ハゲマントが鎮守府に着任しました。   作:owata31

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3話 出会い

「ん?俺か?」

「俺は趣味でヒーローをやっているハ…じゃなくてサイタマだ」

 

膝をついている私にそう答えた。私は涙が出た。だってだって嬉しかったんだもん。

 

いつもいつも人間は私達艦娘を化け物扱いし、恐れていた。

 

遂には艦娘で非人道的な人体実験をする者まで現れた。

 

私たちは人間の為に深海棲艦と戦うが、人間は私達に何もしてくれない、最低限の入渠と補給、装備を揃えてくれるだけ。

 

助けてくれたり、褒めてくれたり、一緒に笑ってくれることなんてなかった。

 

でもこの人は助けてくれた。

 

「ナイスファイト」と私を讃えてくれた。

 

もしこんな人が…

 

私達の提督だったらいいな…

 

 

 

 

 

 

「え、ちょ、ゴメンキャラ作りとか言って。」

サイタマはいきなり泣き出す少女に戸惑っていた。いきなり女の子にキャラ作りというのはまずかったのか?

 

最近超能力を操るアグレッシブな姉妹としか女性との関わり合いがなかったため、サイタマは女の子にどんな言葉をかけてやればよいのかサッパリ分からなかった。

サイタマはこの歳で5体の化け物を相手に勇敢に挑み、最後まで諦めなかった少女を凄いと思った。正義感の強い自転車の乗りと似ているなとも思った。

 

 

 

しかし、戦いは終わった訳じゃない。

「あ、あの!後ろ!」

「ん?」

完全にサイタマは油断していた。

1体の化け物が口を大きく開けて突進してきた。サメとは比べ物にならないくらいの鋭利な歯をぎっしり揃えて。

 

少女は目を瞑った。あんな至近距離じゃ回避も防御もとれない、絶対に無理だ。心の底から男の人に謝った。巻き込んでしまいごめんなさいと。。。

 

 

 

 

 

 

「いやーやっぱでかいなコイツ。」

 

 

 

ポグゥ!!

 

 

ノーモーションから放たれた左アッパーは突進してくる化け物の口の中の何処かを直撃、そのまま上に吹っ飛び衝撃で内蔵が破裂、化け物の体は粉々になった。

 

 

 

 

「?」少女は目を開けた。ここはあの世か。一度は助けてもらった命はもうないのだ。私は死んだ。痛みや死んだ時の記憶がないのは神様のおかげなのだろうか。

(私、頑張ったもんね…)

雨が降っていた。雨は血生臭かった。

 

 

血生臭い?

 

 

 

 

「わりぃ、折角の服が汚れちまうな。移動するか」

 

ヒョイと少女を持ち上げお姫様抱っこをする。サイタマは海面を蹴った。

 

少女の思考が一瞬止まる、これは雨じゃない、男にヒョイと持ち上げられる。その体勢を一瞬で理解した。電子レンジの音がして少女の顔は真っ赤に爆発した。…いや、爆発しそうになった。真っ赤になっていたことはあながち間違ってはいない。

 

化け物が突撃してくる、両手が塞がったサイタマは化け物より高くジャンプして、左足でかかと落としを食らわせる。轟音と共に今日一番の水柱が立つ。化け物は木っ端微塵になり身体の破片が空中を舞ったり、海面を漂っている。

 

化け物が砲弾を放つ、サイタマは光り輝く己の憎っくき頭でヘディングして弾く。

「あ、やべ」

弾いた砲弾の方向には軍艦があった。当たれば一発で轟沈確定だろう。

(そういや船いるの忘れてた。)

さらにサイタマはスピードを上げる。まるで海を割ったかのように水しぶきが吹き荒れる。あまりのスピードに波は大荒れになり、大嵐がきたような海になる。

空気が切れる、音速を遥かに超えているのかもしれない。

 

軍艦の目の前で急ブレーキ。

その衝撃のお陰で軍艦は45度くらい傾いてしまう。サイレンか何かがうるさく響いている。

少女のスカートかヒラリと舞い、少女の「ブツ」が見えそうになるが、この男には関係ない。興味ない。案の定少女は顔を唐辛子みたいに真っ赤にしている。

 

 

飛んできた弾をサイタマはもう一度ヘディングする。

砲弾は遥か上空まで吹っ飛び大爆破を起こす。爆発の衝撃で、分厚い雲に覆われていた空はぽっかり青空を覗かせていた。

 

 

「あと3体」

 

サイタマは少女をお姫様だったこしたまま、先程化け物達がいた場所まで大ジャンプで戻っていった。

 

 

「あ、あの!もう大丈夫です!」

「え、そうか。ほんとに大丈夫か?」

「大丈夫です!えっと…サイタマさん!」

「ん?」

「えっとその…なんでもない…です」

「?」

サイタマは優しく少女をおろす。

本音を言えばもう恥ずかしくて耐えられなかったのだ。

 

 

 

1体の化け物が少女目掛けて砲撃してくる。少女は小さい体を活かしてヒラリと避ける。1体ぐらいなら知能の低い化け物を相手にするのは容易である。敵の装填時間の隙に手に装備ている砲でで砲撃する。しかし、敵は守りに専念しており、少女の砲撃を通さない。だがそれでいい、敵に守りを専念させていればそれで良い。

 

 

 

ドコォ!!

