ハッピーニューイヤー新年です。
第4話
あのラインハルトとレキが相思相愛となってから約1ヶ月。
1年生が終わり、新しく2年生となったラインハルトとレキ。
その片割れであるラインハルトは今、ベッドで眠っていた。
そして、枕元に置いてある時計の針が丁度5時を刺した瞬間、ラインハルトは目をパチッと開けて起きる。
「――うん、今日も良い目覚めだな」
直ぐにベッドから降りると、寝間着から制服へ着替えて寝室を出る。
向かう先はリビングのキッチン。
この部屋はラインハルトの一人部屋なので、朝は自分で作らなければいけないのだ。
初めは四人部屋を一人で使うことに遠慮したラインハルトだが、キンジも一人で使うことになったので大人しく使うことにしたらしい。
「今日は何を作ろうか、毎度のこと悩むな」
毎日作っているので、その度に作るものが限られてくる。
そのため少し悩んだラインハルトは――
「別に普通で良いか」
――シンプルな朝飯を作ることにした。
魚を焼き、その間に味噌汁を作り、白米を焚く。
出来上がった物からリビングのテーブルに置いていき、丁度全部出来上がった頃に玄関のチャイムが鳴った。
ラインハルトは玄関に向かい、迷うことなく扉を開ける。
「おはようございます、ラインハルトさん」
「ああ、おはようレキ。いま丁度、朝食の支度が出来たところだ。どうぞあがってくれ」
レキはあれから毎日ラインハルトの部屋に必ず来る。
まぁ、至極当然のことなのだが。
二人はテーブルに座ると、手を合わせてから食べ始める。
実はラインハルト、食事は二人分作っていたのだ。
「今日は始業式か――校長の顔を見れたら良いな」
「何もなければ、きっと見られます――何もなければ、ですが」
「なぜそんなに不吉なことを言うんだね」
意味深な発言をするレキに、ラインハルトは少し先のことが恐ろしく感じた。
「まぁ、そんな冗談は置いておいて、今日は何か用事があるんですか?」
「ああ、放課後にキンジのところに行ってからかって来ようと思う」
「では私も手伝います」
キンジをからかいに行くというラインハルトもそうだが、それを手伝うというレキも問題児だ。
この二人、かなり相性が良いのかもしれない。
そうしている間に食事を終えた二人。
ラインハルトが食器を洗い、それをレキが拭いて並べていく。
二人が恋人となってから、レキが勝手にやりだしたことなので、ラインハルトは何も言わない。
「……別に無理に手伝わなくても良いのだぞ?」
しかし今日は何を思ったのか、ラインハルトは唐突にレキに言葉を掛ける。
「いえ、これも妻の仕事ですから」
「――卿は本当に私の女神だよ」
朝からイチャつく二人の姿は、見る者によってはコーヒーが必要になるほど甘ったるかった。
そして食器を洗い終わったところで時刻は8時前あたり。
ラインハルトは寝室に赴き、机に置いてあった手袋を手に取り、その確認をする。
これは前世の時も使っていた手袋で、聖槍十三騎士団が着けているお揃いの手袋だ。
それの確認が終わってから着用して、部屋を出る。
因みにこの手袋、メルクリウスからの詫びとプレゼントらしい。
電話で確認した。
「さて、では行こうかレキよ」
「はい」
二人は男子寮を出て自転車置き場にあるバイクに跨がる。
キーを差し込んでエンジンを起動させ、サイドカーにレキを座らせる。
そしてそのまま男子寮から離れ、真っ直ぐ武偵校へと向かう。
「出来れば後部座席に座りたかったです」
「ふむ、では明日にでも叶えてみせよう」
レキのお願いを明日にでも叶えさせると言ってみせるラインハルト。
レキのためならそんなこと簡単にしてしまうだろう。
「――――ラインハルトさん、あれを見てください」
「ん?なんだね?」
レキが指差す先、そこには何台かのセグウェイに追いかけられながら自転車をこいでいるキンジの姿がある。
セグウェイの上にはマイクロUZIと呼ばれるサブマシンガンが取り付けられており、標準は全てキンジへと向いている。
一つ言っておくが、ラインハルトはあまり銃器に興味が無いため、種類なんてものは殆ど覚えていない。
「夜にからかおうと思っていたが、どうやら朝から修羅場のようだな」
「では私は援護を――」
「いや、その必要は無さそうだ」
ラインハルトが目の前にある建物の屋上を見上げる。
レキもそれを見て屋上を見上げると、そこにはピンク色の長髪をツインテールに纏めた小柄な少女が飛び降りていた。
レキは何度か面識があり、ラインハルトも少しだけならレキ経由で顔を見たことがある。
「アリアさん、ですね」
「ああ。だが、あのパラシュートが少し気になるな」
「パラシュートですか?」
「アリアは帰国子女だ。なのにあのパラシュートは日本独自の縫い方で縫られた頑丈な代物。アリアが縫えるとは到底思えん」
「もしかしたら、アリアさんの
「――ふむ、
そんな呑気な話をしている間にキンジとアリアは体育倉庫の中に消えていき、暫く大人しくなる。
