黄金の獣と魔弾の姫   作:神ショー

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バスジャック前日ですね。




第7話

 

 

 

「なぁレキよ。昨日いつの間に私は寝てしまったのだ?」

 

「.....し、知りません」

 

 

次の日。

 

ラインハルトとレキは強襲科の校舎に向かっていた。

 

ラインハルトは股間のショックで昨日のことを忘れており、それをレキに聞いても、顔を赤くして知らないの一点張り。

 

ラインハルトのこの質問はもう5回目である。

 

理由は勿論、レキのこの表情を見たいからだ。

 

 

「それで、何故いきなり強襲科の校舎へ?」

 

「おお、それなのだがな――単なる気紛れだ」

 

「そうですか、気紛れで私との時間を裂いたんですね」

 

「案ずるな、この埋め合わせは100倍にして明日返そう」

 

 

レキがヤンデレのような顔をしてラインハルトにボソッと呟くが、ラインハルトは怪しい笑みを浮かべながら返事をする。

 

ふと前を見ると、強襲科の校舎の前に、かなり見覚えのある男の後ろ姿が見えた。

 

 

「キンジ、なぜ卿が強襲科の前にいるのだね?」

 

「ん?なんだお前らか」

 

 

キンジは去年、強襲科にいたのだが、とある事情により探偵科(インケスタ)に転科している。

 

それに加えて、キンジはトチ狂ったこの強襲科のことを苦手としており、近付くことすらしなかったほどだ。

 

 

「アリアの奴に頼まれたからな。自由履修で一時だけ戻ったんだよ」

 

「なるほど、アリアに頼まれたからか」

 

「なんだよ。っていうかお前アリアのこと知ってんのか?」

 

「レキが面識がある故な。それでも顔と名前しか知らないのだが」

 

 

アリアに頼まれて苦手な強襲科に戻ってきたキンジだが、これでもかなり渋ったのだろう。

 

実際、キンジの顔には今も嫌そうな顔をしている。

 

 

「では私たちは先に行くぞ?」

 

「――あ、そうだ」

 

 

キンジの横を通ろうとしたラインハルトとレキだが、キンジが何かを思い出したかのような声を出したために振り返る。

 

 

「昨日、1年生相手に無双したんだって?」

 

「ふむ、もう広がっているのか」

 

「そりゃあな――それで、その時に見たことのない槍を使ってたって聞いたんだが、本当か?」

 

 

少し疑うような顔をしてラインハルトに質問するキンジ。

 

それにラインハルトは特にどうという顔をすることもなく、簡単に答えた。

 

 

「ああ。隠していたからな」

 

「へぇー、本当だったのか」

 

 

ラインハルトの返答に、キンジは少し意外そうな顔をする。

 

恐らく武藤あたりに聞いたのだろうか。

 

 

「では私たちはこれで――待たせて悪かったなレキ」

 

「心配しなくても良いですよ。待たされた時間はラインハルトさんの残りの命で支払って貰います」

 

「って怖っ!レ、レキってそんなキャラだったか?それとも元から腹黒かったのか?」

 

 

さらりとかなり物騒なことを言ったレキに対してツッコむキンジ。

 

 

「いや違うのだよキンジ。レキは私の命を食らって真に一心同体になろうと――」

 

「冗談なんですから下らないことを言ってないでさっさと行きますよ」

 

「では参ろうか」

 

「変わり身早いなおいっ!」

 

 

後ろで喚いているキンジを無視して校舎に入っていく二人。

 

そして、ラインハルトが校舎の扉を開き、レキと共に中に入ると、騒がしかった音が一斉に止む。

 

気にすること無く歩き始める二人だが、その前に1年生の生徒たちが立ち塞がる。

 

その1年生たちは、昨日ラインハルトに打ちのめされた者たちだった。

 

 

「どうしたのだね?」

 

「……スミマセンでした!!」

 

「「「「スミマセンでした!!」」」」

 

 

ラインハルトが声を掛けると、一人の男子が前に出て謝罪し、それに続いて周りの1年生たちも謝罪し出した。

 

 

「……ほう」

 

「先輩のお陰で眼が覚めました!昨日は失礼な真似をしてしまってスミマセン!」

 

