない、遠坂時臣と同じ様に穴熊状態だ。教会からのペナルティーを考えないで行動するのなら念の為に用意しておいたタンクローリーを使えば殺れない事もないだろうが……あそこには間桐鶴野がいる)」
切嗣が間桐邸への攻撃を仕掛けられない理由は雁夜にでは無くその兄で現間桐家当主の間桐鶴野にあった。
「(経歴によれば鶴野は幼少期から天才と呼ばれ、その才は主に武の方面に開花していた。柔道剣道合気弓道ボクシングムエタイ……ジャンルを問わずに武道や格闘技を習いそのすべてが段位持ちやプロレベル。さらに高校を卒業してからは多国籍軍へと入隊し、すぐに結果を残している。同じ部隊の隊員からSHINOBIと呼ばれていたのは悪ふざけでは無く本当にそうとしか思えなかったからだ)」
過去に一度、アインツベルンに雇われる前に切嗣は鶴野と共闘したことがあったが正直に言って同じ人間が疑いたくなる存在だった。何せ厳重に警備されている敵の本陣に単体で侵入して武器庫や食料庫を爆破工作、さらに敵の指揮官を暗殺してくるなどをボロボロになりながらも実行して来たのだから。
そこまでハイスペックなら鶴野の方がマスターとして選ばれるのではないかと考えるだろうがそれだけは絶対にありえなかった。何故ならーーー間桐鶴野には魔術師として必要不可欠な魔術回路が存在しなかったのだから。
「(救いなのは十年前に間桐の家を理由に除隊し間桐家を継いだことか……この平和な日本で過ごしている内に幾らかは腕が衰えているだろう)」
だからと言って安心は出来ない。錆び付いているとはいえ鶴野は代行者レベルの強者である。聖杯戦争に直接の干渉はしないだろうが間桐邸を突けば出てくる可能性が高い。望ましいのは雁夜が一人で出歩いているところを狙撃する事だがここ最近の行動パターンから推測しても可能性は低いだろう。
「(バーサーカーはアサシンに押し付けるのが妥当だな。アサシンが戦うとなるとアーチャーが出てくる、そうすればアーチャーの情報が拾える。ランサーに関してはキャスターの奥の手がどこまで通じるかだな。キャスターが言うにはあれは魔術とは違うものらしいがこちらでは魔術と判断されてもおかしくない。実際にキャスターのスキルとしてそれは現れているわけだしな)」
切嗣の頭の中にあるなは以下にして邪魔なサーヴァントを排除するか、その一点に集中されていた。切嗣の聖杯にへとかける願いは世界平和、一切の流血も悲しみも無い世界。その為に冬木で流す流血を最後にすると誓ったのだ。犠牲は少ないに越した事は無いが出す事には一切の躊躇いは無い。
「あ、おはよう御座います。マスター」
「……キャスターか。アイリの容体はどうだ?」
「おそらく精神的な疲労でしょう。昨日のあれで疲れているだけだと思います。マスターは大丈夫ですか?」
「五時間の睡眠を取った、問題無い」
これからの戦略を考えていた切嗣をキャスターが尋ねる。切嗣とキャスターの仲はそう悪いものでは無い。召喚された当初は切嗣がキャスターのことを一方的に嫌っていて話すどころか目を合わせる事すらしなかったがキャスターがそれにキレて喧嘩勃発。その結果話もするし、互いの意見を述べ合う程度には打ち解けたのだ。
「バーサーカーはどうしますか?俺としては最悪同盟も視野に入れても良いと考えてますが」
「同盟……確かに手の一つではあるがそれは必要以上にこちらの情報を開示しなくてはならない恐れがある。バーサーカーが脱落するまでは交戦を最低限に控えるべきだ。君の火力ではバーサーカーを殺しきる事は難しいだろう?」
「なるほど……他の陣営がバーサーカーを倒すのを待つわけですね」
「そういう事だ」
切嗣の考えを即座に理解出来る辺り、キャスターも意外と黒い性格をしているに違いない。
「う〜ん……」
ところ変わってとある民家の一室、そこでウェイバーは机の上に広げたノートを見ながら悩んでいた。ノートには昨日の戦闘の事についてウェイバーが気づいた事を箇条書きで書いてあり、その下には彼自身の考察が書かれている。
「お、何だ?宿題か?」
「違うよバカ、昨日の戦闘のことを纏めてるんだよ」
「へぇ〜真面目だねぇ。俺に任せたら全部終わるっていうのに」
「……ライダー、お前それ本気で言ってるのか?」
