IS 千の冬の物語   作:smsm

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約4ヶ月ぶりの投稿

セシリア戦です。短いかな?




「一夏・簪アンチ」タグ追加しました。
避けては通れないと思いましたので。


第16話

「………で?何やってるの、貴方」

 

土曜日。第3アリーナで、数学を担当する教師、エドワース・フランシィが尋ねる。相手は凪だ。その隣では千冬と真耶がコンソールを操作している。

 

「……ふふふ………」

 

目に光は灯っておらず、椅子の上で膝を抱えていた。律儀に靴を脱ぎ、揃えて置いてある。

 

「おーい………ダメか。一昨日と昨日は、気でも狂ったかのようなテンションだったのに」

「あ、あはは……」

「……その日は生徒から質問があったみたいです。」

「それでか。それなら、今は?」

「ウチの生徒たち…質問に来た相川と鏡に逃げられ、布仏に『せんせ~、怖い』と言われたらしく…」

「……まさか、あのテンションのままで?」

 

コクンと頷く千冬とあちゃー…と声を漏らすフランシィ。

 

「そりゃ、引かれるわね。というか、私もその内の一人だし。あの様子は完全な不審者だったわ、ホント」

 

その言葉に、ビクッと反応を示す凪。落ち込みながらも、聞き耳を立ててはいたらしい。

 

「私、どうすれば良かったんですかね?」

「いや、普通に答えればいいだけでしょ。変に気合いを入れるからそうなるんじゃない?」

「そういうものですか?」

「そーいうもんよ。……そういや、何で山田先生が此処に?暇なの?」

「ち、違います!!⒋組のクラス代表を決めるのに、模擬戦がしたいって言われて……」

 

真耶の言葉に、ああ、そういえば……と思い出す。今から行われる教師と代表候補生との試合の他に、もう一つ、生徒たちの注目を集めていた。4組にいる、3人の(・・・)専用機持ちによるクラス代表決定戦。この二つのイベントは新入生にとっては目新しい、IS学園ならではの催しだろう。

 

「観客席は満員。購買も大儲けらしいし……一席500円くらいでもいいわよね」

「だ、駄目ですよ、生徒相手にそんなことしたら!」

「分かってるわよ。冗談が通じないわねえ」

 

フランシィと真耶の会話をよそに、千冬は一人で準備を進めていた。

 

『織斑先生、セシリア・オルコット準備完了致しましたわ』

「そうか。なら、先に出ていてくれ。すぐに御波先生も向かわせる」

『……分かりました。それでは』

 

セシリアからの報告を聞いた千冬は、彼女に指示を出して通信を切る。…と同時に立ち上がり、凪の襟を掴んで引きずって行く。

 

「そういうわけだ。さっさと行くぞ」

「いやいや、自分で歩けますって……あ~れ~」

「……仲の良いことで」

 

遠ざかっていく声を聞きながら、フランシィはポツリと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白桜が現れ、観客席から割れんばかりの歓声が沸き起こる。

 

「ようやく、来ましたわね」

 

IS―――『ブルー・ティアーズ』を空中で停止させたセシリアが言う。

 

「遅れてしまってごめんなさい。ちょっと、色々とあったもので…」

「まあ、良いでしょう。…それが貴方の?」

「そうですよ。倉持技術研究所開発の第3世代型IS『白桜』。肩の小型高出力スラスターが売り……です」

「何をいきなり宣伝していますの?」

「いや、この機体の開発者が目処も立ってないのに『量産化ー!』とか『資金ー!』とか言ってまして。宣伝してくるように……と」

 

他の武装やパッケージなど色々と足りないものが多いのに、量産してどうするかという疑問が浮かんではいた。が、篝火には言わないで置いたのは果たして優しさからか面倒だからか。

 

「その研究所、それほど貧乏ですの?」

「自由にやってたツケが回ったというか何というか。おかげで、この機体にも碌な火器が無いですし……。…あっはっは、笑うしかないですね」

「は、はあ………」

 

笑うしかないと言いながら目が全く笑っていない凪に、何と返せば良いかも分からず相槌を打つしか出来ないセシリア。微妙な空気が流れる。

 

『……おい。時間も押しているんだ、すぐに始めるぞ』

「も、申し訳ありません」

「分かりました」

 

その流れを切ったのは千冬だ。アリーナの使用時間が決まっている上に、もう一組の試合が残っている。

 

『制限時間は15分。それまでにSEを0にするか、終了時点でのSEの残量が多い方を勝者とする。……良いな?』

「「はい」」

 

