シズ・デルタに恋をしたナザリックの機動兵器   作:t-eureca

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今回は少し長めです。


第48話 白い暴君3

「はぁっ、はぁっ、はぁ!」

 

広大な森の中をイグヴァルジは走っていた。

先程、仲間たちが謎の集団に瞬く間に殺され、負傷した仲間を見捨てて逃げていたのだ。

 

「俺は!俺は英雄になる男だ!こんなバカみてぇな死に方出来るかよ!!」

 

自らの願望を喋りながら全力疾走、持久力が切れたのか近くの木に手を置き、激しく呼吸をする。

 

「あいつを置いて来て正解だったぜ、良い時間稼ぎになってくれたぜへへっ」

 

わざと置いて逃げた仲間の事を思い出しイグヴァルジは笑う。

自分はこんなところで終わる男ではないのだ、自分が王国一の英雄になればアイツらも喜んで成仏してくれるだろうと馬鹿な事を考えながらニヤけるイグヴァルジ。

 

「へへへ…とりあえずこの森から抜け出して組合に上手く話せば……ん?」

 

しかし、幸運はそう長く続かなかった。

 

『…追跡対象発見』

 

『捕獲する』

 

「なっ!?」

 

「くそ!どんだけしつこいんだ!?」

 

イグヴァルジは罵声を上げながら剣を抜き、追ってきた者たちに斬りかかる。

しかし、やすやすと剣をかわされ、左足を切断されてしまった。

 

「ぎゃあ!」

 

イグヴァルジは無様に転倒し、斬られた左足を抑えながら絶叫する。

 

「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁ!俺の、俺の足がァ!!」

 

『捕獲準備完了』

 

追跡者はそういうと棒状の武器を取り出す。先端には電流を帯びていた。

 

『捕獲する』

 

追跡者たちはゆっくりとイグヴァルジに近づく。

 

「ひぃ!来るな!来るなぁ!?」

 

恐怖に震え情けない絶叫を上げるイグヴァルジ。

もはやこれまでと考えていると、どこからか弓矢が2本飛んできて追跡者たちの頭部に当たり、矢の先端に仕込まれている爆弾が爆発し、上半身が爆散した。

 

「なん…だ?」

 

「命中…」

 

「ナイスショット」

 

イグヴァルジが矢の飛んできた方角を見るとボウガンを構えるマグノリアとジナイーダが立っていた。

 

「大丈夫ですか?って…」

 

「お、遅ぇぞ!!助けに来るならとっとと来やがれこのクソガキ!!?」

 

謂れのない文句をほざきながら睨みつけるが顔の肉の字と痛みで涙を流しているので、何とも情けなく見えた。

 

「「……」」

 

(助けない方が……良かった……?)

 

(それには同意だけど、コイツにはナザリックの食糧事情に貢献してもらわないといけないからね、今死なれたら困るよ?)

 

(…肉…だけに…?)

 

(うん、肉だけに)

 

「おい、なにしてやがる!早く俺を助け『うるさい』は?」

 

喚いているイグヴァルジにジナイーダは汚物を見るような目で、一蹴し。

マグノリアはイグヴァルジに麻酔用の矢を打ち、イグヴァルジを眠らせる。

 

「……寝てて」

 

「うっ…」

 

ジナイーダは眠ったイグヴァルジにを鳥型の<変形円盤機/ディスク・トランス・ロイド>を使って、森林の外まで移送させた。

 

「いこっか?」

 

「……うん」

 

気を取り直してジナイーダとマグノリアはレイヴンの下に急いで向かった。

 

 

 

 

「ぉらぁ!」

 

「ふん!」

 

白い暴君がその強靭な前脚を豪快にレイヴンに叩きつける。

それをレイヴンは斬艦刀を大剣形態にさせて受け止めた。

 

「儂の腕力と互角やと!?」

 

「悪いな、俺の方が……」

 

白い暴君は自身の突きをレイヴンが正面から受け止めた事に驚愕し、レイヴンは斬艦刀を豪快に振るい白い暴君を突き飛ばす。

 

「上だぁ!」

 

「ぬぅ!しっ!」

 

突き飛ばされた白い暴君はレイヴンに踵落としを叩き込む。

レイヴンは後ろに飛んでそれを回避した。

白い暴君は着地し、勢いを付けてレイヴンに体当たりを仕掛ける。

 

「おうらぁ!!」

 

「なんとぉー!」

 

白い暴君の体当たりを受け、後ろの大木に叩きつけられる。

白い暴君はその隙を逃さず、顔を上げてその大顎で喰らい突こうとするがレイヴンはその顔に右ストレートパンチを叩き込んだ。

 

「危ねぇ…なぁ!!」

 

「ぐぅ!」

 

