IS 千の冬の物語   作:smsm

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今回はちょっと短め+おまけアリ


第17話

≪Side刀奈≫

凪が生徒会室に向かう十数分前。

クラス代表決定戦(時間が無かったため、バトルロワイヤル方式であった)を終えた天王寺 夏人と天王寺 簪、篠ノ之 箒は、更衣室の前で待ち構えていた更識 刀奈に連れられて校舎の一角に存在する部屋―――生徒会室に来ていた。

 

「さ、座って座って。虚ー、紅茶3つお願いね~」

「お、お嬢様、これはいったい」

 

私は困惑する従者とその妹に構わず、部屋の隅に重ねられた椅子3つを持ち出して、横一列に並べる。

 

「「「………」」」

「さ、遠慮しなくても良いわよ。簪ちゃん[・・・・]も知っての通り、虚の紅茶は絶品なのよ?」

 

一向に動こうとしない3人にも、私はあくまで笑顔で、人が()い先輩として接する。

 

「結構です。此処に長居するつもりはありませんので。…そんなことより、本題に移ったらいかがです?」

 

彼は冷たく言い放つ。

あら、失敗しちゃったかな?まあ、良いか、どうでも。

 

「ふ~ん、そう。じゃあ、進めましょうか」

 

よいしょと小さく掛け声をして、備品である長机に腰掛けて膝を組む。そんな座り方をすれば、いつもなら従者から注意されるのが普通なのだが、今日はそれも無い。彼女は息を飲んで心配そうに様子を見ている。

 

「さっきの試合、観させてもらったわ。とても良い試合だったわ。最初に脱落した篠ノ之さんも、2番目に墜とされちゃった簪ちゃん(・・・・)も」

 

声ぶりから、お世辞でしかないと分かったのか、簪は返事せず、箒は小さく感謝の意を伝える。

 

「もちろん、天王寺君もね。……まさか、ISに乗り始めて1ヶ月程度で(・・・・・・)女の子2人を倒しちゃうなんてね」

 

彼はピクリと眉をしかめる。

 

「…いけませんでしたか?男が女に勝っては」

「いいえ?御波先生だってオルコットさんに勝ったし、私は男だ女だ…なんて差別するような性格ではないつもりよ?」

 

だけど、と私は話を続ける。

 

「圧倒的な力がありながら女性しか動かせないISが創られ、それを利用した一部の女性を優先する社会になって約10年。『ISに乗れるから強い』なんていうのは、そんな女たちの利権を守るためだけの方便でしかない。生身で一般の男性と女性が喧嘩したって、大抵は男が勝つでしょう」

 

それでも女尊男卑社会が広がったのは、真っ先に提唱した人間が偶然、権力を持っていて、専用機を認められる程にISを動かすことに長けていたから…なのでしょうけれど。

 

「でも、男がISに乗れたからって女に勝てるかと言われれば…勝負は分からなくなるわ。単純な力の差は無くなり、機体性能か操縦者の技量で決まる」

「それが、何か?」

「あら、分からない?ISを乗りこなし、あまつさえ実力者を倒す程の技量。……さて、一体貴方は、何時から(・・・・)ISに乗っていたのかしらね」

 

私は彼をじっと見据える。動揺は見られない。

 

「……ISに乗れると判明したのは公式発表の通り3月です。操縦は、入学までの間にセレナから教わったから…こう言えば分かっていただけますか?」

「セレナ・ホープ……ね」

 

第1回モンドグロッソの決勝戦で織斑先生と戦った相手。誘拐された天王寺……いや、織斑 一夏を救出した女性で、現在は天王寺グループのIS部門に勤務していた筈だ。

彼の言い分にも、猜疑の目を向ける。そこに、箒が横やりを入れる。

 

「いい加減にして下さい。貴女のはただの言い掛かりでしょう?」

「これでも、私なりに根拠があっての推測よ。貴女の専用機―――『紅椿』も同じ。そうでしょう、篠ノ之 束の妹さん?」

 

篠ノ之 束――恐らく世界一有名な人物。ISを創り上げ、世界の常識を覆した天災。篠ノ之 箒はその実妹にあたる。……織斑先生の情報では随分と妹を溺愛しているらしく、専用機も彼女が創ったと推測されている。だからこそ、要注意人物として警戒されている。

 

刀奈は『自分は分かっている』とでも言いそうな瞳を、箒にも目を向ける。その様子を見た夏人はため息を吐く。

 

「何かしら?」

「…別に。ただ、これ以上話しても無駄だと思いまして」

「無駄じゃないわ。少なくとも、私にとっては。天王寺君のことも、貴方たちの専用機のことも。…ま、もしかすると天王寺君と簪ちゃんの機体は、天王寺グループがわざわざ造らせたのかもしれないけど?」

