【テスト】「サトミタダシ」の店員さん【お試し】 作:秋野よなか
投稿する際プレビューで確認しながら書いてたら、
いつのまにやら文字数が増える増える……。
一度通して読んでみて、違和感覚えたら削る削る……。
一歩進んで三歩下がっての投稿。
プレビューいいですねよね。現実でも思考のみならず、
行った結果を確認して巻き戻せたら、便利ですよね?
今回の話は独自設定だらけなので、不快に思われた方にはごめんなさい。
久々に訪ねてきたタバサさんから、商品棚を漁っているのは学院から連れてきた友人だと軽く紹介を受けた後に、うちで扱っている薬についての相談をされた。
そう言う事ならと改装して表向き狭い店内を、実は区切って何部屋かに分けただけなのだが、その中の一つの部屋へ案内する最中に、タバサさん以外の子達がそれぞれ適当に名乗る。俺は所詮一店舗の店員だし扱いはまともな方だろう。
褐色肌のお嬢さんがキュルケさんで、薔薇とフリルがギーシュ君、ドリ……素敵ヘアーなお嬢さんがモンモランシーさん……? モンモランシーって、つい最近似たような名を聞いた覚えがあるが、間違い無く皆貴族出身のようだ。
何故彼らが貴族だと断言できるのか? これは直接貴族社会の者と顔を会わせる為に夜会に出た事で知った事実だ。
貴族は基本的にマント着用が常であるようで、単なるお洒落や防寒が目的では無く曰く“マントは貴族の証たる誇り”であり文化らしい。
詳しい理由は聞いてないので分から無いが、きっと習慣になる前は大した理由なんて無かっただろうと思う。俺は単に貴族と平民の見分けを付ける目印にしていた。
正直今となってはマントを装着しているのが貴族云々だと言う事よりも、色々と知った後なので複雑な気分だが、何をどう知ったのかと言えば長くなる。
見た目……は、確かに此処の異界の住人の方がかなり上等に思えるが、中身自体はそう変わりがないと分かっただけ、随分と気持ちは違う。
最初この「貴族」と聞いて俺が頭中に描いたのは、この地で最初に見て感じたような弱者と弱者足らしめる構図の存在で、他には綺麗に着飾った男女が絢爛豪華なお城で舞踏会な発想が精々で、映画で見たようなイメージが限界だった。
だが夜会と言う名のパーティーに参加した後では、城内の照明や空調に“固定化”と言う概念を用いた技術を知り、現代科学並に発達、或いはそれを凌駕した“魔法”を目にして、素直に凄いなと本気で感心する事になる。
そう、所謂お伽噺にある様な
貴族の使う魔法の中に“ディテクトマジック”と言う、物を洞察する魔法があるそうだが、アレは俗に言う“アカシックレコード”に接続する術で、己の知識を基準に膨大なその情報の中から検出し吸い出す魔法らしい。
その為使う人によって理解出来る深さが違い、例を挙げるならある「書物」をこの魔法で調べてもらい、片方はそれを「本」だと分かり、もう片方はただの「日記」だと分かる。
「本」と「日記」に分かれた理由は、その「書物」に書かれた文字を知っているかの差だ。
他にも“錬金”と言う、物質変換までを行えてしまう魔法まであった。
さてここで疑問なのだが、幾ら魔法だからと言って、そんな事を単体で出来てしまう貴族とはいったい何者なのか?