レイヴンのパンチを受けて怯んだ白い暴君に立ち上がったレイヴンは追撃をかける。

肘から火が放出し、パンチのスピードと威力を上げる。

 

「<エルボー・ロケット>!」

 

「!、<要塞>!」

 

殴りかかってきたレイヴンに白い暴君は武技で防御力を向上させ、それを受ける。

レイヴンは構わず2発、3発と殴り続けた。

そこまで殴り続けられると流石に耐え切れなくなったのか白い暴君は後ろに跳躍をして距離を取る。

 

「!ぐぅ!、ぜぇぜぇ…おどれ、ただの人間じゃないな?」

 

「…ただの冒険者だ」

 

※スーパーロボットです。

 

「白い暴君と一対一で互角にやりあってる…」

 

「モモンさんと同等の力を持っているのは知ってたけど、実際に見ると本当に凄い…」

 

(…あれでもまだ御屋形様が全力じゃないことは言わないでおくでござる)

 

白い暴君と一対一で互角に渡り合っているレイヴンに漆黒の剣は驚嘆するが、レイヴンとナザリックで実際に戦ったハムスケはレイヴンがかなり手加減をしていることをすぐに察した。

 

「<ハンマー・パワー>!!」

 

レイヴンが両拳を打ち付け、電流を放電させる。

両腕には電流が帯電していた。

 

「!、なんやそれ、魔法か!?」

 

「そういう仕込みだ!」

 

レイヴンは電撃を帯びた拳を(勿論手加減と電撃の出力を落として)殴りつける。

拳の威力と電撃の威力に白い暴君は後ろに飛んで距離を取る。

 

「ちっ、面妖なモン使いおって…」

 

「面妖で結構だバーロー」

 

白い暴君は悪態を突きながら腕の長さのリーチを活かしながら前脚を何度も振るう。

レイヴンはそれを回避と斬艦刀の防御で直撃を防いだ。

 

(やっぱりハムスケと互角って言われた通り、力はそれなりに強いな、いや、腕力だけならハムスケより少し上か?しかも武技まで使えるとは……もう少し時間かけてこの魔獣の事調べたいけどさっきのモモンガさんの伝言も気になる、少し力を出してできるだけ早めに倒そう…)

 

防御をして攻撃を防ぎながら、速めに決着をつけようとレイヴンは決めたが、白い暴君は先程ハムスケに使ったオリジナルの武技を発動する。

 

「防御だけで儂に勝てるか!こいつを持ってけ!<鎌居太刀>!!」

 

「!、ぬお!?」

 

「吹っ飛べやぁ!!」

 

右腕が白く輝いた次の瞬間、白い暴君は勢いよく振り下ろし、白い衝撃波がレイヴンを襲った。

衝撃波はレイヴンに直撃し、大きく吹っ飛ばされ、地面に転がる。

 

「やったか?」

 

「…それ言ったら大抵失敗フラグに言うの止めとけ」

 

「うそ~ん…」

 

レイヴンは何事もなかったかのように斬艦刀を持って構えなおした。

白い暴君はレイヴンが何事もなく立ち上がった事に驚愕しながらも再び攻撃を始める。

 

「おどれえぇぇぇ!」

 

レイヴンは次に来た白い暴君の左前脚を受け止め、脇に抱える。

そしてジャイアントスイングの要領で振り回し始めた。

 

「うおおぉぉぉらぁ!!」

 

(儂を投げたじゃと!!?)

 

そして白い暴君を天高く投げ飛ばし、自身も跳躍し、白い暴君の所まで跳ぶ。

レイヴンは脚を白い暴君の首にギロチンのようにかけ体重をのせ、今度は落下する。

 

「地獄の……断頭台!!」

 

「ぐぅ…こんなの外して!」

 

白い暴君は自分の首にかけられている脚をどかそうともがくが、レイヴンはそれを無理やり制した。

 

「させぬわ!」

 

「ぬぅ!?」

 

そのまま凄まじい勢いで地面に激突した。

衝撃と共に砂煙が舞う。

砂煙が晴れると、レイヴンの脚が白い暴君の首に深々と食い込み、白い暴君はうめき声を上げる。

 

「う、うう…」

 

レイヴンは白い暴君がうめき声をあげながらも生きていることを確認し、白い暴君をどうしようかと考える。

 

(とりあえず終わったな、でもコイツはどうしようか?聞けばハムスケの喧嘩友達らしいし…)

 

そう考えている途中にハムスケと漆黒の剣がレイヴンに駆け寄ってきた。

 

「御屋形様~」

 

「ん?」

 

「すごいですレイヴンさん、あの白い暴君を一対一で倒すなんて!」

 

ニニャが半ば興奮気味にレイヴンに尋ね、レイヴンは白い暴君の力を評価する。

 

「だが強敵だった、久しぶりに骨が折れたよ」

 

レイヴンは白い暴君に近づく。

 

「殺せ…」

 

「え?」

 

「命乞いはしねぇ…殺れよ」

 

(え?まだ殺すなんて一言も言ってないんだけど?)

