ハゲマントが鎮守府に着任しました。   作:owata31

1 / 12
初めての作品ですが一生懸命頑張ります。
原作104話の後の物語になりますので、村田版やアニメ版でワンパンマンを見ている方はネタバレにご注意ください。

艦娘の性格やキャラは公式設定とは微妙にずれていることがあるかもしれませんがご了承ください。




1話 最強のハゲ

ここはA市、ダークマターの宇宙戦によって壊滅的な被害にあった町の面影はどこにもない。今はS級ヒーローメタルナイトによる全面工事によって、街は復興して活気を取り戻している。

 

 

 

A市内とあるスーパー

「あと20円ありますか?」

 

「え、うん探してみる」

1人の青年が財布の中から小銭を探している。一見スーパーの店員となんの変哲もないやり取りだろう。だが店員は彼の顔を直視することをできず、目線を下に落として話している。

 

「ママーあの人見てみて!」

 

「しっ!指をさしちゃいけません!」

無邪気に笑いながら青年を指差しする小さい子供とそれを止めさせる母親。しかし、青年は小銭を探すことに夢中で気がつかない様子。

 

「あったあった」

そう言って店員に20円を渡す青年。

「あ、ありがとうございました」

吹き出しそうになる自分の理性を抑えて挨拶をする店員。

青年は買った物を適当にレジ袋に詰め込み、左手でぶら下げ、右手には「土曜の日特売セール」と、書かれたチラシを握りながら、スーパーを出る。

 

「今日は特売セールのおかげで卵と豆腐と味噌が安く手に入ったな。ジェノスがいればもう1パック卵ゲットできたんだけどなぁ。あいつどこいったんだろ。」

 

1人つぶやきながら歩く青年。至って普通の青年…といいたいところだが、太陽の光が反射された頭はまるで光輝くダイヤモンドよりも負けないくらい眩しく光っている。

時々青年とすれ違い人々は皆こぞって首を振り返る、それは青年がイケメンだからでもない、青年が特別有名人だからでもない、禿げているからだ。

 

彼の名はサイタマ

子供の頃に憧れたヒーローを目指して3年間厳しいトレーニングをした結果、髪の毛というデカすぎる代償と引き換えにどんな怪人の攻撃も通さない、どんな怪人もワンパンで倒すことができる無敵の肉体を手に入れた。

しかし、彼は強すぎた。強すぎたのだ。作業ゲーのように感じる怪人退治のおかげで彼は戦いの緊張感や高揚感を失ってしまい、無気力になってしまった。

今まで強いと思った怪人は1人だけ、しかしその怪人もサイタマには戦いにもならなかった。

 

「ただいま」

サイタマは自分の住処であるアパートに帰ってきた。前住んでいたアパートは大家から追い出され、廃工場の管理人室を改装して細々と住んでいたのだが、怪人協会とヒーロー協会の戦闘により家が崩壊した。まぁ新居は旧居と比べて広さは変わらないが管理人室を改装した家よりマシだ。

 

「旦那!お帰りなさい!」

「ワン!」

そう答えるのは黒い精子とポチ。

元は怪人協会のメンバーであったが、怪人協会とヒーロー協会との戦闘で怪人協会は壊滅。運良く生き残った1人と1匹はサイタマの家に居候(?)している。

 

「よし!じゃあ昼飯にするか」

サイタマが台所に向かう。いつもサイタマを先生と呼び崇めている弟子は出かけているので飯は自分で作らないといけない。

 

 

「いただきます」

卵味噌汁に白ご飯、野菜炒めといたってシンプルな料理である。

禿げてもちゃんといただきますは言えるのだ。

 

「旦那!そろそろ飯の改善を要求しやす!」

そう訴える黒い精子。その横ではスーパーで買ってきたドックフードを夢中に頬張るポチ。

 

「なんでいつも俺がポチと一緒の飯なんすか!」

「いやお前もポチと一緒みたいなもんだろ!?ウチは生活が苦しいんだよ!」

 

黒い精子のお椀にはポチと同じドッグフードが盛られている。居候させて貰っている身だが、流石に犬と一緒の飯では不満タラタラだ。

 

サイタマはA級ヒーローだ。だが無所属だった頃やC、B級になっていた頃と変わらず生活が苦しい。その証拠にいつも食料はスーパーの特番セールで買っており、部屋の家具はテレビや洗濯機とちゃぶ台とその他最低限生活ができる物だけ。漫画やゲームはオタクの友人から貸して貰っている。

 

「よし、ポチの散歩でもいくか」

昼飯を食い終わり、爪楊枝を咥えながら立ち上がるサイタマ

「ワンワン!」

「ぐうえっぷ…マズ… 旦那!俺もついていきますぜ!何処に行くんすか?」

嫌々ドックフードを完食する黒い精子。

 

「そうだな久しぶりに海にでも行くか」

いつもの散歩コースはもう飽きた。馬鹿でかいビルやタワーが立ち並ぶ道路を歩いていても殺風景でつまらない。山は最近なんたらの家を破壊するときに走りで行った事がある。

 

A市は内陸の方にあるため海からはかなり遠い。しかし、ヒーロー協会の本部から伸びる道路でどの街にも行き来しやすい。これによりいつでもヒーローが迅速に怪人災害が起きている街に駆けつけることができる。

 

「よし!そうと決まれば早速行くか!」

 

携帯と痩せ細った財布をポケットに入れ、一度破れてしまってまた買い直した黄色のジャージをきる。

ガスと窓の戸締りを確認して家をでる。

ポチを抱っこする。

黒い精子はポチに掴まっている。

 

 

 

「おい、どこいくんだよ新人」

 

103号室住人鎖ガマが見下すように声をかけてきた。

A級36位、紛れもない実力者でありサイタマよりも格上だ。

「フォルテは車に轢かれてしまったが…俺はー「海行ってくる」」

そう言ってサイタマは目にも留まらぬスピードで走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんなのアイツ…」残ったのは股間から湯気を出して腰が抜けている鎖ガマだけであった。

 




次回から艦娘登場になります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。