【テスト】「サトミタダシ」の店員さん【お試し】   作:秋野よなか

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 久々に聞いた“洗脳ソング”に導かれ、変な電波を受信し勢いで書いた「ぼくのかんがえたさいきょうのてんいんさん」なお話しを投稿させて頂きますので、どうぞよろしくお願いします。


プロローグ

 薬局「サトミタダシ」

 

 その店は知る人ぞ知る、一般では取り扱ってない“特殊な品物”を扱う薬局(ドラッグストア)だ。

 と言っても、別に法の番人に手錠を掛けられ後ろに手が回るような、いわゆるソレ系の“違法薬物”を商っている訳では無い。

 ただ、ちょっと他では手に入らないブツを法や秩序、善悪とは全く関係なく“特定の人を選んで”売買し提供している変わったお店である。

 

 TVで天気予報を見た後、朝食を食べ終え欠伸を噛殺し、住居兼倉庫にもなっている二階から一階の店舗に降りると、今日もいつものようにブレーカをON、店内の照明を点ける。それと同時にお馴染のサトミタダシのCMソングが店内に自動で流れ出す。

 そう、あの「ヒットポイント回復するなら………」で始まる、サトミタダシチェーン店独自の“洗脳ソング”とも言える歌だ。

 買い物に来る子連れの親子や学生などの普通のお客さんも、ついつい口ずさむくらい頭に残るテンポの良いアレである。

 

「さ~て、今日こそ誰か来るかねぇ。四丁目の廃ビルが異界化したらしいけど、この辺は治安も良いし悪魔の発生が殆ど無いって聞いたから、安心して店長引き受けたのに。ヤタガラス(超国家機関)のクズノハ(悪魔召喚士一族)も、ファントム・ソサエティ(マフィア的犯罪組織)のサマナー(悪魔召喚士)の来店も無い。このまま行くと被害が出る前に、警視庁特別死霊室か神社庁特務調査局(どちらも政府機関)から、また安い賃金で仕事が回って来るのか……バイトの羽瀬さんが昼から入るし、その後またぶらっと下見でもしてこようかな」

 

 近くに誰も居ないのを好い事にそんな独り言を呟きつつ、出入り口のシャッターの上昇ボタンを押すと、ガラガラと喧しい音を辺りに響かせにる。先ずは店の前を軽く掃いてしまおうと箒と塵取りを取に戻りながら、弾薬の残りと装備の点検が先かと思い、いざ仕事を受けた場合如何に出費を減らそうかと考え、一度下見した際に拾った綺麗な鍵は何処に仕舞ったかと首を捻る。

 

 そもそもこのクズノハやら、ファントム・ソサエティのサマナーとは何なのかって事になると、一言で語るとしたら“異能者集団”だろうか? 流石にその起源を語れる程頭も良くないし、俺はそこまで詳しい知識は持たない。知らない方が幸せな事だって世の中には沢山あるのだ。

 

 とは言え普通好き好んでそんな知識を得る訳で無く、残念な事に大抵は悪魔と呼ばれる輩に関わる事件に巻き込まれ、その原因の当事者だったり被害者であったり色々あるが、偶然異界(簡単に例えるならRPGのダンジョン)化した場所へ迷い込んでしまって“運悪く生き残った場合”が殆どだと聞いた事がある。幸運にも俺は別の関わり方で知った珍しい方に分類されるだろう。

 他には元々そう言った環境、出身、組織に係わっていた事によって初めて知る訳で、先に述べた関わり方って言うのがこの事だ。

 では、悪魔とは何なのか? 有名な所ではゲーテのオペラに出て来るファウストのメフィストフェレス、他は民間伝承に始まり一番ポピュラーな伝わり方と言えば、善と悪の引き合いに出される多々ある宗教じゃ、ごろごろ簡単に名が出て来るだろう。

 

 この世には昔から人とは違う理で存在する者が居て、それを誰が最初に言いだしたか知らないが、力あるそれらは時として呼称する者の“都合によって歪められ”、神、精霊、天使、鬼、妖怪、化物etc……と様々な名があるが、総称して“悪魔”と便宜上呼んでいるに過ぎない。