 

いきなりのくっ殺発言に少し戸惑うが、ハムスケがレイヴンの前に出て、頭を下げる。

 

「御屋形様!」

 

「お願い申し上げるでござる!どうかこの者を御屋形様の傘下に入れてもらいたいのでござる!!」

 

「え?」

 

意外にも先ほどまで己を殺しかけていた相手の助命をするハムスケに若干驚きながら、レイヴンはハムスケの話を聞くことにした。

 

「この者の力ならば必ずや御屋形様の力になれるでござる!どうか!どうか!何卒御慈悲を!!」

 

「だが、そいつはお前を殺しかけていた相手だぞ?いいのか?」

 

「某は全く気にしていないでござる!!だから!」

 

「鼠、余計なことすんなや…」

 

ハムスケの懇願をはねのけ、白い暴君はその赤い目に死ぬ覚悟を宿してレイヴンを見つめる。

 

「とっくの昔に死ぬ覚悟なんぞできておる、やれよ…」

 

「…」

 

それを聞いてレイヴンは斬艦刀を振り上げる。

それを見た白い暴君は声を上げ最後の言葉を叫ぶ。

 

「っ……地獄でお好み焼き作って待っとるからなぁ!!?」

 

そう叫んだ後にレイヴンは斬艦刀を振り下ろした。

 

 

 

 

「ふう…傷はないかナーベ?」

 

「はい、大丈夫ですモモンさん」

 

先刻倒したサイボーグの自爆機能が発動し、爆発に巻き込まれたモモンだったが、爆発に巻き込まれる瞬間に魔法を使って抜け出し、ナーベと共に<飛行/フライ>で空中に飛んで逃げた。

下ではサイボーグ達が一斉に自爆し、爆煙が舞う。

そして煙が晴れるのを確認した後、モモンとナーベは地面に降りた。

 

「まさか自爆機能まで搭載しているとは驚いたな」

 

「モモンさん、この者たちは?」

 

「うむ、見た限りだとサイボーグだな、だがこの世界にはマシンナーとマキナの軍団以外にそんな物は居なかった筈…」

 

「まさか……マキナから裏切り者が?」

 

「いや、その線は限りなく低い、マキナの構成員でさっきの奴らと同じ外見のサイボーグは居ない。更に言うと私の知る限りではあのようなサイボーグは見たこともない」

 

「ならばこの世界独自の…?」

 

「可能性がある、できれば回収してマシンナーと共に調べたかったが…」

 

辺りには先程自爆したサイボーグの部品が木端微塵に吹き飛んでおり、ネジや金属片などの細かい部品はあるが、動力などの重要な役割を持つ部品は完全に破壊されていた。

それを見たモモンは落胆して肩を落とすがもう一つの疑念が浮かんだ。

 

「そういえば奴らが持っていた袋…アレの中身を確認してみるか…」

 

「ならば、私が取ってきます」

 

「頼む」

 

モモンの頼みを聞いたナーベは先程のサイボーグが持っていた袋を取りに歩き始める。

もしかすると何らかの手がかりが見つかるかもしれないという僅かな期待を寄せる。

 

「モモンさん、持ってきました、少々汚れていますが…」

 

「うむ、ご苦労」

 

ナーベが持ってきた袋を受け取り、モモンはその袋を開け中身を取り出す。

 

「…これは」

 

中から出てきたのは薬品を満たした容器に人間の生首を保管したものだった。

それを見たモモンは兜の中の赤い目を光らせる。

 

「やれやれ、これは早くマシンナーと合流せねばな」

 

 

 

 

レイヴンが振り下ろした斬艦刀は白い暴君の顔のぎりぎりのところまで振り下ろされていた。

白い暴君は何故?と言いたげな顔でレイヴンを見つめる。

 

「な、なんで…?」

 

「なあ、ちょっと聞くが」

 

「え?」

 

「なんでお好み焼きだ?」

 

レイヴンの意外な問いかけに白い暴君はしどろもどろにしながら答える。

 

「え?…いや、特に意味はないが…」

 

「ていうかどんな食い物か知ってるのか?」

 

「親父が教えてくれた、親父も実際には見たことなかったらしいが…」

 

「…」

 

しばしの沈黙の後レイヴンはふ、と笑い斬艦刀を上げ、肩に担ぐ。

 

「面白い奴だな、気に入った」

 

「へ?」

 

