デスゲーム   作:坂田 信長

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続きです。ぜひ読んでください!


森での戦い

4

    あれから一週間が経った。俺は様々な街を転々とし、ひたすら旅を続けている。この世界に季節はなく、気温は常に、二十五度前後に保たれている。今日は天気が良く、空には青空が広がっている。

    俺が街を出ようとした時、近くから女性の悲鳴が聞こえてきた。

「お願い……もうやめて!」

「黙れ‼︎この世界ではな、いつ死んでもおかしくないんだよ!いつ、誰に殺されても文句は言えねぇ……大人しくここで死にな‼︎」

    街の路地裏で、一人の男性が一人の女性を襲っている。女性は地面に倒れ込み、恐らく、もう戦う事はできないだろう。男性は斧を高く振り上げる。

「い……嫌ー‼︎」

    次の瞬間、一本の刀が、男性の背後から腹部を貫いた。男性は血を吐き、後ろを振り返る。

「き、貴様……背後から不意打ちとは卑怯だぞ……‼︎」

「今更何言ってんだ?いつ死んでもおかしくないって言ったのはあんただろ?」

    俺はそう言い、男性の腹部から刀を抜く。男性は崩れる様に倒れ込み、やがて動かなくなった。

「あんたも気を付けろよ。こいつの言う通り、いつ、誰に殺されても文句は言えないんだ。常に周りを気にして行動しないと、この世界では生き残れない。」

    俺はそう言い捨て、その場から去っていく。女性はゆっくりと立ち上がりながら、遠ざかっていく俺の背中を見つめる。

「あの子……まだあんなに小さいのに、この理不尽な世界をしっかりと受け止めてる。私も、勇気を持って誰かを殺さないといけないのかな……」

    女性もまた、どこかへ去っていった。

 

 

 

    俺は街を出て、次の拠点へと向かう。街の外に広がっている草原には、緑の大地が広がるばかりで、他には何もない。身を隠す場所もなく、ここで狙われた場合では、戦闘は避けられない。

    俺はふと、腕時計を見る。そこには、午前十時三十分という時刻と共に、《七百八十二》という数字も浮かんでいる。これは、この世界で生き残っている人の数を示している。つまり、この一週間の間に、二百人以上もの人間が命を落としたのだ。

「もう大分死んでるな。このデスゲームが終わるのも、案外早いかもな……」

    俺は腕時計から目を離し、再び前を向く。この世界は、生きるか死ぬか。それが全てだ。先程の様に、誰かを襲っている最中に、逆に誰かに殺されるというケースも稀ではない。誰を騙し、誰を蹴落とすか。その判断で、生死は大きく左右する。この世界で仲のいい友人ができたとしても、いつかは殺さなくてはならない。この世界を創り、俺達にこのデスゲーム宣告をしたあの男が見たいと言ったのは、そういう事だろう。あの男は、友人を蹴落とす《本性》が見たいのだ。

    誰にも見つかる事なく、草原を駆け抜ける。やがて、大きな森に入った。この森は、迷路の様に入り組んでおり、一度迷うと数時間は出られそうにない。

    俺はふと、上を見上げる。まだ朝なので、空は明るい。だが、木が鬱蒼と生い茂っているためか、森の中は薄暗い。夜になれば、どれ程暗くなるかは分からない。それまでに、この森から抜け出す必要がある。俺はやや焦りながらも、周りを気にし、慎重に出口を探す事にした。

    四時間程歩いたが、一向に出口は見つからない。額からは汗が流れ、目の中に入ってくる。

「あ、暑いな。腹も減ってきたぞ。」

    そんな事をぶつぶつと呟きながら、俺は出口を探し続ける。それに、先程から何者かに見られている感じがしてならない。木の上から視線を感じるが、誰もいない。と、その時だった。

「殺れ‼︎今がチャンスだ‼︎」

    男性の掛け声が聞こえた。それと同時に、空中から謎の人影が飛び降りてくる。

「やぁーっ‼︎」

    その人影は、持っていた剣で俺の背中を切り裂く。

「ぐっ……このっ‼︎」

    俺は素早く後ろを向き、腰にある刀を抜く。だが、そこには人影はなく、誰もいない。

「何!そんなバカな⁉︎」

    俺は辺りを見回す。だが、人影らしい物は見当たらない。気のせいか?俺はそう思ったが、背中には確かに切り傷がある。

「気のせいなんかじゃない!確かにこの近くに誰かいる!くそっ!どこだ⁉︎」

    刀を構えたまま、ゆっくりとその場を移動する。足音を立てないよう、ゆっくり、慎重に。その時、木の上から物音がした。俺は咄嗟に上を向く。直後、俺の足に微かな痛みが走る。

「この、逃がすか‼︎」

    俺は、後ろに向かって思い切り刀を振り回す。俺の手には、手応えがある。後ろを振り返ると、そこには五歳程の男の子が倒れ込んでいた。

「なっ、子供?」

    俺はその子供を覗き込む。見ると、今俺が付けた傷以外にも、背中や腹部にたくさんの傷があった。

「おい、大丈夫か⁉︎」

    俺はその子の側に駆け寄る。その子は何も言わないが、確実に弱っていた。この世界は過酷だ。こんな小さな子供だろうと油断はできない。だが、こんなにも傷だらけな子は放っておけなかった。俺の性格上の問題でもあるが、何より、瑠奈だったら絶対に見捨てないからだ。

「ほら、おぶさりな。今すぐ街に連れていってやるからな。」

    この森の出口はどこにあるか分からない。だが、この子はもう限界だ。今すぐにでも、街に連れていく必要がある。

「何をしている!早くそいつを殺れ‼︎」

    また、先程の男性の掛け声が聞こえた。その直後、俺は危険を感じ取り、おぶさっていた子を放り捨てた。その子は、俺の背中で剣を振り回そうとしており、もし放り捨てていなければ、今頃俺は死んでいたかもしれない。

