春虎がさっきまでやっていたのは、阿修羅に術式を巻き込ませて、騙すということだ。即席なので、支配権を奪うまでとはいかないが、突進させるくらいなら可能だ。
(あいつがホントに夜光の生まれ代わりなら、いや、そうじゃなくても実力が違いすぎる)
もともと鈴鹿の専門は研究、そこらのその他大勢の呪捜官のならなんともないが春虎レベルとなると話が変わってくる
(祭壇の位置は、分かってる、こうなったら先回りして強引にやるしか……)
「どうしたんだ?さっきまでの威勢は」
春虎が見上げるようにして言う。
「ふんっあたしが空を飛んでる限りあんたは近づけないんだから 」
このまま祭壇に行く、と隠された意味を理解する春虎。
念のため奇妙なステップを踏み始める。
「行けると思ってんのか?」
言葉を無視してシキガミを動かし向かおうとする
「まぁ待て、そう急ぐなって。ゆっくり話そうぜ」
優しい声色、甲種言霊のように押さえつける言葉ではない、なのに
(ーーーーうごけないっ!?なんで?)
空中で止まった鈴鹿見て、ニヤリと笑い話を続けた。
「言ったろ、大連寺が呪捜官たちとやりあってる間、ずっと見てたって、その間なんもしてねぇとおもったのか?」
(ーーやられたっ)
あのとき、春虎がここまでの実力者とは、見抜けなかったが故の油断。
「ほれ、こっち来て話そうぜ」
鈴鹿がゆっくりとシキガミを下ろし、春虎のもとに降り立った。その行動を起こしたと気づいたのは、春虎の隣にたってからだった。
そして、自分の肩を掴まれたかと思うと、一気に景色が変わり、何故か森の中にいた
春虎は、鈴鹿に対して、あともうひとつ手段を用意していたが、それを使うことなく終わらせてしまった。
鈴鹿に用いていたのは、他ならず甲種言霊である。しかし、使い方が違った。薄く薄く呪力を伸ばし、使われたと本人が気づかないレベルまで薄めるとそれを継続的に、しかし、徐々に濃くしながら。そのため、鈴鹿でさえ気づかないで操られていたのだ。
「こ、ここは?」
目をぱちくりさせながら、鈴鹿が突然変化した景色に疑問を唱えた。
「土御門家本家の裏山だ、ここなら誰ともかち合わないで話せるからな」
「そんな、いきなりどうやって……まさか」
「まぁな」
夜光の研究第一人者であった鈴鹿はしっていた。その呪術、禹歩のことを。
春虎がもともと自分の言霊から逃れられた時のために用意していたものだったが、ちょうどよかったのでそのまま使ったのだ。ここは、ちょうど霊脈の通り道であるということもすでに確認していた。
「あんたがつかってるのって、さっきから帝国式ばっかり、やっぱりか」
「まぁ、その辺は秘密にな?」
さらっと潜在意識下に暗示を潜り込ませて言う。
現在使用されている、いわゆる『汎用式』は、もともと夜光が作った『帝国式』をもとにして作られたものでも、それは土御門夜光、その死後だ。彼の転生である春虎が知るよしもなかった。
「お兄ちゃんを生き返らせるんだったな」
「…………うん」
「そうか、お兄ちゃんは耐えられなかったか」
「耐えられなかったかって、なんのこと?」
「なんのことって、からだのことだよ。誰かに弄られたんだろ?」
「はぁ流石ね、見破られたのははじめてだわ。そうよ、私たち兄妹は親に呪的に弄り回された。お兄ちゃんは、親が殺したようなもんなんだから!」
春虎は考えた。自分のこととこの少女のこと。これから言おうとしてることを彼女に伝えれば、確実に自分がそうであるとバレる。もうばれてるかもしれないがまだ、呪術が上手い人ってだけだ。
自分より年下かも知れない少女、この先、ここで止めてなかったら……
春虎は腹をくくった
「残念ながら、お兄ちゃんは生き返らない」
彼女は呪術者だ、それも権威と言われるほどの。それならば、下手に感情に訴えるより、呪術者として諭してあげるほうがいい。今、大連寺は、生き返らせられると疑ってない。その間違いを正すだけでいい、一人の陰陽師として
「それはっ!」
「まて、はやとちるな。俺が話すの全部聞いてからにしろ」
気持ちの高ぶる鈴鹿を抑えて、話を続けた
「別に、俺が止めるから生き返らないって訳じゃない。ただ純粋に術として成功しないっていってるんだ」
「泰山府君祭と言っても、その儀式の行いかたは、多岐にわたる。大連寺の様子を見るに、自分の命と引き換えにするものだろう?」
「……うん」
鈴鹿の顔が暗くなっているのを確認して春虎は続けた。
「確かにそれも泰山府君祭のひとつだ。でも、それが全てではない。むしろまだ序の口。その真髄には程遠い。言ってしまえば、命の対価なしに儀式を執り行うことだってできる」
「ならっ!」
それをあんたがやってよ、その言葉は春虎発する事実によって遮られる
「でも、そのすべてにおいて共通して必要になるものがある」
