黄金の獣と魔弾の姫   作:神ショー

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放課後まで飛ばしますー。




第5話

 

 

 

放課後。

 

今朝の事件で、やはり始業式に出られなかったラインハルトだが、二学期があるか、と割り切ることにしていた。

 

途中、キンジたちがいるAクラスが騒がしかったが、ラインハルトは気にしなかった。

 

普通に午前の授業を"目を開きながら"眠ろうとしたが、その度に隣に座るレキにドラグノフを突き付けられ、全く眠れなかった。

 

このラインハルトという男、学校の授業は殆ど寝て過ごしているのにも関わらず、テストは必ず満点なのだ。

 

頭の中はどうなっているのだろうと、クラスメイトの皆は思っているらしい。

 

そして午後になるとレキと一緒に依頼を受ける。

 

ラインハルトは強襲科所属なのだが、レキと恋人になってから今まで、一回も強襲科の校舎に行っていない。

 

理由は言わずもがな、レキといる時間を増やしたいからだそうだ。

 

で、学校が終わったこの時間帯。

 

ラインハルトとレキは一旦、第三男子寮のキンジの部屋の丁度下、即ちラインハルトの部屋にいた。

 

 

「では、作戦を確認しよう。まず私が上に行き、キンジの様子を探る。そうしたら直ぐにレキも上がってきてくれ――案ずるな、私が手を引こう」

 

「では、私がラインハルトさんを引きずり落としますね」

 

「成程、二人で海へとランデブーか――それも悪くない」

 

 

レキのジョークに割りと本気(ガチ)で答えるラインハルト。

 

そろそろメルクリウスに並ぶのではないか、という領域にまで来ていたりするのだろうか?

 

 

「風邪をひいたらどうするんですか――私が」

 

「無論、付きっきりで看病するに決まっているだろう。そしてあわよくば、その風邪を移して貰いたい」

 

「死んでください」

 

「なるほど、これが蓮に聞いたツンデレか」

 

 

正解です。

 

メルクリウスでもマリィの風邪を移してほしいとか言うのだろうか?

 

 

(無論、女神の風邪ならば是非とも移させてもらいたい)

 

 

どこからかの通信で、メルクリウスの変態発言が聞こえてくるが、誰も聞かなかったことにしてもらいたい。

 

 

「では、先に私が行ってくる」

 

「足を滑らせないでくださいね」

 

 

レキの注意を聞きながら、ラインハルトは手すりに足をかけて上へ跳び、その勢いで上の壁に掴まって体を持ち上げる。

 

ゆっくりと体を上げていき、部屋の中身を覗くと、そこには誰もいなかった。

 

これ幸いとラインハルトはキンジの部屋のベランダに立ち、下から様子を見ていたレキを上に上がらせようと手を伸ばす。

 

 

「今は部屋の中にキンジはいない。上がってきてくれ」

 

「わかりました」

 

 

レキもベランダの手すりに足をかけて跳び、ラインハルトの手を掴む。

 

何時キンジが帰ってくるか分からないため、少し急いでレキを引き上げていると、ラインハルトの耳がドアを開く音を捉える。

 

ラインハルトは急いでレキを引き上げてから抱き締め、窓の死角に入り込んで隠れる。

 

少し様子を見ると、玄関から廊下にかけて電気が付いており、キンジが帰ってきたことが分かった。

 

だが、キンジはリビングに入ってこず、少しそのまま様子を見ていると

 

 

「あ、あの...ラインハルト、さん」

 

「少し静かにしたほうが良い。恐らくキンジが帰ってきたからな」

 

「いえ、あの....そうではなく、ですね」

 

「ん?」

 

 

ラインハルトがキンジの部屋から視線を外し、レキに視線を向けようとするが、レキの姿が見えない。

 

 

「ひゃっ!ど、何処を触っているんですか!?」

 

「――――」

 

 

ラインハルトは不意に、腕の中に感じる柔らかい感触と、鼻にくる甘い香りに、レキが何処にいてどういう状況なのか、ようやく理解した。

 

自分がレキを抱き締めていて、しかも胸を触っているということに。

 

 

「――――」

 

「な、なんで一度見てからまた逸らすんですか!――んっ!」

 

 

ラインハルトは一度だけレキを見ると直ぐに視線をキンジの部屋へと逸らし、加えて更に胸を揉む。

 