白い暴君は間抜けな声と面食らったような顔をし。レイヴンを見る。

 

「白い暴君よ、俺の仲間にならんか?俺の仲間になればその命、助けてやろうじゃないか?」

 

「何?」

 

「ハムスケの知り合いをここであっさり殺すのちょっと可哀想だしな。それに…このまま死にたくないだろう?」

 

「む……」

 

白い暴君は一瞬考えた後すぐに答えを出した。

白い暴君はゆっくりと立ち上がり自身の頭を地面に付くぐらいにまで付ける。

 

「…わかった、この白い暴君、おどれの舎弟になろう」

 

「(舎弟?)随分とあっさりだな?」

 

「弱い奴が強い奴に従うのはこの世の掟じゃろう?この白い暴君、レイヴン……いや『カシラ』の舎弟として誠心誠意仕えるここに誓う」

 

「(カシラ?)わかった、ならば立て、白い暴…」

 

レイヴンがそういいかけた時、茂みからモモンが言っていたサイボーグの集団10名がレイヴンの前に現れる。

 

「なんだ?」

 

「ちっ、またアイツらか…」

 

白い暴君は少し苛立ちながら舌打ちをし、レイヴンはモモンに<メッセージ>を送る。

 

(モモンガさん)

 

(マシンナーさん、どうしたんですか?)

 

(さっき、モモンガさんが言ってたような奴らが来たんですけど…)

 

(本当ですか?、そういえばさっき調べたんですけど先程の集団なんですが…)

 

(何かわかったんですか?)

 

(はい、コイツらは全員改造人間(サイボーグ)でした)

 

それを聞いてレイヴンは兜の中で驚く。

まさかこの世界にサイボーグがいるとは思ってもいなかったからだ。

 

(改造人間(サイボーグ)!?本当ですか?)

 

(はい、身体の中に機械類や動力装置のような物が埋め込まれてました)

 

(マジか、この世界にそんな物があるなんて…)

 

(あ、後自爆機能も突いているので気をつけてください)

 

(マジか、随分本格的だな)

 

まだ科学技術は(魔法等は除いて)あまり発展していないであろうこの世界であそこまでの改造人間が作れるのかと疑問を抱く。

 

「知ってるでござるか白いの?」

 

目の前に現れた改造人間(サイボーグ)の集団を見たハムスケは何か知っていそうな白い暴君に質問をする。

 

「ああ、ここ最近見かける奴らじゃ、気ぃつけろ、一人一人は普通の人間より強い程度じゃが死んだらどういう仕組みかわからんが爆発するんじゃ」

 

「爆発?本当でござるか?」

 

「まあ油断しなけりゃたいしたことないが…」

 

白い暴君が言葉を言い終える前の改造人間(サイボーグ)の何人かの目が赤く光る。

 

『…ミスリル級の冒険者発見』

 

『白い暴君、森の賢王発見、他タレント所持者を発見…』

 

『合体を推奨する…』

 

「何?」

 

「え?」

 

そういうと十人の改造人間(サイボーグ)全員がいきなりスクラムを組みだし、「合体」の言葉を発した。

 

『『『『『合体!!』』』』』

 

そういうと改造人間(サイボーグ)達はガチャガチャと身体を組み換えはじめ、緑色のモノアイがついた円柱形の頭部と大木のよう太く装甲で覆われた腕、鋼鉄のブロック状の肩、その肩と腕に銃器のような物をつけた緑色の鋼鉄のゴリラのような姿をした全長7mの巨大な改造人間(サイボーグ)になっていた。

 

『合体完了…』

 

「な…!」

 

「おいおい嘘だろ?」

 

あまりの衝撃に驚愕する漆黒の剣、ハムスケは少しジト目で白い暴君を見つめる。

 

「…白いの?」

 

「…すまん、あれは初めてじゃ…」

 

(マジかよ、合体機能まであるのか?一体どんなメカニズムなんだ…)

 

改造人間(サイボーグ)が合体機能までついている事にレイヴンは驚き、そのメカニズムに興味が湧いた。

レイヴンはジナイーダに<メッセージ>を送る。

 

<マシンナー様、どうなされました?>

 

<アルティマ、面倒な事が起こった>

 

<は…?>

 

<…改造人間(サイボーグ)が現れた。しかも俺たちが知らない型の奴だ>

 

マシンナーのその一言にアルティマは大きく目を見開く。

事前の調査では自動人形(オートマトン)系列の異形種はナザリック以外では確認されていなかったからだ。

 

<!、本当ですか?>

 

<ああ、しかも今目の前で合体したよ…>

 

<なんと…>

 

<色々とこいつを調べたい、できるだけ早く来てくれ>

 

<承知いたしました!>

 

