始まり
「ぼく、なつめちゃんのシキガミになる。それでずっと一緒にいて、ずっとなつめちゃんを護ってあげるよ」
それはもう、十数年も前の話、まだ春虎がもう一人の自分を思い出す、ずっと前の話。
「あっちーなぁ」
「夏だからな」
真夏の日差しのもといつものうどん屋を出た春虎と冬児は二人揃って歩いていた。
「まだ口の中がカレー」
「唐辛子かけすぎだ」
「わざとじゃない蓋が外れたんだ」
「相変わらずだな」
春虎は驚くほど運が悪い
強盗、交通事故、等々巻き込まれること数知れず、それで生きているのだから、はて運が良いのか悪いのか
「これ絶対先祖から続く祟りだと思うんだよな」
「お前の血筋だとあながち間違いでもないかもな」
悪友はさほど興味はないらしい
と、そのタイミングで携帯が鳴った
「……北斗か?」
「……あぁ」
「出なくていいのか」
「この場合逃げるに限る」
そう言ってスタンバイしたところを何故か冬至が裾をつかむ
「おい冬至、それじゃうごけない」
「…………悪く思うな」
こっそりの呟きがきこえたところで
「この、バカ虎ぁ!」
叫び声と同時に背中に何やら柔らかいものが
「見てたぞ、なんで携帯でないんだよ、バカ虎!」
そんなまるで青春の一ページのような光景を目にしつつ、春虎はすでに周りの秘密を知っていた。
まず、悪友、こいつが鬼の生成りなのは、まずとして、そのもとになっているのが、誰であるか、ということ。
そして、今まさに背中にいるこいつが、夏目のシキガミであること。しかし、はじめから知っていたわけではない、
それは、ある日交通事故に巻き込まれたときだった。
いつものように補習を終わらせ学校から帰っていたとき、道路にうずくまっている猫を発見。しかし、すぐそこまで車が迫っていた。そこで春虎は身を呈して猫を守り、その代わり体に致命的なダメージを負った。
本当に危ない状態だったらしい、がしかし、それが引き金となり烏羽織が必要であるはずの「夜光」としての記憶を取り戻したのだ。世間を見るに面倒になりそうなので誰にも言っていないが。
春虎は既に高校生であり、陰陽塾、というか、自分の作った機関に入るのはすこし忍びなく、必要性を感じなかったのでここにとどまっていると言うわけだ。
「バカ虎!いい加減、陰陽師になる覚悟は出来た?」
北斗、もとい夏目は寂しがっているのだろうか?と疑いたくなる程会うたびに言ってくる。だから、決まってこう返す
「いく必要を感じない」
「それは、才能ないってことー?春虎には才能あると思うけどなー」
こんな風に誤解してくれるからだ、我ながらなかなかの乙種だと思う。
「うわーキーーんってきたー」
かき氷食べる姿は今の夏目とは程遠い、何故こんなにも性格が変わるのか気になる。
何故かおごらされた、かき氷を食べると嵐のように去っていった
「まさに謎の女だな」
「まったくだ」
そういって、いつもの位置で冬児と別れると、春虎も帰路を歩み出した。
いつもの道、いつもの風景、この町の景色が春虎は嫌いではなかった。
「なんかいいなこういうの」
思わず呟きがもれる、そして向かいから来る人物がいることに気付きそっと顔をしたに向けた
「っふふ、変わりませんね春虎君は」
聞き覚えのある声、ききなれたこえ、でもなんで?東京にいるはずじゃ
「お久しぶりです、春虎君」
そこにいたのは、北斗、もとい土御門夏目本人であった。