再会
「ひ、久しぶり夏目くん。…………あたしのこと、覚えてる?」
「あたし、倉橋の、倉橋京子よ」
「あ、ああ、あなたがーーー」
「き、君は倉橋家の人、なのか?それで?わた、ぼくになにかようか?」
「い、いえ、仮にも土御門。挨拶しておこうと思っただけよ」
「そうか、用がないならもういいかい?一人にしてくれないか?」
入塾前から夢見ていた少女と
なにも知らない少女の初めての出会い
これから始まる青春の一ページ目だった。
(こんな風になったのかぁ)
春虎は都会にそびえ立つ一つのビルを見上げていた。陰陽塾ーーーまたの名を夜光塾。何を隠そう、夜光が作った組織の1つである。同じ陰陽の道を志すものたちの育成。それが作った目的だった。
「ずいぶんと変わったな」
「……変わった?」
「あーいやいや、陰陽塾って名前だから、こう、古くさいのを想像してたんだ」
思わず出てしまった春虎の言葉に冬児が目敏く反応するがなんとかごまかす
「この見た目でも、中には、最新設備がぎっしり。まぁ、他のものと同じように陰陽師も陰陽術も進化してるってことだな」
冬児が細かい説明を終えたあと二人して門へ歩き始める。陰陽の名前に似合わない自動ドアが開くと、どこからともなく声がかかる。
「汝ら、土御門春虎、阿刀冬児で間違いはないな」
そこにいたのは、二匹の狛犬ーーーアルファとオメガだった。
「汝らのことは、主より既に聞き及んでいる。が、決まりである。まずは名乗るがいい」
「俺は土御門春虎」
「俺は阿刀冬児だ、そんで、お前たちは?」
冬児が、自己紹介と同時にした質問に、狛犬たちも話し出す
「我がアルファ」
「そして、我がオメガなり」
「汝らの声紋と霊気のを確認し、登録した 」
「我らは汝らを歓迎する。学友と切磋琢磨し、よき陰陽師となるべく精進するがよい」
アルファとオメガが厳かに告げた。
「汝の式神も共に登録した。次からはそちらから申告せよ」
さらに、追加された言葉に春虎が謝る
「あーごめんごめん、式の方も必要だったか」
「なんだ、お前式神もってたのか?」
「ん?あぁまぁな、こっち来るとき親父に貰ったんだ」
春虎の思わぬステータスに冬児が一瞬驚くが、狛犬たちの声に追加の質問は遮られた
「我らが主よりお呼びがかかった。まずは、塾長室に向かうがいい」
「ここか?」
「ここだな」
二人は、ある部屋の前に立っていた。看板には『塾長室』の名前。
冬児に代わり春虎がドアノブをつかむ。
「ーーーー失礼します」
入ってすぐ、春虎は懐かしい感じを覚えた。どこか見たことがあるような
そして、正面に座る老女の姿を確認すると納得した。
(あぁ倉橋の…… )
「ようこそ、お待ちしていましたよ」
「土御門春虎さん、それに、阿刀冬児さんですね。お二人を歓迎します」
「初めまして、この陰陽塾の塾長をしています。倉橋美代です」
(やっぱりか)
春虎は、彼女に、彼女の幼き日の面影を感じていた。まだ小さかった彼女がこんなになっているのを見ると、時代の移り変わりをひどく感じた。
「いきなりですが、春虎さん。あなたは以前から陰陽術に携わっていたのかしら?」
「え?それは……」
なぜ?と美代に問いかける春虎に、被せるように答えた
「いえ、試験官の方々が驚いていたのものであなた、過去最高の実績で入学なんですよ?そのお陰でこの途中入学という異例の事態がみとめられたんですよ 」
「まぁ、大連寺さんの件もありますが」
その台詞に二人は、ぎょっとするが、どことなく、この老女には、人を安心させる雰囲気があるのを感じていた。
「ところで……あなたたちは夜光についてどんなイメージがあるのかしら?」
「あはは、どんなかんじですかねぇ?」
自分が春虎の姿であると一瞬忘れてしまう夜光さん。対して冬児は外面に似合わず真面目だった
「戦時中、全国の呪術をまとめあげ、帝国式を作り出した、その反面呪術の儀式に失敗。そうは言ってもまぁ、天才……ですかね」
「うふふ、まぁそんなものですかね。みなさん同じようなことを言いますよ」
「彼はね、将棋が好きだったんですよ」
「……え?」
「塾長もしかして」
「ええ、まだ幼い頃ですが。なのに弱くてね、負けてももう一回もう一回と」
「なかなか人間味のある1面でしょ?」
ははは、と笑うしかない。そんな風に見られていたと知っては、恥ずかしくて仕方がない。
一通り話が終わったそのタイミングで一人の男が部屋の中に入ってきた
「すんません、塾長、いい加減時間も押してますけど、まだかかりそうですか?」
「あら、お待たせしてごめんなさい。ちょうどよかったわ」
「こちら、大友陣先生、あなたたちの担任の先生よ 」
振り返った春虎は、彼を『視て』理解する。彼が相当な手練れだと。以前の大連寺鈴鹿が、十二神将と呼ばれるのであれば、彼も間違いなくそれであろうことを確信した。