アインツベルンの森、そこでバーサーカーと雁夜は衛宮切嗣によって召喚されたキャスターに捕捉されていた。ただし、それはもはや戦いと呼べるものでは無かった。
四方八方から襲いかかる光の矢をバーサーカーが薙ぎ払い、砕き、その身に受ける。キャスターの狙いはバーサーカーの奥にいる雁夜。バーサーカーはマスターを殺させない為にキャスターの攻撃を捌き続けるしかなかった。
そして雁夜は無事かと聞かれれば、それは違うと言うしかない。
「グギィッ!!グァァァ……!!!!」
バーサーカーが光の矢を薙ぎ払い、砕き、受ける度に雁夜の中に宿っている刻印虫が雁夜の肉を喰らっていく。元々魔術師としての鍛錬を受けていなかった雁夜は臓硯からこの刻印虫を埋め込まれる事で何とか急造の魔術師として聖杯戦争に参加出来るようになっていたのだ。
生きたまま肉を食われて雁夜は血反吐を吐くがそれでもバーサーカーは止まらない、止まれない。自分が止まった瞬間に雁夜が光の矢に貫かれると狂っていても本能で分かっているからだ。
対するキャスターは攻撃の手を緩めない。バーサーカーがキャスターを倒す為に動いたところでその隙に雁夜を狙えば良い。仮にバーサーカーが雁夜の守護に集中していたとしてもそのまま攻撃を続ければ魔力が尽きて勝手に自滅してくれる。切嗣と考えたバーサーカーの対処法、そのステータスの高さに比例する様にバーサーカーのクラスは魔力の消耗が激しくなる。過去の聖杯戦争でもバーサーカーのマスターの敗因はすべて魔力切れによるものだった。
外道だと言われるかもしれないがこれこそが殺し合いなのだ。相手の弱点を突き、効率的に結果を出す。バーサーカー相手にまともに正面から戦えば負けしかない。ステータスで劣り、バーサーカーを殺し切る火力も無いキャスターにとって唯一の勝機でもあるのだ。それを逃すはずが無い。
そして、バーサーカーと雁夜に不幸が訪れる。
キャスターからの光の矢、それに混じって剣が射出された。バーサーカーはその剣を両手で掴み、弾こうとするがキャスターの物ではない魔力弾に腕を貫かれる。千切れた腕は即座に再生し、バーサーカーは追加された剣と魔力弾すら捌くがそれに応じて雁夜の中の刻印虫が肉を喰らう速度も増していく。
「(マスター)」
『……確認した。どうやらこの場にアサシンがいる様だな。そしてアーチャーのサーヴァントが遠坂邸からバーサーカーに向けて狙撃をしている』
「(遠坂邸からって……ここから何十キロ離れてると思ってるんですか!?)」
『だが事実だ』
切嗣からの念話にキャスターは思わず聞き返してしまったが切嗣も目を疑う光景だった。アーチャーのサーヴァントは遠坂邸の屋上から赤い鎧を纏ってアインツベルンの森のバーサーカーに向かって魔力弾による狙撃をしている。ここから何十キロも離れているにも関わらずその狙撃は的確にバーサーカーの手足を貫いていることから狙撃手としての経験もある切嗣は肝を冷やしていた。
狙撃というのは当たり前だが対象との距離が開けば開く程に難易度は上がっていく。それなのに動き回っている対象の手足を狙い、的確に撃ち抜くことなど切嗣には出来なかった。だが、少なくともこれでアーチャーのサーヴァントの攻撃法を一つ知ることが出来たと考えれば悪い話では無い。
『キャスター、アサシンからの奇襲を警戒しつつそのままを維持だ』
「(了解です!!)」
四方八方から襲いかかる光の矢と剣の群れ、そしてバーサーカーの身体を撃ち抜くほどの魔力弾による狙撃。有り体に行ってしまえばバーサーカーと雁夜はどうしようも無く詰んでしまっていた。
「(ーーーあぁ)」
光の矢と剣の群れ、そして魔力弾による狙撃の攻勢の中を僅か一騎で奮闘しているバーサーカーの背中を見ながら雁夜は力無く座っていた。全身から絶え間無く訴えられていた刻印虫の捕食による激痛はもう感じられない。それは雁夜の身体がすでに限界を通り越しているからだ。それに雁夜の身体から肉が尽きかけているというのもあるだろう。肌から刻印虫が突き出して表皮を貪っているのが見える。
「(ここ、までか……)」
雁夜はもう自分の死を悟っていた。指一本すら動かせる気がせず、心臓の鼓動が秒単位で弱まっていくのが感じられる。もって後数分といったところか。
雁夜は死を恐れてはいなかった。元より魔術師に成り下がったこの身は屑、真っ当な死に方などするはずが無いと覚悟していた。こうして虫に喰われながら死ぬなどお似合いだろうと内心で笑う。
