まだ、ひとつ前を読んでない人はお間違えのないように。
と、とうとう、冬児と…………。
あーでも、十二神将たちのキメラ討伐は書くのたのしそうじゃないな、春虎くんでないし、やめよっかなぁーチラチラ
春虎は、その霊的知覚を最大限に引き延ばしながら走り回っていた。
鬼気というのは、例外なく特徴的である。ましてや、冬児に限り、春虎は、その存在を時間さえ掛ければどれだけ離れていても見つけられる術を用意していた。
なにも聞かずに飛び出したのも、自分の方が早く見つけることになんの疑いももっていなかったためだ。
(もっと、もっとだ。もっと広く………………居たっ!ここは…………そうか)
事実、誰よりも早く、冬児の存在を見つけ出していた。
お前は鬼だ。
最初にそう言ったのは、教師か喧嘩の相手か。あとありそうなのは、母親だろうか。
いづれにせよ、冬児は、小さい頃からそういわれることがあった。
いわゆる、妾の子として、生を受け、経済的に困難に陥ることはなかったが、両親からの愛情を知らずに育ってきた。
そのため、自分の境遇に傷つき、恨み、暴れて、荒れて。
しかし、一方でうっすらと気づいていた。自分は多分、そういう自分をただ演じているだけなのだと。
退屈だったのだ。
故に刹那的で受動的な快楽でしか楽しみを見いだせなかった。
お前は鬼だ。情のない鬼だ。
そういわれて否定したことはない。
なんかねぇかな、ヤバイこと。
いつもそんな風に思っていた。でも……
鬼に襲われるとは、流石におもっていなかった。
春虎は、全く迷いのない足取りで、ある場所へ向かっていた。
犯人は現場に戻る、何て言うが、今回冬児は別に罪を犯したわけではない。
まぁつまりは、実技試験の会場に向かっていた。
そこに冬児から発せられる禍々しい鬼気を感じたから。
夜、暗くなった渋谷を、その人混みの中を爆走しているのは、流石に目立つのだろう。たくさんの人から変なものを見る目されている。
だが、そんなことをいちいち気にしていられるようなものでもなかった。
途中、酔っぱらいにぶつかって絡まれたが、言霊で黙らせた。それくらいに春虎には余裕がなかった。
そして、その場所にたどり着いて、その後ろ姿を見た途端、隠形を開始。
ばれないように冬児の正面から5メートルくらい離れたところまで歩き、突然姿を現して、面と向かって言った。
「冬児」
「………… お前か」
いきなり現れたのに対して、冬児は大した反応を見せなかった。そこから発せられたのはひどく冷たい声。
それをトリガーに過去の記憶が甦る。懐かしい思い出。
この冬児に相対するのは、これが初めてではない。故に、春虎は、ニヤリと笑った。
(大丈夫、こうなったときのために色々手は打ってきた。準備もしてきた)
「何の用だ」
と、冬児。
「分からねぇか?」
そして、さらに春虎は、こう続けた。
「説教しに来たんだよ、バカ冬児」
冬児のひたいにはいつものヘアバンドはない。鬼化しかけて、生えていた双角もその姿を消している。
「まったく、ざまねえよな」
そう言った顔には自嘲が浮かんでいた。
さらには、熱に浮かされたように、瞳の焦点も合っていない。
「前もって塾長にまで釘刺されてたってのに、ふたを開けてみりゃこのザマだ」
はるとらを睨みながら、顔をひきつらせる。既に、抑えられない鬼気が漏れ出し始めていることを春虎は「視て」理解していた。
「らしくねぇな、冬児」
だが、春虎は、敢えてそこで挑発した。さらに続く
「鬼になりたいだの喚いてたくせに、実際そうなっちまったら弱気な少年に逆戻りか?てめぇ自分が何て言ってたのか覚えてねぇのか?」
その台詞に冬児の眉がピクリと動く。春虎は、まだとまらない
「親父が、鬼は人の昏い情念に棲むって。で、お前はこう返したんだ。自分には情熱とかないから棲みようがないってな。……全く、笑わせる話だ 」
春虎は、視線を逸らさない。確かに呪術で無理矢理どうにかすることはできる。しかし、それでは意味がない。出来ることなら、それ以外の方法で……冬児が自ら鬼を押さえつけられるようになる方法で……。
人気のない渋谷の一角。二人は真っ正面から対峙している
「俺の本音はいまだって変わっちゃいない。鬼になりたいとは思わないまま、なっても構わないとはいつだって感じてる」
再び現れる自嘲の笑み。
「おいおい、なんだ?とうとう頭のなかまで鬼に喰われちまったのか?」
「さぁな、だがもうそんなことはどうでもいいことだ。これが俺であろうがなかろうが、関係のないことだ」
その嘆きにも聞こえる冬児のセリフを春虎は、鼻で笑った。
「さっきから遠回しにぐちぐちと、冬児、てめぇはどうしたいんだ?」
「俺がどうしたいか、だって?ッは、そんなこと知らねぇよ、これから先どうすればいいかなんて、わからねぇよ」
威嚇口調だった冬児のそれが、だんだんと悲しみを帯はじめる。
「俺は、いつまでこれに付き合えばいい?こんなもの勝手に取り付けられて、これから先だって?そんな苦しみしかない未来をどうやって目指せばいいんだよ!」