つまり確信犯ということである。

 

すると、レキは我慢の限界が来たのか、思いきりラインハルトの足を踏みつける。

 

 

「ッ!?」

 

 

一瞬の隙を突いてラインハルトから離れ、恥ずかしさで少し荒れた息を整えながら、ラインハルトにキッ!と睨む。

 

 

「あ、後で覚えておきなさい。今朝の戦姉妹の件も合わせてたっぷり聞かせて貰います」

 

「くっ!、もっと堪能したかったというのに!――レキよ、話はするからその後にでもまた――」

 

「するわけないでしょう!」

 

「おふっ!」

 

 

レキはラインハルトの腹を蹴るが、ラインハルトはレキの脚を掴み感触を堪能する。

 

 

「~~~ッ!?」

 

 

直ぐに手すりに掴まって体を持ち上げ、全身を使ってラインハルトの顔面に渾身の蹴りを入れるレキ。

 

 

「グファッ!」

 

 

ラインハルトは今度こそ倒れ、床にひれ伏した。

 

 

「今更ですが、言わせて貰います」

 

 

レキは息を吸い混んで、ラインハルトに怒声を浴びせる。

 

 

「「この変態ッ!」」

 

 

浴室とベランダの二つの場所から、その日は同じ怒声が聞こえたと、近所の住人は語る。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

次の日の学校。

 

あのあと、レキによって運び出されたラインハルトは、根掘り葉掘りいろいろなことを聞かれ、現在、頬がゲッソリとした状態で廊下をレキと共に歩いている。

 

因みに、キンジの部屋を出ていく時には堂々と部屋の中を通っていった。

 

 

「今日の依頼は、少し簡単なものを選ぶか」

 

「そうですね」

 

 

すると、依頼書類が張ってある掲示板の前で、見知った後ろ姿を見つける。

 

それは、昨日からかおうと部屋に侵入しようとしたが、思いがけないハプニング(自業自得)により出来なかったキンジの姿だ。

 

 

「やぁキンジ、昨日は大変であったな」

 

「お前は確実に自業自得だけどな」

 

 

挨拶をすると、即答で返事を言われるラインハルト。

 

 

「ん?何か依頼を受けるのか?」

 

「ああ、単なる迷い猫探しだよ。Eランク武偵にはお似合いだろ?」

 

「よし、ではその依頼を渡して貰おうか」

 

「はぁ!?」

 

 

キンジの言う"猫"という部分に反応したラインハルトは、その依頼書類をキンジから奪おうと躍起になる。

 

キンジがそれを回避していると、ラインハルトの頭にドラグノフが叩き付けられることで助けられることになった。

 

 

「それはキンジさんが先に手にした依頼です。大人しくしなさい」

 

「は、はい」

 

「――なんか、完全に尻に敷かれてるな、お前」

 

 

キンジは目の前の光景に頭を抱える。

 

これでもラインハルトは、裏の世界でかなり恐れられ、事実今まで取り逃した犯人はいない。

 

ラインハルトを見た大抵の犯人はその時点で戦意を消失し、大人しくなることがほとんどだ。

 

余程のバカかトチ狂った犯人でない限り、被害はゼロという徹底ぶりもある。

 

 

「いや、違うのだキンジよ。レキは昨日のことで照れているだけなのだ。普段は甘えんぼ――」

 

「風になりますか?」

 

「ああ、そうなったら常にレキの周りに吹き続けて、外敵から守ってみせようか――そうすればスカート捲りなんかも――」

 

「土に還らせてあげます」

 

 

ラインハルトに向けていたドラグノフをズガァン!とお構いなしに発砲するレキだが、ラインハルトはギリギリでそれをかわす。

 

いきなりの発砲音に、周りの生徒が何だと振り返るが、二人はそんなこと関係無いと言わんばかりに鬼ごっこをしている。

 

それをしているのがレキとラインハルトということに驚く生徒たちだったが、それよりも驚いたのがレキの表情だった。

 

かつては“ロボットレキ”とまで呼ばれるほど無表情のレキが、今は恥じらい顔を赤くしながらラインハルトを追い回しているのだから。

 

多くの生徒は、新鮮なその光景に顔を赤くする。

 

 

「ムッ!卿ら何を見ている!レキをそんな眼で見るなど私が許さん!」

 

