【テスト】「サトミタダシ」の店員さん【お試し】   作:秋野よなか

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 更新速度が隔月になっている今日この頃、ようやっと投下致します。


最近の動向と「齎された最新の情報」

 色々な邪魔が入って(学院の先生方の手伝いで)時間は掛かったけど、漸く元ピエモンの秘薬屋で会ったあの奇妙な店主の居る店へと足を運ぶ余裕ができた。

 本当なら一人で来る予定のはずだったけど、最近妙な縁から名乗り合った同じ学院で学ぶ生徒のキュルケ、ギーシュ、モンモランシーの三人に、早朝厩舎を出る寸前で捕まり、ここまで一緒に付いて来られたのは少々誤算。

 

 私が本来王都へ向かう目的はあの(・・)瞬く間に怪我を治した“きずぐすり”の効果を見て、母様の病の治療法かそれを癒す治療薬を求めに来ているだけで、今も楽しそうに馬を走らす三人のように虚無の曜日だからと言って、遊びに繰り出しに来たわけでは無いのだから――

 

 

 王都の門近くの学院と契約している厩へと馬を預けた後、私は大切な用事があると三人へ説明し、一人でチクトンネ街へ向かおうとしたが、何を勘違いしたのかそれとも単に暇だったからなのか、やたら気合を入れて私に付いて来ると言う。

 はっきり言って迷惑だったが、口下手な私には一人だけでなく三人も上手く言いくるめる事は出来そうにないので、黙って歩く事にした。

 三人が言うには「もうタバサったら水臭いじゃない。私達四人はあの日お互い助け合った中でしょ? 久々にこうして街に来れたんだし、どうせなら一緒に楽しみましょ!」や「あなたの要件が何かは知らないけど、私は最近噂の商会(・・・・・・)から商品を仕入れていると言う秘薬屋の品揃えを覗いてみたいだけよ」に「ぼくはきみたち可憐な華の行く場所なら、どこへだって喜んで付いていくさ!」と、最後は言い分ですらない返事をされ好きにさせる事にする。

 ……決して面倒になったから放置したわけではない。

 

 暫くぶりに見るあの変じ……もとい店主は、相変わらず飾り気のない風変わりな白い衣装で店先を箒で掃除をしていた。

 わざわざ店主自らが行う仕事とは思えない。

 あれから結構な日数が経ったのに他に下働きをする者を雇ったりはしないのだろうか? 思わず首を傾げるが取り扱う品の事を思い出し、ただの平民を雇って貴重な薬品を扱わせたり、一から仕事を教え込んで働かせるのは難しいかと一人頷いていると、以前と変わらないのんびりとした挨拶と同時に要件を聞いて来た。

 

 この地区に存在する店だけでなく、杖を持ちマントを羽織る貴族に対しこんな対応をする平民は居ない。大抵は最初に御機嫌伺いから始まり、最近の景気や噂話などの話題に混ぜて商品を勧めながら、その会話の間にそれとなく(・・・・・)客が求めている品を割り出す。

 それが例え数百年続くような老舗の大商会だろうと変わらぬ対応であり、それほど貴族の象徴(魔法と権力)は無視できない要因だからだ。

 それにも関わらず、こちらを全く気負いもせず飄々と相手をしていられるのは、やはり東方の出身だとしてもこの男はメイジ若しくはマントをしていなくとも貴族に連なる側の人間だろう事は外れていないはず。

 この店主も私と同じように秘密を抱えトリステインへ潜入している人間として、ガリア本国の思惑とは無縁の存在だと言う事はこの時点で確信している。

 だからこそ私は思い切って母様の事を相談しようと口を開いた。

 

 店主はこちらの意を汲んでくれたようで、早々に店の中や品揃えに注目していたキュルケ達とは別の部屋へ案内され、本題に入る事となったが先程までとは打って変わって雰囲気が変わり、話が進むにつれ同じ人間だとは思えない程の圧迫感を受け始め、私は本当に薬屋に来たのかそれとも火竜山脈にあるドラゴンの巣へと迷い込んでしまったのか、困惑と同時に軽い眩暈を覚える。

