お正月期間のアルバイトはキツイですねぇ…。(遠い目)
オリ主、登場&初会話回です。
雨の中、傘も差さずに立ち尽くす女性(ひと)がいた。
その表情はまるで、かつて見たあの顔にそっくりで。
その瞳は、ただ一点を見つめていた。
俺は、そんな彼女の姿を哀しいものだと思った。
そんな彼女の姿を、少しだけ、ほんの少しだけ、『 』だと。
そう、思ったんだ。
≪side千冬≫
「………此処…は…」
知っている。此処は、私たちの……いや、私の家のリビングだ。検診を受けた後、家の前に居たことは覚えている。だが、すぐに目の前が暗くなって……。少なくとも、リビングのソファで寝た覚えはない。どういうことだ?
「目が覚めましたか?」
状況を整理していると、知らない男が私の顔を覗き込んできた。……なるほど、そういうことか。
「いやぁ、驚きましたよ。いきなり目の前で倒れて、」
「なら、好きにするがいい。……もっとも、貴様の望む反応にはならんがな。」
「……ハイ?」
「無理矢理に純潔を奪ったとしても、泣き叫びもしないし抵抗もする気がない。私にとっては、どうでも良いことだ。」
「え……えーっと。ナニを仰ってるのでしょうか?貴女は。」
何故か男が困惑している。
「……私に性的な暴力をしに来たのだろう?ああ、盗人の方だったか。悪いがこの家に大したものはないぞ。」
「ど、どっちも違います!!勘違いこの上ない!!」
「なら、私に踏まれたがっていた集団の1人か?」
「なにそれ、羨まけしからん!……そ、そんなことより、そろそろ説明させてください!」
こいつ今、『羨ましい』と言いかけなかったか?
「…で?貴様は何者だ。」
「…普通に話を進めるんですね…。御波 凪(みなみ なぎ)と言います。えーと、表札のとおりなら、織斑さんでしたっけ。貴女、この家の前で倒れていたんですよ?それで、私が助けたってだけです。何もやましいことなんて考えていませんよ。」
……そういうことか。別に、そのまま放っておいても良かったのだがな。
「………一応、礼は言っておく。」
「誤解が解けて安心しました。それで、」
「だが、私と貴様は何の関係もない人間だ。即刻、この家から出て行ってもらおう。」
「む…………助けがいのない人だなぁ。分かりましたよ、帰ります。……ん?」
そう言って奴は立ち上がり、キッチンカウンターにある、それに手を伸ばした。……っ。それはっ。
「これ、写真ですか?……こっちの女性が織斑さんで、男の子の方は、」
「それに、触るなああああああ!」
「!?……痛っ!」
思わず立ち上がり、奴を突き飛ばす。ゴンッと大きな音を立てて奴は壁に叩きつけられるが、気にしていられない。すぐに写真を取り返し、胸に抱きかかえる。
「これは、一夏の、一夏との……………うっぁぁぁぁぁぁ………!」
私の姿はみっともなく映っているだろう。けれど、それでも、涙は止められなかった。
「……。すみませんでした。お風呂、沸かしておきましたから、風邪をひかない内に入ってくださいね?……それでは……。」
奴の言葉は、私には既に届いていなかった。
翌日
……何時の間にか、辺りは暗くなっていた。あの御波とかいう奴は来なかったな。助けられておいて、あんな仕打ちをしたんだ。来なくてむしろ当然か。だが結局、奴は風呂の用意どころか夕飯まで準備してくれていた。感謝と謝罪だけでもしたかったのだが。そう思っていると、インターホンが鳴った。……誰かが来たのか?モニターで確認すると、
「こんにちは。……お体、大丈夫ですか?」
……来た。
「………ああ。昨日はすまなかった。…怪我は大丈夫か?」
「まあ……。あんまり気にしてはいませんよ。」
「そうか…。ところで、今日はどうしたんだ?」
「特に何も。」
は?