「黙りなさい!だいたいあなたは何時も何時も!」

 

「ぬおっ!?い、今のはかなり危なかったぞ!?」

 

「当たらないあなたが悪いんです!」

 

 

普段は皆の前でイチャイチャしても気にしないレキだが、昨日の件が原因で今回はかなり恥ずかしいようだ。

 

などと、そんな痴話喧嘩をしながら二人は自然と強襲科の棟へと入っていく。

 

残されたキンジは、アイツら変わったなと思いながら依頼を受けに行った。

 

 

「あれなんだ?」

 

「喧嘩?」

 

「うおっ!ラインハルトとロボットレキじゃないか!?」

 

「で、でも、あのレキが恥じらいの表情を浮かべてるぞ?」

 

「きゃあ!レキちゃん可愛い!?」

 

「おのれラインハルトォォ!!」

 

「面白いことになってるな!」

 

 

ラインハルトとレキが痴話喧嘩をしながら入った強襲科の校舎の中では現在、その痴話喧嘩のせいでどんどん生徒たちが集まっていた。

 

その中には1年生もいて、喧嘩をしている二人を見て先輩に聞いてる人もいれば、楽しそうに見ている人もいる。

 

 

「いいかげん沈んでください」

 

「沈むのならレキの胸の中が良いな!」

 

「~~ッ!だから公衆の面前で堂々と言わないでください!」

 

「私は自分の愛を叫んでいるのみ!」

 

「もう!」

 

 

レキはいつの間にか銃剣を使っており、ラインハルトはそれをヒョイヒョイかわしている。

 

どちらも真剣だが、ラインハルトは何処かズレていた。

 

 

「なんやぁ?なんの騒ぎやこれ?」

 

 

すると、騒ぎを聞き付けた強襲科担当の教諭である蘭豹が校舎に入ってくる。

 

すると、それに気付いた生徒が軽く説明をした。

 

「なんか、喧嘩みたいですよ?いきなり入ってきましたけど」

 

「おう喧嘩かいな!そりゃ面白そうやないか!」

 

 

だがこのままこの場所で喧嘩されるのもあれなので、仕方なく蘭豹は一旦止めることにした。

 

 

「おい!そんな面白いことは此処やのうて、闘技場でやりぃや!」

 

 

ドォォン!と、雷が落ちたかのような大きな音を、愛銃であるS&W M500から発する。

 

それにより、ようやく蘭豹に気付いた二人は、動きを止めて蘭豹を見た。

 

 

「お前ら、ここで喧嘩するなや。まだ続けるなら闘技場でやってもらうで?」

 

 

二人は互いの顔を見合い頷くと、まずラインハルトが口を開く。

 

 

「いや、今日はここら辺にしておきます。皆にも迷惑を掛けましたしね――皆、すまなかった」

 

「すみませんでした」

 

 

ペコリとレキは頭を下げるが、ラインハルトは皆を見ながら謝る。

 

蘭豹が続けないのか、と少し残念そうにしているとある生徒が前に出てラインハルトを睨む。

 

 

「おいお前、それが迷惑を掛けた奴らに対する謝罪の態度か?何様のつもりだよ?」

 

 

それは1年生の生徒だった。

 

すると、その1年生を筆頭に次々と1年生の生徒が集まってくる。

 

 

「お前らのせいで訓練時間が減っちまったんだぞ!どうしてくれんだよ?」

 

「ふむ、だからすまなかったと言っているではないか」

 

「ああ!だからそれが人に謝罪する態度かって聞いてんだよ!」

 

 

前にいる1年生の生徒たちは、始めて見るラインハルトに荒い口調で怒声を飛ばす。

 

それを見ている他の生徒たちは、特にラインハルトを知っている2年生より上の生徒たちはどんどん顔を青くしていく。

 

 

「だいたい、なんであんたみたいな奴がこの強襲科にいんだよ?しかもロボットレキまで連れてよぉ?」

 

「――――」

 

「それにさぁ?知ってるか?コイツこのロボットレキと付き合ってるらしいぜ?笑えるよな!」

 

 

あはははと、大きな声で笑う1年生。

 

レキはいつも通りの無表情だが、その顔には少し悲しみの表情を張り付け、目を伏せていた。

 

 