カウントダウンが始まり、凪は〈雪片弐型〉抜き、セシリアはレーザーライフル〈スターライトMK-Ⅲ〉を展開する。

 

 

『それでは………』

 

 

 

『試合開始!!』

 

 

 

 

 

ヒュンッ

 

反射的に右へ回避した凪の眼前に閃光が奔る。

 

「ふっ…ほっ……うわっ!……っとと」

 

直後に何発ものレーザーが凪に迫る。しかし、それらはギリギリのところで回避に成功した。

 

「ああもう、ちょこまかと、さっさと当たりなさい!」

「無茶言いますね!?」

 

緩急をつけ、縦横無尽に逃げ回る凪。右に避けると思わせ、左に躱す。直進するかと思えば切り返し、レーザーは空を切る。

 

(くっ…回避が上手い。今のところ、あちらからの攻撃は無いとは言え……仕方がありませんわね)

 

埒が明かないと考えたセシリアはブルー・ティアーズに搭載された、第3世代遠隔操作(ビット)型BT兵器〈ブルー・ティアーズ〉全4機を射出する。

 

「行きなさい、ティアーズ!」

 

足を止め、ライフルの代わりにビットを使い凪を追いかける。しかし追いつくことは出来ず、レーザーを当てることも出来ない。

 

「ならば…」

 

4機のビットの内、3機に追わせたまま、1機を自分の元へ戻す。それに集中力を割き、狙いを定める。思考操作に関しては未熟な彼女。3機の狙いが拙いものになり、ただの乱射に近い。

 

(無理に当てる必要はありません。狙うは一点のみ…!!)

「―――っと」

 

狙撃に気づいた凪が更に速度を上げる。だが、後ろからは3機のビットによる乱射が逃走経路を狭める。ならば、と瞬時加速でビット達からの距離を離しにかかる。

 

「―――――ですが、瞬時加速では!」

 

瞬時加速は接近、後退のどちらにも使える技術の一つだ。しかしながら、欠点がある。名の通り、瞬間的に加速することが可能だが、動きは直線的で曲がれない。無理に進路の変更や停止を行えば、ISに守られていると言えど、強烈な負荷が操縦者を襲うことになる。例外としては、イーリス・コーリングの個別連続瞬時加速がある。ただし、それも同様に操縦者の体には負担が掛かり、イーリス本人の頑丈さと操縦技術、機体性能があってこそだ。

つまり、瞬時加速は決め手になることもあれば、弱点にもなり得る諸刃の剣なのだ。

 

狙いは白桜本体ではなく、進行方向の少し先。速度、方向を計算に入れ、次にいる地点を予測した上での、『弾丸を置く』射撃。愛機(ブルー・ティアーズ)に乗る以前から、セシリアが得意とする技術の一つ。

 

「くっ…」

 

直撃を悟った凪は推進エネルギーを放出しているスラスターを切る。これで、減速するのは早まる。だが、その程度では逃れられない。

 

「狙いは……充分ですのよ」

 

レーザーが放たれた。

 

凪はスラスターの放出口を前方に向け、一気に放出させる。

 

「ぐううぅぅ……!」

 

逆噴射をしたことで、体が悲鳴を挙げる。だが、そのお陰で勢いを殺し、無事に回避することが出来た。レーザーだけは(・・・・・・・)

 

「残念…」

「……では、ありませんわ」

 

少しばかり得意げだった凪の視界の端に、何かが映る、――――ミサイルだ。

 

「しまっ…」

 

爆音が響くと同時に、白桜は光と爆煙に包まれる。セシリアはすぐさま浮遊させていたビット達に意識を切り替え、凪が飛び出すのに備えた。何事も無かったかのような顔をしている彼女だが、ミサイルはレーザーを当てた後の追撃用に放ったものであり、躱されることを狙ったわけではなかった。自信満々に放った一撃が躱され悔しく思う彼女だったが、結果オーライだと自分を納得させる。

 

ゴウッ

爆煙から上空へ向け、風を斬る影が飛び出す。

 

「ティアーズ、狙い撃………!?」

 

飛び出した影が白桜でないと気付いたのは、ビット達にレーザーを発射させた後だった。

同時に、迫るブレードに直感的に反応したセシリアは慌ててビットから意識を切り離し、ライフルを盾代わりにする。しかし、ブレードが突き刺さり銃身はへし折れる。

 

「ライフルが…きゃあ!?」

 

殺しきれなかった衝撃で吹き飛ばされるセシリア。今ので大幅にSEを削られてしまっている。……衝突し弾かれた筈のブレードを凪は空中で掴み取り、瞬時加速で追撃を仕掛けていた。

 

(最初に飛び出た影は、白桜に取り付けられていた物理シールド。それを囮にして、更に此方のライフルを潰すとは……!)