マシンナーの<メッセージ>が終了した後、ジナイーダはシズに大急ぎでマシンナーの下に向かう指示をする。

 

「シズ、さっきマシンナー様からのメッセージが来たんだけど予想外のことが起きた」

 

「…?…何…?」

 

キョトンとした顔で答えるシズにアルティマは一呼吸おいて話し始める。

 

「…僕らの同族がこの世界にも居た」

 

「え?」

 

 

 

 

 

「ちぃ…!」

 

白い暴君は先陣を切って合体改造人間(サイボーグ)に襲いかかる。

 

「おどれぇ!」

 

そして跳びかかりその頭部を叩き壊さんと前脚を振り上げるが、改造人間はその巨体にかかわらず素早くかわす。

 

(図体の割に素早い!?)

 

『……』

 

そして白い暴君の右に回り、がら空きの脇腹に拳を叩き込んだ。

 

「ぐぁ!」

 

「白いの!この…!」

 

白い暴君は大きく吹っ飛ばされる。

レイヴンは内部を透視できるスキルを使い、合体改造人間の内部を見る。

 

(やっぱりな、十個の脳を機体の中に正中線の順で格納されてる。それで反射速度を上げてるんだ…)

 

「待てハムスケ!迂闊に飛び込むな!!」

 

次にハムスケが突っ込んでいくが改造人間は左手を伸ばし、ハムスケに狙いをすませる。

 

『…ロケットパンチ』

 

そして飛ばされた腕がハムスケに飛んでいく。

 

「ハムスケ!避けろ!」

 

「な!ぬお!」

 

ハムスケはすぐにそのロケットパンチを回避するが、その隙を見逃せないと言わんばかりに改造人間はハムスケに体当たりをぶちかます。

不意の攻撃だったため体当たりをモロに喰らったハムスケは大きく吹っ飛ばされる。

 

「ハムスケ!」

 

(ロケットパンチまでついてるとは…)

 

「ハムスケさん!この…」

 

ニニャは改造人間に向かって魔法の矢(マジック・アロー)を発射するが

魔法反射装甲を装備している改造人間には傷一つついていない。

それを見たニニャは愕然とした表情になる。

 

「そんな!魔法が利かない!?」

 

『タレント所持者…捕獲』

 

改造人間は肩の銃器らしきものから弾丸をはっしゃする。

そして弾丸から大きなネットが広がり、ニニャを捕獲した。

 

「!、わぁ!?」

 

そして、右手からワイヤーガンを放ち、ニニャを絡ませそのまま巻き上げようとする。

 

「ニニャ!」

 

ルクレットは改造人間の気を向かせるために矢を数本放つが全てはじき返され、お返しと言わんばかりに右肩の銃器らしきものから錐状の鉄の弾丸をルクレットに向けて発射する。

 

「!やべ!」

 

ルクレットはすぐに回避しようとするが、間に合わない。

そこにレイヴンが立ちふさがり、大剣を盾代わりにして防ぐ。

弾丸は大剣と鎧に命中し、僅かな衝撃がレイヴンに走った。

 

「れ、レイヴンの旦那…」

 

「無事か?」

 

自分が死を覚悟した位の弾丸が命中したのにも関わらず、何時もと変わらない口調で話すレイヴンに驚くもすぐにルクレットは返事をする。

 

「あ、ああ…じゃなくて大丈夫なのかよ旦那?」

 

「ん?ああ、でっかい漬物石ぶつけられた感じかな?まあどうって事ねぇべ?」

 

「いや、どうって事あるってそれ!」

 

「それよりニニャをあのバケモンから取り返さねぇと、さてどうしようか?」

 

ルクレットがレイヴンに突っ込んでいる間にぺテルとダインがレイヴン達に駆け寄りダウンしていたハムスケと白い暴君も立ち上がる。決して低くないダメージは負ったがその目には闘志はまだ消えていない。

そして捕獲されたニニャは改造人間の右手に捕まっている。

ダインはこの場にいる者たちの中で最も実力が高いであろうレイヴンに質問を問いかける。

 

「レイヴン氏、あの怪物の手を切断することは可能であるか?」

 

「できんことはないが、少し援護が必要だなあれは…」

 

ルクレットはすぐにぺテルに自分達が何をすべきかの指示を仰ぐ。

 

「だったらやることは一つだリーダー!」

 

「ああ!レイヴンさんを援護する!レイヴンさん、私たちでなんとかあいつの注意を引きつけます。その間に隙を見つけてニニャを…」

 

「任せてくれぺテルさん。ハムスケ、悪いが手伝ってくれるか?」

 

ぺテルの提案に僅かに笑みを浮かべ、レイヴンは応じる。

そしてハムスケ達にも援護を要請する。

 

「勿論でござる御屋形様!」

 