一応俺も魔導書を手にした事で、攻撃や回復に補助と言った魔界魔法を使う事はできても、流石に細かな“物質変換”なんてのはまだ出来ない。
その浮かんだ疑問の答えは、バスンのおっさんが教えてくれた。
そもそもこの異界に住む住人は“貴族と平民”の二種類の“人種”と、他に何種類かの亜人種が住んでいて、その中でも国単位で繁栄しているのが人間であり、この貴族と平民は単なる土地の管理運営や、経済力に付随する階級差を現すのではなく、見た目は大して変わりないが実際は全く違う
この間からチクトンネ街より猥雑な、貧民区の土地を借り整地しながらブリミル教と“エネ恊(生体エナジー協会の略)
そこで生体マグネタイトを効率良く蒐集するのに、貧民区に住む職の無い人を集めて協会員として登録し、仕事を斡旋する昔で言う“口入れ屋”のような事を始めた。
そうしてあの巨漢のハ○クや零落れた元貴族等、特異な者を重点的に特別会員へ仕立てあげ調べた結果、生体マグネタイトを多量に生成内包している事を発見する。
その際に貴族は“魔と神の因子”に加えそれらを“事象変換する器官”を持ちあわせ、平民は“神と多種多様な因子”を持っているのを突き止めた。
こんな短い期間でも分かってしまったのは、それ程の差が在ったのが原因とも言える。
簡単に言えば、貴族と平民は神話の時代に生きた
つまり、この異界の地に着て二日目のジェシカと会ったあの日、COMPに組込んでいた機能のエネミーソナーが、やたらと警戒音を出していたのは故障でも異常でもなく、正常に作動し街中に居た
冗談だと聞き流していた六千年も続いていると言う歴史と、この地に現れ魔法を広めた始祖ブリミルは、バスンさん曰く今では北欧神話となっているオーディンの系譜だろうと、使われている魔法の系統からでた結論である。
俺はこの事を知って、バスンさんの前だと言うのに思わず口走った。
「……神様ってそんな昔っから、この異界でせっせと種撒いていたのかよ!?」
この後、研究結果を持ってきていたバスンさんと、その部下さんたちは顔を見合わせ大爆笑となり、とても真面目な雰囲気だったのに何故かそのまま酒盛りを始め、皆に紹介を受けた時よりも打ち解けもっと仲良くなれた。
最近は仕事開けにバーティンさんやモニアさんで、ジェシカの働く「魅惑の妖精亭」に飲みに行く事も在る。
ただ、以前COMPのメンテナンスや各種ソフトを販売していたBARの店主が、オネエ系のソフトオカマで口調は慣れていたとは言え、あそこのマッスル店長のビスチェ姿で抱き締めに来るのは、幾らなんでも酔いが覚めるし眼に毒だろう、多種多様の因子って違う意味で働き過ぎだ……。
取りあえず皆が貴族云々だと言う事はこの際置いておいて、既に色々見せているタバサさんのみを元々在った事務所へと引っ張りこんで、一端店を閉める。
残り三人はカウンター奥に作った個室に案内した後、茶菓子でも出して寛ぎながら待っていて貰う事にした。
どうして分けたかと言えば途中で口籠ったタバサさんの様子を見て、これ以上は口止めを契約した内容に触れそうで、気軽に話せる内容だとは思えなかったからだ。
ついでにリサーチも兼ねて、三人の茶菓子に付ける飲み物は某黒い炭酸飲料水にして反応をみる事にする。
これは必ず売れる筈だと思って、ジェシカや貧民区にいた子供達に試飲させてみたのだが、結果はあまり芳しくなく失敗に終わったからだ。
彼らも同じように不評を訴えるだろうか? もし逆に好評だったなら販売するターゲット層を貴族中心に変更しよう。
倉庫に在庫がかなりあるのでパッパと上手く捌きたい所だが、ダメなら最悪仕入れ自体を早めに他の飲料水に切り替えが必要だな。
(皆この中身の黒い色を見て一口目を躊躇う癖に、「甘いよ」って教えた途端目を輝かせて飲むのに、絶対口や鼻から盛大に噴き出して咽るんだよな……なんでだろう?)