 

瞬時にこの一瞬で起きたことを整理し、混乱を抑えるセシリア。急遽、意識を切り離した為にビット達は自由落下していた。今更、意識を戻したところで間に合うわけでもない。

 

「〈インターセプター〉!」

 

ブルー・ティアーズ唯一の近接武器であるナイフを展開し、掴み取る。…だが、横一閃に薙ぎ払ったブレードがナイフを斬り弾く。

 

「くっ…!」

 

迫る二撃目を紙一重で回避し、体勢を整えようとするセシリアだが、白桜の肩、スラスターだと言っていたそれからは砲口が見え、此方を捉えていた。

 

「これで!」

 

 

 

 

 

(つくづく、人を見る目が無いと言いますか。そんな(かお)も出来たのですね)

 

この一週間では一度も見せなかった、全霊で試合に臨んでいる男の貌だった。

このまま……いや、自分が何をしようとも負けるだろう。そんな確信があった。

けれど

 

(けれど……私にも意地がある)

 

このまま負けたくない。

最後に、咬みつく程度は。

ちっぽけな自尊心を守るために、念じる。

 

――――――あった。

墜ちて壊れたと思っていた中に一つだけ。

 

左手で銃を形作る

 

「バン」

 

地面に転がっていたビットから放たれたレーザーは数度、直角に折れ曲がり、白桜の装甲を穿つ。

 

そして

 

 

『試合終了。………勝者、御波凪』

 

ブザー音と共に、セシリア・オルコットの敗北が告げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いだだだだ!…も、もう少し優しく…」

「瞬時加速の勢いを後方瞬時加速で打ち消す……なんて無茶をやったのだから痛いのは当然」

「ま、まあ、そうではあるんですが…」

 

セシリアとの試合後、凪は一応の診察のために、保健室へと足を運んでいた。正確には、運ばざるを得なかったのだが。

 

「『書類の前に保健室に行って来い』…まさか、織斑先生と山田先生の両方に言われるとは」

「それが普通です。というか、背中を痛めているのが分かってて、真っ先に仕事しようとするのが変なのですよ」

「前の職場だと、仕事優先みたいな感じだったんですが」

「それはブラック企業。…貴方が仕事中毒(ワーカホリック)なだけかもしれませんけど。はい、終わりましたよ」

 

湿布を張り終えた養護の熊谷 絵里香は、そう言って凪の背中をパチンと叩く。苦悶の表情を浮かべる彼に、彼女は尋ねる。

 

「で、仕事に戻るのですか?」

「そうします。4組の試合も終わりましたし」

 

2人の女生徒を下した、勝者である男子生徒―――天王寺 夏人が空に向かって拳を掲げている姿を最後に、モニターの電源を切る。

保健室の窓からは、生徒たちが寮へ向かう姿がちらほらと見られる。方向からして、アリーナからの帰りだろう。弾んだ声で楽しそうに語り合っていた。

 

「興奮冷めやらぬ…って感じですね」

「専用機5機の試合を生で観られることなんて、そうそうありませんから。男性操縦者の試合の試合なんて、特に」

「公式には男性による初試合でしたから」

「それでも当分の間は、注目の的でしょう」

 

良くも悪くも…という言葉を絵里香は飲み込んで、話を続ける。

 

「こうして試合を終えたわけですが、学園はどうするのですかね」

 

そう尋ねる彼女だが、凪が正確な答えを知っているわけではない。ただの、話題作りだ。

 

「特には変わらないでしょう。機体データも渡されて、妙な点は無かったと聞いています」

「渡されたと言っても、本当に基本的なデータだけだったようですが?」

「それは……まあ、仕方ないですよ。経営戦略上、全部を晒すわけにもいかないでしょう?それは国だって同じです」

「経営戦略……ですか」

 

絵里香はため息を吐く。IS学園は性質上、他国の候補生と試験機等を受け入れることはある。だが、その数は例年少なく、機体の情報が(一般の)教員に流れることは少ない。

例えばブルー・ティアーズというIS。これについて知っていることは、射撃戦主体の機体であることと、思考操作型のビット兵器を使うこと。後は(おおやけ)に提唱された、『BTレーザーは理論上、最大稼働時にはレーザーの軌道を曲げることが可能になる』ということだけだ(これについては、先程の試合で実証されたと言える)。