 更にそれらのモノと契約し、使役する者達が現れそれが現代ではサマナー(悪魔召喚士)と呼ばれるようになったわけだ。

 

 何故俺がそんな事を知っているかと言えば、実は以前ちょっとした理由で、今じゃ時代遅れとも言って良い型落ちの、腕に装着させる仕様のアーム・ターミナル型COMPを手に入れたのがそもそもの始まりだった。

 このCOMPと呼ばれる簡易に悪魔との契約・召喚まで行える機械が在れば、どんな素人でも出会った悪魔と会話し契約を結ぶ事さえ出来るのだ。ぶっちゃけて言うと、相手の望む物を用意し与える事で契約を交わし、サマナーは悪魔達を召喚してその力を互いに存分に利用できるので、これが本当のwinwinって奴だな。

 つまり極端な例を上げれば、呼び出した悪魔の指揮が可能なら、膝を抱えブルって小便漏らすような情けない奴だろうと、身を守りそれなりの破壊と暴力を周囲にぶち巻く事ができるのだ。

 本来悪魔達は何かしら超常の力を持っていて、それこそ蚊をプチッと潰す様な手軽さで、簡単に人を殺せるくらいには強い。だから最近じゃ足の付きやすい銃よりも、犯罪に使われる事が屡々あるのでクズノハや政府機関は揉消しに大忙しで商売繁盛。

 日本は法規制で銃社会では無いとは言え、もっと物騒な世の中になっちまったもんだ。

 

 もっとも俺の場合そんなアングラな理由で無く、最初はCOMPと言う未知の道具の物珍しさから得意になり、若気の至りで勢いのまま貯金を崩すと、金に飽かせて普段絶対目にするどころか触れる事さえないであろう銃器と防具を即購入し、各装備の説明とメンテナンスのレクチャーを受けながらその感触で悦に浸るなど、相当俺も頭のネジがぶっ飛んでた。

 ……今にして考えれば、本当に命知らずな馬鹿をやったと思うが、当時「実は俺って今もの凄く強くね?」と手に入れた銃とナイフ、身に纏うコンバットアーマーの装着感と、確りとしたそれらの重さに感情の箍が外れたのだ。

 箍とは言っても路上に出てそこらの人に向かって、鉛玉ぶっ放さないだけの分別は残ってたのが唯一の救いだったけどな。

 

 まあ、男なら少なくとも一度は考えた事がある筈の、今が「最強の自分」だと勘違いしたまま興奮し、サバゲー感覚で丁度いい具合の異界化された場所も教わり嬉々としてノリノリで吶喊、あんときゃ真にぶっ壊れてたわけだ。

 道具と弾薬をばら撒きながら、弱い悪魔を狩ってサマナーの真似事をしていたところ、“うっかり”コアのある最深部近くに出現した強者とぶつかり、更に偶然手に入れた力を解放。死にかけながら「低ランクの見習いサマナー研修用」異界化物件を、文字通り建物ごと発破し攻略・浄化・壊滅的被害を出す。

 

 その結果、事の次第を知った各方面から苦情の嵐が殺到し、運のよさから高ランク悪魔から生き残り、偶々手に入れたその破壊力で「俺TUEEEEE」な全能感に酔っていた俺は、頭も冷えやっと犯した事の重大性に気が付き理解すると、小さな物音にさえビクつき「すわ検挙か!?」とアパートのトイレに鍵を掛けて頭を抱え「俺超絶YABEEEEE」って閉じこもっていた。

 結局二時間後に観念して外に出た頃には、何故か社長がそれらに対応し、全て解決してくれた後だった。

 

 この時俺は絶望と言う一寸先も見えない闇の中に、一筋の光明が射したと思ったよ。

 

 でも、どうしてコネで入れた一社員を社長が助けてくれたのかが不思議で首を捻ったが、兎に角もうサマナーごっこは懲り懲りだと思って、態々直接会いに来てくれた社長にお礼と反省を込めて誠心誠意言った。