「(だ、けど……!!)」
雁夜には望みがあった。それは聖杯戦争の根絶。自分や鶴野を魔導に縛ろうとし、幼い桜を犯した原因である魔術師の宴、それを徹底的に壊してやると誓ったのだ。それが成せないことが雁夜にとって何よりも悔しかった。
「(打てる手はある……けど、これをしたらバーサーカーは絶対に怒るだろうな……)」
何とか目線だけを向けた先にあるのは精気が抜け落ちた自身の手とそこに刻まれた令呪。雁夜の考えた打てる手とはセイバーに追いかけられていた時に思いついた一手。セイバーにマスター権を奪われるならばと思い半ばヤケクソ気味なところではあるがこの場で打てる最善手でもあった。
これをしたらバーサーカーは絶対に怒るだろうと雁夜は考える。だけど雁夜の打てる手はそれしか無く、このままだとバーサーカーも魔力切れによって消滅してしまう。それは、どうしようも無い自分の呼びかけに応じてくれたバーサーカーに対する侮辱だと思った。
だから、
「(俺のバーサーカーは最強なんだ……だから、必ず勝ってくれ……)」
雁夜は、勝利の為の一手を放つ。
「令呪、三画、を持って……命ず」
「理性を取り戻し……受肉しろ……
雁夜の打った一手に、雁夜の言葉を聞いた全員が意識を持って行かれた。
理性を取り戻せ?受肉しろ?
バーサーカーのクラスのメリットである狂化スキルを取り除き受肉するなど過去現在の聖杯戦争に参加したマスターの誰もが考えなかった事である。そも前者ならどうにかなるかもしれないが後者など令呪でどうにかなるものなのか?
それに関しては令呪の説明からさせてもらおう。令呪とは聖杯戦争への参加のチケットでありサーヴァントを従える三度限りの絶対命令権である。聖杯から与えられた令呪には一画毎に桁外れの魔力が込められていて使い方によっては空間転移などの奇跡と称される魔法レベルの事象も引き起こす事ができる。
そして先の疑問の答えはーーー是である。
雁夜の令呪が光り輝き、消え失せると同時にバーサーカーの身体からミチミチと何かが軋むような音が立てられた。
「Gaaaaaaーーーアァァーーーあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
何かに堪えるようなバーサーカーの咆哮。バーサーカーの顔に精気が宿り、目は金からアジアの人種によく見られる黒に変貌する。
それは決定的な隙でもあった。雁夜の言葉からまだ帰っていないキャスターとアサシンではなく遠く離れたところから狙撃していたアーチャーは手を止めずにバーサーカーの頭部目掛けて魔力弾を放った。
闇夜を切り裂く一条の閃光、さっきまでなすがままに撃ち抜かれる事しか出来なかったバーサーカーはその魔力弾を片手で受け止めた。
「ーーー」
そしてそれをやって来た方向ーーー遠坂邸にいるアーチャー目掛けて全力で投擲する。当たったかどうかは分からないがアーチャーの狙撃が止んだ。
「はは……か、て……かって、くれ……」
考えていた最善手が正しかったことを悟り、雁夜は息を引き取った。その顔は刻印虫に蝕まれたというのにとても安らかな死に顔だった。
「ーーーあぁ、勝つよ。勝つとも。間桐雁夜、俺が唯一頭を下げるに値した俺のマスター。お前の願いは俺が叶えよう」
バーサーカーが言葉を発した。それでキャスターとアサシンの警戒は最上級に引き上げられる。
「(どうしてだろう……)」
「(狂化は無くなった。ステータスは下がっているはず)」
ーーーそれなのに
「ーーーさぁて、覚悟は良いか?魔術師風情と暗殺者風情。今夜の俺はチィッとばっか機嫌が悪い。だから……容易く死んでくれるなよ?」
ーーーこのサーヴァントに勝てるイメージが、全く出来ない。
キャスターVSバーサーカー&雁夜
バーサーカーは守護に向かないのでこの時点でバーサーカーの不利は決定的。
アサシンとアーチャーの乱入
言峰がアサシンを使って捜索をさせていたところ、バーサーカーとセイバーのサーヴァントを捕捉、時臣と相談してバーサーカーからやってしまおうとキャスターVSバーサーカーに乱入した。
おじさん退場
バーサーカーの魔力供給がど偉い事になっておじさん退場。蟲蔵に篭っていたのなら供給と同時に原作のウェイバーがやっていたように回復出来てもう少し長生き出来た。
そしておじさんは大変な置き土産を残して逝った様です。
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