「だいたい、ロボットの分際で恋をするなんて"贅沢"だよな!ロボットはロボットらしく、"言いなりになって"ればいいのにさ!」

 

 

そんなことを言い続ける1年生に、本格的に止めようと上級生たちが動こうとした時だった。

 

 

「――黙って聞いていれば」

 

 

瞬間、その場にいる者たちは動けなくなってしまう。

 

1年生や上級生たちは勿論、あの蘭豹でさえも辛うじて動けるほどだ。

 

それが加減してはいるが尋常ならざる殺気だと、一体何人が気付けたのだろうか。

 

その発生源はラインハルト。

 

唯一隣にいるレキのみ、その殺気から逃れられているが、レキはラインハルトの雰囲気が変わったことに驚いている。

 

 

「恋をするのが“贅沢”だと?こんな少女が“言いなり”になっていれば良いだと?」

 

「そ、そそ、そうだよ!本当のことを言って何が悪いんだ!」

 

「――卿らこそ何様のつもりだ?」

 

 

あまりにも強力な威圧感に怯みながらも、尚も反論する1年生に、ラインハルトは本格的にキレてしまう。

 

 

「その程度の技能、その程度の強さを持ってもう選ばれた人間とは、恐れ入るな。なぁ蘭豹先生」

 

「なんや?」

 

「この者たち、教育してもよろしいですか?」

 

「おお、それは願ったり叶ったりや。コイツらAランクやからって調子に乗っとるからな。たっぷりぶちのめしてやってくれや」

 

「よし、では卿ら。今すぐ準備をして闘技場に来たまえ――私が“真の強さ”というものを教えてやろう」

 

 

ラインハルトが蘭豹に確認を取り、決闘することが決まった。

 

ラインハルトの殺気を浴びても普通に話せるなんて、蘭豹もやっぱり人間ではないのだろうか。

 

 

「な、なんでてめぇとなんか――」

 

「誰が拒否をしても良いと言った。これは私が決めたことなのだ異論は認めん断じて認めん私が法だ黙して従え」

 

 

ラインハルトの自分中心的な発言に、イラつきを募らせていく1年生たち。

 

殺気はあの後直ぐに霧散し、まるで夢のようなものだった。

 

 

「な――」

 

「よぉし、なら決まりやな!おい1年ども!ボサッとしとらんでさっさと闘技場に向かいや!」

 

 

反論しようとした1年生の言葉を区切り、蘭豹が大きな声で決定したことを口にする。

 

それによって渋々ながらも、1年生たちは闘技場へと向かっていった。

 

残ったのは、ホッとして脱力する上級生たちと、残された1年生たち、そして蘭豹とラインハルトとレキだけ。

 

 

「あ、あの」

 

「ん?どうしたんだね?レキよ」

 

 

おずおずという感じで、レキはラインハルトに声を掛ける。

 

あんなに怒ったラインハルトは見たことが無く、事実ラインハルトも、彼処まで怒ったことはない。

 

 

「ありがとうございます、私なんかのために怒ってくれて」

 

「ふっ、何を言っている。私が怒るのは、後にも先にもレキのことだけだ。私自身はどれだけ貶されても何とも思わんが、レキのこととなれば話は別なのだよ」

 

「うっ――ほ、本当にありがとうございます」

 

「おんどりゃ、目の前でイチャつきおって....」

 

 

若干頬を染めたレキを見て、蘭豹は少し不機嫌になる。

 

 

「ほら、ラインハルト!お前もさっさと行きぃや!」

 

「ふむ、蘭豹先生。少しやり過ぎてもいいのかな?」

 

「少しやのうて徹底的にやってもええで?」

 

「心得た、では全力で殺る故、責任は蘭豹先生ということで」

 

 

やるの字が違う気がするが、不吉な言葉を残してラインハルトは闘技場へと向かって行く。

 

レキの横を通り過ぎる時に、小声でレキにあることを言うラインハルト。

 

 

「今回、(しつけ)のために“槍”を使う。許してくれ」

 

「――別に気にしません。初めてが私なのですよね?」

 

「ああ、ありがとうレキ」

 

 

と、それでラインハルトは去っていく。

 

ラインハルトの神槍が解放される時が、いよいよ来たのだ。

 

 

 

 





まぁ、ギリギリですよね?

良いですよねこれ?

次回、ラインハルトがロンギヌスを出します。
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