やっと、やっと鈴鹿が喋りまする。
ここまで、本当に長かったでござる。
楽しんでくれたらうれしいのであります。
誤字脱字は、許して下さい……。
『……は?』
夏目、春虎、冬児の声が揃った。
そう、彼らにはその覚えがあった。『大連寺鈴鹿』という名前に覚えがあった。
彼らの脳内に同時に再生される「あの」夏の光景。派手なゴシック・アンド・ロリータで身を包み、その幼い容貌からは想像できない汚い言葉を発する少女の光景。
当然、混乱は彼らだけではない。いや、違った意味で彼らは、動揺しているのだが、他の塾生たちも無論動揺している。それは、一気にどよめき始めた会場の様子からも容易に想像することが出来た。
そんななか、プラチナブロンドの髪をツインテールにまとめ、その身を狩衣を模した陰陽塾の純白の制服に包んだ少女が前に進み出る。
ーーー間違いない、あいつだ。
悲しいかな、間違いであって欲しいと、微かに心で願っていた春虎は、その顔をみて確信してしまった。さらには、先程までの違和感。懐かしいような…………と感じた「霊力」についても、確信してしまった。本物だと…………
「初めまして、皆さんっ。倉橋塾長からご紹介に預かりました、大連寺鈴鹿ですっ!」
……………本物だと!?
思わず声が出そうになる。横を見れば、二人とも同じように開いた口が塞がらないという状態になっている。
あの夏を経験した彼らでは想像も出来ない甘い声。そして…………
ニコッ
と天使のような微笑みを浮かべる。
一層盛り上がる会場。それは、まさにアイドルのライブのように……。
「あたし、今日はすっごく緊張しちゃって…………でも、とても嬉しいです!自分と同年代の人と陰陽術に取り組むことって、ずっと夢だったんです!今日、その夢が叶っちゃいましたっ!」
「誰だ、アイツは」
「はは、誰……なんだろうね」
その声を上げたのは、春虎ではなく冬児だった。反応したのも春虎ではなく、夏目。
ふたりともどこかしら哀愁を漂わせている。
しかし、鈴鹿の進撃は、これでは終わらない
「クラスメイトの皆さん。それに諸先輩方。陰陽術のことならあたしでも皆さんに教えてあげられることがあるかもしれません。ですから、皆さんもどうか、あたしに色んなことを教えて下さいね」
一度も止まることなく言い終わると同時に軽くウインクまでする。なぜかわからないが、その目尻からは星が出てきたような気が春虎達にはしていた。
反響も過去最大。生徒たちにとって息苦しくなる講師達の話とは違って、万雷の拍手が鳴り響く。本当に拍手したがってしているため、その音量も比べものにならない。
調子に乗った誰かが指笛を吹き始めることすらしていた。
壇上の鈴鹿は、若干顔を赤らめながら、恥ずかしそうに右手を会場に向かって振っている。しかも、一つの方向だけでなく、色んな所に向けて。
そのせいでさらに歓声が上がる
「完璧に計算し尽くされた角度、それに加えて、首を傾げ可愛さをアピール、只者じゃねえな」
隣ではなぜか冬児が闘志をわかせながら、冷静に鈴鹿を観察していた。
ちなみに、闘志をみなぎらせつつ、頭を冷静に保つというのは、春虎の訓練の一つでもある。
「なん…なん…………なんなんだ!あれは!」
で、とうとう夏目がこらえられなくてもなったらしい。
「そんなの、俺も分からねぇよ」
まさに、春虎の本心だった。いや、その返答がかえってくるであろうことを予見している夏目であることから考えると、彼らの総意であるに違いない。
それを最後に、彼らはただ黙って鈴鹿が手を振るのを眺めていた。微動だにせず。
ただ、鈴鹿は違った。そのアピールのため様々に方向を変えている。
そして、それは、突如として起こった。
フリフリと動いていた手が、ニコニコと見渡していた顔が、ピタリと止まる。
その目を春虎にとらえた状態で。
と、同時に春虎たちの時間も動き出す。
いや、春虎以外の二人の時間は動き出した。
春虎は、その目が鈴鹿を写したまま動かない、動けない。
間違いなく、鈴鹿は春虎を凝視している。
ひどく長く感じられたその交差の後、鈴鹿は
かぁっ、と顔を赤くした。
ーーーーーえっ!?
