バーサーカーのクラスで招かれた八神時雨という人物は聖杯戦争における最大級のイレギュラーだった。英霊が召喚される聖杯戦争においてすべてのサーヴァントが別世界から呼び出された今回の聖杯戦争自体がイレギュラーと言えるのだが彼はその中でも異質である。
彼は聖杯の呼びかけに応じたわけでは無い。自らそれを知覚して降りてきたのだ。
特異点と呼ばれる世界の最深奥、そこに彼はいた。とある目的からそこに辿り着き目的を果たすことが出来たもののそこに囚われ、永劫の時間を独りでそこで過ごす事となる。
最深奥から見える世界は彼が望んだ世界だった。しかし、彼の目的が果たされた後となってはそんな世界は正直言ってどうでも良い世界になっていたのだ。
ここから出たい、だがそれは叶わない。
極稀にこの最深奥に来る存在がある。だが彼に認められずに芥すら残さずに消し飛ばされる。
気の遠くなるほどの長い時を経て彼は暇潰しに知覚できる範囲をほんの僅かに広げた。ほんの僅かにと言ってもそれは宇宙数個分というとてつも無い範囲であるが。その知覚した世界の中で彼の興味を引く存在がいる世界があった。
それは全身を虫に犯され、喰われながら生きている男の姿。何かを呼び出す呪文を死力を絞って叫んでいる。そして興味を引いたのはその男の願いだった。
自分は死んでも良い。だから、どうか彼女を、あの子を助ける力が欲しい。
それは奇しくも時雨が統治する世界における法則、時雨の理と同じ願いだった。
その願いに共感した時雨はその世界に向けて己の複製を端末として飛ばす。召喚の呪文に呼応した存在が幾らかあったがそれは腕の一振りで砕けて行った。誤算があったとすればその召喚の呪文によって呼び出された事で理性を失い、本来のスペックとは比べ物にならない程に弱体化してしまった事。
だが理性を失い、狂気を宿した身だとしてもこの男の願いを叶えてやりたいと思った気持ちには変わり無い。呼び出されてすぐに近くにいた汚物を潰し、腹が減っていたので喰ってやった。
そして雁夜の指示通りに、他のサーヴァントとの戦いに乱入して力を見せつける。
その結果がこれだ。理性を取り戻せたものの召喚の男ーーー雁夜は力尽きて生き絶えた。願いを叶えると決めたのにこの体たらく、狂化していたからなど言い訳にならない。だが、雁夜は願いを叶えてくれると信じて逝ったのだ。なら、その瞬間を見せることは出来なくとも叶えてやらねばならない。
聖杯戦争の根絶ーーー未来永劫、この地で聖杯戦争などというふざけたものを行わさせない。
魔術師?サーヴァント?抑止力?アラヤ?ガイア?そんな雑多など知らぬ存知ぬ。
邪魔立てするというのならばーーー森羅万象を滅尽滅相するまでだ。
アインツベルンの森、そこで行われていたのは先程までの一方的な戦い。だが攻め立てる者は逆転していた。
「オラオラオラ!!どぉした!?この程度か!?サーヴァントとして呼ばれたんだろぉ!?もちっと気張って魅せろや!!」
攻勢に回るのはバーサーカーとして呼び出された八神時雨。守る存在であった雁夜が死んだ為に枷から解き放たれた彼は森の中に隠れていたキャスターとアサシンを捕捉。狂化による恩恵は無くなった為に時雨の敏捷はキャスターはともかくアサシンには劣るが逃げ道を一つ一つ潰すことでその距離をジワジワと詰めつつあった。
守勢に回るキャスターとアサシンが選んだのは反撃。時雨の猛攻を捌きながら光の矢と剣の射出を放つ。放たれた数は二百を超え、即席のコンビネーションであるのだが一流の霊格であっても重傷を負うものだった。
だがそれは、この理不尽には通用しない。
時雨は足元にあった小石を二つ蹴り上げると向かってくる剣目掛けて蹴り放った。それにより剣の軌道が逸れて他の剣や光の矢にぶつかる。そしてまた軌道が逸れてぶつかる。それを繰り返しーーー最後にはすべての光の矢と剣が時雨を避けるようにして地面に突き刺さった。
「嘘ぉ!?」
「んなアホな……!!」
「ケツ振って逃げ回って誘ってんのかぁ!?ノーマルな俺を誘うほどに飢えてるんなら二丁目で振りやがれ!!テメェらの顔ならホイホイ釣れるだろうよぉ!!」
明らかな挑発にキャスターとアサシンは乗りそうになってしまうが理性でそれを堪える。あの挑発に乗って特攻したところで返り討ちにされる未来しか見えないからだ。
「ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!!なんで狂化無くなったのに強くなってるんですか!?」
「知らないよぉ!!ってかこっち来ないで!!」
「一人であんなのと戦えるわけ無いじゃないですかぁ!!」
「ヒャッハァ!!殺られるサーヴァントは唯のサーヴァントだぁ!!逃げるサーヴァントは良く訓練されたサーヴァントだぁ!!」