 

 

 

突如化け物の近くから巨大な水柱が立ち込めた。そして、何かが化け物の腹部に直撃、化け物は腹部から血を流し沈んでいった。

 

 

「新型の61cm3連装魚雷よ!」

 

 

元から自分の貧弱な砲撃で化け物を仕留めきれるとは思っていない。正面から砲撃で撃破するには軽巡以上の火力が必要だろう。だがあの化け物も全ての部位が硬い訳ではない。正面からだけ砲撃が来ると思わせておいて、腹部に魚雷を叩き込む。魚雷は水中を航行するため知能が低い敵には気づかれにくい。距離が近すぎたら敵は砲撃から接近攻撃に移行してしまうし、遠すぎたら魚雷の有効弾が減ってしまう。だから敵との距離も気をつけなければいけない。自分の武器と敵の動きや弱点を良く把握している少女らしい戦い方だ。

 

「あと2体!」

 

まだ油断できない。戦いは終わっていないのだ。

 

 

「おーすげーな、お前の足から発射している棒はなんていうんだ?」

 

振り向くと、もうとっくの昔に戦闘を終わらせたのか、サイタマが鼻をほじりながら話しかけていた。

 

「あの…あと2体は?」

 

「ああ、ぶっ飛ばしてきたぜ。それよ「ありがとうございました!!!」」

突然大きな声で礼を言われるサイタマ。

 

 

「あなたのおかげで命を救われました!!私、特型駆逐艦の1番艦の吹雪です!本当に本当にありがとうございました!」

「おお、それぐらいヒーローなんだから当然だろ?それよりその棒みたいなのがなんなのか教えてくれよ」

 

なんて心の広い人なんだ。吹雪はそう感じた。今までこんな言葉をかけてくれる人間を見たことがあっただろうか?

人間は皆、自分が艦娘だとわかると化け物を見るような目でみるか、自分の身体を人体実験に使おうとする者ばかり。

 

「えっと…吹雪だっけ?おーい聞いてる?」

「え、あ、はい!魚雷のことですね!」

「陳腐化した53cm魚雷の後継として開発された大型の61cm魚雷ですよ。53cmより火力が向上しています。主砲と魚雷を合わせたカットインは強烈で、今はこの魚雷よりさらに強力な酸素魚雷が開発中でー…(以下省略)」

 

15分後ー…

延々と吹雪の話を聞いて、サイタマの目が死んでいる。61やら53やら数字が出てきてさっぱり分からない。終いには正規空母やら艦戦やらサイタマの聞いたことのない言葉のオンパレードで禿げている頭が爆破しそうになった。自分で聞いといてあれだが、どうでもよくなってきた。

「吹雪、20行以内でまとめてくれ。」

「要するに、水中で放つミサイルみたいな武器ですね。あ、正規空母は、赤城さん加賀さん蒼龍さん飛龍さん翔鶴さん瑞鶴さん雲龍さん赤城さん天城さん葛城さん大鳳さん赤城さんですね!」吹雪が自慢げに語る。余程正規空母に憧れているのだろうか。もちろん20行を完璧超えているのでサイタマが覚えられる訳がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ポチとピクミン待ってるし、キングにゲーム返さなきゃ」

「じゃ、もういくわ、浜でペットが待ってる」

サイタマが戻ろうとする。

「あ…あの!待ってください!最後に一つだけいいですか?」

「なんだ?」

「サイタマさんは私のことを化け物だと思わないのですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイタマは頭を掻きながら溜め息まじりでこう言った。

「お前なんかよりキングの5分間ハメ技のほうが化け物なんだよ。それにお前、結構かわいいじゃねーか。じゃーな、また会おうぜ」

 

「え…」

 

 

右手をあげてサイタマは浜のある方角に向かって走っていった。

 

 

 

 

 

深海棲艦をまるで赤子を捻るように倒したサイタマさんを化け物と言わせるキングさんとはいったいどんな人なんだろうか?

というかあの人って人間だよね?なんで艤装無しで海面に浮いていたんだろ?

私もあの人ぐらい強くなれれば赤城さんの随伴艦になれるかな?

でも今はどうでもいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと軍艦が吹雪に向かって近づいてきた。吹雪を回収しに来たのだろう。

時刻はまだ15時半である。しかし、少女の可憐な顔は夕陽に照らされたような顔になり、口の端がつり上がっていた。

 

 




ワンパンマン更新されてるぅぅぅぅぅぅぅ!



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