少し息抜きにですね。
第1話
「ふむ、暇だな」
此処は世界の中心であり宇宙の中心である【座】と呼ばれる超次元空間。
今代の神格――黄昏の女神ことマルグリットが治める宇宙の中心において、“彼”は居た。
二メートルに届かんとする長身(192㎝)に腰まで伸ばされた輝く金髪、黄金の眼光を放つ瞳を持った、眉目秀麗で人体の黄金比とまで呼ばれる程の整った顔立ちをした男。
名をラインハルト。
フルネームはラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ。
因みに愛称はライニ。
「知らぬ間にカールの女神の守護者にされ、はや幾千年。そろそろ私も限界だ」
そんな彼は、とても深刻そうな表情をしながら一人呟いている。
端から見れば気味が悪い光景だが、彼は【イケメン】なので、それも美しいと感じてしまう。
「一体何故――ロリが一人しかいないこの空間で我慢しろというのかッ!!」
前言撤回、どうやらラインハルトは“ド”が付く変態ですら泣いて逃げ出す程の変態のようだ。
しかもロリコンらしい。
「いや、勿論我が
必死に自分を説得しようとしている姿は格好良くも感じるが、言葉の内容が内容なだけに、非常に残念だ。
すると、その後ろから三人の人影が近付いてくるが、一人説得に集中しているラインハルトはそれに気付かない。
「おや、どうしたのだね?獣殿」
「さっきからブツブツ一人で何か言って、気色悪いぞお前」
「大丈夫?」
「ん?カールにロリコンに女神ではないか」
直後に二人目の男性からお前に言われたくないという言葉が向かってくる。
「そこの女神を彼女にしている時点でカールと同じロリコンだ」
「ふむ、私は否定しないよ」
ラインハルトの発言に肯定した軍服を纏った男性はメルクリウス。
四代目の座の神格であり、単一宇宙の概念しか持たなかった座を改造し、多元宇宙の概念を造り出した中興の祖である。
占星術を扱い、この中での強さは三番目である。
「だから俺はロリコンじゃないしお前に言われたくない!」
次にわめいているこの少年は藤井蓮。
メルクリウスのある意味で息子であり、
別名はツァラトゥストラといい、この三人の中での強さは二番目。
「ねぇレン、ロリコンって何?」
最後に純真無垢なこの巨乳少女はマルグリット。
今代の座の神格であり、藤井蓮の恋人である。
メルクリウスと蓮、そしてラインハルトの三人がこの場にいられるのはこのマルグリットのお陰もある。
マルグリットは戦うなんて思考は持っていないので、除外する。
「マ、マリィは知らなくてもいいんだ」
「む?教えないのかね?ならば私から――」
「マリィを汚すなバカ野郎!?」
「グフゥアッ!」
余計なことをマルグリット、マリィに教えようとしたラインハルトが蓮のストレートにより殴り倒される。
「・・・ねぇカリオストロ、ロリコンって何?」
「すまないね我が女神、こればかりは知ってしまうといけないことなんだよ。理解しておくれ」
「まぁ、カリオストロが言うなら」
メルクリウスは名前を沢山持っており、マリィのカリオストロもラインハルトのカールも、その内の一つである。
「なぁメルクリウス、なんでコイツはこんなに変態なんだ?」
「――ああ、それは私を於ても未知なのだよ。どこで道を誤ったのだろうか、全く見当がつかない」
「――――本当もう最悪だ。なんでこんな変態がこの中で一番強いんだよ」
そう、何を隠そうこのアルティメット変態こそが、この三人の中で一番に強いのだ。
メルクリウスの占星術を食らってもふざけるだけで、蓮の時を永久停止させる術を持ってしても止まったフリをするだけ。
どんなに刃を突き立てても、逆に刃が耐えられずに折れてしまう。
デタラメなのだ、ラインハルトという男は。
「だが、忘れてはならないぞ我が息子。獣殿が桁外れに強かったお陰で、先の邪神を退けられたのだと」
「――分かってんよ、そんなこと」
この前、といえるのは彼らの時間感覚が可笑しいだけであり、実際は何年か前の話。
いきなりこの座に乗り込んで来た神格がいた。
その男は二つの眼と“第三の天眼”を持った最強最悪の邪神であり、座の歴史上においても類を見ないほどの自己愛を持っていた。
それは波旬と呼ばれ、まず最初に波旬によってマリィが座から引き剥がされた。
それによりメルクリウスも蓮も、互いの覇道の流出が鬩ぎ合い全力を出せなかったのだ。
先ほどから出てくる流出とは、己の法則を外界へ向けて流れ出させる力のことであり、それを行うことで世界を己の世界へと塗り潰すことが出来る。
海を世界と例えれば、その海を侵食していく墨汁のようなもの。
そして覇道とは、『~であってほしい』というような渇望によって発動する、流出を唯一行えるもの。
その対は求道といい、『~になりたい』という渇望により発動するものだ。