「カシラの命令とありゃなんだってやってやるわい…」

 

レイヴンの援護要請に喜々として答えるハムスケとそれに続くかのように白い暴君も意気揚々と答える。

 

「それでどうするぺテルさん?」

 

「はい、まずレイヴンさんはあのデカいのと一度戦ってください。その後ダインは植物の絡みつき(トワイン・プラント)で足止めをする準備を、ルクレットはさっきと同じようにあいつの顔に可能な限り矢を浴びせてくれ、効かなくても気はそらせる筈だ」

 

「わかったのである!」

 

「マジかよ、とんでもない注文だな…」

 

ぺテルの指示にダインは勿論、ルクレットはぼやきながらもその顔にはやる気で満ち溢れてる。

 

「ハムスケさん達はレイヴンさんと一緒にあいつに切り込んでいってください、あの白い暴君、ハムスケさんの時に使っていた武技は使えますか?」

 

「使える、丁度あの堅物に一発見舞ってやろうと思っとったんじゃ…」

 

「良かった。なら私の指示で発動してくれませんか?」

 

ぺテルの指示に白い暴君は一瞬険しい顔になる。

 

「何やと?っと言いたいところじゃが状況が状況じゃから特別じゃぞ?」

 

「ありがとうございます!ハムスケさんもお願いします」

 

「承知したでござる!」

 

ハムスケと白い暴君もぺテルの作戦に同意する。

そして戦いの火蓋が切って落とされた。

 

「行くぞ!!」

 

まず打ち合わせ通りにレイヴンとハムスケ達が改造人間に向かって突撃を始める。

合体改造人間はニニャを掴んでいる右腕以外の左腕と両肩の砲を向けようとする。

 

「やらせるか!」

 

ルクレットが己の弓矢で改造人間のモノアイを狙い、弓矢を放つ。

改造人間はモノアイを横にずらし、弓矢を装甲で弾いた。

レイヴンはその隙に改造人間との距離を詰める。、

しかしサイボーグは左腕を振り上げレイヴンにその巨大な拳を繰り出した。

 

「《要塞》!」

 

白い暴君がレイヴンを守るように立ちふさがり、防御力を向上させ、改造人間の拳を受け止める。

 

「大鼠!」

 

「任せるでござる!でぃやぁ!!」

 

ハムスケは回転して合体改造人間の左足に尻尾を叩きつけ合体改造人間のバランスを崩す。

合体改造人間は持ち直そうとするが、ぺテルの指示でダインが植物の絡みつき(トワイン・プラント)で左足に植物を絡みつかせた。

 

『…!』

 

絡みついた植物を引きちぎろうと脚を動かそうとするが、レイヴンが斬艦刀を構えた。

 

「レイヴンさん、今です!」

 

「おう!」

 

そしてレイヴンが飛びあがり、ニニャが捕まっている網を切り裂く。

切られたと同時にニニャが地面に落下する

 

「うわあぁあああ!!」

 

「おっと!」

 

ニニャが落下する場所にハムスケが駆け付け、自分をクッション代わりにして受け止めた。

 

「大丈夫でござるか?」

 

「ハ、ハムスケさん…」

 

「早く逃げるでござる、ん?」

 

ハムスケが振り向くと合体改造人間がハムスケ達に殴りかかろうと拳を振り上げようとしていた。

 

「危ない!」

 

ニニャが声を張り上げた瞬間、どこからか矢じりに爆竹のようなものが巻き付けられた矢が改造人間の顔に当たる。

矢は跳ね返されるが、矢じりに巻きつけられた爆弾が爆発し、合体改造人間を少し怯ませる。

 

「思ったより…頑丈…」

 

矢が飛んできた方向の茂みから、クロスボウを構えたマグノリアとジナイーダが現れた。

 

「お待たせしましたレイヴンさん!ってこれが…」

 

「本当に……機械でできている…」

 

「ナイスタイミングだ二人とも!」

 

『…新たなるミスリル級の冒険者、出現、捕獲…』

 

「…させない」

 

改造人間は新たに現れた二人の方角を向き右腕の銃器を構え。

二人に向かって発車しようとするが、ジナイーダが再び爆弾付きの矢を装填し、右腕の銃口に狙いをすまし狙撃する。

矢は銃口に入り、合体改造人間が発射した瞬間、同じく矢が爆発し右腕の銃器が吹き飛び、右腕に火と煙が上がる。

 

『…右腕部の武装、大破、使用不能』

 

「おうこら儂も忘れんな!ボケが!!」

 

『!!』

 

そこに追い打ちを掛けるように白い暴君が飛びかかり、顎を使い左肩の銃器を破壊し、その損傷を広げるかの用に右前脚を突っ込み、<斬撃>を発動させ、左肩を抉るかのように斬りさいた。

