たくさん感想にもいただきました。
(笑)と(本物)の邂逅です。
今回、一つ下手な掛詞を入れてみました。分かってくれると、大変嬉しいです。(謙遜なしに下手です、てか、恥ずかしい)
まるで、狙いすましたかのようなタイミングで、夏目が目を冷ます。ただ、身体中に張られた呪符のせいで身動きは取れないようだ。だから、出せるのは大声で叫ぶことぐらいだった
「避けて!春虎くん!」
普段は一応おしとやかにしている彼女が、さらに、昔の呼び方に戻ってまで、叫んだのは、春虎が入ってきた瞬間その上から飛び降りてきた、大きな鬼を見たせいだった。隣の男はニヤリ
「もう遅い、やってしまえ角行鬼!」
男は、しっかりと鬼がその男を潰したのを確認すると、高笑いした
「あははは、所詮、天才などといってもそれは、学生レベル、プロに叶うわけないでしょう!」
男が見たということは、それ以上に注視していた夏目も見たわけで、それゆえに、ダメージは大きかった。
自分を助けに来てくれたのに、自分のせいで、またまきこんでしまった
私のせいで、私が夜光の生まれ変わりなんかになるからっ
春虎くん、春虎くん、やだよぉ、置いてかないでよぉ
「置いてなんか行くかよ、ばーか」
瞬間、青い炎が辺りを包む、さらに、突然の浮遊感、まるで、空を飛んでるような感覚に陥る。
あの声……そして、ハッとする。
「は、春虎くんっ!?」
でもなんでっ?という叫びは押さえつけられた手によって遮られた。そのせいで逆に冷静になった夏目はいつの間にか自由になったからだを捻って、自分のこしを抱いて運んでいる主を見る。
そこには、懐かしい顔、何年も何年も隣で見てきた、大好きな顔
「春虎くん」
今度のは、叫び声ではなく、涙声だった。それに、気づいた春虎は、ニカッと笑って動かしていた、足を止めると体の向きを走ってきていたほうに向けた。
「でも、どうして、確かに私は…… 」
そう、私は、見た。という夏目。対する春虎は、うーん、とほんの少し唸ると、視線を前に向けたまま答えた
「マジシャンとかがよく使う視線誘導って、隠行と相性いいんだ」
夏目はよくわからずポカーンとするが、春虎は、またあとで、と付け加えた。
春虎がやったのは、実に単純なことだった。
部屋に入る直前自らの前に自分そっくりの簡易式を作り出す。そうして、部屋に入ると、当然そちらに自然と注意が向く、その後ろに隠れ、しかも、隠行を使うというのは、絶妙に相性がよく。さらに、敵のいるかもしれない部屋に入るとき、夜光に取っては、定石のようなものだった。
そこからはもっと簡単。悦に入った男の無意識に隠行で入り込み夏目の元に到着。コンの狐火を撒き散らして走って逃げた。ただそれだけだ。だから、春虎が、
「プロなんてこんなものか」
と呟くのも、それを聞いた男がさらに、狂乱状態に陥るのも仕方のないことだろう。
突如として炎が襲ってきて、夏目がいなくなったことで、混乱していた男も春虎の台詞を聞いて、逆に冷静さを取り戻した。
「改めまして、北辰王、自己紹介させていただきます。私、あなた様にお仕えするために生まれ変わりました」
そこで春虎は、妙な悪寒を覚える。そして、思い出す、あの男があの鬼を角行鬼とよんだのを。そして、生まれ変わった、お仕えるする………………
瞬間、背後から怒気、霊気でなく怒気がそこらの鬼の鬼気を悠々と押さえつけられるほどに溢れ出す。主と同様、その男がなんと言おうとしているのか察したからだ。
飛車丸にとって、その名と夜光に、今は春虎に仕えるというのは、使命であり、誇りであり、生きる意味である。それを、穢されたのだ。春虎もそれは分かっていたが、ここでは、情報を得るためにと無理矢理押さえつける。
飛車丸は、怒気をそのままに春虎の斜め後ろに控えた。だが、男は、怒気に気づかない。
格上の剣客のその力量に気付けないのと同じように、次元を越えた怒気ということなのだろうか。
はたまた、男が興奮しているせいなのか。
真実を知るのは、春虎のみである。
「私が、飛車丸。そして、彼が角行鬼です。はじめまして、いえ、こう言うのが正しいですね。お久しぶりです、北辰王」
強まる怒気、気づかずに続ける飛車丸(笑)
「ああ、そんな怯えた顔をして、いかがなされたのですか。やはりまだ、記憶を取り戻してはいないのですね」
(とりもどしてるよ)
春虎の心の声は、誰にも聞こえない
「そして、その男が邪魔なのですね、そうです、ええ、そうにきまっています。あなた様がそんな男を式神、式神などとっ!あなた様に相応しいのはなかったこの飛車丸の生まれ変わりたる、わたくしと、彼だけです。ですが、言葉だけでは、足りないでしょう。ただ今、そこの男を消して差し上げます。北辰王、しばしばお待ちを」
その物言いに僅かながら違和感を覚える。夏目は、その男のイカれた目と語りに気圧されてなにも言えなくなっている。おそらくは春虎が入ってきたと同時に閉じられた扉が結界で管理されていて、逃げることが出来ないということもその原因のひとつである。
春虎にとって、それは、全透性をもつ膜に等しいとしても、だ。
そして春虎は、その理由にいたる
(……操られている?しかも、かなり巧妙に。何日何時間とかけてゆっくりと )
アイコンタクトで後ろの式に確認すると、相手からも似たような返事がかえってきた。二人はこういうことが好きそうな人を、というか
人のような人でなし
を知っていた。
そのせいで、これから始まることにさらにうんざりしてきた春虎だが、しっかりと気を引き締め直した。
男が動き出す。
駄々をこねる子供のように呪符を投げまくる。春虎の目は、ちゃんと、その術式ぐちゃぐちゃであることを見抜いていた。が、しかし、逆に今回はそれが功を奏す。
ぐちゃぐちゃな呪術がそれぞれ暴発しあい、まるで、粉塵爆発のように、瞬く間にそこらじゅうで 爆発がおきる。自らは、角行鬼(笑)の頑丈な体を盾にして、凌いでいた。
これは角行鬼だから可能なのであって、人間なら、たとえ護符を使っても簡単は凌げるものではない。そう思っていた、この男は。
果たして、爆発の煙が晴れたところを角行鬼影から体を出し、見ると、五体満足、全く無傷の二人が現れた。少年のほう、春虎は、その口を大きく歪ませながら
「コン、夏目を連れて離れろ」
「ですが、先程も申し上げましたように」
なぜか、戦闘中はどもりがなくなるコンは、先程も主の役に立てなかったことに不満を持っており、今回こそと意気込んでいた、さらに、不愉快なことが有りすぎてどうしても手伝いたかった。
それを見越していた春虎は、コンが全て言い終わる前にその耳元に顔を近づけ何事か呟いた。
直後、その真っ白な雪化粧のような肌が真っ赤に染まる。恥ずかしいのか嬉しいのか、はたまた、全く違う感情なのか。それは、その喜色満面、押さえつけられない喜びが表に出てきてしまっている顔を見れば一目瞭然だった。
そこからのコンの動きは早い。
夏目の男子用制服の首根っこを掴んだかと思うと、宙を飛び、春虎から、離れていった。
読んでいただいてありがとうございます。
評価、感想。その他もろもろ、どうぞよしなに
次で、二章、原作二巻の文は終わりです。これは、真実です。呪術の真髄ではありません