黄金の獣と魔弾の姫   作:神ショー

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一度書くとなんか、ね?





運命の日
第2話


 

 

 

ここは武偵高校。

 

増加する犯罪に対応するために、国家が作り出した"武偵"と呼ばれる者たちは、それ自体が国家資格となり、それを育成するための学校がこの武偵高校だ。

 

それ故に、この学校の生徒たちは刀剣や拳銃の携帯が許可され、義務づけられている。

 

この高校にラインハルトは入学し、現在1年生の3学期の末。

 

 

「ラインハルトさん、私と結婚を前提に付き合っていただきます」

 

「喜んで」

 

 

ラインハルトは屋上で告白を受けていた。

 

この告白してきた少女はレキといい、ラインハルトと同級生の狙撃科(スナイプ)Sランクの実力を持っている。

 

Sランクとは、その道のプロであるAランクの者たちが束になって襲っても返り討ちにしてしまう実力の持ち主のランクだ。

 

身長は約150cmくらいであり、碧く短い髪の上に厳ついヘッドホンを装着している。

 

肩にはドラグノフというライフルを下げ、無表情な顔が特徴だ。

 

 

「だが、理由を聞きたいな。何故私を選んだのかを直接その口で」

 

「――"風"がそうしろと言ったからです」

 

 

"風"。

 

レキという少女がどこまでも信じ、無条件で従うその存在。

 

それを聞いたラインハルトは少し考える。

 

 

「ふむ、卿自身はどう思っているのかね?卿の言う"風"とやらの言葉では無く、卿の心は何と言っているのか」

 

「私は一発の弾丸です。故に感情を持たず、ただ目標に向かって飛ぶだけ――私に心は不要です」

 

 

心は不要。

 

この言葉を聞いたラインハルトは一体何を考えたのだろうか。

 

可哀想だと感じたのか、面白いと感じたのか、目障りだと感じたのか。

 

すると、しばらく沈黙していたラインハルトが口を開く。

 

 

「まぁそのことは置いておこう。では、卿は何処までも私に着いてくるということで良いのだな?」

 

「はい」

 

「では――」

 

 

少し怪しい微笑を浮かべたラインハルトは、レキの肩に手を置いてから

 

 

「これから私と愛を――」

 

「このバカ野郎がっ!!」

 

「グフッ!!」

 

 

すると、ラインハルトが発言した瞬間に屋上の入り口から男子生徒が走ってきて、ラインハルトの後頭部にドロップキックをかます。

 

それによりラインハルトはレキの横に倒れ、レキの前にはドロップキックをした生徒が立っている。

 

 

「キンジさん、やはりいたんですね」

 

「ああ、こいつに襲われないか心配でな」

 

 

この少年は遠山金次。

 

桜吹雪で有名なあの『遠山の金さん』の子孫だ。

 

性的に興奮すると凄まじく強くなる。

 

 

「全く、プライベートの侵害ではないかね?それに、先程のはちょっとした冗談だ」

 

「お前が言うと冗談に感じないんだよ」

 

 

ラインハルトのおちゃらけた態度に、キンジは真面目に返す。

 

キンジはラインハルトと入学以来の関係で、ラインハルトが友と思っている人の一人だ。

 

 

「さて、それではレキよ。これから共に依頼を受けてもらうぞ」

 

「依頼ですか?」

 

「ああ、何やら麻薬や違法物品の密輸現場があるらしく、それらを捕まえてほしいという依頼だ」

 

「分かりました」

 

 

ラインハルトの依頼に着いていくレキ。

 

早速依頼を行ってこようとするラインハルトとレキにキンジが声をかける。

 

 

「お前別にそんな大きな依頼受けなくても十分単位貰ってるだろ?」

 

「ふっ、甘いなキンジよ。この依頼を達成しなければ、困る人たちが多く出るだろう。そうなれば必然的に、私の愛するロリたちまで悲しむことになる。それだけは何としても死守しなくてはならないのだ」

 

「ああはいOK、分かったから早く行ってこい」

 

 

このままではラインハルトによるロリ講座がまた始まると理解したキンジは、手を振りながらさっさと行ってこいとラインハルトとレキに言う。

 

少し物足りない顔をしながらも、ラインハルトとレキは依頼にあった現場に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ところ変わって密輸現場。

 

海沿いに建てられた倉庫郡の内の一つがそうで、正しく密輸現場というような場所。

 

その開かれている扉の向こう側にある倉庫の2階、そこにラインハルトとレキはいた。

 

 

「ふむ、敵は約40人と言ったところだな」

 

「はい、正確には43人ですね」

 

