東京レイヴンズ~俺の名は土御門夜光~   作:ぶるーちーづ

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青春シーンはやりたい!いや、是非やりたい、ただ…………上手く描写する自信が……


この調子なら三巻なら……鈴かに会いたいな
ということで、もうそろそろ鏡くんが来るかな?


たくさんの感想ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いします。


修祓

 

 

進級試験前夜

 

 

 

あの事件の後、夏目が「式神は、主のそばにいるべきだ、それを再認識した!」などと騒ぎ立て突然男子寮しかも春虎の隣の部屋に住まいを移すことになって以来、春虎、冬児、夏目の三人は夜に春虎の部屋で集まるのが日課となっていた。

 

それは、試験を明日に控える今夜も変わることがなかった。

 

「冬児どうしたんだ?」

 

いつもと様子が少し違う冬児――とはいってもほんのわずかではあったが――に気づいた春虎が冬児に尋ねることから今回は始まった。

 

「いや、話そうか話すまいか迷ってたことがあったんだが、まぁどーせわかることだしいいか」

「ん? なんだい急に改まって」

「実はな、俺だけ明日の実技の内容を教えてもらったんだ」

 

「「はぁ?」」

 

春虎と夏目が同じタイミングで同じように白い目を向けて言った。冬児も言葉足らずだったことを分かっていたのか、気にせずに続ける。

 

「まぁ俺の体質に関わることだったんだが」

「体質……? 確か霊災がなんたらとか?」

「そういえば、詳しくは夏目には教えてなかったな」

「で、それが、なんで関係してくるんだ?」

「そりゃ明日は、霊災の修祓をするらしいからよ、疑似だけどな」

 

 

「それは……大丈夫なのか?」

「あぁおまえのおやっさんからも許可は得たらしい」

「そうか、なら――――」

「ちょっとまって、ぼ、僕を置いていかないでくれるか!?」

 

あまりにもスラスラと二人が話していくのでなかなか入り込めなかったが、気を取り直してようやく夏目が割って入ってきた。

 

「あーすまん夏目」

「全くですよ、春虎君はいつもそうなんですから」

「地が出てるぞ」

「春虎君の部屋の中はいいんですっ」

「いいのかよ」

 

 

呆れたような二人に何処か誇らしげにない胸を張る夏目の、で結局なんなんですか?という質問に、二人は顔を合わせると冬児の体について説明し始めた。

 

 

明日を迎えればちょうど2年前、『上巳の大祓』と呼ばれる大規模な呪術テロが起こった。いや、起こされたが正しい。

 

御霊部部長『導師《プロフェッサー》』の異名を持つ大連寺至道が自らになにかを降ろしたことによりなされた、史上初の呪術テロリズムだった。

 

たまたまそこの近くに居合わせた冬児がたまたまその霊災に巻き込まれ、そして、憑かれた。

 

夏目も既知であろうが、説明しやすかったので始めから説明し、終わったところで、それまで堅かった雰囲気も

 

「いやぁ鬼に成りたいとは思ってたが、まさか、マジもんの鬼に会うとは思わなかった」

 

という一言で和んでしまった。土御門の末裔である夏目だからこそ驚かなかったのであって、他の人なら生成りしかも、鬼の、生成りとあれば、怖がられるに違いない。

 

そういう思惑があってこれまで黙っていたが、夏目ならあるいは……とのことで案の定大丈夫だったというわけだ。

 

冬児は、大丈夫だ。と言うが、春虎だけが隠れて鋭い目付きをしていた。

 

冬児を、「視て」気づいたからだ。冬児は、今でも定期的に検診をしているが、前回の検査を終えて真面目に「視た」のは、今日が初めてだった。

 

それ故に、封印が緩くなっていることにたった今気づいたのだ。

 

仮にフェーズ2、ましてや、フェーズ3に移行したなら間違いなく冬児は耐えられない、過去の経験と天才的な呪的センスによって春虎はそれを見抜いていた。

 