 

口元に浮かんだ薄笑いを、隠そうともしない刀奈。だが此処で、今まで沈黙を守っていた簪が口を開いた。

 

「―――違う。『緋菫[あけすみれ]』は私が一から造り上げた、正真正銘、私の専用機」

「――――え?だって、簪ちゃんの、『打鉄弐式』は」

 

開発が凍結されたはず―――。そう言おうとして止める。

 

「打鉄も、倉持技研も関係ない。つまらない大人たちから離れて、この子は生まれ変わった。だから、名前も変えた。この子は『緋菫』。私のパートナー」

 

愛しい我が子を愛でるように、簪はそっと腕のブレスレットを撫でる。刀奈はその姿を茫然としたように眺める。

 

数ヵ月前に行われた、倉持と天王寺のコアの取り引き。本来ならば違法とされるその行為は、コア同士の交換というグレーゾーンギリギリの線引きで許された。

そして、もう一つ。コアの交換ということはつまり、『打鉄弐式』は一度解体されているということ。目の前にいる『妹』は、半年足らずで一から機体を組み上げたことになる。

 

その事実に思わず凍りつき、狼狽する。そして、それを隠し切れなかった。簪の冷ややかな視線が突き刺さる。

 

「…どうして、驚くの?」

「―――っ!」

「貴女だって自分で専用機を造った。なら、他の誰かが同じことをやっても不思議じゃない。そうでしょう?」

「それは…」

「それとも何?私なんかでも造れたことが、そんなにおかしい?」

「そんなこと……」

 

ない――とは言い切れなかった。何時か何かを成し遂げると、そう勝手に思っていた妹が、既に自分を超えているのではないかという事実を受け止められていないのだから。

 

「か…かんちゃん、もう止めようよ……ね?」

 

姉と共に成り行きを見守っていることしかできなかった本音が、おずおずと話し掛ける。簪は、本音をじろりと睨む。

 

「……馴れ馴れしく呼ばないで。私は忘れてない。弐式に、レイディのデータを流用しようとしたこと」

「あ、あれは……」

「言い訳なんて聞き飽きた。結局、貴女は私を裏切った。……信じてたのに」

「ち、違うよ…わた、私は……」

 

目に涙を滲ませながら、本音は違う、とうわ言のように呟く。胸をギュッと抑える簪だが、踵を返してドアへ向かう。

 

「待ちなさい!簪ちゃん、まだ話は……」

「もう終わった。それと、『簪ちゃん』なんて呼ばないで。もう貴女の妹じゃないんだから。……行こう、夏人、箒」

「分かった。……更識先輩、最後に一つだけ。簪が専用機を開発したと聞いたとき、貴女は驚いていた。まるで、『あり得ない』と思っているように」

「……………っ!」

「なぜです?」

「…………」

 

その問いに――――答えられるはずもなかった。普段なら一笑に付すか、否定するような問い。だが、今はその余裕すら無い。

 

「貴女は簪を称賛しておきながら、その心の中では―――」

「……黙…れ…」

 

わなわなと肩を震わせ、拳を固く握り締める。

 

「―――見下して」

「黙れ!!」

 

バン!と机を殴りつけ、刀奈は夏人に掴みかかろうと――――

 

 

 

「更識さーん、ちょっと相談があるん…………」

 

ピタリと時が止まったかのような錯覚になる。

手を大きく挙げて、ニコニコと笑顔で生徒会室に入ってきたのは凪だった。陽気に入室した部屋に、余りにも重苦しい空気が流れている。それを瞬時に感じ取った凪は、一層冷や汗を流している。

同時に、夏人の胸倉を掴もうとしていた刀奈の姿を捉える。

 

「…お話し中でしたか?しかし、暴力は……」

「申し訳ありません。更識先輩との話に少々白熱してしまいました」

 

凪から注意を受ける前に、頭を下げて謝罪する夏人。刀奈も(納得はしていないようだったが)小さく「すみませんでした」と呟いた。

刀奈の怒鳴り声を聞いて、急いで生徒会室へ入った凪。夏人が話した以上のことが原因と踏んでいたが、先に謝罪されてしまえば、教師としてはそれ以上の追及は難しい。

 

「生徒会長にご用でしたら、どうぞ。俺たちの話は終わりましたので。……行こうぜ、箒、簪」

 

そう言って、夏人はドアを開き、先に簪と箒が外へ出る。夏人もそれに続く。

 

「………」

 

すれ違いざまに、凪に強い眼差しを向けながら。

 

 

 

 

 

3人が去った後の生徒会室は、静寂に包まれていた。

 

「更識さん……」

「……」

 