 何とかそれに耐えながら話す短い内容から、店主は母様が陥っている症状の改善やその原因となった薬物に対する具体的な策までをも次々と語りだし、その細部に渡るまでの理解の深さと見識に圧倒され思わず舌を巻く。

 

 学院に通い出してから図書館にある書物を調べたり、教員に話を聞いて貰うのに手伝いをしながら食い下がった時間は何だったのかと、必ず母様を助けると誓った自分の不甲斐無さを痛感しながら、もっと早くこの店主に出会っていたかったと杖を握る手に力が籠る。

 

 そうして母様の病を治せる薬やそれ以外の治療案も、どちらも用意できると答えが出揃い父様の亡くなったあの日から、私の目の前を塞いでいた霧が晴れたと思った所で店主は豹変した。

 今迄に語った私の思いや願いなどまるで知らぬとばかりに、店主は私にまだ隠している事が在り、店が享受するだろう利益と不利益を述べよと迫ってくる。

 更にはそれを両天秤に掛け、その軽重をまるで“ただの錘”のように計ろうとする様は、ガリア王国北花壇警護騎士団所属『七号』として受けた、言外に「死ね」と言われているような任務で屠ってきた何者よりも濃厚に、バケモノ(・・・・)だと感じさせる程の威圧感を放ち始めていた。

 

 しかも何故か私の脳裏には“無能王”と呼ばれている、父様の仇でもある現ガリア王であり血の繋がった叔父でもある、ジョゼフその人と重なり私を酷く混乱させる。

 机一つ隔てた先から漂ってくる濃密な気配は、メイジとは言えただの一介の薬屋の店主が放てるようなモノではなかったのだから。

 

 そうして私はまるで操られるかの如く、店主に思いの全てを語る。

 突然父様が亡くなったと告げられ、それを確認する間もなく母様と一緒に暗殺を防ぐためと言われ宮殿内の一室に閉じ込められた後、出された食事に混ぜられた毒を私の代わりに母様が受ける破目になり、母様を守り私が生き残る為北花壇警護騎士団所属『七号』とならざるをえなかった事情も一切隠す事無く話す。

 私が渡せる利益と言う面では、父様の仇を討ち王位継承権を得た私なら報酬は望むままに支払う事が出来るし、今迄培ってきた戦いの経験を活かせば店主の護衛だってできると説明し、不利益に関しては最悪“ガリア”が敵に回る事は言うまでもないだろう。

 そんな利益と不利益の大きさの一切合切を開き直って言ってしまうと、何だかとてもすっきりした気がする。

 

 胸に秘めていた想いの全てを語り終えた時、机を挟んだ反対側で話を黙って聞いていた店主は頭を抱えて唸っていた。一個人や一商会が如何にか出来る範疇を超えているのが、話した私でさえ分かっているのでそうなるのも当然だとは思うが、先程感じた威圧感が何時の間にか消えていて、そうやって人並みに悩んでいる店主の姿はとても意外に感じる。

 それでもどんな返事が来るかと覚悟を決めて、店主が口を開くのを待っているととんでもない事が起きた。

 

 私と店主が話していた部屋の扉が突然開く音が耳に聞こえた途端、店主が目を見開いて驚いた顔を見せた後何事か叫んだと同時に、目で追うのがやっとの動きで懐から銃らしき物を出した様に見えた瞬間、私の耳が正常なら確かに銃声が連続して四回鳴った(・・・・・)としか思えない。

 避けようと意識したのは撃たれた後で、間に合いはしなかったけど反射的に体が動き倒れるようにして床に身を投げ出したが、痛みが襲って来ないので当然当たらなかったのは理解出来ても、起きた出来事には納得出来ず頭がその事を拒否していた。

 何故なら起き上がって扉の向こうを見れば、倒れていたのはつい先程銃を素早く抜きそちらへ連射した店主と瓜二つの人物だったのだから。

 