「――――」

 

「許してくれとは言いません!なので僕たちのことは好きにしてください!」

 

 

確かに、先輩に対してあんな失礼なことをすれば、普通は許されるなんてことはまず有り得ないだろう。

 

それが武偵高校ともなれば、更に難しくなる。

 

だが、ラインハルトは“普通”ではない。

 

 

「私に謝られても困る。私は自分に言われたから怒ったのではないからな。謝るのならば、レキに謝るがいい」

 

「え?」

 

 

ラインハルトは1年生の生徒たちの前にレキを置き、レキは突然話を振られたためキョトンとしている。

 

 

「レキ先輩!昨日は失礼なことを言ってしまい、本当にスミマセンでした!!」

 

 

レキに対して、1年生たちは土下座までして謝罪する。

 

ラインハルトには腰を曲げた程度なのに、レキに対しては土下座とは、差別も良いところだな、と周りにいる上級生たちは思った。

 

 

「いえ、別に私は気にしていません。体を上げてください」

 

「で、ですが!」

 

「それより、貴方たちこそ大丈夫でしたか?ラインハルトさんが私の忠告を無視してやり過ぎてしまいましたけど」

 

「い、いえ!大丈夫です!」

 

 

レキが聞くと、1年生の生徒たちは首をブンブン横に降りながら大丈夫だと言う。

 

それにレキはホッとした表情を浮かべる。

 

するとどうだろう、1年生の生徒たちが顔を赤くするではないか。

 

 

「なら良かったです。これからはもっと上を目指せるよう頑張ってください」

 

「「「「はい!ありがとうございます!」」」」

 

「元気があって良いことです。ではラインハルトさん、バトンタッチです」

 

 

レキは用が終わったということで、今度はラインハルトを1年生たちの前に置く。

 

体格差などは関係ないのだろうか。

 

 

「レキが許したのなら私は何も言わん。だが、確かに私もやり過ぎてしまった」

 

 

と、ラインハルトは言うや否や頭を下げる。

 

これには1年生だけでは無く上級生の生徒たちも驚いていた。

 

 

「せ、先輩!頭を上げてください!」

 

「いや、これに関してはレキにも言われたのでな。個人的な謝罪だ」

 

「流石、私の愛したラインハルトさんですね」

 

 

ラインハルトは1年生に頭を下げたまま言うと、後ろからレキが言う言葉に反応する。

 

頭を下げたまま一瞬でレキのほうに体を向けると

 

 

「ではどうかレキの胸を――」

 

「触らせません」

 

「ブッファ!?」

 

 

レキは直ぐ様ラインハルトの考えを読み取ると、言い切る前に遮って蹴り飛ばした。

 

自分達が圧倒されたラインハルトに一撃を入れたレキに1年生たちは唖然とする。

 

そんなレキは蹴り飛ばしたラインハルトの所に行くと、目の前に仁王立ちをする。

 

 

「ラインハルトさん、全く懲りていませんね」

 

「ふっ、私は何事にも本気全力で挑むのでね」

 

「はぁ、残念です。此処で反省していると言ったなら、あなたのお願いを“何でも”一つ聞いてあげたのに」

 

「何!?」

 

 

レキの強調した“何でも”という言葉にあからさまに反応するラインハルト。

 

公衆の面前だというのに、全くブレない男である。

 

 

「反省はしている!」

 

「ならその証拠に強襲科の1年生たち全員に訓練してあげなさい」

 

「強襲科1年!総員集合したまえ!」

 

 

レキが言葉を言い切ると、直ぐに1年生全員集まるようにと大声で言うラインハルト。

 

呼ばれた1年生たちは慌てて集合するが、上級生たちは皆頭を抱えている。

 

 

「頑張ってくださいラインハルトさん」

 

「よし!では先ずは基礎の格闘技術を教えよう!卿ら、神経を集中させて聞くがいい!」

 

 

ラインハルトがやる気全開で1年生たちを指導している光景を背にして、レキは強襲科の校舎を後にした。

 

 

 

 

――――――――――

 

キンジside

 

 

「はぁ、本当にバカだよなアイツ」

 

「ねぇキンジ、あの金髪の男って....」

 