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彼らとしては折角の休みを使って訪ねて来たのに、タバサさんとは別の部屋に案内される事に不満と不信を抱かれたようだが、「個人的な問題に、無理に首を突っ込むのは友人のする事じゃ無いぞ?」と言った所渋々だが、後に続く三人は提案に乗ってくれた。
待たせる間暇だろうからと、単純で大袈裟に誇張された演技と擬音に加え、キャラクター達の動きで話の内容を楽しめる“ネコとネズミ”が仲良く喧嘩するアニメのDVDを流し部屋を出るが、少し振り返り眺めてみれば残された三人の顔には既に不満はない。
理由は簡単、最初は壁に設置してある70インチ薄型液晶TVの何も映っていない画面に「狭い部屋に連れて来られて、目立つのは何を描いたのか分からない真っ黒な絵と額縁だけ。安っぽくて殺風景な場所にこんなつまらない絵を飾るなんて、これって持ち主の性格の表れかしら?」と、キュルケさんの眼が胡乱気な者を見る目付きだったが、苦笑いを浮かべ「まあまあ」と席に促しパッケージからDVDを取り出し再生を始める。
その途端に黒かった画面に色鮮やかに映しだされる画像と、スピーカーから流れ出した軽快な音で目をパチクリさせ「ええっ!? 絵が動いた?!」と画面に喰いつくようにして彼女は椅子から立ち上がってTVに近寄り、壁とTVの間の隙間を覗き首を傾げ不思議がっていた。
キュルケとは違い先に座って事の成り行きを見守っていた二人も、勢いよく画面内を動き回るキャラクター達に驚き、はしゃぐ様に歓声を上げて熱心に見入っていたから問題ないだろう。
このTVは新しい物好きなヅラ長が「Web会議したい」と言う鶴の一声で購入させられた物だが結局直ぐに飽きられ、たったの二回しか使われなかったけど、こうして少しの間の暇潰しには丁度良く、多少奇妙に思うかもしれないがタバサさんの事よりも興味は引けるはずだ。
御持て成しを終えタバサさんの待つ事務所へ戻ると、まだ多少緊張していたがどうぞと出した温かいお茶を少しだけ含むと、漸く口を開き語ってくれた話には正直言って、何て返事をすればいいか悩む事になった。
その相談された内容とは渡した“きずぐすり”の効果に驚き、これなら自分の探し求めている治療薬も在るかも知れないと、頼ってきた訳だ。
治療薬と言っても色々あるのでどんな症状かと尋ねてみれば、少々興奮気味に「服用した薬品で精神を病んだ対象となる人物の治療、若しくは症状を改善できる薬があれば譲って欲しい」と言う珍しく饒舌な話だったのだが、流石にどのように精神を病んでいるのかが分からないと、此方としても満足のいく答えなんて出せやしない。
だからもう少し詳しくその症状に関しても聞いてみたが、対象の患者は結構な月日の間正気を失っているらしく、特定の人物や周りの現状を正常に認識できずにいて、精神に伴う様に体も窶れているようだった。
確かにうちの店で扱っている薬は、その即効性と効果の高さに関して他の追随を許さない程の代物ばかりだと自負している。
だが年単位で患った病気や状態異常を治す、又は改善させると言った行為を行った試しは自分の記憶する範囲では無い。
当店の洗脳ソングでも歌っているように、「きずぐすり」「宝玉」「地返しの玉」「反魂香」etcetc……、他の薬にしても戦闘中でさえ対象を治療できる品が殆どであり、例えそれがどんな相手に成された行為であっても、薬の効果の及ぶ範囲であれば必ず癒すのは間違い無い筈だからだ。
なんせそう言った薬を求めるお客様が、人知れず日常戦っている相手は同じ人間だけでなく超常の存在である「悪魔」達なのだから。
「考え得る最善の方法として安全策で慎重に行くなら、その手の事に詳しい奴でも呼んで患者の血液なり、髪の毛なり、他体液や排泄物なんかから、常態異常を今も継続させている物質を見つけられないかを調べる案が一つ。そもそも実は飲んだ薬がもっと呪術的な代物だった場合、直接精神に害を与えている
「……髪は用意できる。でも、血はムリ。暴れて今以上に悪化する」
考えられる範囲でそう零したが、多分色々試した後なのは窺えた。
断片的な話に質問を挟まず聞き終え返答をした所、なんとか用意できそうなのは髪の毛だけ、例えそれだけでも大変なのだろう。
答えた後はまた力なく俯き、黙り込んだままの彼女の表情を見れば、無理に手に入れるのは勿論、前者の条件でもかなり厳しいのに、もう一つの考えである後者の呪術的見解については、対処法も分からずどうやらお手上げの状態のようだ。
