13
俺と美鈴は、両側から攻撃をしかける。先程の戦闘を考えると、敬太を倒せないわけではない事が分かった。ならば、ひたすら攻撃を続けるしかまでだ。
「フン‼︎」
敬太は横に剣を振る。俺はその攻撃を素早く避け、敬太に刀を突き付ける。
「喰らえ‼︎」
しかし、その攻撃は敬太の剣に防がれてしまった。
「優、それに美鈴!君達は成長している。先程まで避けられなかった俺の攻撃を、確実に避けられる様になっている。だが、それだけではまだ、俺を倒す事はできないぞ‼︎」
敬太はそう言い、地面に思い切り剣を突き立てる。すると、物凄い波動が地面から俺達の足元に伝わってくる。その波動が、俺達の動きを止める。
「くっ……こいつ、まだこんな技も隠し持っていやがったのか‼︎」
俺は座り込み、そう叫ぶ。美鈴も歯を食いしばりながら、その攻撃を耐える。波動が止むと、俺達はすぐに攻撃に向かう。
「無駄だ。どんな攻撃をしかけてこようと、俺は倒せない‼︎」
敬太は、手の平から何かを投げ捨てた。何だ?何を投げ捨てたんだ?直後、俺は前に転んでしまった。立ち上がろうとする。だが、足が動かない。俺は足元を見る。すると、両足が機械の輪っかに縛られていた。
「な、何だよこれ⁉︎」
俺は喚く。必死に足を動かしてそれを取ろうとするが、ビクともしない。
「ハハハ!君がどれだけ足を動かそうと、時間が来るまでそれは絶対に取れない!いつ取れるかは、俺にも分からないがね。」
「何で!何でこんな事‼︎」
俺は敬太に向かって叫ぶ。敬太はニヤリと笑みを浮かべ、口を開く。
「優!君は正義感溢れる人間だ。だから君には、美鈴がやられていく様を見て欲しいんだ。仲間が攻撃を受けるのに、自分は何もできない。そんな自分の《無力さ》を思い知るがいい‼︎」
「敬太……てんめぇー‼︎」
俺は両足を地面に叩きつける。だが、足枷は傷一つ付かない。
「優君、安心して!」
ふと、美鈴の声が聞こえてくる。
「今まで優君には、いっぱい助けてもらった。だから、今度は私が、優君を助ける番なの。大丈夫!私は絶対に死なないから!」
美鈴はそう言い、剣を構える。
「おっと、俺もなめられたもんだな。君一人では、俺は倒せないよ。せいぜい、時間稼ぎ程度にしかならないさ。」
「私だって、結構強いのよ?あなたこそ、油断しない方がいいんじゃない?」
二人は睨み合う。次の瞬間、美鈴は敬太に向かって突っ込んでいった。美鈴の攻撃は、敬太の剣に阻まれる。だが、何度も何度も、剣を敬太に向かって振り回す。速い。美鈴は、俺が思っていたよりも、何倍も速かった。敬太もその速さを予想していなかったのだろう。とても驚いた表情をしている。
「やぁっ‼︎」
美鈴の一撃が、敬太の横腹を切り裂いた。
「うぐっ……‼︎」
敬太は、横腹を抑えて後退りをする。だが、美鈴は容赦なく攻撃を続ける。俺には、敬太の方が押されている様に見えた。
「勝てる……」
ふと、俺の顔には希望の笑顔が浮かんでいた。
「勝てるぞ!頑張れ、美鈴さん‼︎」
俺の声援を聞き、美鈴は優しい笑みを浮かべる。だが、その笑顔とは裏腹に、攻撃は高速かつ、とても強力だ。このまま攻撃を続ければ、必ず勝てる。俺も、恐らく美鈴も、そう思った。
「くそ……なめんな……この俺が、お前みたいな奴に……負けてたまるかぁ‼︎」
次の瞬間、敬太の剣が突然、眩い光を発した。直後、その剣が、何本にも分裂を始め、複数本の剣へと変化した。その数、六本。
「な……」
俺は思わず、呟く。まだ、こんな技をーー。
その剣の一本が、美鈴の手から剣を弾いた。美鈴の剣は、七メートル程後ろに転がり落ちる。
「ま、まずい!美鈴さんが!くそ!外れろ‼︎この枷、外れろー‼︎」
俺は叫び、再び足枷を地面に叩きつける。敬太の六本の剣は、美鈴に向けられる。美鈴は声も出ず、その矛先を見つめる。その表情は、不安に満ち溢れていた。