 だが見知らぬ第三の人物が現れ私の抱いた疑問を打ち消す。

 その始めて見る店主よりも更に年を経た、初老にはまだ早いが“病人にも見える顔”とでも形容できそうな男性が呟いた中の“物真似”、“人形”、“身代わり”、その言葉(ヒント)が、私の記憶を呼び出す引き金(トリガ―)となりよく知る男(・・・・・)の“趣味(遊び)”を連想させ、忌々しいがその疑問の答えを紡ぎ出したのだ。

 

「……“スキルニル”」

 

 それから起きた事と言えば銃声を聞きつけて、私を心配したらしいキュルケが死体に見えたスキルニルに仰天し、それまで漂っていた陰謀めいた何処か息苦しさを感じさせる雰囲気を払拭し、ちょっとした清涼剤に成ったのは思ってもみなかった嬉しい誤算であり、この短時間で起きた出来事に対して考える心の余裕と時間が多少なりともできた事は、本当に感謝しても足りないくらいだと思った。

 

 先ずあの店主が使った銃の性能はどう考えても異常でおかしい。

 通常なら銃を懐なんかで常時発射できる状態で持ち歩くのは危険であるし、更に一度弾を発射させた銃は通常、弾の再装填が必要で、銃の前方から弾と一緒に装薬を入れ押し込んだ後、火皿に点火薬を入れる必要がある上に不発も割と起こり易く、絶対に連続して弾を発射など出来るはずがないのだ。

 一度に沢山の弾を発射する銃は試作段階だと噂に聞いた覚えがあるが、それには当てはまりはしない事は、聞こえた発砲音の数と風の流れから分かる。

 

 仮に何らかの要因で既存の技術で連発出来たとしても、不発以上に適切な量の装薬の装填が難しく、結果的に銃身内の装薬量の増加が起こり暴発の危険性が高まるので、連射などしようものなら銃身が破裂し良くて脱臼、悪いと失明し腕や顔などに重傷を負うのが山々で、数を揃えてこそ運用できる魔法の使えない平民用の唯一武器でしかないのが今迄の常識だった。

 

 だからこそ、今迄のその常識を簡単に覆してしまうような物を次々と取り出す店主に、私は嫉妬と言い知れぬ怒りを覚える。

 魔法の使えぬ平民の武器(玩具)でしかなかった銃が、あんな発射速度で連射まで出来るようになれば、魔法使い(貴族)としての価値や矜持まで下がるとは言わないが戦場の主力だったはずの魔法と携帯兵器の拮抗が狂い、もしかしなくとも“魔法使い相手に平民が勝てる”と思わせてしまう(・・・・・・・)ような“牙に成りえる”事に、この店主は気付いているのだろうか? いや、当然気が付いていてやっているに違いないのだ。

 私はそんな東方よりこの地に訪れ、大人しく薬屋を営んでいる店主とこの店(サトミタダシ)に対し途轍もない不気味さを抱いた。

 

 更に店主の知人らしい「バスン」と呼んでいた顔色の悪い痩せた中年男性。

 あんな血まで流し死体に見える精巧なスキルニルを、聞き間違いでなければあの男は“偏在と合体(・・)させて作った”と言ったのだ。

 どうやって魔法で生み出した“現象”と、スキルニルと言う“物体”を合体(・・)させたと言うのだろう? 魔法先進国でもあるガリア本国に居た時でさえ、そんな不可思議な魔法技術は文献でも見た事が無ければ、信憑性の薄い噂にでさえ聞いた覚えなど無い。

 

 先の件の銃の事も含めて思う私の考えを述べるとすれば、店主達の出身地らしい東方の技術力と言うのはガリアだけでなく、他の四国を魔法でも兵器でも凌駕する凄まじい“軍事国家”なのではないだろうか? つまり、私があの店主に伝えた利益と不利益も少しくらい人並みに悩みはしても、背後に軍事国家が控える彼ら(サトミタダシ)には大した問題では無いのかも知れない。

 そう考えた途端先程まで抱いた怖さも消えさり、一歩以上先を行く魔法技術の高さをこの目にした事で、改めて母様のご病気も治ると確信できるだけの術と力を共に有して居るのだと知る事が出来た。

 

 今の私の心境を例えるなら、目の前に在ったはずの煩わしい霧が一気に消え去り晴れ渡った草原に佇むような錯覚さえも覚える。

 

 なんて体が軽い。

 こんな幸せな気持ちに浸れる時が来るなんて、今迄少しだって思いもしなかった。

 私の脳裏に全てを打ち払う希望の言葉が思い浮かんだ。

 

 そう、もう何も恐くないと━━━!