心なしか小さな子を連れて来て閉じ込め、ネチネチ苛めているようで気分が悪い。
壁に掛けられた時計のカチコチと秒針が刻む音が、やけに耳触りで不快に感じる。
事務所の壁と扉は防音加工してあり、他から音が聞こえる事も漏れる事も無くて密談には持って来いだが、今ばかりは日常の雑音が恋しい。
こんな張り詰めた空気、好きになった子に告白する時だって感じやしなかった。
あの時も確かに緊張していたが、こんな重たい雰囲気じゃない。
心が浮つき過ぎ頭が茹ったせいで、碌に言いたい事も伝えられず「ゴメンナサイ」された――って、何を考えているんだ俺は? 先ず頭を冷やし対処できる方法を上げてみる。
分かり切った事だったが、態々危険な薬品を大事に持っている筈も無く、逆に手軽に手に入るような代物なら、それに対抗できるだけの物が世に広く知れ渡っていても不思議では無いので、この案は無理がある当然ボツだろう。
次に単純にうちで扱う薬を使えば、少なくとも精神的バッドステータスである「混乱」「至福」「恐怖」程度なら解除は簡単だ。前提としてそれが効果の及ぶ範囲でならだが。
でも話を聞く限りは「混乱」に近いけど長期間も効果が続く事からして、被害者の脳や神経事態に損傷若しくはありえない話だけど、服用者の神経伝達の阻害が起きるように
それもかなり高度な神経科学の知識を持った人物が、飲んだ対象が
こうなると専門的な知識の足り無い俺じゃ治すのは不可能だ。それこそ年単位で取り組む程の意気込みと決意がないなら、余計な事は言わぬが花だろう。
実を言うと難解な解毒を行う薬より、死者の蘇生の方が難易度的に低いと知ればどんな顔をするだろうか? とは言っても“地返しの玉”も“反魂香”も明確には薬ではない。
毒も薬もある意味似たような物で、“生きている者”にしか効果はないのだから。
どうも深く考え込むと、あまり関係のない事へも思考が飛んでしまう癖が抜けない。
沈黙が続き、喉が渇いたので手元にある既に冷めたお茶を口にしたが、本来味わう仄かな甘味と風味は消え、渋味と苦さだけを感じる。
タバサさんを見ればいつも持ち歩いている大きな杖に、祈るように額を押し付け微かに空気が漏れるように何かを呟いていた。
(……唇の動きからして「とうさま」かな? もしかするとあの杖は、お父さんか家族の誰かから贈られた、大切な物なのかもしれないな)
こんな姿を見せられては頑張ろうとは思うけど、この問題の解決に薬を通して扱った場合の困難さを思うと、他の治療案としては無茶な解決方だが、とびっきりの秘薬
だがそもそもアレは非売品だし、流石に今は使うべき時じゃない。
目頭を揉んで一度考えをリセットして背筋を伸ばす、別の面からのアプローチとその対処方を考えるなら、逆に呪術的な代物の場合を想定して言葉に出す。
「……いきなり元の精神状態に戻すってのは難しいと思う。話を聞くに取りあえずは弱っていそうな体力を取り戻して貰った方が良いかな? 健全な精神は健全な肉体に宿ると住んでいた地元では言っていた。だから逆に体が伴わないと、精神の不調も訴えるようになったりする。そう言う訳で先ずは身体の健全化から始めた方が、より患者さんの負担は少ないかも知れない」
慰めと言う訳では無いけど、単純に即出来て目に見える効果を示すならコレだろう。
実際弱っている体を健康にすれば、本人の抵抗力だってつく筈だし例え認識力が落ちていても、そのまま弱って衰弱死されるよりは遥かにマシだ。
この提案には考える余地があったのか、「あっ」と声を出して頭を上げ此方へ向けた顔には、少しばかり「その考えは無かった」的な驚きが見て取れる。
案外何か一つの事に囚われると、割と他の考えに辿り着かない事は儘在る事だ。
ようするに弱ったまま寝た切りよりは、多少動けるくらいの方が良い。
だからと言って徘徊されるのは少々困りものだが、実際介護がどの程度必要なレベルなのかどうかは分から無いけど、患者本人が自発的に何かを出来る方が脳の動きだって活発になるのだから。
多少プラスになりそうな話を聞けて、彼女から息詰まる雰囲気が解けこちらもホッと肩の力を抜く事が出来た。
「……でも、私は学院を長く離れられない。傍に付いて居たくても、できない」
ギュッと両手で握り締める杖が震えている。
薬を必要としている患者が、彼女にとって如何に大切な相手なのか、その悔しそうに語る声音に悲しみと、微かに怒りが込められているように感じた。
それほど大切な相手なのに、学院に拘るのは何か理由があるのだろうか?