その日はそれから少し雑談した後、各々の部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眼下には、東京の町が広がっている。別段懐かしくも思い入れもない。ましてや、戻ってくるとすら思っていなかった。あの日――すでに12時を回っているためちょうど2年前となる――俺は初めて本能的な恐怖を感じた。

 

霊災となると、たとえそれが小さなものだとしても、脳裏にあの映像がフラッシュバックされる。明日のことを考えるとなかなか眠れないのであった。

 

夕刻なら、黄昏ていると言って良いような格好で外を眺めていた冬児に、突然後ろから声がかかる。それと同時に黒い物体が飛んできた。

 

「眠れないのか?」

 

春虎だった。黒いのは缶コーヒーだった。無論あったかぁ~いだ。

 

「お前こそ、緊張してんのか?」

「バカも休み休み言えっての」

「っふ、素人が大きく出たもんだ」

「お前が言うなっての」

 

そこから、たったの二言三言交わして春虎は出ていってしまった。おおよそ明日の件でフォローしにでも来たのだろう。ついさっき、親父の方にも同じことをされた。思わず冬児は苦笑いする。

 

「全く、フォローするタイミングがそっくりだぜ」

 

そういった冬児の顔は、何処か嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしっいいわ。その調子よ」

 

京子の声が響く。たった今、生徒による修祓が行われている。

 

そもそも、霊災修祓には、二通りの手段がある。

 

一つは、今まさに彼らがやっていることだ。霊災を、結界で隔離し、その上で霊気の偏向を分析、それを是正するように働きかける。

 

そして、もう一つは、偏った霊気を丸ごとより強い呪力で散らしてしまうことだ。

 

春虎のクラスでは生徒を二手に分けることで片方が結界を、もう片方が霊気の偏向を是正すべく呪術を行使していた。

 

春虎は後者に属していたが、片手間に、結界を、手伝っていたのは言うまでもなく、そうでなければここまでスムーズに修祓がおこなわれることはなかっただろう。現に現在ほとんど修祓が、完了している。

 

事情により先生側にいる夏目を含め、教師陣はその手際のよさに感心していた。京子の手腕であることを誰もが信じており、春虎の力にはだれも気づいていなかった。

 

「冬児は大丈夫なの? あんた霊災に被災したことあるんでしょ?」

 

「ああ、完璧に制御できてる」

 

修祓中でも回りに気を配り、全体をリードしていることが、それの一因であると言わざるを得ないが、先程の冬児と京子のやり取りは、噛み合っているようで噛み合ってはいなかった。

 

陰陽塾の塾生といえど、濃密な瘴気の前では無防備にも等しい。天馬を含め、少なくない人数が吐き気を我慢したり、立ちくらみをこらえながら術を使っていた。実際に倒れたものもいる。

 

いくら、フェーズ1の擬似霊災といえども簡単ではないということだ。

 

そして、ある程度大丈夫だと、見切り、春虎が補助をやめたその瞬間だった。

 

「……あれ? おい、なんかへんじゃないか」

「お、おかしいわよ、これ…………霊気が強くなってる?」

 

生徒の中から、そんな言葉が飛んできた。

 

(見誤ったか…………いや、これは……霊脈か!)

 

一度は、間違えたものの、その尋常でない変化に春虎はすぐに気づく。それを裏付けるように、地面のタイルから、先程よりもより強く霊気が吹き出し始めた。

 

 

そのせいで、一部の生徒が気を失ったりして、身動きがとれない状態にある。

 

「先生!!」

 

叫んだのは京子だった。それに応えるように、教員、藤原も指示を飛ばす

 

「教師は結界の強化を、生徒の安全を第一に。倉橋、君は祓魔局の緊急コールセンターに連絡してくれ」

 

それからは、さすが陰陽塾の教師陣。素早い動きで、霊災を囲み生徒を救出した。しかし、更なる問題が発生する。

 

「冬児!? しっかりしろ!」

 

教師陣と共に遠くにいた夏目が一人うずくまっている生徒を見つけ叫んだ。

 

春虎も思わず舌打ちして、冬児のもとに向かう。

 

「冬児……どうだ?」

「まだ……保つ……が、余裕はねぇ」

 