しかしながら、機体の作成には至ることは出来ない。もしも他国・ライバル企業に詳細なデータが渡ってしまえば、大きなアドバンテージを失うのは必至。流出すれば処分を受けるのは候補生か、学園が疑われるかのどちらか。これらのリスクや毎年ように新型が開発されるわけでもない事から、専用機持ちが入学することは少ない。だが、企業からも含めて専用機持ちの生徒は既に4人。問題なのは2人。1人はあの天災、篠ノ之 束の妹(・・・・・・)。そして、もう1人は―――

 

 

コンコンとドアを叩く音が聞こえてくる。

 

「どうぞ」

 

会話を中断して、応対する絵里香。

プシュという音と共に自動ドアが開く。

 

「失礼します。こちらに御波先生…わぁ!?」

 

入室したセシリアは驚き、視界を手で覆う。真っ先に目に入ってきたのが上半身裸の男だったため、仕方がない。……片目だけは指の隙間を広くし、完全に見開いているあたりは、『お約束』というものなのかもしれない。

 

「隠すなら、その指も閉じた方が良いと思いますよ?……御波先生は上着を着てください」

「な、何のことか、サッパリですわ」

 

指摘されて直ぐに指を閉じて視界を遮り、誤魔化すセシリアと、そそくさとシャツの袖に腕を通す凪。…凪の顔が少しだけ赤くなっていることに気付いた絵里香が話し掛ける。

 

「照れてます?」

「い、いえ…」

「そそそそんなこと、ああありませんわ!!」

 

………………………………。

 

「……私は御波先生に聞いたのですが?」

 

………………………………。

 

「………こほん。御波先生はいらっしゃいますか?」

 

咳払いを一つ。にこやかに、淑女らしく、何事も無かったかのように振る舞う。

 

「いや、目の前に居ますけど…そこからですか?」

「言ってはいけませんよ、御波先生。彼女も恥ずかしいのです」

「うぅ……」

 

一層顔を赤くし、うつむくセシリアだが、パッと頭を上げる。

 

「と…とにかく、お話があります!!よろしいですね!?」

「は、はい!」

 

何時の間にやら立場が逆転している2人と、飽きたのか戸棚を整理し始めた絵里香だった。

 

 

 

「で、ではオルコットさん、お話とは何ですか?」

「………」

 

改めて、セシリアは凪と向き合い頭を深く下げる。

 

「………御波先生、入学式でのご無礼、此処で謝罪申し上げます。本当に、申し訳ありませんでした」

「はい、良いですよ」

 

スパァン!!

近くにあったボードで、絵里香は凪の背中を思いきり叩いた。

 

「いっ……」

「ボケは必要ありません。真面目にしなさい」

「ボケたつもりはないんですが!?あとご自分で治療した背中を叩くの、止めてくれませんか!?」

「口答えしない」

 

スパァァン!!

再び小気味よい音が響く。遂に背中を押さえて(うずくま)る凪。絵里香は気にせず、言葉を続ける。

 

「叱り、時には罰を与えるのも教師の仕事です。山田先生でも、もう少しちゃんと怒りますよ?小学生を相手にしているのではありません。小学生でも見てきたらどうですか、このロリコン」

「…ロリコンでしたの?」

「違いますから!……ああもう、分かりました」

 

ボケてるのはどちらですか…とツッコミたい衝動を抑えて、凪は正座でセシリアの前に座る。セシリアも、見よう見まねで正座し、もう一度向き合う。姿勢は多少崩れているが、この際はどうでもいいことだ。

 

「……オルコットさん」

「はい」

 

互いに目を見合う。そして、すぅ…と息を吸う。

 

「先ず、初対面の人に向かって『教える資格が』と言ったり、『男性だから』なんて理由で批判するのはもってのほかです。気分を害される方も多いでしょう。それに、君は一般の生徒とは異なり代表候補生。学園内外での言動が他者からの、母国への印象を決めてしまうことだってある。ですから、これからは気をつけるように。いいですか?反省してますか?」

「は、はい!本当に、申し訳ありませんでした!」

 

もう一度、セシリアは深々と頭を下げた。

 

「…………じゃ、この話はこれでお仕舞い。で、提案があるんですけど」

 

一通りの説教を一息で終えたと思えば、あっけらかんとした様で別の話を進めようとしている。セシリアは呆気にとられている。

 

「…へ?あの、罰則とかは……」

「ん、構いませんよ。罰則与える程のことでもないし。もしや、他の誰かにも言ったのですか?」

「いえ、そうではありませんが……」

「なら問題無しです。オルコットさんは、そもそも最初に謝ってくれていますし、先生は改めて説教しました。だから、お仕舞い」

「………」

 