余りプライベートな事には安易に踏み入りたくないが、そんな疑問が思い浮かぶ。
そのせいでただの会話だけなのに酷い罪悪感と、まるで歴戦の強者と相対しているような気分で気疲れする。まるで判決前の犯罪者の気分だ。
無性に糖分が欲しくなり、お茶請けに出していた「きな粉ねじり」を一つ口に入れるが、こんな時は上品な甘さよりもっとガツンとパンチの効いた、破壊力のある甘さが欲しい。
こんな時こそ、あの甘ったるくて炭酸の効いた飲料の出番だろう。……今ないけど。
タバサさんの様子を見れば、縋る様な弱った瞳でなく「まだ何か在るはずでしょ」と目が雄弁に語っていて、仕方なくもう一つの具体的な案を纏めてみる。
そっちは扱っている薬を提供するよりも、尚面倒な事になりそうで頭をガリガリと掻く。
まだこの地域の出現する悪魔の調査は出来て無いが、精神に係わる夢魔系の悪魔でも仲魔にして、それこそ直接精神に乗り込んで呪いの元凶を打っ潰せば済む話。
これは頭を使わないので俺好みの解決
だからどちらかと言えば前者の方が取り扱いはやたら難しく、後者の方なら幸運にも未だにPCはネットが繋がったままの状態なので、デビルオークションで条件に合った仲魔を購入(契約)する方が時間的にも短縮できて楽だろう。
ぶっちゃけて言えば、今用意できる薬を飲ませて様子を見てダメなら、場当たり的だが直接患者の所に行って出来る事をするしかない。
ただ、バスンのおっさんにはあまり出歩かない様に言われてるんだよな。
どうしてかと言えば、貴族との付き合いが面倒だと顔と名前を貸した事が原因だった。
どうもぶん投げた接待と言う名の夜会の席で、俺の顔と名前がトリステイン貴族に広まって来ているらしい。
けど昼間街で俺の顔を知る貴族に出会う確率は、ほぼ無い筈だからきっと大丈夫。
なんせ奴らはブルドンネ街の屋敷か領地の城からはあまり出歩かず、会話がしたければ昼間でも貴族の集まる専用のサロンに行くか、それこそ自慢の屋敷で茶会や夜会を開き、友人や著名な人物を招待すれば済むのだから。
細かな事は召使に任せていて、逆に招待を受け出歩く必要があれば、基本的に馬車での移動だから余計に顔を会わせる事など無いだろう。
えっ? チクトンネ街を我が物顔で歩いている貴族が居た? 確かに見かけた覚えもあるけど、夜会の席で話題にしたら嫌そうに顔を顰められた。
理由は簡単で
この話をしていた人達どんだけェ……とか思ったが、貴族にも爵位以外に目に見えない階級制度が敷かれている事を知った。
……しかし、ここまできて疑問に思う事がある。
散々症状の改善についてあれこれと思考してみたが、そもそも何故その様な薬品を誤って飲んだりしたのか? 話の流れからどうもタバサさん本人が間違って飲もうとしたらしく、それを奪った人物が
こんな子供から、そんな劇物を奪って
そんなもん父親か母親以外居る筈がないが、どう考えても不自然な話しだ。
何故投げ捨てずに自らが飲んだ? 毒だと分かった理由は? そう考えると俺の厄介センサーがビンビンに起っ立ち、キナ臭さで鼻が激しくムズムズしますよー?