春虎も「視て」確認する。確かに余裕は無さそうだ。ここでどうにかする手段はある……が、ここまで大勢だと少し渋られた。それに春虎は、こっちに向かってくるより大きな気配をつかんでいた。

 

 

教師陣と、彼らに協力を仰がれ、北斗を召喚し手伝った夏目たちが修祓を、終えると、今まであった緊張感が、糸が切れたように緩くなった。ただ、3人を一人を除いて。

 

「みんな、離れろっ! いますぐにだ!」

 

声は下を向いてる冬児からだった。春虎のもとには、危険を察知したコンがすでにその姿を現している。

 

その直後、彼らの足元に影が落ち、通りすぎた。

 

次の瞬間、北斗による修祓で大きく削れた霊災跡に、ドシャリと音をたてて『それ』は着地した。

 

「フェ、フェーズ3……なぜ?」

 

その声は誰のものだったか、そんなことを聞く余裕すらみんなにはなかった。それは、急に口を裂けんばかりに開くと凄まじい雄叫びを放つ。

 

ギュワァーーーーーー!

 

 

それに乗せられた霊気に、ほとんどの塾生が耐えられず吹き飛ばされる。優秀なはずの教師陣でさえ立っているのがやっとだった。そんな中でも、春虎の頭は冷静だった。

 

「春虎様、こやつもしや……」

「あぁ、何か恐れてるな。手負いか?」

 

隣で囁く式に返事をする。

 

フェーズ3『タイプキマイラ』――陰陽師たちの間では「鵺」とよばれる動的霊災だ。

 

そこでやっと気を取り戻した藤原が叫ぶ。

 

「くっ!? 急急如律令」

 

 

瞬間、投げた呪符から、目映い光が飛び出す。それと同じくして、鵺も絶叫をあげる、が、それは、痛みに対してではなく、怒りからくるものだった。

 

「私が囮になる、教師は、生徒を!」

「しかし―――!?」

「愚か者! 全滅するぞ!」

 

そう言いながらも、連続で呪符を投げ自らに注意を引き付ける。さすがに教師陣も生徒の避難誘導に向かう。

 

夏目が簡易式で気を失った生徒の避難を手伝っているため、春虎は、直接竜の方を呼んだ。

 

「北斗!」

 

すると、まるで主に命令されたごとく鵺に向かう。北斗には、すべてわかっているのかもしれない、が、今はそれどころではなかった。全員の意識が他に向いている間に冬児を押さえる。

 

「オン・ビシビシ・カラカラ・シバリ・ソワカ」

 

不動金縛り、これは、霊を縛り付ける術である。それを使って春虎は、冬児の中の霊を無理やり冬児の中に押さえつける。しかし、これも一時しのぎ、少しでも刺激が加われば途端に瓦解するのが見えている。

 

 

そして、藤原が必死の思いで食い止めているなか突如として鵺の動きが鈍る。そして、何処かを警戒するように唸り声を上げた。

 

鵺が怯えるのは、藤原ではなく、北斗でもなかった。

 

 

 

 

「なんだぁ~」

 

 

ザッとエンジニアブーツがタイルを踏む。その声は、怒声でも大声ですらもないのに、その場の全員に届いた。

 

「ガキどもが俺の獲物囲んで何やってやがる。おまけになんだマジもんの竜までいんじゃねぇか、どうなってやがる」

銀髪を刈り上げ、ミラーコーティングのサングラスをかけた、若い男、ファーつきのコートにだらけた姿勢で、しかし、恐ろしく堂々と霊災現場を眺めている。額には×印のタトゥー。

 

男の登場で、恐ろしく騒がしかった現場が、あの鵺でさえも静かになった。

 

藤原も思わずその名を口にする。

 

「お、鬼喰い。オーガ・イーター……」

 

それに対して、男は睨み付け言い返した。

「おいじじい、その名で俺を呼ぶんじゃねぇ。俺の名前は鏡伶路だ。十二神将相手にチョーしくれてっと、ぶっ殺すぞ」

 

 

 

 




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