「泰山府君祭を用いるためには、亡くなってすぐに儀式を行うか、そうでなければ特別な処置をしなければならない。見たところ、特に特別なことはしてないだろ?」
「そういうことだ。どれだけ正しい手順でも、呪文でも、例えお前の命を犠牲にしたって、お兄ちゃんは甦らない」
「この言葉を信じるかどうか、真実かどうかは、分かるよな?」
「………………うん」
とうとう俯く。その顔から光る滴が滴り落ちるのを見て春虎はそっと背中を向けた。
「ちゃんと埋葬してやろうな」
「……うん」
春虎に抱きついて、堪えきれずに声をあげて泣き出した。春虎はそっと鈴鹿の方を向き、優しくその背中を抱きしめた。
「あんた名前は、どーせ夏目じゃないんでしょ」
ひたすら泣いて、目元を真っ赤にした鈴鹿が聞いた。
「ん、そういや自己紹介まだだったな」
「俺の名は、土御門春虎。分家の方だ。嘘ついててごめんな、夏目じゃないんだ」
「ふんっ、そんなことだろーと思った」
「はるとら、はるとら………………うん、よしっ」
何かを確認したようにうん、と頷くと、夏祭りの時のようなテンションで言った
「春虎、あんた、あたしのおにぃちゃんになりなさい!」
「………………」
「はぁ~~~!?」
「そして、あたしのことは鈴鹿って呼びなさい」
「はぁ~!?」
春虎は斜めうえすぎる発言に奇声をあげる。
「なんでそうなんだよ、お前みたいなタイプは、あたしのおにーちゃんは、おにーちゃんだけだ、とか言うタイプだろ?ブラコン」
「はぁ?なにいってんの、ブラコンじゃないし、それに、あんたのせいでおにーちゃんにあえなくなったんだから、とーぜんの責任でしょ?」
あくまでも当然としてある事実のように、いや、半分悪い顔をして言う。もう、すっかり元気になったようだ
「にひひー、よろしくね、おにぃちゃん?」
今度は隠そうともせず、黒い部分を全面に出して言う。これに対しては春虎も応戦して
「ったく、しょうがねーな」
「あぁ、これからよろしくな、我が愛しの義妹さん」
「っな!!」
鈴鹿は、顔を真っ赤にして言い返そうとした所で、そのまま気絶してしまった。過度な霊力の使用によってギリギリのところだったのだ。緊張感が緩められたせいでそのまま気絶してしまったのだ。
その後、眠ってしまった鈴鹿を土御門家に連れていき、そこで寝かせていた。もし、夏目に見られたらとひやひやしたが、大丈夫だったようだ。
携帯を見ると北斗からの着信がずらりと並んでいる、かけ返して土御門本家にいると伝えると、そのすぐあとに、夏目があらわれた。
隣に寝ている、女の子を見て一瞬ギロリとひどい目付きになったが、鈴鹿だとわかると、キョトンとして、驚愕の顔をした。
「どどどどどどどど、どうして彼女が?」
「うーん、まぁ説得した」
嘘はついてない、正確には呪術を用いてだが。これは乙種だと心で言い訳をする
「な、何でそんな危険なことを!」
「まぁ、そんなことはいいだろ」
「そんなことって……心配したんですよ!」
「聞いてくれ、夏目」
ガヤガヤ騒いでた夏目も、突然真剣な声と眼差しになった春虎に静かになった
「おれをシキガミにしてくれ」
春虎が何て言ったか初め分からなかった
「今なんて?」
「だから、おれをシキガミにしてくれ、なつめちゃん」
何年ぶりか分からないその呼び方に、それより、ずっと夢見てたことが現実になったことにより、自分の顔が真っ赤になっているのが分かる
「な、なんでいまさら!約束わすれてたんじゃないんですか!」
「忘れるわけないだろ、ただ……」
そこから先は聞いてなかった。あまりの嬉しさに話なんてきこえるわけありません
(ふふふ、これでやっと春虎君と一緒ですやっと、やっと)
「それじゃ、見鬼にならなくちゃダメですね」
話の最後にそう言った
「それなんだけどさ、なんか見えるんだよね」
「え?」
「綺麗だよな」
「え、え~~!!?」
「霊気って」
「あ、そ、そうですね」
興奮したり落ち込んだり、そのせいで春虎の意味が分からない言い訳に気づかない夏目。そこに追い討ちをかけるように春虎が言った
「これからよろくしくな、夏目」
「はい、こちらこそ、春虎君」
新たな烏が陰陽の道を歩き始めた。
その後、起きた鈴鹿が、春虎の隣にいる夏目を確認して、急に悪い顔をして
「おはよ、おにぃちゃん」という爆弾をおとし、夏目が誘爆を引き起こすということがあったがそれはまた別のはなし
目が覚めたときそばにいた冬児に
「俺が来たとき、お前の心肺は止まってた」
と言ってたが…………嘘だよね?
原作第1巻終了です。細かいところまで真似してると長くなるのでどんどんはしょって行きます。流れはおおよそ原作通りですが、展開はオリジナルに、俺色に染めてやります。これからもよろしくお願いします。