春虎の緊張がほぐれ、時間が動き出す。
だが、安堵するには早過ぎた。鈴鹿は、さっきの赤面が全くの嘘のようにーーー実際そうなのかもしれないーーーその表情を変えた。
笑顔。
しかし、先程までのアイドルのような計算し尽くされた可愛らしいものではない。まるで蛇が蛙を見つけたときのような、口が裂けるように三日月を象ったニンマリとした笑顔。
春虎にとって、正直その笑顔は、今までのものよりずっと鈴鹿らしいと感じ、そしてーーーひどく安心した。妙なことに。
ーーーーあぁ、あれは鈴鹿だ。
隣の二人も近場にいたことが幸いしてその笑顔が目に入ったのだろう。納得した顔をしていた。
ーーーよかった、本物で
胸中にそんなことを思いながら、これから起こるであろう悲劇から、逃避する。自分には無い、100%才能に由来する星読みの力がないことに憂う。
こんなときは〈春虎〉の父が恨めしい。もしくは、美代でもいいだろうか。あぁ、羨ましい。
そんな春虎の嘆きを知ってか知らずか、鈴鹿は、おもむろにすぅーっと息を吸い込むと
「あっー!!春虎お兄ちゃんじゃないですか!」
会場に爆弾を落とした。
既に春虎の目に生気は宿っていない。それに、反するよう夏目の目に鬼気が宿り始めているのを春虎は確認できない。
なぜか?
既に、意識の手綱を握っていないから。実に単純だ。
グルン、とまるで首が360度回転するロボットのように会場中の顔という顔が春虎の方を向き、その視線を突き刺す。
その居場所は鈴鹿の視線が伝えたに他ならない。
男子からは『なんだ貴様は』という、正にアイドルの秘密にされていた彼氏を見つめるような視線
女子からは主に『お兄ちゃんってなに、きゃー』といったところだろうか。
まぁ既に春虎にそれを把握する力がないことが幸いして?意味を成してはいないが。
百獣の王は、弱っている獲物にも手加減しない。
それを体現するかのように、わざとらしく瞳を潤ませて、よく聞こえる声で、しかし、どことなく、感極まっているような声で
「嬉しいっ。陰陽塾に来ればきっと会えるって、お兄ちゃんに会えるって、あたしずっとおもってたの!こんなに早く会えるなんてっ」
止めろ、もう……………止めてくれ
離したはずの意識の残滓を漂っていた、辛うじて春虎と言えるものは、そう、悲痛を叫んでいた………誰にも聞こえない声で。
ーーーおい、春虎
隣にいるはずの冬児がしっかりしろと言わんばかりに問いかけるが、ひどく遠くからの声に聞こえる。春虎は、既に手遅れだ。
しかし、冬児が話しかけたのは春虎の身を案じてのためだ。春虎がいま陥っているような精神的なものではなく、もっと直接的に暴力的な物理的な危険を察知したから。
その目線の先には、不機嫌オーラと鬼気擬きを混ぜ合わせる名状しがたいナニカを纏っている夏目の姿があった。
事情を知らないコンはいまだ実体化してない。なんといっても、まだあの時は、春虎の傍にいなかったのだ。仕方が無いことだ。
そんな危機をよそに、会場のの興奮はピークに達しつつある。
ーーー春虎?
ーーーだれだ?
ーーー土御門の?
春虎に関する様々な情報が飛び交う。凄まじい早さでそれらは、全員に共有されていく。
当然、その中で中心となる疑問
『お兄ちゃんってなんだ?どういうことなんだ?』
そして、その気持ちを代弁するかのように、まだ、壇上に留まっていた倉橋塾長が前に出て、マイクを握り、側にいた鈴鹿に尋ねた。
「あら?鈴鹿さん。彼とはお知り合いだったのかしら?」
いつのまにか喧騒がなくなり、まるで鈴鹿の報告を待つかのように場が整えられた。
鈴鹿は、その質問にはじけんばかりの笑顔ーーー今度は可愛らしい方のーーーで振り返り、
『はいっ!』
と応えた。
だが、待て、ここでこれで終わりではない。
むしろ、ここからだ。
『あたしのファーストキッスの相手です!!』
先程までの「静寂」が「沈黙」に包まれる。
そして、まるでそれを利用するかのように、鈴鹿は続けた。そう、続けてしまった。
『そして………………』
何故か、顔を赤くして
何故か、照れるように右手を頰に当て
何故か、はにかむようにそこで一呼吸置いて
『………あたしの…………は、はじめての……相手……です……………』
何かが、壊れる音がした。
あぁ、『………』が多いな。読みずらかったらすみませぬ。なんか、使いたくなる性質が私には、あるようです(泣)
はぁ?キスとかいつやったんだよ、という疑問をお持ちの方、はい、次回ちゃんと説明します。
はじめてって何だよ、という方、はい、次回説明させて下さい
今は、想像を、いえ、妄想を膨らませておいてください笑
今回も、感想評価質問反論意見罵倒雑談等お待ちしております。
どうぞお気軽にお申し付けください。