「ああ、アイツはラインハルトっつって、全科目でオールSランクを取ってる変態だ」

 

「オールSランク!?」

 

 

キンジはラインハルトたちが強襲科に入った後にアリアと遭遇し、気分転換にゲームセンターに向かっていた。

 

ちょうど理子からチケットを貰っていたので折角だから、というわけでもある。

 

そして、ただ歩くのもアレなので、キンジはさっき強襲科で遭遇したラインハルトの話をアリアにしていた。

 

ラインハルトがオールSランクだと知ったアリアは、見なくても分かるくらいに驚いている。

 

 

「本人は全力でやったからだって言ってるけどな」

 

「普通は全力でやったって取れるわけないでしょ!ソイツ嘗めてんの!」

 

「まぁ、家系が家系だしな」

 

「家系?」

 

 

アリアはキンジの言うラインハルトの家系について、首をコテンと傾げる。

 

 

「アイツのフルネーム知ってるか?」

 

「あたし、あの金髪のこと殆ど知らないのよ。情報科(インフォルマ)に調べて貰っても、何にも情報が入らないし...」

 

「知りたいなら直接聞かないと何もわかんねぇぞ。アイツ自分の情報は徹底的に削除してっからな」

 

「――もう驚かないけど、直接聞いても答えてくれるわけないじゃない。自分の情報を徹底的に削除するようなヤツよ?」

 

 

キンジの言う言葉が信じられないアリアは、疑問をキンジに聞く。

 

 

「いや、アイツはそこまで秘密主義じゃない。むしろドンドンバラしていくタイプだ。特にアリアみたいな体型にはな」

 

「悪かったわね!」

 

キンジの言葉に反応して牙を剥くアリア。

 

だがキンジはそれをいなしながら真実を言う。

 

 

「アイツは極度のロリコンなんだ」

 

「――う゛ぇ?」

 

「凄い声出したなお前」

 

 

キンジの言う真実に、アリアは固まるほどの衝撃を受けていた。

 

オールSランクで自分の情報は徹底的に削除するような男が、極度のロリコンだとは、到底思えないのだ。

 

 

「ほ、本当なの?」

 

「嘘ついてどうするんだよ?本当だ。ラインハルトはロリコンそのものだ」

 

「じ、じゃあ、あたしがソイツに聞いたら答えてくれるっていうのは」

 

「たぶん答えてくれるけど、変わりに変なことされるだろうな」

 

 

言ってほしく無かったのか、はたまた予想通りの結果を聞いたからか、アリアは自分の体を抱いた。

 

 

「まぁ安心しろ。最近はレキがストッパーになってくれてるから手は出せないし、出したとしてもレキに撃墜されるだろうよ」

 

 

この言葉に安堵の息を吐くアリア。

 

結構深い息だったので、不安はそれだけ大きかったということか。

 

 

「で、ソイツのフルネームって何なの?」

 

「あ、そういえばそんな話だったな」

 

 

キンジはアリアの言葉で思い出したかのような反応をし、そして言った。

 

 

「アイツはラインハルト。フルネームはラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒっていうんだ」

 

「....それって」

 

「アリアの予想通り、ラインハルトは20世紀のナチスドイツ時代のドイツ国で、秘密警察(ゲシュタポ)の長官にまで上り詰めた超エリートのラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒの曾孫だ」

 

 

アリアもそのラインハルトについては多少知っている。

 

大将という、軍隊においてほぼ最高の階級にまで至り、その功績をアドルフ・ヒトラーに認められ、死後にはドイツ勲章まで賜った、現代でも類を見ないほどの超エリート。

 

まさか、そんな大物の子孫がこの武偵高校にいるなんて、少し信じられなかった。

 

 

「でも、名前まで同じだなんて、少しおかしいわ」

 

「まぁそこまでは俺も知らないしな。今日ラインハルトに会いに行って直接聞いてこいよ」

 

「そうね、レキに立ち合いをしてもらって聞いてみましょっか。当然キンジも来るのよ」

 

「マジかよ」

 

 

そんな会話をしながら、ゲームセンターに向かっていく二人。

 

こんな平和な日常もどきも、明日で終わりだなんて、誰が思ったのだろうか。

 

 

 

 

 





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