もはや絶句しているセシリアと、もういいや、と戸棚の整理に戻る絵里香。当の本人()は何やら空中にモニターを出現させ、映像を早送りで見ている。どうやら先程のセシリアとの一戦の映像を手に入れていたらしい。

 

「ふむ……。オルコットさんはどうやら、ビット兵器を使用しながらの、他の兵器と同時運用・移動が出来ないようですね」

「え、ええ…。自分なりに訓練はしているのですが」

「あとは、ナイフの展開が音声認識頼りなのと近接戦闘、相手との間合いの取り方…こっちは俺でも……ビット運用と同時並行でも問題無いか。けど第3世代兵器の操作経験がある先生はいないし……やっぱり彼女に…」

 

ブツブツと独り言を始めた凪に、声を掛けるセシリア。

 

「あの、何を…?」

「……最悪、土下座してなんとか……」

「Japanese DO GE ZA!?本当に何するつもりですの!?」

「ん、こっちの話。それよりもオルコットさん、コーチとかどうですか?」

「こ、コーチですの?」

 

コーチと言われて、思い返すのは自国の女教官。基礎的な訓練は文句なしという評価だったが、第3世代兵器にはノータッチの姿勢だった。そのくせ、セシリアがビット操作を上手く出来ないと、やれ『下手くそ』だとか『なんで貴方が試作機を…』なんて言ってくる。世話になっている筈の男性スタッフへの当たりも強いことでも有名で、結果的に辞職したらしい。最後の部分は、セシリア本人も同様のことを凪にやらかしてしまったので、『お前が言うな』とでも言われそうである……が、入学式直前にその一報が入った時には、『いい気味だ』と思ったことがあった。

 

「3年生にオルコットさんと同じく、第3世代機持ちの生徒がいるんですが、その人にコーチを頼んでみましょうか?」

「本当ですの!?」

 

勢いよく凪の肩を掴み揺さぶる。……が、はたと気づいて止める。

 

「でも、お忙しいのでは?」

 

3年生であるなら、今年は卒業の年の筈。ならば、下級生に構っている暇があるとは思えなかった。

 

「断られた時は…すみませんが、先生と一緒に少しずつやっていきましょう。しかし、オルコットさんも経験のある人から教わった方が良いでしょう?教師の中には、第3世代兵器を実際に使ったことのある人がいませんから」

「た…確かにその通りですが……」

「では、話だけでもしておきますね。受けてもらえたら、またお伝えしますから」

 

ありがとうございますと頭を下げるセシリアに対し、凪は気にしないでと笑い掛けた。

 

「それで、その3年生とはどのような方なのです?」

「生徒会長の更識 刀奈さん。入学式でも挨拶していたでしょう?」

 

そういえば、と思い返す。何というか、人をからかうのが好きそうな、まるで猫のような印象をセシリアに抱かせる女生徒だった。

 

「さて、善は急げ…ということで話だけでもしておくとしましょうか。今の時間は……生徒会室の方かな?」

「その方なら此方に伺う前にすれ違いました。恐らく、生徒会室にいるはずですわ。お話が終わっていなければ…ですけれど」

「………」

 

眉間にしわを寄せて考え込む凪。すると、今まで沈黙を守ってきた絵里香がセシリアに尋ねた。

 

「話?会議ではなく?」

「ええ。確か……4組の、天王寺家のご子息とご息女、篠ノ之さんと一緒にいらっしゃったのを見ました。どうも、不穏な雰囲気ではありましたが」

「……なるほど。彼女の権限は場合によっては一般の職員より大きい。申し訳ありませんが、御波先生…」

 

それを聞いた凪はすっくと立ち上がる。ハンガーに掛けてあったスーツに手を伸ばして掴み、急いでドアの前まで歩く。

 

「……様子、見てきます。オルコットさん、すみませんがさっきの話は直ぐにというわけにいかなくなりました」

「は、はい。その、更識先輩のご都合に合う形で構いませんけれど……」

 

凪は一瞬立ち止まり、自動ドアが開いたと同時に駆け出す。後ろでセシリアが叫ぶ。

 

「あ、あの御波先生!今晩、食堂をお借りしてのパーティがありますの!よろしければ……」

「分かりました、仕事を終わらせてから、向かいますね!」

 

彼女の言葉も終わらない内に、振り返る事なく凪は、そう返答した。

 




大嘘企画(唐突)

『セシリア強化計画』
①後ろに目を付ける
②スイカバーしたり、皆の力をティアーズに!
③機体と融合。結晶が生えてくる
④身体がシルバー☆
⑤ヴェイガンは殲滅

注意:②は味方が死にます



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