ライダーの言葉にウェイバーが強い反応を見せた。
ウェイバーが聖杯戦争に参加した理由、それはよく言えば名誉の回復と言えるのだろう。元々時計塔に所属していたウェイバーだが論文をケイネスに否定されたのだ。代は浅いとはいえ魔術師としてのプライドは一端に高いウェイバーはそれに憤慨した。そしてふとした事からケイネスが用意していた聖遺物を入手し、聖杯戦争のことを知ったのだ。
ほとんど勢い任せに聖杯戦争に参加したウェイバーだったが聖杯戦争の中でも最強としか言えないスキルと宝具を持つライダーを召喚した時……いや、召喚する以前から考えていたのだ。
優秀なサーヴァントであろうが、最弱と呼べるサーヴァントだろうが、力を合わせて聖杯戦争を勝ち残る事を。サーヴァントに戦いを任せ、自分はサーヴァントの負担を少しでも減らす為に戦略面で頑張ろうと。
その事を教えたはずのライダーにそれを否定されるようなことを言われてウェイバーは簡単に言ってしまえばキレかけていた。その反応を見たライダーは無表情だった顔をほんの僅かだが綻ばせる。
「どうやれ昨日のあれでヘタレだわけじゃ無いみたいだな」
「ふん!!あんなのでヘタレてたらこの先やってられるかよ!!」
「まぁそれはそうだがな……何々?一番危険なのはバーサーカー、次いでアサシン、ランサー、キャスター、アーチャーは不明か」
「あの戦闘能力を見た限り一番厄介なのはバーサーカーだ。バーサーカーはステータスが高い分魔力の消費が激しいけどそれはマスター一人で補おうとした場合だ。もしバーサーカーのマスターが形振り構わずに魂食いなんかで魔力を補えばバーサーカーの問題は解消される。それでなくても魔力の塊の令呪なんてもんがあるんだ。バーサーカーは最優先で潰したほうが良い」
「アサシンは?」
「アサシンはマスター殺しのサーヴァントだから、幾らライダーが強くても僕が死んだら……って、ライダーには魔力切れは心配無かったな。それでも僕が殺されることが怖い。それにバーサーカーを殺せる手段を持っているみたいだし、それはバーサーカーだけじゃなくて他のサーヴァントにも効くかもしれないから」
「ランサーとキャスター」
「ライダーのスキルと宝具は確かに神秘に対しては有効だろうけどあの槍術に作用しないだろ?それにランサーの宝具が防御可能なものかどうかもわからない。キャスターはライダーにとっては相性の良い相手だから、なんか拳法使ってたみたいだけどライダーの大剣の方がリーチがある。アーチャーに関しては全然能力とかわからないから不明にしてある。欲を言えばどうしてアーチャーとして呼ばれたのかの理由が知りたかったけどね」
ウェイバーの考察を聞いてライダーは無表情な顔を驚きで崩した。ライダーはウェイバーが魔術師として未熟な存在であることを知っている。だが観察眼に関しては既に一流の域にまで達していたのだ。
「ウェイバー、お前絶対魔術師なんかよりも軍師とかそう言うのに行った方が大成するって」
「はぁ?何だよ、藪から棒に」
惜しむべきはウェイバーがその事に気付いていないことだろう。
「……だけど、まぁ折角ウェイバーが考えてくれたんだ。この通りに頑張ってやるよ」
「……ライダー、お前何か変な物でも食べたか?」
「あ?ウェイバーと同じ物しか食ってないぞ?」
「そう言うことを言ってるんじゃ無いけどなぁ……」
緩んだ空気になりながらウェイバーはライダーと共に作戦を煮詰めていく。
ウェイバーは考える。自分が呼び出した最強のサーヴァントに恥じぬマスターに成ろうと。
ライダーはひっそりと違う。この素晴らしい才能を持つマスターを必ず勝者にしてみせると。
キャスター陣営。
戦場を知らなかったアイリは気絶中。舞弥はすぐに回復して他のマスターの監視。切嗣は色々と悪巧みの最中。
キャスターとの仲は悪く無い。原作のセイバーよりは絶対にマトモ。キャスターがキレて切嗣と喧嘩して本音を出し合ったのが理由。キャスターはキャスターで自分の非力さを理解しているから切嗣の外道戦法をある程度は許容している。
ライダー陣営。
ウェイバー君ひっそりと覚醒、ただし自分でその事に気付いていない模様。原作でもウェイバー君素晴らしい働きをしてるからね。ライダーはその事に気が付いています。
感想、評価をお待ちしています。