「流石だなレキよ。では、こちらもそろそろ乗り込むとしようか」

 

 

ラインハルトは静かに制服のポケットの中から白い手袋を取り出す。

 

その手袋の甲には独特の模様が施されており、防弾仕様のためにT(ツイスト)N(・ナノ・)K(ケブラー)ワイヤーが使われている。

 

その手袋を両手にはめて、開いたり握ったりと感触を確認しながら、ラインハルトは最後の確認を取る。

 

 

「最後に確認をしておこう。私があの現場に単身で突っ込み、卿が援護をする――まぁ単純な作戦だ」

 

「はい、分かっています」

 

 

それに満足げに頷いたラインハルトは、手を月に掲げながら一言。

 

 

「さぁ、では参ろうか――蹂躙の始まりだ」

 

 

それが開戦の合図だったかのように、ラインハルトはその場から飛び降りた。

 

態と音を発てて着地したため、それに密輸グループのメンバーが全員振り返る。

 

 

「武偵だ。大人しく投降するならば、怪我はしない」

 

「何?そうかバレていたか。だが構わん、そこの小僧を血祭りにあげろ!」

 

 

その言葉で、一斉に殆どのメンバーがラインハルトに襲いかかるが、ラインハルトは冷静に拳を構える。

 

 

「ならば、少し手荒だが眠っていて貰おうか」

 

 

ドゴン!と、何かを殴り付けたような音と共に密輸メンバーの一人が吹き飛んだ。

 

それに驚いた密輸グループは動きを止めて、吹き飛ばされた一人に目を向ける。

 

壁まで飛ばされた男は、白目を剥きながら倒れている。

 

 

「安心したまえ、これでも加減して殴り付けた。死にはしない」

 

 

この時、ラインハルトとレキ以外のすべての心が一つになった。

 

それでもこの威力は無い、と。

 

 

「ど、どうやって――」

 

「なに、簡単なことだよ。空気を殴って飛ばしただけだ」

 

「――デタラメだ!」

 

 

いとも簡単そうに告げるラインハルトに、グループの一人が思わずツッコむ。

 

 

「さて、投降を拒否した卿らには、全員ああなってもらう」

 

「お、おい、コイツもしかして」

 

 

ラインハルトの獰猛な笑みを見て、メンバーの一人が怯えた口調で言う。

 

 

「金髪に金眼のイケメンに、その模様がある手袋――間違いねぇ、コイツ"黄金の獣"だぁ!」

 

 

その"黄金の獣"という単語に、密輸グループに電撃が走る。

 

曰く、黄金の獣は人ではない。

 

曰く、黄金の獣は拳しか使わないが、その拳に距離は関係ない。

 

曰く、黄金の獣は獲物を逃がさない。

 

曰く、黄金の獣は恐ろしく変態だ。

 

等と、凄いのか凄くないのかわからない噂が流れているのだ。

 

故に、裏ではその得たいの知れなさによって恐れられている。

 

 

「では先ずはそこの5人」

 

 

ドゴン!ドン!ガスッ!ドスッ!ドォン!と、一気に敵に接近して連続で殴り、瞬く間に前方に立っていた5人の男たちが壁まで吹き飛ぶ。

 

そして、目の前の敵を殴り終えたラインハルトが次の場所を見つめると、ここぞとばかりに残りのメンバーが襲い掛かる。

 

 

「今だ!やれぇ!」

 

「「「うぉぉぉ!!」」」

 

「――――ふっ、笑止。今の私に隙は無いのだよ」

 

 

ズガァン!と、ラインハルトの銃並みに大きな発砲音がしたと思えば、ラインハルトに一番近かった男が倒れていた。

 

レキの援護射撃だ。

 

 

『油断しないでください』

 

「油断ではない、私は卿を信じているからこその行動だよ」

 

 

レキからの無線に、ラインハルトは自信満々な風に答える。

 

そうしている間に、ラインハルトは直ぐ様次の敵に接近して、6人を殴って気絶させる。

 

そうしているともう13人は気絶しており、残りは30人になっている。

 

 

「では、そろそろ遊ぶのも終わりにしようか」

 

 

ラインハルトはそう言うと、今までとは違うように拳を構えて集団の中に突っ込んで行く。

 

相手はラインハルトが一人ではないことを知って驚いているのだろうか、反応が少し遅れる。

 

一人、また一人と銃弾が飛び交う中、ラインハルトの体術によって倒されていき、とうとう残り一人となった。

 

ラインハルトは腰が抜けてへっぴり腰になっている一人の前に立つと、言葉を投げ掛ける。

 