「この俺をここまで追い詰めた事は褒めてやろう。だが美鈴。君はここまでだ。死ね‼︎」
直後。その六本の剣は、美鈴の身体に突き刺さった。次の瞬間、俺の足枷が外れ、俺は一目散に、美鈴の元へと駆け寄る。
「美鈴さん‼︎しっかり……」
美鈴の剣を見て、俺は言葉を失った。美鈴の剣は、次第に透明になっていく。
「そんな……止まれ!止まれー‼︎」
俺は、消えていく美鈴の剣を叩く。戻るわけがない。そんな事は分かっている。分かってはいるが、認めたくないのだ。
「止まれー‼︎‼︎」
拳を振り上げる俺の手を、美鈴が掴む。見ると、美鈴は優しい表情で、首を横に振っていた。
「美鈴……さん」
弱々しい声で、俺は美鈴の名前を呼ぶ。すると美鈴は、ポケットから一つのミサンガを取り出す。そのミサンガを、俺の手に置く。
「これ、お守り。優君が、生きて帰れますように。それに、よかったの。」
「……え?」
俺は震える声で呟く。美鈴は、弱々しくも優しい声で言う。
「だって、ここで死んだら、優君を、私の一番大切な人を傷付けずに済むから……」
俺は歯を食いしばる。その目から、涙が流れ出てくるのが分かる。美鈴は俺の頬に手を添え、俺の涙を拭う。次の瞬間、美鈴は俺の唇を、自分の唇に添えた。ほんの一瞬の温もりが、俺の身体に伝わってくる。美鈴の唇には、希望、平和、優しさ、その全てが詰まっていた。
やがて、互いに唇を離す。美鈴の顔を見る。美鈴の目からも、涙が流れ出ていた。
「それじゃあね、優君……絶対に、死なないでね……」
次の瞬間、美鈴は力なく地面に倒れ込んだ。ふと横を見る。先程まで確かにそこひあった美鈴の剣が消え去っていた。俺は唇を噛み締め、刀の柄を握り締める。直後、俺は立ち上がる。そして、思い切り地面を蹴り、敬太に向かって走っていった。
「うぁぁぁぁ‼︎」
俺は刀を全力で振り回し、攻撃を続ける。
「いやぁ、いい物を見せてもらったよ。愛する者を失った絶望を胸に、その仇を討つ。そういうの、嫌いじゃないよ。でもね、どんな事をしても、俺に勝つ事はできないんだよ‼︎」
敬太はそう言い、地面に剣を突き刺す。先程の、あの波動の攻撃だ。俺は、波動が起きるのと同時に、高く跳ね上がる。そしてそのまま、敬太の頭上で刀を突き付ける。
「何⁉︎この攻撃まで避けられただと⁉︎」
敬太はそう叫びつつも、俺の攻撃を弾き返す。
「ならば、俺の必殺技で死んでもらおう!」
すると、敬太の剣が眩い光を発し、それが六本の剣へと変化した。美鈴を殺した、あの技だ。六本へと変化した剣が、俺の方へと向かってくる。
「君の命もここで終わりだよ‼︎君は死に、現実世界にいる千人も、このデスゲームをさせられる。最高のバッドエンドじゃないか‼︎」
だが、俺は素早く刀を振り回し、その攻撃を全て弾き返す。
「何⁉︎バカな‼︎俺の最終必殺技が弾かれただと⁉︎あり得ない……そんな事、あるはずがない‼︎」
敬太はそう言い、再び六本の剣を俺の方へと振り下ろす。
「この……とっとと諦めやがれ‼︎」
俺は、力強く、素早く、刀を振り回す。すると、敬太の剣にひびが入る。
「何⁉︎」
次の瞬間、敬太の剣は粉々に砕け散っていった。
「喰らえぇぇぇー‼︎‼︎」
俺刀は、敬太の腹部貫いた。俺は目を上に上げる。そこには、項垂れ、目を閉じている敬太の姿があった。すると、敬太の身体が次第に透明になっていく。武器ではなく、身体がそのものが消えていく。やがて、敬太の身体は完全に消え、俺の刀が地面に落ちる。俺はその場に座り込む。直後、俺の身体も次第に消えていっているのが分かる。
「あの時と……同じだ」
俺はそう呟く。あの時。そう、それは、俺がこの世界に来る直前、家に帰る途中に身体が透けた時の事だ。
すると、次第に俺の意識が遠のいていく。数秒の後、俺の意識は完全に途切れた。
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