 

「もう馬鹿な事は致しません。ご迷惑を掛け本当に申し訳ありませんでした!」

 

 気付けば涙を流し、心の底から感謝を込めて丁寧に頭を下げていた。

 この時バットを手に持った社長に「反省したならケツを出せ」と言われたら、躊躇なく俺はズボンを下げてケツを叩かれたと思う。今なら捕まる前にスタコラサっと逃げるね。

 けどまあそれを黙って聞いていた社長は、徐に俺に一歩近づきガッチリ肩を掴んだ。

 俺はその握力の強さにギョッとしたけど「じゃあ、次からも頑張ってね」と、あっさり言い放ち眼鏡をクイッ直しながら、ニコニコとした笑顔で言うわけよ。

 

「えっ?」

 

 突然そんな風に言われたら普通驚くだろ? どう考えても多少お小言や説教にイヤミ、最悪クビを宣告され怒鳴られると思っていたのに、当の社長は最初と変わらず笑顔のまま。

 

 どう言う事か分からず、目を白黒させていたら続けて語られた内容が、今回の件で消滅した異界化物件で、本来修行を兼ねた研修を行うはずだった見習いに代わり、他の丁度いい難度の異界化物件が見つかるまでは“無償で依頼を片付ける役目”を引き受けざるを得ないと言う話だ。

 俺みたいな頭がトリガーハッピーなド素人に仕事をさせる意図が掴めず(勿論物件爆破の罰だった訳だが)、碌な返事も出来ないまま語り終え部屋から出て行く社長の笑顔に対し、もう何処にも逃げられないと悟った俺は、油汗と冷汗をダブルで流しorzしか出来なかった。

 

 こうして今じゃ、民間機関サトミタダシ所属のサマナーとして、“二人目”の登録者となり数々の厄介事を真に“死に物狂いで”こなしつつ、サトミタダシのバックアップを受けながら何とか当初の契約を終え、付いた通り名は「ラッキーボマー」理由は、何回目かの仕事の後で“幸運を爆発させる”とか言われてからだ。……不名誉すぎて全俺が泣いたよ。

 それから五年、二十七歳にしてやっと平穏を掴みとり、波間に朝日を拝める支店の一つを任される様になったのである。

 驚く事に民間機関サトミタダシ初の登録者は誰かと言えば、何を隠そう全国規模で展開する薬局チェーン店サトミタダシ現社長の、里見正氏であった。

 

 今更だけど、本当何者なんだよあの狸オヤジは。

 あの時俺の肩を掴んだ握力は、尋常じゃ無かった訳だと後でつくづく思った。

 

 サマナー=強者と言う図式は、悪魔を知っている関係者は自然と抱くイメージだが、それ以上にサマナー=高死亡率の図式も想い浮かぶ職であり、サトミタダシ所属のサマナーがいまだに俺と社長の“二人だけ”なのが分かり易い例であり、誰も好き好んでやる職業じゃないのだ。

 社長夫人は高レベルのサマナーだと言う噂も聞くが、理由は知らんけど何故かサトミタダシ所属ではない。もしや夫婦仲は悪いのか? と思ったがどうやら違った。

 

 社長があの時俺を助けた思惑は夫婦間の問題は一切関係なく、更に言えば才能や将来性、見どころの在る若者、サマナーの後輩としての手助け……と言う事も全く無くて、ただ単に「若い世代に、自分以上に命知らずでおバカ且つお調子者が居れば、もっと嫁さんが俺に惚れ直すだろ?」的な理由の内容を、同系列のドラッグ・ギアの店員から又聞きして、俺はアンタの当て馬かよと、社長夫妻はあの年でラブラブらしく余計に凹んだんだよな。

 

 夕日に向かって「この成功者! 勝ち組! 愛妻家! 億万長者! 褒める所しか無くて妬ましい!」って叫んだのはいつだったっけ……。

 