 

「どうするかね?もう卿しか残ってはいないぞ?」

 

「――く、くくく」

 

 

仲間が全員倒れている絶望的な状況で、男は笑っている。

 

 

「何が可笑しいのかね?」

 

「いや、そういやあんた、そこの倉庫から出てきたよな?」

 

 

そう言って男が指差したのは、ラインハルトたちが待機し、今はレキがサポートするために潜んでいる倉庫だった。

 

 

「そうだが?」

 

「実はよぉ、あらかじめこの密輸が失敗した場合のことも考えておいたんだよ。密輸が邪魔されたらどうするかってなぁ」

 

「――正に今の状況だな」

 

 

ラインハルトは軽口を叩いてはいるものの、その頬には冷や汗が伝っている。

 

恐らく、男がこの先に言うだろう言葉が予想できたのだろう。

 

 

「邪魔されたら、こうするしかねぇよなぁ?――――ここら一帯爆発させるしかよぉ!」

 

「ッ!?」

 

 

言葉を言い終わると同時に、男はポケットに手を突っ込んで何かを握り、スイッチを押した。

 

すると、6つある倉庫の内の5つが一斉に爆発する。

 

 

「レキッ!無事か!」

 

『―――ジジッ―――ジッ』

 

 

慌てながら無線でラインハルトが声を掛けるが、無線はノイズを流すだけで、レキの声は聞こえない。

 

もしやと思い、目を凝らして後ろの倉庫を見るものの、レキの姿は見えなかった。

 

 

「ひゃはははは!あの倉庫にはてめぇのお仲間もいたんだろ?良い気味だぜ!」

 

 

下品な笑いで尚も笑い続ける男を、無言でラインハルトは蹴り付ける。

 

吹き飛びはしなかったため、蹴る場所をあえてズラしたのだろうか、男は激痛に悶えて倒れている。

 

 

「卿はそこで反省するがいい」

 

 

苦しむ男にそう言うと、直ぐにラインハルトはレキがいる倉庫に向かう。

 

倉庫はもう火の海と化しており、入り口からも入ることは難しいが、ラインハルトは悩むこと無く真っ直ぐ入り口を蹴り破る。

 

中に入ると、辺り一面には炎しか無かった。

 

 

「レキッ!」

 

 

レキを探すために大声を上げながら呼び掛けるラインハルト。

 

すると

 

 

「…ラ…ト……」

 

「レキッ!そこか!」

 

 

ラインハルトでなければ聞き取れないほどの弱々しい声が聞こえてきて、ラインハルトは直ぐ様そこに直行する。

 

おそらく爆発の衝撃で飛ばされたのだろう、ラインハルトが最後に見た場所からかなり奥のほうに、レキは力無く横たわっていた。

 

 

「レキッ!確りしたまえ!」

 

「……ラインハルト、さん………?」

 

 

急いで抱き上げると、レキは頭から血を流し、身体中が汚れている。

 

少しボンヤリとしている様子なので、軽い脳震盪を起こしているのだろう。

 

 

「すいません、油断していたのは、私のほうでした」

 

「いや、卿は悪くない。責任は私にこそある。このような小細工、普段の私なら気付けたというのに」

 

「――普段?」

 

「ああ。どうやら私は、卿に告白されたことで舞い上がっていたようだ。そのせいで注意力が落ちてしまった」

 

 

先程までふざけた雰囲気を出していたラインハルトだが、今のラインハルトからはそういうものは微塵も感じられない。

 

真剣に、本当に悔やんでいるのだろう。

 

 

「――何故、私なんかのためにそこまで思えるのですか?私は一発の弾丸、心を持たず、使えなくなったら捨てられるだけの存在です。私のことは気にしないで、早く逃げて下さい.....ここの倉庫には火薬があるんです」

 

 

レキの発言に、少なからずも驚くラインハルト。

 

火薬の量は分からないが、レキが忠告するということは、それなりの量があるということなのだろう。

 

恐らく、その火薬もあの男が用意していたのだろうと、ラインハルトは推測していた。

 

 

「ふむ、そんなことを言われては――卿だけを置いて逃げるなんてことは出来んな」

 

「何故――」

 

「卿は自身のことを道具と言ったな、ならば私はその道具に告白され舞い上がっていた道化だ。それに、私はもう卿のことを気に入ってしまったのだよ――捨てられたのなら私が拾おう」

 

 

ラインハルトは優しく微笑みながらレキにそう宣言をした。

 

ラインハルトがここまで心を許すなんてことは、元の世界でもあまり無かったことだ。

 

突如、ラインハルトたちの近くから爆発が起こる。

 

