前回春虎が使用した呪術を解明?みたいな感じです。一応今回で鏡戦は終わりとなりますね。一応自分でも調べたりはしましたが、間違っていることがありましたら、お気軽にかつ性急にお伝えしてくれると幸いです。
次回は鵺vsコンになるとおもいます。
誤字脱字が多くて申し訳ございませぬ
鏡が頑張っている一方、春虎はひたすらにある真言を呪符に唱え続けていた。それは、例え隣にいたとしても、聞こえるかどうかという小さな声で、何度も何度も。
実は、真言と言うのはより小さな声で、数多く唱えた方がその威力は高まるといわれている。
時代が移り変わり、声に出すのが一般的となった現代でも、その法則に変化はなかった。
(…………そろそろいいかな?)
春虎が、この程度でいいか、と見切りをつけるとほぼ同時に、鏡も自らの拘束を焼き尽くしたようだ。同様に春虎も仕上げに入る。
「オン・マリシエイ・ソワカ」
唱えると同時に、呪符を投げる。そして、その姿を消した。
陽炎の神格化たる摩利支天の真言。それの恩恵を受けて呪符が隠形をかけられたのだ。
そのせいで鏡には感知できなかったのであろう、その4枚が陰陽術において重要とされる方角、東西南北に向かい、まるで春虎たちを囲むように配置されたことを。
鏡には、呪符を投擲した春虎は、無防備。その炎を春虎の元へと向かわせる。
「クソがぁ、十二神将なめんじゃねぇ」
雄叫びように叫び、呪力を迸らせ、爆弾のような炎の蛇を春虎に向ける。それの顔は、もらったとばかりに大きく歪んでいる。そして、蛇が襲おうとした瞬間…………
「なめてるのはそっちだ、十二神将」
蛇がその姿を消した。
再び鏡に驚愕の顔が浮かぶ。まったくの理解不能……というわけではなかった。直前に春虎の投げた符、あれに何かあるのは間違いはなかった。でも、それがなんなのか理解するほど余裕も知識もなかった。
「なんだぁ?なにをした、春虎ぁ!!」
返答は、ニヤリとした笑みだけ。そのしぐさが鏡の怒りを更に誘い、鏡が叫ぼうとした瞬間……
「消えっ……ぐぅぁ!!」
春虎の姿が消え、何かに衝突されたように吹っ飛ばされた。
(な……にが…………起こったんだ?)
奇妙な現象に続く奇妙な現象。
吹っ飛ばされたところで辛うじて首を動かし見渡すと、さっきまで自分がいたところには、春虎がいる。
それも、足を振り切った状態で
(蹴飛ばされた……のか?でも、全然見えなかったぞ)
既に、鏡に体を動かす体力は残っていない。そもそも、全身が痛すぎて動かす気力もない。陰陽師は、基本呪術で戦うものだ、体をストイックに鍛えているものなど、物好きくらいしかいない。
『鬼喰い』と呼ばれる鏡は、体を鍛えている方だったが、それでも、今の衝撃は耐えられるものではなかった。気絶しないのがやっとだ。鍛えてなかったら、体が残っているかも怪しい。
さらに畳み掛けるような異変
(呪術が……発動しない?)