時雨が時折生えている木をもぎ取ってキャスターとアサシンに投げつける。霊体化しているならばともかく現在は現界しているキャスターとアサシンでは木にぶつかってしまうために避ける。避けに入った瞬間に時雨が空いていた距離を一気に詰めていく。
バーサーカーが理性を取り戻すという衝撃から流れを一気に持って行かれてしまい、キャスターとアサシンはその事に気付きながらも時雨が立て直すことを許さないためにそれが出来ないでいた。今二人に必要なのは時間だ。僅かでも時間が出来ればそれで立て直す事ができる。
その間をどうにかして作ろうと頭をフル回転させていた二人。そこに彼らのマスターが動いた。
『令呪を持って、キャスターに命ず!!』
『言峰綺礼が令呪にて命ずる』
『僕の元に戻れ!!今すぐに!!』
『空間を跳躍し、私の元へ戻れ』
念話によって届いた令呪の命令。切嗣と綺礼の令呪が一画無くなるのと同時にキャスターとアサシンの姿がアインツベルンの森から消えていた。
「……逃げられたか」
令呪による空間転移。本来なら魔法の領域であるはずのそれだが聖杯からのバックアップがあれば可能となる。キャスターとアサシンがこの場から消えたのはそれが原因だろう。
「追ってもいいんだけどな……」
キャスターとアサシンがいなくなったことでやる気が削がれた時雨は気怠げに頭を掻く。令呪による空間転移の転移先は十中八九彼らのマスターの元だろう、それを捕捉して強襲をかけることはサーヴァントを探すよりも時雨にとっては簡単なことだった。
だが、時雨はとある理由からそれが出来なかった。
「流石に令呪だけじゃ完全にとはいかないか……」
それは魔力不足。雁夜の令呪によって受肉したのだがそれは完全なものではなかったのだ。本来受肉したのなら自分で魔力を精製することが出来るようになる、だが今の時雨は魔力を精製することが出来なかった。
つまり今の時雨はマスターのいないサーヴァントと変わり無い。不完全にとはいえ受肉しているおかげで消滅までの時間が延びているだけだ。このまま魔力を補給しなければ一日もしないで消滅してしまう。
「マスター候補でも探すか?いや、それで魔術師ならともかく一般人見つけたらマスターに悪いし……魂食いも同じ理由で却下。食事でも補給できなくは無いけど微々たるものだしな……っと」
魔力の補給問題の解決を考えていた時雨だが突然その場から全力で飛び退いた。そしてその数瞬後には時雨がいた場所に目掛けて大量の魔力弾が降りそそぐ。止んでいたアーチャーの魔力弾の狙撃が再開したのだ。
「ハイハイまたこれね。何度も同じことされてたら飽きるってもんだよ……たまには変えてくれないと」
広範囲に降りそそぐ魔力弾、さっきまでとは違い面で制圧する方法に変えて来たそれだが時雨はそれに対する愚痴を呟きながらヒラヒラと踊るように避けている。
「〜♪」
避けている最中で楽しくなってきたのか、時雨は腕をまるで指揮者のように振り始めた。そして魔力弾が止んだ。
「はっ!!せっかちだねぇ、当たらないなら焼き払えってか?」
時雨は空から落ちてくる巨大な魔力弾を見ながら呟いた。あの魔力弾が着弾すれば時雨のいる辺り一帯は焼き払われ、アインツベルンの森の何割かは吹き飛ぶ事になるだろう。そうなれば少なからず一般人に影響が出てしまうと時雨は考えて、腰に下げていた日本刀を手に取った。
「ちょっとそれはよろしく無いなぁ……仕置きも兼ねてやるか」
鞘から日本刀を抜く。だがその刀身は空気に触れた瞬間に蒼い焔に包まれてしまった。
「宝具開帳“
時雨は日本刀ーーー焔華を上段に構える。迫る巨大な魔力弾を目の前にしながら時雨の顔には恐怖が見えない。何故ならーーー時雨にとってはこの程度何の脅威にもなりはしないのだから。
「
自らの魔技の名前を呟きながら、時雨は上段に構えた焔華を全力で振り下ろした。
バーサーカーもとい時雨さんのステータス更新
筋力 A 耐久 B 敏捷A+ 魔力 A 幸運 E 宝具EX
宝具
ランク A
レンジ 1〜???
時雨の母親が時雨の成長を祝って与えた刀。素材に使われた特殊な鉱石と魔導により刀身からは蒼炎が発生し、時雨の意思通りに動かすことが出来る。
覇断・國断ノ太刀
真名解放では無く純粋な技による攻撃。アサ次郎の燕返しと同類と思ってもらえれば良いです。文字通り國すら断つ一撃。
時雨さんの聖杯戦争参加の経緯
実は自分から聖杯戦争に参加した時雨さん。本当なら聖杯戦争に呼ばれることは無いのだがおじさんの願いをたまたま見たために自分から召喚されに行った。
時雨さんの受肉
現在時雨さんの受肉は不完全。プロトタイプのライダーやギル様と同じで肉体はあるけど魔力を精製出来ない身体で現界してます。そのため魔力が切れたら消滅。だけど身体があるから普通よりも長く現世に残っている。
時雨さんダンシング
ハサンダンス+ニートダンスが合わさった感じ。これはウザい。
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