声をかける。しかし、刀奈は顔を背けている。

 

「……ちょっと、風に当たってきます。用はその後に。虚、御波先生に紅茶を淹れてあげて」

「…分かりました」

 

そう言って、刀奈は早々に部屋を出る。カツン…カツンと聞こえていた足音は少しずつ小さくなっていった。

 

「………大丈夫ですよ。流石に、今からあの3人を追い掛けはしないでしょうから」

「それなら良いんですが……。あー、いえ、先生は」

「用事があったにしては、随分と大慌てだったようですが。それに、ドアのノックもありませんでしたね?普段の御波先生なら、忘れることはない筈です。誰かからお嬢様…いえ、会長たちのことを聞いたのでしょう」

「む……」

 

紅茶をカップに注ぎながら虚は凪に追い打ちをかける。本人は、ばつが悪そうに顔をしかめている。どうやら、先程のことには目をつむるらしい。

 

次々と追及された凪は、何も言わず本音にハンカチを渡す。

 

「ありがとうね、せんせー」

「気にしなくても良いですよ」

「………」

 

虚が淹れた紅茶のカップを受け取り、味わう凪。しかし、落ち着かない。虚が此方をじっと見ていたからだ。

 

「……えーっと…どうしましたか、布仏さん?」

「…何も、聞かないのですか?」

「…………」

 

何を、と問うまでもない。更識刀奈と天王寺…否、『更識 簪』のことだろうと予想はついていた。元々、凪は刀奈に何があったのかを知らない。あの日…刀奈が珍しく連絡も寄越さないまま勉強会に来なかった日にも、今の虚と同じ質問をされたことを思い出す。結局は刀奈に事情を聞くことはなかった。凪は精々、『家族の誰かと何かトラブルがあった』ということを推察する程度で、以降も自分から聞くことも刀奈が話すこともないまま過ごしていた。

 

「…そうですか」

 

沈黙を是と取ったのか、虚はそのまま口を閉ざす。本音もハンカチで涙を拭った後は会話せず、静かに紅茶を飲んでいた。

ふと腕時計を確認する。試合が終わってからもうすぐ1時間が経つ。職員室に戻った方が良いだろうと、凪は紅茶を飲み干して席を立つ。

 

「ご馳走様でした。とても美味しかったです」

「ありがとうございます。………御波先生」

 

呼び止められ、ん?と首をかしげる。虚は頭を下げた。

 

「…おこがましいかもしれませんが、どうかお嬢様のことをよろしくお願いします」

「……出来る範囲は限られているでしょうが、努力はします。……それじゃあ本音さん、また後でね」

「うん…。バイバイ、せんせー」

 

 

 

 

 

≪Side虚≫

「お姉ちゃん、さっきの話…」

 

御波先生が去った後、本音が話しかけてくる。……普段はのほほんとしているけれど、こういう時は急に賢しくなる。

 

「……言われなくても、分かってるわ」

「でも、御波せんせーは……」

「分かってるから」

 

私がそう告げると、本音は黙ってしまった。

口にしなくても分かる。『御波先生は、この件に関係ない。』本音が言いたいのは、そんなところだろう。

 

「でもね本音、これは必要なことなのよ」

「……」

 

今の刀奈お嬢様は…私の幼馴染は酷く不安定だ。それは天王寺 簪が現れたことと直結する。普段なら学園長や轡木 十蔵氏の方針に従って行動する。『天王寺、篠ノ之の両名に対しては、過度な干渉は控える』これが、現在の学園の方針だ。突如現れた2人目の男性操縦者とIS開発者の妹。妹の方はともかくとしても、男の方も当然のことのようにISを動かしていた。それはお嬢様が示した、『天王寺 夏人が何時からISを動かしていたのか』という疑問になる。

……いや、天王寺が隠していただけならマシだ。世界中に孤児院や施設を設立する天王寺グループなら、『夏人を守るために隠した』としてもなんら問題はないし、ある意味で当然とも言えるだろう。しかし、夏人の隣に篠ノ之 箒が居て、彼女の後ろには篠ノ之 束が居るかもしれないとなれば別だ。

ISの開発後、篠ノ之 束は世界的に指名手配されている。当然だ。ブラックボックスだらけのISを唯一、創り出せる人間で、どの国も組織も喉から手が出るほどに欲しい人材。だからこそ、その家族すら狙われる危険性を考えた当時の日本政府は要人保護プログラムに則り、居場所を変え名前を変え、束を除く篠ノ之一家をバラバラにして各地で暮らしさせた。