 

 

 

 

「タバサ、ねえタバサったら! やだもう、この子ったらすっかりトリップしちゃって、毎回あれ程本ばかり読んで睡眠時間を削っちゃダメよって言っていたのに本当しょうのない子ね。 まあ、タバサは取りあえずよしとして、さっきの銃声と死体に見えるあなたの人形とあなた方二人、何がどうなっているのか勿論聞かせて頂けるわよね?」

 

「それ、本当に今言わなきゃダメですか? ちょーっと、いや、かなーり面倒な事になりそうでしてね。タバサさんの友人でもある君らを余り巻き込みたくは無いんだけ……あ、何となく分かったから皆まで言わなくていいです。うん、そうか君はそう言う子なのか余計に困ったなぁ」

 

 先程俺とバスンさんに話しを聞かせろと軽く睨んだキュルケさんは、今では打って変わってまるで夜会を楽しみにしている淑女のような軽やかな笑みを浮かべ、その紅玉のような眩い瞳には猫が楽しい遊び道具(ねずみ)を見つけたような輝きを放っている。

 全く、今の会話から危険を感じ取ると気怠そうな雰囲気を払拭するくらい生き生きとし出すなんて、随分と厄介な子だなぁ。

 髪の色からして燃えるような紅髪は、おそらく火属性の魔法を得意とするのだろうけど性格がまんま反映されて流石は貴族さまってところかね?

 そりゃ確かに危険に目を輝かす訳だ、火事と喧嘩は江戸の花ってか?

 

 横俺そっくりの死体人形を抱えたまま、楽しそうにニヤニヤしているバスンさんへどうにか出来ないか目線を送るが、逆にウィンクで返してきやがった。

 肌色の冴えない中年男のウィンク何て飛ばさないで欲しい。そんなのはジェシカの所の店主であるスカロンさんだけで許容量いっぱいだっつーの! いや本当にマジで勘弁して。

 そう言えばドリ……じゃなくてモンモランシーさんとフリルシャツことギーシュ君の二人は一緒じゃ無く見当たら無いけど、どうしたんだろ?

 

「あっ、そうそうさっきの部屋の額縁の中に居た絵の中で動く猫と鼠は何方の使い魔なの? 随分と騒がしいみたいだけどあの寸劇と一緒に流れていた音楽は中々だし、あの動きを人に置き替えても面白いかもしれないわ。それとあの絵からは魔力を全然感じないし、どう言った仕組みなのかしら? あたしにそっと教えて下さらない?」

 

「あー、あの仕組みと言うかその件に関しては、今直ぐには答えられないのですが、そんな事よりもキュルケさん、残りの御二方はどこに?」

 

「えっ、ああ、あの二人ならさっきの銃声を聞いてギーシュが格好つけて行く行かない、危険だから君を前にして出る出さないって、モンモランシーとドアの前で見つめ合って二人の世界を作り始めて悲壮感漂わせていたから、ああなったトリステイン貴族の相手をするのって、はっきりいって面倒だしそのまま置いて来たわ」

 

 秘密を知りたがる時の甘えた声とは違ってトーンを落とし、あっけらかんとした風に手の平を広げお手上げ状態だと肩を竦めるキュルケさん……いや、もう敬称はいらんな。キュルケはお道化た調子で苦笑いのまま部屋の中での様子を話す。

 確かにそんな状況でなら親友であるタバサを心配した彼女であれば、構うのも時間の無駄だと感じてさっさと飛び出してきたのも頷けるが、銃声を聞いても大した脅威に思って無いように見受けられるのは、育った文化故なのだろう。

 どちらにせよ魔法至上主義ってのも、科学至上主義と同じくらい性質が悪いよな。

 やっぱり何であれ何かに偏り過ぎってのは宜しくない。

 ほら食べ過ぎ飲み過ぎは、成人病の元ってよく言うだろ?