 そこまで思い出して気の滅入る事を考えるのは止め止めと、軽く頭を振って手に持った箒と塵取りで掃除を始めるかとばかりに、シャッターの上がった自動ドアの先に目を向けたら、今朝見た予報通り晴れ渡る空の下、見慣れない景色が広がっていた。

 

「……」

 

 店の前にあった駐車場は何処にもなく、視界に映るのは狭苦しく隣り合う古臭い建物。

 潮の香の代わりに漂うのは、今も不快な臭いを放つ剥き出しの地面が見える細い路地。

 普段なら自動車の行き交う音と、少しばかりの波の音に混じって微かに人の声が聞こえるくらいだが、今は騒がしくも雑多な音が耳に飛び込んで来る。

 そんな訳はないと分かっていても、開店時間でも間違えたかと働かない頭で思い浮かんだそれに対し、右手の腕時計を確認すれば午前十時少し前。本来ならもう少し人通りは少ない筈だし、日の高さまでも随分違う様に感じてしまう。

 

 間違い無く言えることが、高い建物はほぼ見当たらず電柱すら無いここは、太平洋が見える国道沿いの日本の都市では無さそうって事だ。

 

 そのまま少し首を回し、大きな通りが目に入り注目すれば、そこには自動車ではなく荷車を引いた馬が横切り、御者の男性が手綱を操り器用に通りぬけ、身なりの良さげな歩く人は水溜りを避けその態度で人を割って歩き、そうでない者は道を譲って水溜りに留まり当然のように泥に汚れ靴と裾を濡らす。

 一瞬、目にしたものに世界の縮図を見た様な錯覚を覚えるが、その二種類に分かれた人達でさえ一様に揃って、過去を題材にした映画の中に出て来そうな、中世風とでも表現しそうな衣装に身を包み、中にはマントいやローブか? を纏い片手で本を読みながら、もう片方の手に自分の身長よりも大きい杖を持つ、小柄な青い色の髪をした子供が此方の方向へゆっくりと歩いていた。

 知らぬ間に噛みしめていた奥歯から力を抜き、そっと頬を撫で息を吐く。

 

「あの杖の代わりに箒を持っていたら、洗練されてないハリー・○ッタ―的場面に見えて、ちょっとだけ映画の撮影現場に迷い込んだかと思っただろうな。……ねーよ」

 

 思わずそんなアホみたいな言葉がでたが、目の前の光景にいつの間にか手前にまで来ていた先程の青髪の杖の子供が、何かを探しているのか辺りを見回した後俺に目を止め小さく呟く。

 

「……ピエモンの秘薬屋はどこ?」

 

 どう見ても目の前の子は、顔の作りが日系人では無いのに淀みなく、スラスラと発音のアクセントのズレもなしに会話が耳に届いたのに驚いた。それに無理に元の地毛を青に染めたような違和感が微塵も無いし、綺麗な青いブロンド(?)の髪質がとても不思議で、俺は自然派なので髪は真っ黒だが、こんなに綺麗に染まる商品が出回っていたのかと感心する。

 ……思考中に聞こえた声は落ち着いたハスキーボイスで、俺に質問してきたこの子は表情こそ少し硬く、変化に乏しい眠たそうな眼差しを向けてくるが、そこらのドラマや映画の子役、TVに出て来る代わり映えしないアイドルよりも、偉く整った顔立ちをしていて遺伝子の成せる神秘の業は、口にはしないがスゲーって思う。

 しかしここは、愛想良く接客する場面に違いない最初の相互接触だ。

 

「いらっしゃいませ。ようこそ薬局サトミタダシへ」

 




 誤字脱字、感想、ツッコミ等お待ちしておりますが、余り心臓が強くないので、ホラー映画を音声無しで見れるくらいにどうぞお手柔らかに……。


12/30修正 クズノハ(民間機関)のヤタガラス(悪魔退治屋)↓
      ヤタガラス(超国家機関)のクズノハ(悪魔召喚士一族)

 各組織力関係:超国家機関≧政府機関≠ファントム・ソサエティ他
と、本作品内ではさせて頂きます。
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