ジャジャジャジャーン ジャ ジャ ジャ ジャーン(幻聴)
「〈ころばし屋〉~~!」
出木杉英才は考える。
道具を取り出すときのBGM、あれはいい。
〈ころばし屋〉
黒いスーツに黒帽子、グラサンといういでたち。一頭身のダルマ体型の人形。手のひらサイズ。
10円支払えば、対象を3回転ばせてくれる。キャンセル料は100円。誰からの依頼でも受ける。同時に、1人の対象しか捕捉できない。
〈ころばし屋〉は、わりと使える性能である。しかし、「キャンセルができる」「10円支払えばだれでも使える」という2点から、野比の奴からは敬遠されていた道具だ。
ここでも、〈阿部コンベ〉(♂)に一突きしてもらえば、
〈ころばし屋〉(※反転中)
10円支払えば、対象を3回まで転びそうなときに起き上がらせる。客は選ぶ。
同時に 何 人 だ ろ う と 対象を補足できる。
俺はノンケだってかまわず食っちまう人形なんだぜ?
……あっという間にヤル気全開に早変わりする。
しかし、元々がそこそこ使える道具なだけに、この変換は意味あるのだろうか?
あるんだなこれが!
今現在、俺は友人の頼みで、サッカーの試合に参加している。別の学校との練習試合に人数が足りなくなっての助っ人としてだ。
俺の運動能力を持ってすれば、エースストライカー以上の活躍でスタンドの声援を総ざらいすることすら可能だ。「きゃ~、出木杉さんステキー!」でスタンドがおっぱいいっぱいだ。
だが、今日に限ってはそう上手くはいっていない。
俺が今マークに付いている相手、コイツがいろいろと下手くそなくせして、やたらと転ぶのがうまい。
倒しているわけでもないのに、勝手に転んでは俺のファウルとなる。
野郎の得意げな顔を見れば一発でわかる。わざと倒れているのだ。
この時代ではまだ、シミュレーションという反則が十分に知識として浸透していない。
審判のジジイは何の疑いも持たず、果てには抗議した俺にイエローカード。
気がつけば相手のフリーキックは累算6回めになっていた。
…屋上へ行こうぜ…久しぶりに…キレちまったよ…
〈ころばし屋〉のお金の入れ口に札束のままでねじ込む。ターゲットは自分のマークの相手。
そこからは、異様な光景が繰り広げられる。
俺にボールが渡った瞬間、マークの少年が文字通り「飛ぶ」のだ。
軽い小競り合いでも、急に「飛ぶ」。
俺が方向を変えて走りだしても「飛ぶ」。
空中で一回転して、何事もなかったようにキレイに着地するのだ。
果てには、俺がマークを外れたあとも何かの拍子に「飛ぶ」ので相手のチームメイトからも冷たい目で見られていた。
一生懸命、我が身の無実を訴えるも、「ふざけるな」と監督らしき大人に一喝されしょげかえる少年。
狼少年の話は、嘘をつくのはいけないことだと教えてくれるね(半ギレ)。
試合には負けた。