あーあ、聞くんじゃ無かったかなー何て投げやりな後悔は、今更過ぎて溜息しか出ないし、此処まで関わってしまえばそれこそ毒を食らわば皿までだ。
(初めてこの地で会い、色々と親切にして貰った人がこのタバサさん。これも一つの“縁”だが、こっちに来た事に何かしら“この縁”に要因があったりするんだろうか?)
そんな風に頭の隅で考えながら、安っぽいスチールデスクの向かいに座るタバサさんを改めて見つめる。
俺の予想通りに家族が病に掛かっているのだとしたら、それはとても不幸だと思うし哀れだとも思う。
きっと今も辛く苦しく悲しんで、藁にも縋る思いでここに来たのだろう事も今迄の会話から、分からない筈がないしそこまで鈍いつもりもない。
けど、
彼女とはまだたった二回会っただけ、言うなればまだ当店の正式な御客でも無ければ、顔見知りなだけの
(うん、例え“縁”があり要因足り得たとしても、それはこの子を助ける必要性には成らない。だけど色々とぼかして俺に迷惑を掛けない様に話してくれたのは信用? それとも打算? 彼女も“特別”足り得る条件を満たしてはいる筈だ。しかし、先ず確かめなくちゃならない事がある)
「顧客になりそうな人の情報を、そう簡単に漏らさないつもりだけど一つ確認したい。これまで話した方法も踏まえ一応症状を改善する薬の
「……!!」
即座に反応し頭を上げるタバサさんだが、俺は表情を緩めず更に厳しい態度を取る。
全力で手助けをする気であるのなら、彼女の本気を此方も見せて貰わなくちゃならないからだ。
「まだ話は終わって無いよ? でだ、それを行う上で“サトミタダシ”が受ける利益と被る不利益、それが正確に提示されない限りこの話はなかった事になる。勿論店頭に出している薬なら誰にでも販売している物だから、紛い物は無いし一通り買って試しても一向に構わないよ。効果も一般的な範疇の物だからね」
マグカップに残っていたお茶を飲み干して、冷たいようだがそう告げる。
個人的に助けてあげたい気持ちは本当だが、まだ“そう思う”段階でしかない。
見た目も中身もらしくないと思われるだろうけど、これでも雇われだがサトミタダシ十二号店を預かった店長であり、利益を求めるのは当然の事だ。
ただし利益を遥かに越えるような不利益を齎す場合は、一応提携しているエネ恊との協議も必要になるので、その場合の判断はバスンさん等も交えての話し合いになるだろう。
例えリスクがあっても、それに見合うだけのリターンがあれば話は別なのだし、彼女はそれを示す手立てをきっと必ず見つけ出すに違いない。
何故なら今も黙って見つめ返す彼女の瞳は不屈の意思に輝き、“これから”の期待さえ感じさせるのだから。
今回は此処まで。楽しんで頂ければ幸いです。
誤字脱字、感想、ツッコミ等お待ちしておりますが、余り心臓が強くないのでどうぞお手柔らかに……と思いますが今回は甘んじて受けます。ガクブル。
錬金:原作ファンなら言わずと知れた便利魔法。等価交換はどこ行ったーと叫びたくなるような魔法で、石ころから金を錬成さえできる!
原作では石ころを真鍮に変えたり、空気中の水分を気化燃料油に変えたり、教室を爆破したりイメージ次第で何でも出来る素敵魔法(たぶん)。
ディテクトマジック:所謂鑑定魔法。その小宇宙を感じさせるような膨大な情報渦にリンクし、その黄金のような液体にも思える何かから、断片の欠片を経て知恵と知識を結合させ理解に及ぶ魔法。さあ一緒に唱えるのです! いあ いあ (ぶっこわれ)