 

「こちらの美しい女性とご歓談の所非常に申し訳ないのですが、少し宜しいですかな? まだ他にも御客人が居るご様子ですし、よろしければこの辺で一度昼食にされて時間を頂いてはどうですかな? 私共も代表へお話ししたい要件も御座いますれば如何でしょう?」

 

「おっと、もうそんな時間になっていたんだ。なら二人とも昼食にご招待してもいいかな? 別の部屋へ案内するから残ったあの二人も呼んできて貰えると嬉しいんだが、どうだろう頼まれて貰えるかい?」

 

「急いで呼んで来る。大丈夫、何が在っても連れて来る」

 

「タバサ! やっとこっちに帰って来たのねって、返事も待たないで走らないで! 男性から食事に招待されたのが嬉しいからって、走り出すのはいくらなんでもちょっとはしたないわよっ!」

 

 昼食と言う言葉に反応して再起動したのか、キュルケの言う様に途中から微動だにもしていなかったタバサの瞳に力が宿り、滑らかに喋りだしたかと思うと猛然と走り出しギーシュやモンモランシーを置いて来た部屋へと突撃を慣行して行った。

 キュルケの話じゃ部屋のドアの傍で二人揃ってロマンスしていたそうだけど、大丈「ああっ! ギーシュ! そんな私を庇って!」……夫じゃ無かったようだ。哀れギーシュ君の事は忘れない。

 

「えっと……それで、バスンさんの話っていったい何ですか?」

 

「あの、代表? 御客人を放って置いて、本当に大丈夫なのですかな? 今聞こえた鈍い衝突音と何方かの名を呼ぶ悲壮な女性の声からして、私共より先に向かうべきではありませんか? そう急ぐ話ではありませぬが憂いが在っては話に専念し難いでしょうし」

 

 今回ばかりは流石のバスンさんもいつもの何か含んだ笑みではなく、純粋に相手を心配するような気配が感じられたのだが、ギーシュ死んでないよね? まあそうなった所で治せるけどさ(反魂香の治験)

 

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 それからギーシュの治療をしたり(死んではいなかった)、日本の食材をふんだんに使って昼食は和風で統一しトリステイン風に味を少々濃い目にして提供した所、評判は上々で学院の料理長の味に負けてないと嬉しい評価を頂けた。尤も調理をしたのは俺では無く仲魔の妖精シルキーが全て作ってくれたものである。俺が作れる料理なんて高が知れてるしな。

 

 皆が食事をしている間にタバサの身の上と母親の状況、仮に彼女に手助け及び援助を行った際の利益不利益等を相談すると、バスンさんから最近のガリア本国は空の上に浮かんでいるアルビオン王国で、今までに類を見ない様な盛大なパーティを行う予定らしく、その準備のために年単位で現地貴族とトリステイン貴族の中から適格な人物を選び、しかも主催を勤めるブリミル教の司教は二国の王族にはサプライズで進めているパーティなので、ガリアも支援してはいても陰でこっそりと資金や物資の提供だけを、行っているのだと言う話を聞けた。

 タバサの所属する騎士団はどうなのか聞いてみると、どちらかと言うと北花壇警護騎士団は表では無く裏に属するものの様で、残念ながら噂程度の情報しか知ら無いそうだ。

 

 しかし、その盛大なパーティとやらの名前が題して「レコン・キスタ」だと聞いて何処かで聞いた覚えがあるなと首を傾げる。

 あれ?……それってパーティの表題じゃ無くて、再制服運動じゃなかったっけ? 確か今のスペインだかで昔起きたっていう。

 顎に手を置きながら首を傾げ、笑みを湛えニヤニヤした表情のバスンさんは答えを知ってて生徒の悩む姿を眺める先生そのもので実に怪しいと睨む。

 だいたい統治体制からして王権がそれなりに強いのに、その王族にサプライズで進めるパーティの準備だなんて怪し過ぎて余計に疑えって言っているようなもんだ。

 