周りには追ってきたセグウェイたちが並んでおり、何時でも発射出来るように倉庫に標準を向けている。
「では、そろそろ手助けをしてやろうか、レキよ」
「そうですね、後ラインハルトさん」
「ん?」
「
本当はセグウェイに向けるはずのドラグノフの銃口が、ラインハルトの額に向けられながらレキは随分と冷たい声で言う。
しかも目からはハイライトも消えているし、口調も命令形になっている。
「い、いや、私は――」
「聞かせなさい」
「――――はい」
レキの迫力に耐えられず、ラインハルトが折れた。
あの下劣畜生で自己愛な波旬を瞬殺した"あの"ラインハルトが。
「では援護をしましょうか」
「あ、ああ」
バイクを止めて多少ぎこちなさを残しながらも、ラインハルトは返事をし、拳を構えてセグウェイの群れの中に突っ込んでいく。
ガシャンッ!と大きな音を発しながらセグウェイは粉々に粉砕され、同時に殴り付けた空気の弾丸は向こう側にある倉庫の壁に大きすぎる穴を開ける。
レキもズガァン!と大きな音を発しながらセグウェイを撃ち抜いていく。
と、ラインハルトたちに気付いたセグウェイたちが、ラインハルトたちに標準を合わせようと後ろを向いた瞬間、パンッという発砲音が数発分響き、セグウェイの上にあるサブマシンガンが壊れる。
壊れてから直ぐに、倉庫の中からキンジが出てくるが、明らかに何時ものキンジとは雰囲気が違うのを二人は読み取った。
「キンジよ、卿はもしやその後ろのロリで"なった"のか?」
「ロリであろうとも立派な女性だからね」
「――ラインハルトさん、もしかしたら今夜、私はキンジさんに襲われるかもしれません」
「よしキンジ。そこへ直りたまえ、そして動くなよ?」
レキが自分の体を抱きながら言うと、ラインハルトは直ぐに拳を構えてキンジに標準を合わせる。
「ちょっ!待ちなさいよ!ソイツは私の獲物よ!」
そこに割って入ってきたのはアリア。
少し制服が乱れているのを見るあたり、確実に何かキンジにされたと確信するラインハルトとレキ。
「ラインハルトさん、今日は部屋に泊まってもいいですか?」
「welcomeだ」
レキがラインハルトの袖を握りながら、上目遣いにラインハルトに言うと、凄い真顔で即答するラインハルト。
揺るぎないロリ精神ここに極めり。
「では、もう何事も無いようだから、我らはこれで失礼する――今年もまた校長の顔を見ることは叶わなかったか」
「ドンマイです、ラインハルトさん」
後ろでギャアギャア騒いでいるアリアとキンジを置いて、さっさとバイクに乗り去っていくラインハルトとレキ。
波乱の2年生がいよいよ始まった瞬間だった。
――――――――――
キンジside
キンジはバイクで去っていく友とその恋人の姿を眺めながら思う。
いくら友とはいえ、あのラインハルトという男は一体何者なのだろうか、ということを。
キンジは生まれ持ってヒステリア・サヴァン・シンドローム(HSS)通称ヒステリアモードを使うことが出来る。
条件は性的興奮という、ラインハルトに並んでしまいそうな変態的な条件の下、通常の30倍の能力を発揮することができ、超人となることが可能というもの。
この状態でも、ラインハルトに勝てたことは一度しかないのだ。
「この変態!絶対に逃がさないんだから!」
と、考えていると後ろのほうからアリアが叫んでくる。
アリアは弾倉を装填しようとするが、予備の弾倉が無いことに気付く。
「あれ?」
「探し物はこれかい?」
と、キンジは先ほど徒手体術を食らった際に抜き取っておいた弾倉を見せびらかして、遠くのほうへ投げる。
「この、絶対に許さないんだからぁ!」
するとアリアは背中から二本の刀を取り出して襲いかかってくるが、足元に転がっていた弾夾を踏んで転んでしまう。
「じゃあまたね」
「ま、待ちなさいよ!みおきゃっ!」
キンジは歩いて、優雅にその場を離れて行った。
――――――――――
アリアside
アリアは学校を移動しながら考える。
自分を汚そうとしたあの男もそうだが、それよりもレキと一緒にいた金髪の男だ。
「金髪に金眼、それにあの手袋....もしかして、アイツが"墓の王"?」
アリアがいたイギリスの国では、恐れられている男の話がある。
曰く、その男は死なない。
曰く、その男は死者を連れ歩く。
曰く、その男は恐ろしく変態である。
などと、またもや凄いのか凄くないのか分からない噂だ。
どこからその話が広まったのかは誰も知らず、ある時を境に急激に広まっていった噂だ。
死なないのは分かる。
それほどまでに強いのだろうと誰もが予想するからだ。
変態というのも分かる。
レキからそれは何回か聞いたことがあるからだ。
だが死者を連れ歩く、これが分からない。
何か、想像できない超能力でも持っていて、それのせいでそう呼ばれているのだろうか。
そんな事を考えながら、教室に入ってきた男を見て
「あたし、アイツの隣がいい」
と、指を指しながらアリアは言った。
良いお年を。