呪力は練れる、しかし、発動はしない。術式が間違っているわけではない。それなのに、呪術が使えないというのは、鏡にさらなる混乱を生じさせた。
(……クソが、全くわからねぇ)
「…………おい、春虎。テメェなにしたんだ?」
「わざわざ教えてやる義理はないな。しっかし、ホントに丈夫だな、流石に驚いたぞ」
「ケッ」
「まぁ呪術が使えないだの、俺の姿が見えないだの困惑してるのかもしれんが、ほれ、これやるよ」
そう言ってスゥーと一枚の呪符を鏡に向かって投げる。治癒符だ。ここで少し違和感を覚える。具体的な理由はない、強いて言うなら、長年の勘というものだろうか。故に、自然と春虎の胸元、そこにある治癒符に目を向けるのはごく自然のことだったと言えよう
(これは…………木気……か?あいつ、偽装してやがったのか)
そう、春虎の胸元に貼ってある治癒符は木気に帯びていた。だが、それがわかったところで、鏡の脳では何が起こったのか理解する事はできなかった。
実際、鏡の『視た』結果は間違っていなかった。だが、少しだけ異なっていた。春虎は、決して治癒符に偽装していた訳ではなかった。あの胸元にあった呪符は確かに治癒符としての効果を発揮していたのだ。
故に、あの呪符の説明をするならば、治癒符の効果が付随された木行符と言うのが正しいものとなる。
木行符によって発生させられた電気によって強制的に体を動かす。故に、限界を越えた速さで動くことができる。ここで大切なのが、このとき使うのが純粋な呪力のみであるということと、治癒符が付随しているということだ。
呪力のみ、つまり完成した呪術ではないため、自らの構築した呪術を構成できない結界に阻まれない。
いくら早く動けたところで、体を壊しながらでは意味がない。しかも、これを使っているときは、緻密を越えたレベルで緻密に呪力をコントロールする必要がある。つまり、他の呪術を使う余裕はないのだ。相手が呪術を用いれる状況では不足の事態に対応できなくなる危険が出てくる。
ここで春虎の使った結界が光る。
この二つを併用するのは、まさにパーフェクトカップリングというやつだ。
かねてより夜光の用いた技のひとつである。
「もうすぐこの結界も消える。俺がお前を助ける義理はないから、助けてはやらんが、これだけは言っておく」
ここで、少し間を開けて、そして、語気を強めて言った。
「俺の身の回りに手を出すな。次やったら…………覚悟しておけよ」
そして、おまけとばかりに回し蹴りを鏡の頭に決め込むとそそくさとその場を去っていった。鏡も心で悪態をつきながら、春虎の背中を睨み付け、そのまま意識を手放した。
ある程度離れたところで、そっとその場に腰を下ろす春虎。
事実、鏡が思っていたほど春虎に余裕はなかった。ただ、ああいった自負心満々のクソ野郎には、圧倒的実力差を見せつけてボコボコするのが最適なのだ。言ってしまえば、やせ我慢していただけだ。
「結構やばかったな……」
そういった呟きが、無意識に漏れるほどには疲弊していた。いくら夜光の知識や経験があろうと、膨大な呪力があろうと、実力者に対して実力者ぶるのは楽なことではなかった。
そう思えるほど鏡は十二神将たる実力を兼ね備えていた。
春虎が決め手に使った、呪符に吹き込み結界として作用させた真言。
それは、 一字金輪仏頂の真言だった。
仏様のトップグループを仏頂尊
といい、そのトップグループの頂点に立つのが一字金輪仏頂。
その力は、あまりに強力ゆえ、周りの呪術をかき消してしまうと言われていた。そのため、唱えることが出来るのも限られた人しか許されなかったと言う。
一応『帝国式』の陰陽術だが、その知名度は、圧倒的に低い、それも、元々は夜光が意図的にそう仕向けたのだが。
この真言は呪術を極めた者ほど絶大な効力を発揮する。
夜光も初めから天才であった訳ではなかった。努力し考え苦悩し、様々なことに取り組んだ。そのなかには、無論呪術関連のこともあれば、がむしゃらに体を鍛えたりもした。
そんな経緯もあって、術者と体術で戦うなんていう策がうまれたのだ。
ある程度休憩をすると、皆が集まっているであろう陰陽塾に向かって歩きだそうとしたとき、タイミングを見計らったように、側にコンがあわられた。
「も、も申し訳ございませぬ、春虎様」
いつぞやのように平伏した状態で
「どうしたんだ?」
「鵺のやつを逃がしてしまいました」
「お前があの程度を逃がすなんて、珍しいな」
「そ、それが…………」
「ん?どうしたんだ?」
「邪魔が入りまして、また霊脈をいじり、それで奴が息を吹き返しまして……」
「なんだ、コンはなんにも悪くないじゃないか」
「で、ですがっ!!」
「それに、コンが無事に帰ってきているだけで、俺は嬉しいよ」
長い問答を終え、そう言いながら艶々とした真っ白い毛の頭を撫でる春虎。涙目だった目もいつの間にか笑みを取り戻し、それを体現するように尻尾が振られていた。
「よくやったな、コン。帰るぞ」
「はい!!」
春虎に褒められ、とびっきりの笑顔になったコンと春虎は、陰陽塾へと歩き始めた。
ありがとうございました。
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