求道は、海を世界と例えれば、海の中で曇らず輝き続ける宝石のようなもの。
で、その絶体絶命の状況時にラインハルトがようやく到着し、自らの宝物(マリィというロリ)を潰しに来たという理由で圧倒した。
“流出をしないで”だ。
とにかく、それにより最大の危機を免れたマリィや蓮たちは、それ以来自分達の力不足に悩んでいるというわけだ。
「どうすれば、強くなれんだろうな」
「それは私にも分からん。ただ獣殿――ハイドリヒを見ていると、何故だか今のままでも良いと思えるのだよ」
「それはなんでだ?」
「ハイドリヒはずっとあのままだ。自らの魂が異常と言えるほどの質量を持っていても、どれだけ力を手にしても、どれだけ変わってもその魂の信念だけは変わらない。我らもそれでいいだろう?ハイドリヒはその全てを受け入れあれほどに強い。ならば我らも、弱く脆い存在であってもめげずに前を向き、己の魂に刻んだ信念を曲げずに歩いていけば良いだけのことだ」
メルクリウスはそう言いながら、マリィと話しているラインハルトを見ている。
また殴られたくは無いからか、セクハラ発言は控えているが、マリィの見えない所でイヤらしい手つきを必死に抑えている。
「――メルクリウスが珍しくまともなことを言ったぞ」
「それはどういうことかね?息子よ」
少し親子らしい会話をしている二人に、ラインハルトとマリィが近付いてくる。
どうやら話は終わったようで丁度良いタイミングだ。
「ということで、私はこれからこの座でも管轄していない完全な並行宇宙へ行ってくる」
開口一番、すっごいことを宣った変態に、蓮だけでは無くメルクリウスもが固まる。
それほどショッキングな発言だったのだ。
「何度でも言おう。私はこれからこの座でも管轄していない完全な並行宇宙へ行ってくる」
「いや聞こえてるっつの!何回言いたいんだお前!」
「百回は言いたいですね」
「百回!?しかも敬語!?お前本当にキャラ崩壊激しいな!?」
「息子よ、メタ発言は控えたまえ」
すると、ラインハルトの隣に立っていたマリィがラインハルトを後押しする言葉を言う。
「この人にはこの前助けて貰ったから、何か御礼でもしたいと思って――そしたらこのお願いを....」
「ああ、マリィは何も悪くないよ。少し待っててくれ、ラインハルトと話がある」
メルクリウスを残し、ラインハルトを引きずって離れる蓮。
少し離れると、ラインハルトに向き直って呆れながら口を開く。
「お前、本気なのか?」
「ああ、無論本気だとも」
蓮の質問に即答でラインハルトは答える。
しかも、その顔は何時になく真剣だ。
「なんで――」
「なんで、か?愚問だな蓮よ。私にとってこの座は窮屈なのだ。これならば外の世界のほうが清々しい――故に、私は外を求める。外の世界ならば、或いは他の神と出会えるかもしれんだろう?」
「まぁ、そうなんだけどな」
「それにな、蓮よ」
ラインハルトは間を置いて、蓮の顔をしっかりと見据えてから言う。
「そろそろ私だけのロリを見つけたいのだよ」
「だろうと思ってたわっ!!」
「グブファッ!!!」
ラインハルトの返答に即座にアッパーを食らわせる蓮。
このラインハルトという男、本当にどこまでもブレることはない。
――――――――――
「では、行ってくる」
「なぁ、ちゃんと封印掛けたよな?」
「ああ勿論だとも。あちらでは創造までしか使わん」
「いやそうじゃなくてなぁ」
現在、出発しようとしているラインハルトを見送るために、マリィ、メルクリウス、蓮はラインハルトの前に並んでいる。
「存分に楽しんできたまえ、ハイドリヒ」
「次元の扉は私とカリオストロで開いたからね」
「おお!心から感謝しよう」
マリィが座の力で次元の扉を開き、メルクリウスがそれを座でも管轄していない次元へと繋げる。
マリィは兎も角、メルクリウスもこと術に関すれば十分ラインハルトと同等である。
「楽しんで来いよ、休暇」
「何時でも帰ってきて良いからね」
「行き来も我らに任せてくれたまえ、ハイドリヒ。恋人が出来たなら何時でもな」
三人が逆に楽しみにしながらラインハルトを見送る。
それをラインハルトは少し嬉しそうに笑いながら、次元の扉を潜りながら、最後に一言。
「卿ら、私の誇りだよ」
そしてラインハルトは旅立った。
多元宇宙を管轄している座でも干渉していない、全く異なる別宇宙へと。
その世界の名は『緋弾のアリア』。
アリアの世界で、彼は理想のロリを見つけることがはたして出来るだろうか。
少し楽しみである。
「ああ因みにハイドリヒには言っていないが、赤子からのスタートだ」
「マジかッ!?」
「更に付け加えるならば、これは女神の発案だ」
「マリィッ!?」
「――テヘ♪」
なんてことを、ラインハルトは知るよしも無い。
どうでした?