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身体の節々が痛い。目の前も真っ暗で、何も見えない。俺はどうやら、どこかに寝転がっている様だ。ひんやりとする地面の冷たさが、俺の頬に伝わってくる。
朦朧としていた意識が、次第に戻ってくる。直後、俺ははっとし、思い切り目を開け、上半身を起こす。
「ここは……森?」
辺りを見回すと、そこには無数の木が生い茂っているのが分かる。上を見上げると、木漏れ日が木々の間からチラチラと現れ、俺の顔を照らす。その眩しさに目を細めながら、俺はゆっくりと立ち上がった。
歩き出した瞬間、腰に僅かな違和感を感じた。腰に目をやる。それを見た瞬間、俺は自分の目を疑った。腰には何と、鞘に収められた一本の刀が刺さっていたのだ。
「なっ⁉︎これは、刀⁉︎え、何で⁉︎」
俺は先程の買い物で、刀は購入していない。それどころか、刀を持ってもいないはずだ。その時、俺の頭に一つの考えが浮かんだ。そうか。これは夢だ。夢に違いない。こうして待っていれば、いつか覚めるはず。
俺は思わず、頬をつねる。すると、僅かな痛みが走った。
「え?おい、嘘だろ?」
俺はそう呟きながら、今度は指で、額を軽く弾いた。これもまた、痛みが走る。歯で軽く舌を噛んでみても、右足で左足を踏んでも、何をしても痛みが生じる。
「これ、夢じゃねぇ……」
俺は手の平を見つめ、そう呟いた。大体、ここはどのなのだろう。俺の住んでいる町に森はないし、第一用事もないのにこんな所に来るだろうか。
考えても無駄だと考え、俺はゆっくりと、出口を目指して歩き出す。今日は瑠奈との約束もあり、早めに帰らなくてはならない。
空を見上げると、太陽はやや東の方に傾いている。それを見る限り、俺が出かけてから、そこまで時間は経っていない様だ。だが、俺の脳裏には二つの謎が浮かんだ。
一つは、全く見覚えのないこの森だ。先程も言った通り、俺の町には森などない。町の外にあったとしても、そこまで行くのに小一時間程はかかる。
そしてもう一つは、突然身体が透けた事だ。あれは幻だったのか、本当に身体が透けていっていたのか、未だに理解できない。
しばらく歩くと、森の出口が見えた。俺はその出口を目指して、一目散に走り出す。さぁ、この森を出て、ここがどこなのか確かめてやる。
しかし、森を抜けた直後、目の前の光景に、俺は言葉を失った。そこには建物など一つもなく、だだっ広い草原が広がっているだけだった。
「何だ⁉︎どこだよここ‼︎こんな場所知らないぞ‼︎」
俺は地団駄を踏み、喚く。辺りを見回し、俺は今の状況を悟った。ここは俺の住んでいる町ではない。いやーー。《日本》ですらない。何かの娯楽施設にしては人が少なすぎる。
俺が途方に暮れていると、突然俺のポケットが光り出した。俺はポケットを探る。そこには、一つの腕時計が入っていた。
「何で、腕時計が?」
俺は腕時計を持ち上げ、それを見つめる。デジタル式の腕時計で、見ると、時刻は午後一時を指している。やはり、俺が出かけてから一時間も経っていなかった。
すると突然、腕時計から謎の音声が流れ出てきた。若い男の声だ。そのやや低い声は、こう発言した。
『全員集まったので、説明させてもらおう。』
「……は?」
俺は眉をひそめ、思わず呟いた。説明?何の?その声は続ける。
『今、この世界には、千人の人々がいる。現在、一人の者、大勢の者がいるだろうが、俺のこの説明は、その千人全員が聞いている。また、この説明は、今後の君達にとってとても大切なものだから、是非、俺の声に耳を傾けて欲しい。』
俺は目を細め、腕時計を睨みつける。テレビ番組のイベントか何かか?どうせそんなものだろう。だが、俺のその考えは、男の次の発言で全て消え去る事となる。
『気付いていると思うが、君達の腰には、一つの武器が装備されているはずだ。短剣、長剣、斧、刀。その種類は様々で、ランダムに武器が与えられている。』
俺は咄嗟に、自分の腰に目をやる。先程から気になっているこの武器。俺の場合は刀だ。他にも刀を与えられている人は大勢いるだろうが、他の武器を与えられている人も大勢いるだろう。だが、なぜだ?なぜこんな武器が必要になる?今から、何が始まろうとしているんだ?俺のその疑問を感じ取ったかの様に、声は再び説明を再開した。
『今から君達には、この武器で自分以外の人物、つまり……他の九百九十九人と殺し合いをしてもらう。』
俺は一瞬、この男が何を言っているのか分からなくなった。他の人と……殺し合い?何を言っているんだ?それを再度確認するかの様に、声はゆっくりと続ける。
『ここは現実世界ではない。俺が創り上げた、もう一つの世界だ。現実世界へと帰れる者はただ一人。そう……この殺し合いを勝ち抜き、生き抜いた最後の一人だけが、元の世界へと帰る事ができる。』
「……何だよそれ……」
震える声で、俺は呻く。最後の一人になるまで、殺し合えだって?つまり、この世界にいる俺達に、《デスゲーム》をしろと?
「そんなの、無茶苦茶だろ‼︎」
俺は腕時計に向かってそう叫ぶ。恐らく、この世界に転送されている他の人達も、同じ気分だろう。
『俺は、この世界のどこかから、ずっと君達を監視している。楽しみだ。君達の裏切りと殺人と……《本性》って物を見るのはね。』
この男は、この世界を創り上げた者。つまり《神》だ。他の人達には、この男の発言を無視する事も覆す事もできない。受け入れるしかないのだ。
『では諸君。現実世界に帰るため、頑張ってくれたまえ。』
その言葉を最後に、男の声は途絶えた。俺は、拳を強く握り締める。できる事なら、誰も殺したくはない。だが、それだと現実世界に帰れなくなってしまう。
「くそ……俺はどうすればいいんだ⁉︎」
そう叫び、両手で頭を覆う。俺は、あの男の声を思い出す。人間の裏切りの本性を見たいだと?
「この……ぶさけやがってぇ‼︎」
直後、俺は走り出した。どこに行けばいいか分からない。だが、じっとしていても何も始まらない。
腕時計には、千という数字が浮かんでいる。恐らく、今この世界に生き残っている人の数を示しているのだろう。
「こうなったら、絶対に生き延びてやる!元の世界に帰ってやる‼︎」
俺はそう叫び、果てなき草原を、ただひたすら走り続ける。
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