「バイトの帰り道なので。ご迷惑でしたか?」
「………あー……。いや、そういうわけではない。」
「それは良かった。では、これからスーパーの特売があるので。」
「え?………あ、ああ、分かった。」
「それでは、また明日。」
そう言って奴はさっさと帰って行った。
「変な奴だな。……ん?『また明日』?いやいや、まさか。」
昨日、会ったばかりの人間のところに、何度も来る筈が……。来ない、よな?
その翌日
「こんにちは~。」
「あ、ああ。」
3日後
「こんにちは。」
「帰れ。」
1週間後
何なのだ、奴は。いくらなんでも訪問しすぎだ!普通、他人の家に毎日来るか!?知りもしない人間の家にだぞ!?1週間の間、ほとんど同じ時間帯に!?しかも理由は決まって『バイトの帰り道なので』だ!何度も聞いたぞ!1週間前から!
暇か!?暇なのか!?(一応、以前は大企業に勤めていたらしい。倒産したらしいが。今はバイト生活だそうだ。)こんなことをしている暇があるなら、次の就職先でも探せ!……休職中の私が言うのも、おかしな話かもしれんが……。
休職で思い出した。私が通院している病院の医者と看護師。何が『最近、元気になられましたね』だ!こっちは変な奴に絡まれて、大変だというのに!元気になった?薬を出したのは貴方たちではないのか!?薬でないなら時間の経過のおかげであって、奴のおかげだということは絶対にない!!ないったらない!!
外でカタンと音が鳴った。
どうやら、郵便受けに何かが配達されたらしい。私は外へ出て確認する。どれどれ……。ふむ、どうやら不審者が出たらしい。20代の男で、1週間ほど前から暗くなった頃に、この家の近くをウロウロしているらしい。
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………世の中には、変な奴もいるものだな。さて、寝るか。
朝、朝食を食べているとインターホンが鳴り響いた。誰かと思い、モニターを確認すると、奴…御波 凪が立っていた。……扉を開け、何の用かと尋ねた。………どうやら、最近現れた不審者がもしかしたら自分かもしれないと思ったらしい。キヅカナカッタナー。で、無実を晴らすために一緒に来てほしいとのこと。拒否しようとしたのだが、強引に連れ出された。…私の、朝食……。
場所は変わり、近くの交番へ
警官が何の用か尋ねると、奴は近辺の不審者について話がある、と言った。不審者と呼ばれている人物と、自分が同一人物の可能性がある、とも。
この時点で警官の手には手錠が握られていた。
御波は焦った様子で警官を制止し、私の家に頻繁に訪れていたことを告げ、このように熱弁?した。曰く、「自分はやましい心など持ってはいない。ただ、この女性の家に、玄関前で帰れと言われながらも毎日通いつめているだけだ!」とのこと。
御波の手に手錠がかけられた。
御波が何かを懇願するような顔でこちらを見ている。……………………ええい、仕方ない。
私は警官に、「コイツは最近知り合った知人で、変な性癖を持っているが悪い奴ではない」と話した。警官は訝しそうな顔だったが、適当な言葉を並べて説得すると渋々、御波の手錠を外して厳重注意で済ませた。……小さく小声で、私に身の危険を感じたらすぐに通報するようにも言っていたが。
交番を出て私の家の前に着くと、御波が急に私の手を掴んでお礼を言いながら何度も頭を下げてきた。驚いて、「べっ別に感謝されたくてやったのではない!かっ借りを返しただけだ」と少し言葉に詰まって、そう言ってしまった。
………とにかく、もうこんなことに巻き込むなと釘を刺しておいて、御波を帰らせた。これで、流石に来なくなるだろう。
…………少しだけ、寂しいような…………?いや、これで毎晩辟易することがなくなるんだ。清々したぞ、うん。……………………。
翌日から、御波が家で夕飯を作ることになった。
…………どうしてこうなった………………?
オリ主、登場&初会話回(オリ主視点とは言ってない)
相も変わらず、千冬視点です。
前科(持ちかけた。しかもストーカー容疑)系主人公……新しいかもしれません。
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