 

「はっ!さっきの仕返しじゃあ!!」

 

白い暴君は更なる追い打ちを掛けるべく合体改造人間に迫る。

 

『左肩武装、損傷と同時に左肩にも無視できぬ損傷…』

 

『現状況から任務を捕獲から殲滅に切り替える…』

 

合体改造人間はぶつぶつとそう呟くと緑色のモノアイが赤色に変わった。

 

「このままその首も…!」

 

『…右碗部螺旋形態に変形、攻撃』

 

合体改造人間は右手を尖らせ高速回転させ、右腕をドリルに変形させると、白い暴君を貫かんと腕を振り上げた。

 

「!やべ…!」

 

白い暴君は慌てて急停止し<要塞>を発動させようとするが、改造人間の腕の方が早く、右手のドリルが白い暴君の腹部に迫る。

 

「させるものか…って熱っ!!」

 

そこにレイヴンが間に入り、両手でドリルを掴んだ。

掴んだ瞬間、レイヴン両手に火花が散り暑さに小さく悲鳴を上げる、レイヴンは両手の握力の出力を上げ、自分の指を無理やり指に食い込ませた。

 

「カ、カシラぁ!?」

 

「あっちいなこの野郎……やっちまえジナぁ!」

 

「了解…です!!」

 

ジナイーダが背中の太刀を引き抜き、右腕を一刀両断に切り裂いた。

 

「ナイス一刀両断だ…」

 

「お褒めに預かり恐悦至極…!」

 

「んじゃあ、行くか!」

 

そしてレイヴンとジナイーダが合体改造人間に突撃し、マグノリアはそれを援護するようにクロスボウを放つ。

白い暴君とハムスケもそれに加わった。

捕獲から殲滅行動に切り替えたからか先ほどより動きが速くなった合体改造人間は残った右腕と左腕を丸鋸型のチェーンソーに変形させ応戦する。

救出されたニニャは急いで自分のチームメイトたちの所に向かった。

 

「ニニャ、大丈夫であるか?」

 

「ええ、大丈夫です、助かりました…」

 

「ニニャ、まだ魔法は使えるか?」

 

「ええ、大丈夫です」

 

「ダイン、ルクレット二人はまだ戦えるか?」

 

「まだ戦えるけど残りの矢はあまり残ってないな…」

 

「大丈夫である、まだ戦えるのである」

 

「よし、もう一度レイヴンさんを援護する。ルクレットとダインはさっきと同じように、ニニャは私に防御魔法を!」

 

「わかりました!」

 

「わかったのである!」

 

「オーケー、さっきと同じようにやれば良いんだな?」

 

「ああ、行くぞみんな!」

 

ぺテルの掛け声の後に漆黒の剣はそれぞれ行動に移る。

ニニャはぺテルに防御力向上の魔法をかけ、ルクレットは合体改造の側面に回ろうと走り出す。ぺテルはルクレットを守るために共に走り出す。ダインは植物の絡みつき(トワイン・プラント)を発動する隙を伺う。

 

「《鎧強化/リーインフォース・アーマー》!」

 

「しっかり護衛頼むぜ!」

 

「ああ!」

 

幸い、標的はレイヴン達に集中しておりこちらにまだ気づいていない、ルクレットは狙いをすまし、合体改造人間の頭部のモノアイのレールに一射を放つ。

すると偶然にも奇跡的に弓矢はレールの隙間に当たり、深く刺さる。

合体改造人間はルクレットの方角にモノアイを動かすが、矢にさえぎられて止まってしまう。

 

レイヴン達はその隙を見逃すはずもなく、レイヴンは合体改造人間の脇をすれ違いざまに斬撃を与える。

合体改造人間の脇からはオイルと火花が散り片膝を付く。

 

「しゃあ!」

 

(いける!)

 

片膝をついた正体不明の相手の姿に希望が膨らむ。

それは仲間達も同じだったようで、彼方此方で歓喜の声が上がった。

 

『…』

 

しかし、合体改造人間は立ち上がり、ぺテル達の方に立ち上がり、拳を振るった。

 

(!!!?)

 

ごぉん!!

