鏡と戦うために春虎に鵺を任されるという話でした。
飛車丸さんになれば楽なんでしょうけど、なんか、コンのまま頑張ってほしいなということで、変なものを作りました。変なので変と言ってくれ……構いませぬぞ笑
誤字脱字はすみません
春虎が鏡と対戦している最中、コンはひとりで鵺を追っていた。
それは実力という面もあるが、鵺が空を走って移動するため、空を飛べるコンが適役だったともいえる。実体を解き隠形を重ねることでどんな熟練者でも気付けない程の隠密行動が可能になる。
それは春虎も例外でなく、気付かれぬままいろんなところ――夜光のときはついていけなかった場所など――まで行ったりしているのだがそれは、別のお話(本人は主の安全のためと自らに言い訳している)
何者かによる霊脈の暴走によって、鏡に負わされた傷を癒しただけでなく、霊体としても強くなった鵺を見つけるのは簡単でも、コンのまま倒すのは容易ではないことは分かりきっていることだ。
そのための、春虎からもらった三枚の呪符なのだが…………。
霊気の乱れを探りながら飛んでいると、遂に鵺を見つける。それほど離れなかったのが幸いした。霊災慣れした陰陽庁と東京都民は対応が早く、鵺がいる近辺には一般人は居なかった。
今の自分のアドバンテージ、つまり、隠密性を生かしつつ、背後にギリギリまで近づき、狐火をぶち当てる。鏡の火界咒には遠く及ばないが鵺を牽制するには十分だった。
突如として襲いかかる衝撃に後ろを振り向くが、既にそこにコンの姿はなかった。コンはその上空。既に実体化、隠形を解き、春虎からもらったうちの一枚に呪力を流し込んでいた。
鏡に挑発されイライラしっぱなしの鵺は、考えなしにコンに向かって突っ込んでいく。
コンは、冷静にその呪符を投げた。
瞬間、溢れる炎。
ただの火行符ではここまでの規模の炎はでない。その勢いは明らかに鏡の火界咒を上回っていた。
無論、秘密は呪符にある。
『即時発動型術式封印専用符』
性質を表すならそんな名前になる、とコンに説明するとき春虎は言った。だが、二人ともそうは呼ばず、その手軽さと危険性から『インスタント』と読んでいる。
漢字の方を読めばだいたい意味は分かるだろう。
あらかじめ術式を呪符に封印しておいて、それを呪力を流し込み解放。込められていた呪術を使用することができる。
当然、春虎のオリジナルだ。転校早々の事件以来半年なにもしなかったわけではない。これはコンのために作ったものだ。
コンの状態では、もろもろの封印がかけられているせいで思い通りに術を行使出来ない。そのため、気軽に使えるようにこれを作りだしたのだ。
だが、まだ完成ではなかった。
問題点は2つ。
一つは、本当に誰でも使える点
もう一つは、一つ作るのに莫大な呪力を使うということだ。
後者は改善可能だが、前者は言ってしまえばメリットとデメリットが表裏一体になっているということだ。
善良な祓魔官たちに渡れば、それは正義の武器として民を守るために使われ、過激派夜光信者が持てば、テロの道具として危険物扱いになる。
いわば認証の要らない核兵器みたいなものなのだ。ここを改善するまで、春虎は誰にも教えるつもりはないらしい。
まぁコンにはそんなことはどうでもよかった。重要なことはただ一つ。コンのために作ったものである、という点だ。それを考えただけでヒクヒクしてしまっていた。
「はぁっ!」
気持ちのこもった声と共に
最初にコンが投げた呪符に込められていたのは火界咒。吹き込んだのは春虎だ。化け物とされた鏡さえ凌ぐその呪力で練られた火界咒は、生には劣るものの、術が切れてもなお鵺を焼き続けるほどの威力を持っていた。
「ヴォォォォォォォ!!」
悲鳴と共に爆弾のような霊気を撒き散らす。フェーズ3に近いのは間違いなかった。
悶えた鵺が地面に落下している。コンは、依然として消えない炎を自らの狐火で煽りながら二枚目に呪力を通す。
試験会場のようにクレーターを作った鵺は、炎で動けないため絶好の的だった。呪力の注入が終わった呪符を鵺に投げつける。
今度は電流が溢れ出す。義母が得意とする雷の呪術。帝釈天、またはインドラと呼ばれる神様の真言が込められた呪符だった。
「キュェェェェェェェッ!!」
火炙りに電流流し、まるで拷問のような攻撃を受けながら心底苦しそうに鳴く、それを体現するかのように身体中にラグが走っていた。
コンは既に行動していた。インドラの呪符を投げたとほぼ同時に最後の一枚を取り出す。
しかし、追い詰められたところで一番力を発揮するのは霊災も同じだった。まとわりついていた呪術による火と電気を莫大な呪力の放出によって弾き飛ばす。
当然、影響はそれだけには留まらず周りのビルのガラスをバリバリと割っていく。また、近くにいたコンも呪力を通していた隙をつかれ吹き飛ばされる。
辛うじて、空中で姿勢を正せたものの、まだ最後の一枚を完成させていない。鵺には尚もラグが走っている。
コンがそう確認した瞬間には、鵺は、すでにコンに向かって走り始めていた。
やられる前にやる。
鵺の魂胆はそういったものだろう。
しかしコンは、いや、飛車丸は場数を踏んでいる最強の護法であり、一流の呪術師でもある。その判断の切り替えは早かった。
流していた呪力を止め、最後の一枚を待機させる。それと同時に空いた片方のその小さな手で九字を切る。
詠唱も、印すら用いない高速の九字切り。呪力の勢いは違えど、その早さは鏡以上だったかもしれない。
陰陽術において魔除けとして扱われるそれは、鵺とコンの間に入り込み、主を守護する壁のようにコンに近づけさせない。
しかし、それも一瞬。力を封印され、十分な呪力の込められていない無詠唱の九字では、もはやフェーズ3の鵺を止められるのは一瞬。
それも予想のうち。コンにはそれで十分だった。
反対の手に持った最後の一枚に呪力を流す。それも、一瞬で終わる。同時に投擲
転不動明王が持つ羂索を体現したかのように呪術によって可視化された紐が鵺を押さえていく。
最後の一枚に込められていたのは、不動金縛り。コンの状態でも行使は可能だが、呪力の量がものを言う修祓においては、適切ではなかった。
既に、瀕死だった鵺が春虎の不動金縛りに押さえつけられ、修祓されるのも時間の問題。
そう思われたし、実際、コンもそう感じていた。だが思わぬ誤算が入り込む
『グゥルァァァァァァァ!』
コンの体験するうち本日三度目の霊脈の暴走。意図的としか考えられないが、その術の性質上明らかに、熟練の術師によるものであるコレは、二度瀕死に陥った鵺をまたもや元気にさせ、とうとう完璧にフェーズ3への移行が確定された。
元気と力を取り戻した鵺は、暴れ放題。
春虎お手製の呪符を使い果たし、霊脈の暴走のタイミングから考えて監視されているであろうことから、おいそれと飛車丸に戻れないこともあり、霊体化と隠形を施しとぼとぼと主の元へ帰るのだった
(この私を春虎様の命令に背かせた罰必ず受けさせてやる。
これでもし、春虎様に嫌われるようなことになったら…………覚悟しておけ、下郎ども)
とぼとぼと?帰るのであった。
読んでくださってありがとうございます。
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早く鈴鹿に会いたいよo(^o^)o