冬児の額に、角が現れる。それと同時に、叫んで開いた口から、鋭い牙が覗けた。既に、鬼化が抑えられていない。いや、もしかしたら、抑えていないのかもしれない。
「苦しい未来か、元ヤンのお前からそんな可愛い言葉が聞けるなんて思って無かったぜ。まぁんなことは、どうでもいいが、お前、苦しみしかないって言ったな?」
冬児は、返事をすることも頷くこともせずにただ黙っている。春虎は、気にせずに続ける
「楽になれる道が1つだけある」
一瞬驚きが浮かぶ冬児、ただそれも一瞬だった。おそらく、冬児にも、わかっているのだろう、それがなんなのか。
「ああ、違いない。だが、俺もその提案をお前の口から聞けるとは思ってなかったな、春虎」
冬児が、驚いたのはまさにその点、春虎がそう言った、ということだった。
肩口に鎧が現れる。鬼化が、さらに進んでいる証拠だ。それ伴い、あふれでる鬼気も莫大なものとなっていく。
「ああそうだよ、いっそ祓われちまえばいいんだ、完全に鬼になっちまえばいいんだよ、そうだろ春虎!」
「ああ、そうだよ。まぁてめえには、そんなこと絶対に出来ないがな」
「あ?」
冬児の雰囲気が変わる。目に宿る闘争心は、まさに鬼のそれだ。
「ハッハッハッ、そりゃ傑作だ。今の俺が殴ったら、肉片になってその辺に飛び散るような分際でーーー」
「やってみるか?」
「ーーーなんだと?」
春虎は、冬児のセリフを遮った。春虎も雰囲気が違うことに冬児はやっと気づく。そして、その目が嘘やハッタリで言っているわけではないことにも。
「なら、やってみろと言ったんだ。てめえが殴ったら、俺は肉片になるんだろ?やってみろよ、ほらっ」
ほらっ、と同時に手をこまねく。冬児の我慢はそれで限界を超えた。
「うらぁぁぁぁぁぁぁ!」
全身から禍々しい鬼気を迸らせて、猛然と春虎に殴りかかる。ある程度空いていた二人の距離は、鬼の力で強化されている冬児にとって微々たるものだった。一瞬で春虎の目の前に姿を現す。
全身の力と鬼気によって上乗せされた力とが混ざりあい、確かに一発貰っただけでも命に関わる、というより、確実に死ぬパンチが放たれる。
それに対して、春虎は………………避ける、避ける、避ける。まるで未来予知をしているように、見えるはずのない速度で放たれる力の奔流を一変の狂いもなく避け続ける。
そして、春虎は、その一撃一撃に、少しの迷いがあるのを見逃さなかった。
ある程度避けなれて来ると、反撃を始める。無論、呪力は使わない。避けることにすら使っていない。すべて身体的な技術だ。
ボディに顔面にアゴに、それぞれ、春虎の拳だけがぶつかっていく。依然として冬児の拳は当たらない。業を煮やしたのか、一端、冬児は距離を取った
「どうした?肉片にするんじゃなかったのか?余りにも無防備なもんだから、思わず反撃しちまったよ」
これは、嘘である。春虎に余裕はなかった。しかし、半ば鬼と化している冬児にそれを見抜く力は残ってなかった
「はっ、それがどうした、春虎。お前の拳なんざ、痛くも痒くもねぇ」
事実だった。鬼化にともない、強化された冬児に春虎のなんの呪的強化のなされていない拳はダメージになり得ないものだった。むしろ、春虎の方がダメージを負っている。
それを証明するかのように、殴っていた春虎の右拳は血にまみれていた。もしかしたら、骨にも異常をきたしているかもしれない。
「だから、どうした。ほら、肉片にするんだろ?来いよ」
だが、痛んでいる様子は全く見せない。治癒符すら、張ろうとしない。
誘っている。何かを企んでいる。
そんなことが一瞬頭をよぎる。しかし、
挑発している。バカにしている。
半ば鬼と化した冬児の本能は、そっちを優先して捉えてしまった。理性という枷が外れる。先程よりも濃密な鬼気を纏ったそれには、もうわずかしか冬児は残っていなかった。
故に、そこに躊躇いは存在しない。
自らでとった距離を、はたまた一瞬で踏破する。全力で振り絞った拳を春虎の顔面に目掛けて思いっきり振る。
もう少し、もう少しで当たる。刻々と近づく友の死を、冬児はまるで第三者であるかのようにその光景を眺めていた。
そして、まさに春虎の頭をかち割ろうとした瞬間
『動くな!!!』
春虎が吠えた。
途端、言葉の通り冬児は動かない。どころか、指先ひとつ動かせず、話すことも出来ない。
「どうした、動かないだろう」
不敵な笑みをその口に携え、まさに殴りかかろうとしているところで、停止ボタンを押されたようにその身を止めている冬児を下から見上げて言った。
見上げたところにある顔には、僅かだが冬児が、戻ってきている。春虎は、そこから一歩、二歩と下がって、こう切り出した。
「お前に、秘密を教えてやろう」
その言葉に、初めて冬児の顔に困惑が浮かぶ。そして、次の言葉でそれは、驚愕に染まった。
「俺の名前は、土御門春虎。そして、もうひとつの名を」
一時の間、周囲の時間が止まったように静がになる。だから、その声はよく聞こえた
「……………………土御門 夜光」
感想評価文句雑談等なんでも、ほんとうになんでもおまちしております。笑笑