 

反射的に武技《要塞》を発動させるが、甲高い金属の音が周囲に響く。

気がつけばペテルは剣も盾も投げ出して地面に倒れこんでいた。

何か巨大なものが衝突したような痛み。

ルクレットが近くで何か叫んでいる声がかすかに聞こえる

ぺテルはなんとか立ち上がろうとするが体はピクリとも動かなかった。

 

「これ……吸って」

 

するとマグノリアがスプレー缶のような容器を取り出し、緑色の煙をぺテルに吹きかける。

微かに聞こえる声に従って懸命にその煙を大きく吸う。

すると全身の痛みが嘘のように消えていく。

そして意識が完全に戻り、最初に見たマグノリアに一瞬だけ思わず「本当に綺麗だな」っと思うがルクレットの言葉にすぐに覚醒する。

 

「!、ありがマグノリアさん!下がれルクルット!早く!」

 

「わあってるよ!」

 

起き上がったぺテルは矢を撃ち尽くしたルクレットと共にレイヴンの背後まで下がる。

全力で走ったからか息を荒くしている。

 

「あのなぁ、いくら防御力を上げるその武技でも受けられるものにも限度ってのがあるだろ!一発で死にかけてるのを見て肝が冷えたぞ!!」

 

「な!?守られといてそれはないだろう!?第一伝説の大魔獣二体と互角に渡り合える敵の攻撃を受けて生きてるだけでも奇跡だぞ!?」

 

「レイヴンの旦那は無傷だったろうが!」

 

「あの人はあのモモンさんと互角なんだぞ!一緒にするな!」

 

「思ったより元気そうであるな?」

 

「あ、あの二人とも今はそれどころでは…」

 

怒鳴りあうぺテルとルクレットを治めようとニニャは声を掛け、二人は怒鳴りあうのを辞める。

戦況を見てみると、マグノリアとハムスケ、白い暴君も一旦下がって戦況を見つめている。

先程よりも早くなった敵の攻撃をレイヴンはたった一人で耐えている。

そしてジナイーダが素早さを活かして目まぐるしく移動して攻撃をくわえているが、決定打にはなっていない。

 

マグノリア達を見てみると、マグノリアは何かを狙っているように目を鋭くしており、白い暴君も力を溜めているようにも見えた。

 

「チェストオォッ!」

 

レイヴンが凄まじい気合と共に斬艦刀を改造人間の胴体に横薙ぎに振りかぶる。

そして胴体に向かって渾身の一撃が叩きこまれようとしていた。

 

『…装甲増加』

 

すると改造人間は胴体の装甲を何重にも重ねて増加させ、レイヴンの渾身の一撃を受ける。

その結果はなんと驚くべきことに渾身の一撃を受けた胴体に斬艦刀が深々とめり込んでいるが切断はできていなかった。合体改造人間は左手の丸鋸を高速回転しながらレイヴンに向かって振り上げようとしていた。

レイヴンの危機を感じたジナイーダはすぐに走り出すが、残った銃器の連射に足止めを喰らう。

 

「ダイン今だ!」

 

植物の絡みつき(トワイン・プラント)!」

 

「マグノリア!EMPアロー!」

 

「……了解」

 

地面から生えた植物が、振り上げようとしていた敵の左手に絡みつく。

だがダインのドルイド魔法による拘束は、ほんの僅かな効果しか発揮しなかった。

ブチブチと蔓を引きちぎる音と共に敵は攻撃を続行しようとする。

しかし、マグノリアがクロスボウから普通の矢とは形状が少し違う矢を発射し、敵の体に当たる。

そして数秒後敵の体の周りに電撃のような物が体中を駆け巡った。

 

「<鎌居太刀>!!」

 

そして白い暴君が切り札である武技を発動させ、振り上げようとした左手を丸ごと吹き飛ばした。

 

「カシラぁ!トドメじゃあ!!」

 

白い暴君の怒号の後にレイヴンが先程よりも速い動きで敵に突っ込みそして大きく跳躍する。

 

「これで……決める!!」

 

既に死に体になっている合体改造人間はそれでも尚抗おうと動こうとするが、マグノリアが放った弓矢によって、碌な動きが出来なくなっていた。

 

「一刀……両断!!!」

 

先程よりも凄まじい気合と共に斬艦刀を勢いよく振り下ろす。

斬艦刀は改造人間の装甲で覆われた頭部をたたき割り、そのまま真っ二つに両断をした。

真っ二つに両断された改造人間の体はそのまま分かれ、爆発する。

 

爆発の煙が晴れると、レイヴンは斬艦刀を掲げ高らかに叫んだ。

 

「我らに…断てぬものなし!」




解説

謎の改造人間の集団:突如モモン、レイヴン達の前に現れた謎の改造人間の集団。どういうわけかタレント能力所持者や名のある冒険者の捕獲をしようとしている。
周辺国家内ではまだ存在しない、機械工学や化学燃料を用いた電池などで動いており、第5位階の魔法まで跳ね返せる《魔法反射装甲》と同じ効果を持つ盾を標準装備している。ある程度の数がいれば合体も可能で数によってその大きさは変わる。撃破された際、証拠抹消の意味も含めて動力の電池を暴走させて、自爆機能が発動する。(威力は人一人吹き飛ばせる程度)
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