「で、バスンさんはそんな事を俺に話してどうすれと? 確かに先にガリアの事を話しに出して相談したのは俺ですけど、だからと言って今聞かされた内容じゃどう考えたって一薬局の店主には手に余るってもんでしょ? それにいつまでその死体人形を転がしておくのさ? 直せるならさっさと治してよ。俺と同じ顔したものが血濡れで死んでるって気味悪いしバスンさんがやらないなら、俺の方でやっちゃうよ?」

 

「これは失礼しました。実は仮初の肉体の崩壊が起きるのか時間を計っていたのですが、この様に消えず残ったままです。……代表も先程仲魔を召喚してもう既にお気付きだとは思いますが、この土地に住む者がハルケギニアと呼んでおりますこの異界では、一度召喚した後の悪魔の維持だけではMAGを一切消費しません」

 

「あー、やっぱりそうなんだ? 異様に維持費がかからないなと思ったら、そもそも維持費が要ら無いほどこの異界は、ある意味魔界に近いくらいに魔力が溢れる場所って訳か。通りでうちの会員になった魔法の使えない平民でさえMAGを異様に持って居たり、生れつき魔法の使えるメイジが沢山生まれるのもそう言った訳だとすれば納得だな」

 

「それだけでは御座いませぬ。嘗て地上に居た幻獣や魔獣に亜人が人間と等しく生態系の中に組み込まれて存在して居りますので、ここハルケギニアでは他に存在する異界のように、魔界の本体から分かれた同位体ではなく個を完全に確立した存在として生殖によって生きているのですっ!」

 

「おおっ! ……あれ? だけどそれってつまりは究極にまで育て上げないと、経験と力の継承もそれ程大した事が無いから、ぽこぽこ数が生まれても逆にあまり強い個体って出来上がらなく無いか?」

 

「……本来喜ばしき事を言った私めの心算を、まさかその様な考えで貶めるとは流石は我等が代表ですな。単に純粋な見解を述べたのでしょうが、そう言った面が全くぶれて無い事は非常に頼もしい限りで御座います」

 

 まあ、本社にはこっちの業者から買い取った生のマンドラゴラとか、サラマンダーの尻尾や、水精霊の秘薬やら様々な過去に失われたはずの沢山の種類の素材を送って、代わりに向こうからも商品を送って貰いそのおかげで実はサトミタダシ三十六号店支社は、こっちにきて凄まじく業績を伸ばしているから別に問題はないのだけどそれを聞いちゃうと何だかなぁ。

 偶然この異界に来れた事とエネ恊と提携を結べたからこその売上だから「いやー俺って頑張ってるなー」とは思えないんで、不満って訳じゃ無いけど何か素直に喜べないんだわ。

 

 確かに儲けちゃいるけど単に仲介してるだけだから、余計に実感が湧かないのよ。

 

 だからこっちで親切にして貰いまた助けを必要とした人には、バスンさん方と協力してそれなりに支援しようとは思っていたんだけど、まさか国を相手取る程の問題にぶち当たるなんて考えもしなかった。

 だけどこう周りで何度もガリアの名前が引っ掛かるとなれば、裏で何かやってるらしいパーティを含めて、これまでの経験上立ち塞がる壁になりそうな嫌な予感が今更ながらひしひしと感じ始めたよ。

 

 




 今回は此処まで。楽しんで頂ければ幸いです。
 誤字脱字、感想、ツッコミ等お待ちしておりますが、余り心臓が強くないのでどうぞお手柔らかに……。

 自分で独自に動いてないのに儲けが出ているので、余計働いてないと感じ始めた矢先に給料明細を見て焦るどうにも貧乏性な主人公。
 せめて還元しようと素材を卸す行商人への支援とか色々と始めているのだけど、それが余計儲けを増やすスパイラルハリケーン状態に陥る。
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