「あ、危ねぇ……!」

    俺はその子から少し離れ、膝を着き、座り込む。すると、奥の方から一人の男性が姿を現した。

「いやぁ、よくやった。ここまでこいつを弱らせてくれたら十分だ。偉いぞ。」

    その男性はそう言い、男の子の頭を撫でている。俺は再び刀を抜き、その矛先を男性に向ける。

「あんたとその子、手を組んでいるのか?」

「あぁ。その通りさ。俺の名は三郎。こいつは蓮太だ。」

    蓮太という名の男の子は、一ミリも動かずに、俺の方を睨んでいる。

「君の体力も、もう限界みたいだな……さぁ!殺し合いをやろうじゃないか!」

    三郎という男性は、この時を待っていたかの様に、嬉しそうに剣を抜く。恐らく、先程から感じていた視線は、この男の物だろう。

「いいよ……望むところだ‼︎」

    俺と三郎は、同時に地面を蹴り、お互いに向かって突っ込んでいく。剣と刀が激しくぶつかり合う鈍い音が、静寂な森に響き渡る。三郎は剣を乱暴に振り回しながら、俺の方へと近付いてくる。俺は刀の曲面を活かしながら、その攻撃を受け流す。

「負けるか!」

    三郎の一撃を下から弾き、腹部に猛烈な一撃を浴びせる。三郎は腹部を抑え、苦しそうな表情で後退りをする。

「くそ、ガキのくせに舐めやがって……おい小僧!お前の剣をよこせ!」

    三郎はそう叫び、蓮太の方へと寄る。蓮太は少し困った表情で、三郎を見つめる。渡そうか渡すまいか迷っているのだろう。

「この!渡せっつってんだろぉ‼︎」

    次の瞬間、三郎は蓮太に切りかかった。

「うわっ!」

    蓮太は胸部から腹部にかけて深い傷を負い、その場に倒れ込む。三郎は蓮太から無理矢理剣を奪い取り、再び俺の方へと向き直る。

    その様子を、俺は怒りの表情で見ていた。だが、この世界では何をされても文句は言えない。それに、蓮太も俺を殺そうとしており、助ける気にはなれなかった。

「さぁー、これで俺は二刀流だ!誰にも負ける気はしねぇな‼︎」

    三郎は強く地を蹴り、俺の方へと猛スピードで突進してくる。俺は刀で応戦するが、二刀流から繰り出される攻撃はやはり強力だ。刀一本では、とてもじゃないが防ぎ切れない。俺の身体は、次第に傷を負っていく。

「くっ……そぉ‼︎」

    負けじと、俺も刀を振り回す。だが、左手の剣にことごとく弾かれ、右手の剣で身体を切り裂かれる。死ぬ。このままでは死んでしまう。そう思った次の瞬間、三郎の一撃で、俺は刀を手から離してしまった。俺の刀は後ろに飛び、五メートル程先の所で、カランという音と共に落ちた。

「し、しまった!」

    はっとして、俺は前を向く。三郎は、二本の剣を構え、余裕の笑みを浮かべている。

「俺の勝ちだ!さぁ、死ねぇー‼︎」

    終わったーー。俺は思い切り目を瞑る。こんな所で死ぬのか。瑠奈は、今頃何をしているだろう。俺の帰りを待っているだろうか。時期に、身体に激痛が走るはずだ。だが、いつまで経っても痛みは生じてこない。俺は、恐る恐る目を開ける。そこには、力なく倒れている蓮太の姿があった。

「……え?な、何で⁉︎」

    俺は、思わず叫んだ。前を向くと、三郎も驚いた表情で蓮太を見ている。俺はすぐに座り込み、蓮太に呼びかける。

「お、お前、何でこんな事‼︎」

「……だって僕、本当は人殺しなんてしたくなかったんだもん。なのに……この人に脅されて、この間……一人殺しちゃった……。そんな僕を、兄ちゃんは心配してくれた。街まで運ぼうとしてくれた。だから……兄ちゃんを助けたくて……」

    やや片言だが、この子が言いたい事はよく分かる。だが、そんな事でここまでするとは……。

    やがて、三郎の左手から剣が消え去った。この世界では、人が死んだ場合、その人が持っていた武器は消滅するのだ。つまり、今この瞬間、蓮太は死んだのだ。

「な……お、俺の剣が……」

    三郎は、力のない声で呟く。俺は、五メートル後ろに吹っ飛ばされた刀を拾い上げ、顔を上げる。その表情、怒りに燃えていた。

「この野郎ー‼︎」

    俺は大地を蹴り、三郎に向かっていく。この男は、罪のない蓮太を利用していたのだ。蓮太の優しい心を利用した事が、とても許せなかった。

「なっ……さっきまでと力が全く違う!ひ、し、死ぬ!殺される‼︎」

    三郎は剣を振り回し、次第に後ろに下がっていく。俺は怒りに任せ、刀を振り回す。そして、三郎の手から剣が離れた。

「ひぃっ‼︎」

    丸腰になった三郎は、ゆっくりと前を向く。直後、俺の刀は、三郎の腹部を貫いた。

「ぐわぁー‼︎」

    三郎は力なく倒れ込む。数秒の後、三郎の剣は透明になり、やがて消えた。

    俺は後ろを向き、歩き出す。いつの間にか、森の出口まで来ていた。

「蓮太……お前の気持ち、無駄にはしない!」

    俺はそう呟き、走り出す。絶対に生き残ってやる。そう、心に誓う。

    

    

    




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