恐らく火薬に引火したのだろう。

 

今の爆発の影響で、開いていた入り口も完全に塞がれてしまう。

 

 

「ああ、閉じ込められたか」

 

「――なんで」

 

「ん?」

 

「なんで、私に命までかけるのですか」

 

「なんで、か。言っただろう?私は卿が気に入って、卿を拾ったのは私だ。つまり、卿は既に“私のもの”だ。私はものを大切に使うのでね、それは命もかけるさ」

 

 

ラインハルトのその発言に、レキはどう思ったのだろう。

 

顔が赤くなっているように見えるが、これは周りの炎によるものなのだろうか。

 

 

「さて、そろそろ時間も無いな。倉庫が悲鳴を上げている」

 

 

ラインハルトはその驚異的な聴力で、倉庫の柱や金属が軋んでいる音を聞き取っていた。

 

もう倉庫が崩壊するのも時間の問題だろう。

 

 

「レキよ」

 

「――はい」

 

 

いきなり名前で呼ばれたレキは、体をビクつかせて返事をする。

 

 

「今からこの倉庫を吹き飛ばす。少し待っていてくれたまえ」

 

「倉庫を?そんな、無理です!例えあなたがどれだけ人間離れをしていても、それは流石に――」

 

「笑止、私は卿のために不可能を可能にしてみせよう」

 

 

すると、ラインハルトは前方に手をかざし、不可能を可能にするための奇跡の詠唱を詠う。

 

 

「形成

 Yetzirah―

 

 ここに神の子 顕現せり

 Vere filius Dei erat iste

 

 聖約・運命の神槍

 Longinuslanze Testament」

 

 

現れたのは黄金の長槍。

 

常人ならば直視しただけでも魂を蒸発させられてしまうほどの聖性と力を持った、伝説の神槍。

 

所謂ロンギヌスの槍だ。

 

ラインハルトがこの槍に特別な結界を張っているために、常人が直視しても魂を蒸発してしまうことはない。

 

勿論ロリのためだ。

 

 

「それは――?」

 

聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)――私の持つ神槍だ。因みに、これは今のところ卿にしか見せたことがない」

 

「――――」

 

 

レキは唖然としていた。

 

何故自分にだけ、この槍を見せたのか。

 

何故、自分のために隠していた力を使ったのか。

 

それらの疑問が頭の中を駆け巡っていたのだ。

 

 

「詳しいことは、後で質問したまえ――では、脱出しようか」

 

 

穂先を天井へ向け、今、黄金の破壊光が放たれた。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

「ふぅ、大丈夫か?レキ」

 

「はい」

 

 

あの後、ロンギヌスにより倉庫を吹き飛ばしたラインハルトは、駆けつけた警察に後を任せて急いで学校に帰還した。

 

そして、自分の部屋にてレキの手当てを終えたラインハルトは、ベッドに横たわるレキの横に椅子を置いて座っている。

 

 

「.........あの、ラインハルト、さん」

 

「ん?なんだね?」

 

「ありがとう、ございます――助けてくれて」

 

「ああ、気にすることはない。私がしたかったからやったまで、当然のことをしたまでだ」

 

 

するとレキは起き上がり、ラインハルトのほうに体を向ける。

 

 

「それで、告白の件なんですが」

 

「ああ、それでどうするのかね?」

 

 

レキはとたんにモジモジしだし、顔も赤くなっている。

 

しかも、顔は少し恥じらっているような表情を浮かべており、ラインハルトは鼻血を抑えるので必死だった。

 

因みに、レキの表情はラインハルトでなければ読み取れない。

 

 

「ラインハルトさん。あの、その――私と、結婚を前提に付き合っていただけませんか?」

 

「勿論是非!」

 

 

レキの告白に、ラインハルトは一瞬の間もなくまたもや即答する。

 

 

「では、私の何処に惚れたのか、そこら辺を直接卿の口から聞きたい」

 

「そ、それは...その....」

 

 

レキは恥ずかしさのあまり、モジモジしながら顔を伏せてしまう。

 

そのあまりもの変わりようと可愛さに、ラインハルトはそろそろ我慢の限界が迫っていた。

 

 

「わ、私を....拾ってくれると、言ってくれたこと....です」

 

「――ああ、私は今、生きているッ!」

 

 

と、この言葉を最後に、ラインハルトは鼻血を文字通り噴射して倒れてしまった。

 

あとに残されたのは、幸せそうな顔で気絶するラインハルトと、困惑して慌てるレキの姿だった。

 

 

 

 

 

 





恋は人を変えますね。

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