しかし、数ヵ月前―――具体的には、教員採用試験の数週間前になる―――SPの(きょ)をつき、箒を攫った組織があった。詳しい情報は入ってないが、海外のテロ組織らしく、妹を人質に姉を誘い出そうとしたとのこと。結局は何処からか情報を手に入れた天王寺グループの人間によって救出され、信用を失くした日本政府に変わり、篠ノ之一家は天王寺グループの保護下に置かれたという。

天王寺は篠ノ之 束と接触しているかもしれない。ならばもし、天王寺に余計な干渉をして立場が危ういのは学園と更識、布仏だろう。今回の事もそうだが、状況が不透明な時に、もしお嬢様がまた天王寺の心象を悪くすれば、どう転ぶか分からない。

 

御波 凪は保険だ(・・・)。万一の時、暴走し得る彼女を止めるための。恋心を(いだ)いている彼の言うことなら、素直に従う可能性は高い。最良なのは、姉妹の仲すら改善させることだろう。

 

「…………はぁ……」

「お姉ちゃん?」

 

どうしたの、と尋ねる本音に何でもない、と答える。

……ああ嫌だ。こんなことを考えてしまう自分が。結局は嫉妬している(・・・・・・)のだと思い知らされる。嫉妬と言ったって、別に幼馴染に恋をしているわけでもないし、幼馴染が恋敵ということもない。

全部、自分がやるべきことの筈なのだ。姉妹のことも、幼馴染を止めることも。しかし、本音と同じく、私も()からは警戒されている。話しかけることだって難しい。幼馴染も、既に私に頼ることは考えてすらいないだろう。けれど……

御波 凪。普段は凛として、人をからかうのが好きな幼馴染が、不器用ながら恋心を抱く青年。他人へ気配りは出来る癖に、一番大事な少女の、そして女性の淡い恋心には気付く素振りすら見せない、ダメダメ男。何であんなのに惚れてるんだ、うちの次期頭首+αは。家事は完璧、料理の腕は……曰く『可』らしい。確実に私の方が美味いに決まってる。腕っ節……一般男性なら軽くひねられるか?私が勝てる気はしない。いやいや、それは置いておこう。というか何だ、『頭を撫でてもらった』って。ちょろいにも程度というものがある。『気にしない』って何だ。女の子の様子がおかしいなら、『俺に任せろ』くらい……いや、今のは無責任すぎるかもしれない。私自身も出来ないですし。

とにかく、これは試金石だ。私は『よろしくお願いします』と言った。それに対して彼は『出来る範囲で』と答えた。なら、精々測らせてもらおう。彼がどこまで協力できるのかを。

 

 

 

「お姉ちゃん………なんか悪い顔してる……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜。

IS学園の校門の前に1人の少女が立っていた。彼女の特徴とも言える、ツインテールが夜風に吹かれ、揺れている。

 

「やっと着いたわ、IS学園。まったく、委員のオッサンめ…長話に付き合わさせてくれちゃって。こんな時間になっちゃったじゃない。さて…………」

 

人の身長の何倍もの――少女は平均的な女子高生よりも更に低いため、その倍はあるように感じる―――高さを誇る門を見上げる。固く閉ざされた(・・・・・)門を。

 

「……誰か、開けてくれないかしらね?……くちゅんっ」




おまけ

セ=セシリア・リンクス
ホ=ホウキ・マーセナス
リ=リン・フロンタル


宇乳世紀―――人類が広大なる宇宙へ進出し、月に、スペースコロニーに活動の拠点を置くようになった時代。
宇乳世紀0079年、地球から最も離れたコロニー群『パッド3』はナイチチ公国を名乗り、巨乳派ばかりだった地球連邦に対し独立を求め、独立戦争を仕掛けた。
後に『一年戦争』と呼ばれるその戦争は、巨乳派である連邦政府の圧倒的戦力(大きさ的な意味で)によって勝利を収めた。
それから約17年。人類は巨乳派と貧乳派、時には中間派を巻き込み、大きな(胸的な意味で)戦争を繰り返してきた。そして今、新たな戦いが終わろうとしていた。


セ「ホウキさん!?」
ホ「やるぞ、セシリア。この光は私たちだけが生み出しているものじゃない!」
セ「分かっています。……皆さんがこの中に」
リ「女の中から現れた凹凸。この温かさを持った者が……。虚しいな」

リ「2人の巨乳が揃って私に楯突くか!貧乳の総意の器である、この私に!」
セ「器だなんて……。たとえ作り物(パッド)であっても、人はそんなもの(巨乳)になれせんわ!」
ホ「そのブラの下にあるもの(パッド)を吐き出せ、リン・フロンタル!」
リ「ならば受けて立つまで。……ガンダム(デカチチ)!」

少女たちは戦う。可能性(育乳)を求めて―――


『機動戦士ガンダムπ乙』
宇乳世紀100年、公開予定




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